8話 二日目
ー/ー
双子宮一日目は、久々に会ったからなのか夜の寝る前までエレとゼロが甘えてきていた。
早朝、ベレンジェア兄弟、デューゼとルノがきてくれた。
「エレ、ゼロ、久々に会って献上品だぁ」
デューゼがエレとゼロに都で買ったらしき土産を渡している。
二人の好みに合うものだったのか大喜びしている。
デューゼも二人に喜んでもらえて満足そうだ。
「……僕にはないんだ。僕も久々なのになぁ。最近辺境の宮で一人で頑張っていたのに」
面白そうだから言ってみる。
期待はしていないというか、出てくるはずはないと思っていたんだけど、デューゼが手に持っている袋をゴソゴソと漁っている。
「ほらよ」
ほんとにあるんだ。しかも、ちゃんと考えられている。僕が面白がって言ったからあるもので渡したわけじゃなくて。
僕が前に欲しかった魔法書。ギュリエン内では売っていないから諦めていたのに。
デューゼはギュリエンの外の仕事が多いから買ってきてくれたのかも。
「……ありがと。まさかほんとに出てくるとは思わなかったよ」
「フォル嬉しそうなの。エレも嬉しいからありがとなの。お部屋案内するから、お荷物置いてくるの」
エレが一人で案内している。迷子にならないか心配だけど、流石に何年もいるんだから大丈夫か。
残ったゼロが僕の手を掴む。
「どうしたの? 」
「……外行きたい。花畑で遊ぶの好き。魔の森で遊ぶの好き」
魔の森か。良く行くのかな。中央区の軍部に行った時に聞いた話もエレとゼロだろうから。
あの時の話、ゼロなら詳しく話してくれるのかな。
エレに聞くと本人が分かっていない部分が多そうだから。
「ゼロ、魔の森で中央区の制服見た事ある? 」
覚えてないとか気にしていなかったからわからないとかならそれで良い。こっちも何があったのか話す必要なんてない。
詳しくは言わずに、見た事があるかだけを聞く。
ゼロはこくりと頷いた。
その時の話を聞きたいけど、何かあると察したのか話をしてくれない。僕がもう少し詳しい話をしない限りはゼロも何も話してくれないんだろう。
「……中央区の軍部が魔物の影響で機能していなかったんだ。話せる状態に回復した人から聞いたんだけど、魔物討伐に行った時に君らを見たらしい」
僕が言えるのはこのくらいかな。
「見回りにきている人じゃない方か。魔物討伐かは知らねぇが、制服着ている素人にしか見えなかった。指揮をとっている人は違うけど。無駄にプライド高くて、足を引っ張っているだけで……あれじゃ、指揮官がどれだけ優秀だろうと魔物討伐なんて無理だ」
ゼロから見てもそんなに酷かったのか。
「……プライド捨てて訓練と連携大事って教えた方が良いとゼロは思います……ってエレに言えって共有で言われた」
魔力、感情、思考の共有。繋がりが強くなければできない。できたとしても、会話ができるだけになるには時間をかけて慣れる必要がある。
エレとゼロは自然に覚えてオンオフの切り替えもできる。
エレがデューゼとルノを部屋に案内する前に触れ合って共有をしていたのかな。エレが迷子にならないようにという目的だろうけど、別の用途でエレに使われている。
気のせいかな。遠くからエレが「えっへん」とか言っているのが聞こえるよ。
「……そうだね。何か協調性を育むようなもんがあれば良いんだけど。それこそ主様が考えるべき事か。僕が考えるべき事じゃない」
「……俺、前に精霊祭行きたかった。フォルがいないからやめたけど。ってエルグにぃに伝えといて。連絡魔法具ないから」
連絡魔法具がないのは不便だからすぐにでも買ってあげたい。でも、エレが市販の連絡魔法具を使いたがらない。ゼロはゼロで毎回お揃いが良いとか言うから、フィルが来た時にでも頼んでみようかな。
それにしても精霊祭か。前に何か、重要な事を主様に言われた気がするけどなんだったかな。僕には関係ないって聞き流していたから、思い出せない。
精霊祭……祭り……あっ
「そういえば主様が祭りを考えていたかも」
ゼロが精霊祭の話をしてくれなければ思い出せなかった。
宮で働いていると働いている宮の外との交流が少なくなるから、交流できる機会を作るために祭りをしようって話になっていたんだ。中央区の軍部の件や魔物の件があってか、祭りをしようって言いながら何も進んでいないみたいだけど。
それでついでに協調性を育む事ができるんじゃないかな。
みんなで協力して準備をする過程で。
「祭り……楽しみ。エレを連れ回すんだ。いやって言っているけど絶対連れ回すんだ。ついでに連絡魔法具買って、十分おきにエレにメッセージ送るんだ」
エレが好きすぎるんだろうけど、それやったらエレが逃げるだけだから。エレに好かれたいなら絶対おすすめしないよ。
「エレが威嚇する」
そんな泣きそうな声で言われても。むしろ威嚇だけですんで良かった方だよ。
「威嚇されてとーぜんなのー。とってもしゃぁーなの」
エレが戻ってきた。もう部屋案内終わったのかな。
戻ってきたなら、ゼロが外で遊びたいっていうから遊ばせてあげようか。
その前に威嚇エレを落ち着かせてゼロと仲直りをさせてあげないといけないけど。
威嚇エレを落ち着かせるには威嚇していた事を忘れさせるのが一番良い。でも、ここまで威嚇していると簡単に忘れてはくれないだろう。
忘れさせるには、エレが大喜びして他の事を何も考えられなくなる事をしてあげる。いくつか思いついた中で一番喜びそうなのが一番やりたくない事なんだよなぁ。
「……エレ、少し暑いからこれ持っといて」
適当な言い訳を作って上の服を脱いでエレに渡す。
エレは大喜びで受け取っている。これで威嚇は忘れただろう。
「ふにゃ……くんくん……ふにゃ……しかも、シャツフォルなの。制服しっかり着てないシャツフォルなの」
今すぐ返してほしい。威嚇が復活するから言わないけど。
エレは鼻が良いわけじゃないけど、僕やゼロの匂いが安心するみたい。
ゼロが何かを言いたそうに僕を見ている。何か言いたそうなのに何も言わない。
「……ゼロ? 」
「ゼロはフォルがシャツフォルなのってじっと見ているの。いつもみたいに制服ちゃんと着ていないって。珍しいって見てる」
エレが共有で感じたゼロの思考を教えてくれる。
ゼロは何も言わない。
聞いていない可能性まである。
「……エレ、ゼロが外で遊びたいみたいだから外行かない? 敷地内だけど」
「行くの。お花さんいっぱいすき」
エレがなぜか僕が渡した服を着て、ゼロの腕を引っ張る。
ゼロを外に出そうと腕を引っ張るのは理解できるけど、服を着る必要ないでしょ。
エレが一生懸命ゼロの腕を引っ張っているけど、ゼロが微動だにしない。まぁ、エレとゼロの力関係を考えればそうなる事は分かりきっていたけど。
ゼロが動かないからエレが突然泣き出した。
「……ゼロ……お揃いのお洋服着てるんだからお外行くの」
「……エレが泣いてる⁉︎ エレ誰泣かしたんだ! 」
君が泣かせたんだけど、って言ったら余計に面倒な事になるな。エレを泣き止ませるだけで余計な事は言わないでおこう。
エレを泣き止ませるには抱きしめてあげて頭を撫でてあげるのが良いかな。ゼロがそれを今やっているんだけど、ゼロが泣かせたからか泣き止まない。
それだけじゃなく「しゃぁー」と威嚇が聞こえる。
その威嚇を聞いてゼロまで泣き出した。
こうならないように何も言わなかったのに。
「……エレ、フィルの魔法具だよ。ゼロ、最新版の禁止指定魔法書だよ」
こうなったらもうもので釣る。エレとゼロに魔法具と魔法書を渡すと大事そうに抱きしめて、泣き止んだ。
泣き止んで収納魔法にしまって、二人で一緒に外へ出て行った。
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「……僕にはないんだ。僕も久々なのになぁ。最近辺境の宮で一人で頑張っていたのに」
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期待はしていないというか、出てくるはずはないと思っていたんだけど、デューゼが手に持っている袋をゴソゴソと漁っている。
「ほらよ」
ほんとにあるんだ。しかも、ちゃんと考えられている。僕が面白がって言ったからあるもので渡したわけじゃなくて。
僕が前に欲しかった魔法書。ギュリエン内では売っていないから諦めていたのに。
デューゼはギュリエンの外の仕事が多いから買ってきてくれたのかも。
「……ありがと。まさかほんとに出てくるとは思わなかったよ」
「フォル嬉しそうなの。エレも嬉しいからありがとなの。お部屋案内するから、お荷物置いてくるの」
エレが一人で案内している。迷子にならないか心配だけど、流石に何年もいるんだから大丈夫か。
残ったゼロが僕の手を掴む。
「どうしたの? 」
「……外行きたい。花畑で遊ぶの好き。魔の森で遊ぶの好き」
魔の森か。良く行くのかな。中央区の軍部に行った時に聞いた話もエレとゼロだろうから。
あの時の話、ゼロなら詳しく話してくれるのかな。
エレに聞くと本人が分かっていない部分が多そうだから。
「ゼロ、魔の森で中央区の制服見た事ある? 」
覚えてないとか気にしていなかったからわからないとかならそれで良い。こっちも何があったのか話す必要なんてない。
詳しくは言わずに、見た事があるかだけを聞く。
ゼロはこくりと頷いた。
その時の話を聞きたいけど、何かあると察したのか話をしてくれない。僕がもう少し詳しい話をしない限りはゼロも何も話してくれないんだろう。
「……中央区の軍部が魔物の影響で機能していなかったんだ。話せる状態に回復した人から聞いたんだけど、魔物討伐に行った時に君らを見たらしい」
僕が言えるのはこのくらいかな。
「見回りにきている人じゃない方か。魔物討伐かは知らねぇが、制服着ている素人にしか見えなかった。指揮をとっている人は違うけど。無駄にプライド高くて、足を引っ張っているだけで……あれじゃ、指揮官がどれだけ優秀だろうと魔物討伐なんて無理だ」
ゼロから見てもそんなに酷かったのか。
「……プライド捨てて訓練と連携大事って教えた方が良いとゼロは思います……ってエレに言えって共有で言われた」
魔力、感情、思考の共有。繋がりが強くなければできない。できたとしても、会話ができるだけになるには時間をかけて慣れる必要がある。
エレとゼロは自然に覚えてオンオフの切り替えもできる。
エレがデューゼとルノを部屋に案内する前に触れ合って共有をしていたのかな。エレが迷子にならないようにという目的だろうけど、別の用途でエレに使われている。
気のせいかな。遠くからエレが「えっへん」とか言っているのが聞こえるよ。
「……そうだね。何か協調性を育むようなもんがあれば良いんだけど。それこそ主様が考えるべき事か。僕が考えるべき事じゃない」
「……俺、前に精霊祭行きたかった。フォルがいないからやめたけど。ってエルグにぃに伝えといて。連絡魔法具ないから」
連絡魔法具がないのは不便だからすぐにでも買ってあげたい。でも、エレが市販の連絡魔法具を使いたがらない。ゼロはゼロで毎回お揃いが良いとか言うから、フィルが来た時にでも頼んでみようかな。
それにしても精霊祭か。前に何か、重要な事を主様に言われた気がするけどなんだったかな。僕には関係ないって聞き流していたから、思い出せない。
精霊祭……祭り……あっ
「そういえば主様が祭りを考えていたかも」
ゼロが精霊祭の話をしてくれなければ思い出せなかった。
宮で働いていると働いている宮の外との交流が少なくなるから、交流できる機会を作るために祭りをしようって話になっていたんだ。中央区の軍部の件や魔物の件があってか、祭りをしようって言いながら何も進んでいないみたいだけど。
それでついでに協調性を育む事ができるんじゃないかな。
みんなで協力して準備をする過程で。
「祭り……楽しみ。エレを連れ回すんだ。いやって言っているけど絶対連れ回すんだ。ついでに連絡魔法具買って、十分おきにエレにメッセージ送るんだ」
エレが好きすぎるんだろうけど、それやったらエレが逃げるだけだから。エレに好かれたいなら絶対おすすめしないよ。
「エレが威嚇する」
そんな泣きそうな声で言われても。むしろ威嚇だけですんで良かった方だよ。
「威嚇されてとーぜんなのー。とってもしゃぁーなの」
エレが戻ってきた。もう部屋案内終わったのかな。
戻ってきたなら、ゼロが外で遊びたいっていうから遊ばせてあげようか。
その前に威嚇エレを落ち着かせてゼロと仲直りをさせてあげないといけないけど。
威嚇エレを落ち着かせるには威嚇していた事を忘れさせるのが一番良い。でも、ここまで威嚇していると簡単に忘れてはくれないだろう。
忘れさせるには、エレが大喜びして他の事を何も考えられなくなる事をしてあげる。いくつか思いついた中で一番喜びそうなのが一番やりたくない事なんだよなぁ。
「……エレ、少し暑いからこれ持っといて」
適当な言い訳を作って上の服を脱いでエレに渡す。
エレは大喜びで受け取っている。これで威嚇は忘れただろう。
「ふにゃ……くんくん……ふにゃ……しかも、シャツフォルなの。制服しっかり着てないシャツフォルなの」
今すぐ返してほしい。威嚇が復活するから言わないけど。
エレは鼻が良いわけじゃないけど、僕やゼロの匂いが安心するみたい。
ゼロが何かを言いたそうに僕を見ている。何か言いたそうなのに何も言わない。
「……ゼロ? 」
「ゼロはフォルがシャツフォルなのってじっと見ているの。いつもみたいに制服ちゃんと着ていないって。珍しいって見てる」
エレが共有で感じたゼロの思考を教えてくれる。
ゼロは何も言わない。
聞いていない可能性まである。
「……エレ、ゼロが外で遊びたいみたいだから外行かない? 敷地内だけど」
「行くの。お花さんいっぱいすき」
エレがなぜか僕が渡した服を着て、ゼロの腕を引っ張る。
ゼロを外に出そうと腕を引っ張るのは理解できるけど、服を着る必要ないでしょ。
エレが一生懸命ゼロの腕を引っ張っているけど、ゼロが微動だにしない。まぁ、エレとゼロの力関係を考えればそうなる事は分かりきっていたけど。
ゼロが動かないからエレが突然泣き出した。
「……ゼロ……お揃いのお洋服着てるんだからお外行くの」
「……エレが泣いてる⁉︎ エレ誰泣かしたんだ! 」
君が泣かせたんだけど、って言ったら余計に面倒な事になるな。エレを泣き止ませるだけで余計な事は言わないでおこう。
エレを泣き止ませるには抱きしめてあげて頭を撫でてあげるのが良いかな。ゼロがそれを今やっているんだけど、ゼロが泣かせたからか泣き止まない。
それだけじゃなく「しゃぁー」と威嚇が聞こえる。
その威嚇を聞いてゼロまで泣き出した。
こうならないように何も言わなかったのに。
「……エレ、フィルの魔法具だよ。ゼロ、最新版の禁止指定魔法書だよ」
こうなったらもうもので釣る。エレとゼロに魔法具と魔法書を渡すと大事そうに抱きしめて、泣き止んだ。
泣き止んで収納魔法にしまって、二人で一緒に外へ出て行った。