23.侵入者
ー/ー
結局、猫のことはその場で結論を出さないままとなったが、ミナミが部屋に戻ってきたので俺たちは暇をして、マンションを後にした。
「話には聞いていたけど、スゴイ数の猫だったなぁ」
「あれが全部、ミナミの猫なわけではないよ」
「えっ、そうなの?」
「うむ。ミナミが協力しているNPOの団体があってな、引き取り手のない殺処分をされそうになった個体を保護しているのだ。あの部屋はボランティアで提供しているそうだ」
「ふうん……」
そんな非営利団体の運営なんて、失敬のカタマリみたいなミナミのイメージに全然合わないナ……と思ったが、イメージに合わないって言葉から、俺はマンションで見かけた子供のことを思い出した。
「そういえば、ミナミってシノさんに花束なんか送ってるクセに、子供いるんだね。ビックリしたよ」
「子供?」
白砂サンは訝しげに首を傾げた。
「うん、トイレ借りた時、廊下で鉢合わせしちゃった」
「ミナミに子供など、いないと思うが?」
「ええ? だって俺、ハッキリ見たよ? アレは幽霊とかじゃなくて、ちゃんと足もあった」
「だが、私は会ったことが無いし、ミナミから話を聞いたことも無い。侵入者では無いのかね?」
「あんなセキュリティの高いマンションに、無関係な子供が入り込むのムリなんじゃない?」
「子供を侮ってはいけないよ、多聞君」
そりゃまぁ、子供ってのは大人の意表を突く行動を取るとは思うケドも、でも赤の他人があんなにソックリ顔なワケないだろう。
だが子供の顔を見ていない白砂サンは、侵入者の心配をして、ミナミに電話を掛けた。
ところが何度コールしても、ミナミが電話に出ないらしい。
「仕方ない、戻ろう」
侵入者なんて考えてもいなかった俺は、踵を返して坂を登る白砂サンの後を追った。
バタバタと慌ただしくマンションに駆けつけて、先刻と同じ手順で中へ入る。
「ミナミ、どこにいる?」
白砂サンはまずリビングに声を掛けたが、返事は無かった。
俺と白砂サンは二手に分かれて部屋を順繰りに見て回ったが、ミナミはどこにもおらず、居るのは猫ばっかりだ。
すると廊下の向こうから鋭い命令口調と、どたばた走る音がした。
「君、待ちたまえっ!」
「放せってば!」
甲高い子供の声がする方へ行くと、白砂サンが俺の見た子供を捕まえていた。
「君は此処で、何をしているのかね!」
子供にそんな詰問口調は逆効果なんじゃ……? と思ったけど、白砂サンは詰問口調のつもりも無いんだろう。
子供は白砂サンを睨みつけていて、返事をしない。
「どうしたんですか?」
声を掛けられて、俺が振り返ると、そこには、両手と両肩に10匹ぐらいの猫を抱えた、ホクトが立っていた。
一瞬ミナミかと思ったが、先刻と服装が違うのと、ミナミ独特のイヤな目つきをしていないので、ホクトだと解ったのだ。
「ホクト君こそ、どうしたの?」
「廊下に猫が居て、どうしたのかと思ったら、南の部屋の扉に猫のおもちゃが挟まって開いていて、そこから猫が出てきていたので……。どうかしたんですか?」
そこまで言ったところでホクトは、白砂サンが取り押さえている子供に気付き、あんぐりと口を開けた。
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結局、猫のことはその場で結論を出さないままとなったが、ミナミが部屋に戻ってきたので俺たちは|暇《いとま》をして、マンションを|後《あと》にした。
「話には聞いていたけど、スゴイ数の猫だったなぁ」
「あれが全部、ミナミの猫なわけではないよ」
「えっ、そうなの?」
「うむ。ミナミが協力しているNPOの団体があってな、引き取り手のない殺処分をされそうになった個体を保護しているのだ。あの部屋はボランティアで提供しているそうだ」
「ふうん……」
そんな非営利団体の運営なんて、失敬のカタマリみたいなミナミのイメージに全然合わないナ……と思ったが、イメージに合わないって言葉から、俺はマンションで見かけた子供のことを思い出した。
「そういえば、ミナミってシノさんに花束なんか送ってるクセに、子供いるんだね。ビックリしたよ」
「子供?」
白砂サンは訝しげに首を傾げた。
「うん、トイレ借りた時、廊下で鉢合わせしちゃった」
「ミナミに子供など、いないと思うが?」
「ええ? だって俺、ハッキリ見たよ? アレは幽霊とかじゃなくて、ちゃんと足もあった」
「だが、私は会ったことが無いし、ミナミから話を聞いたことも無い。侵入者では無いのかね?」
「あんなセキュリティの高いマンションに、無関係な子供が|入《ハイ》り込むのムリなんじゃない?」
「子供を侮ってはいけないよ、多聞君」
そりゃまぁ、子供ってのは大人の意表を突く行動を取るとは思うケドも、でも赤の他人があんなにソックリ顔なワケないだろう。
だが子供の顔を見ていない白砂サンは、侵入者の心配をして、ミナミに電話を掛けた。
ところが何度コールしても、ミナミが電話に出ないらしい。
「仕方ない、戻ろう」
侵入者なんて考えてもいなかった俺は、|踵《きびす》を返して坂を登る白砂サンの|後《あと》を追った。
バタバタと慌ただしくマンションに駆けつけて、先刻と同じ手順で中へ|入《ハイ》る。
「ミナミ、どこにいる?」
白砂サンはまずリビングに声を掛けたが、返事は無かった。
俺と白砂サンは|二手《ふたて》に分かれて部屋を順繰りに見て回ったが、ミナミはどこにもおらず、居るのは猫ばっかりだ。
すると廊下の向こうから鋭い命令口調と、どたばた走る音がした。
「君、待ちたまえっ!」
「|放《ハナ》せってば!」
甲高い子供の声がする|方《ほう》へ行くと、白砂サンが俺の見た子供を捕まえていた。
「君は此処で、何をしているのかね!」
子供にそんな詰問口調は逆効果なんじゃ……? と思ったけど、白砂サンは詰問口調のつもりも無いんだろう。
子供は白砂サンを睨みつけていて、返事をしない。
「どうしたんですか?」
声を掛けられて、俺が振り返ると、そこには、両手と両肩に10匹ぐらいの猫を抱えた、ホクトが立っていた。
一瞬ミナミかと思ったが、先刻と服装が違うのと、ミナミ独特のイヤな目つきをしていないので、ホクトだと解ったのだ。
「ホクト君こそ、どうしたの?」
「廊下に猫が居て、どうしたのかと思ったら、南の部屋の扉に猫のおもちゃが挟まって開いていて、そこから猫が出てきていたので……。どうかしたんですか?」
そこまで言ったところでホクトは、白砂サンが取り押さえている子供に気付き、あんぐりと口を開けた。