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9.猫耳コスプレ

ー/ー



 次の店休日の朝、冷蔵庫を開けたら何にも(ハイ)ってなかった。
 メゾンに引っ越して来て以来、ほぼ毎食シノさんのところで食べていて、自室の冷蔵庫になまじな食材……食パンとか牛乳程度のものでも、入れておくと手を付けないまま駄目にしてしまうことが続いていた。
 その結果、買い物を控えるようになってて、ビールすら(ハイ)ってない冷蔵庫を眺めて、もう部屋に冷蔵庫を置くのを()めた(ほう)が良いんじゃないかって気分にもなって、俺は諦めてシノさんのペントハウスに向かった。

「こんな格好で出掛けるんですか?」

 ペントハウスの玄関を開けると、なにやら困惑した感じの敬一クンの声がした。

「装飾パーツを外して、このセパレートスーツだけにすればタイトになる。上からシャツとズボンを身に付けられる。大丈夫だ」
「向こうで着替える……って選択肢は?」
「現地の更衣室は混雑する。使用すると時間が掛り、イベントを楽しむ時間が減ってしまうから、その選択肢は無い」

 白砂サンの声もするな〜と思いながらリビングに(ハイ)ると、最近ではすっかり大活躍しているグリーンの応接セット(ふう)ソファのところに、おかしな格好をした白砂サンと敬一クンがいた。

 敬一クンは黒っぽい、白砂サンは白っぽい、と色味は違うが同じデザインのシャツとパンツを着ている。
 しかもパンツは太腿丸出しのショート丈だし、シャツはタンクトップというかホルターネックのショート丈で、シャツと言うよりほぼ胸当てだ。
 ゆえに、白砂サンの真っ白なおなかと、敬一クンの引き締まった腹筋が、丸見えになっている。
 生地は短く細かい起毛素材で、変にツヤがある上に、かなりストレッチが効いているらしく、体にピッタリフィットしてるから、敬一クンの立派な胸筋や背筋がハダカみたいにはっきり見えた。
 あんまり見事な体型なので、履いてるのが短パンでなくビキニパンツとかブーメランパンツだったら、海外ドラマの男性ストリッパーにソックリというエロすぎる衣装だ。

 だが、その基本の水着みたいなところ、白砂サンが次々に取り出す金属のように見えるが、装着する時の音はもっと柔らかい材質の何か……で作られた、防具のようなものを取り付けていく。
 俺の乏しい知識から最初に思い出されたのは、ドラクエ3の女戦士だったが、肩パットじゃなくて黒マントを羽織っていて、腰にサッシュベルトみたいな剣帯を付け、そこに剣を下げさせた。
 長手袋に長ブーツも身に着けているが、それらにはところどころにファーがついていて、とどめは被っている鍔広帽にぴょこんとたっている猫耳だ。
 なんというか、猫の怪傑ゾロみたいに見える。

「どうしたの、その格好?」
「おはようございます、多聞さん」

 振り返った敬一クンは、いつもと同じように俺に挨拶をした。

「休みなのに、早いじゃん」

 お気に入りのカウチ部分にあぐらをかいて座っているシノさんは、仮装はしておらず、いつものだらけた室内着だ。

「冷蔵庫がカラッポだったんだよ」

 俺の返事に、シノさんは右手でクイッとキッチンを示した。

「セイちゃん特製のミートパイあるぜ」

 俺が皿に乗せたパイとサーバーに残ってたコーヒーを両手に戻ってきた時も、白砂サンはまだ敬一クンの周りをグルグルしながら、衣装のチェックをしていた。

「そんで、その格好なんなの?」
「セイちゃんはこれから、コスプレイベントに出掛けるんヨ。ケイちゃんをお供にしてナ」
「コスプレ? じゃあそれってアニメかなんかの衣装?」
「うむ、私が今ハマッているソシャゲのキャラだよ。敬一は黒猫騎士(ブラックニャイト)のノワールで、私は白猫騎士(ホワイトニャイト)のブランだ」
「ああ、猫騎士(ニャイト)でGOとかいう?」
「そうだ」

 確か全年齢向けのゲームって聞いてた気がするんだけど、そんなフェロモンダダ漏れみたいなコスだったの? と思ったが。
 考えてみたら元は多分、二足歩行の猫が着ている服だから、元キャラのヘソは毛皮に覆われて見えなくなり、エロのカケラも無いのだろう。
 じゃあなんで着ぐるみにしないの? とちょびっとだけ思ったけど、白砂サンも敬一クンも似合ってたので、ツッコミはしなかった。

「お出掛け(まえ)の、最終チェックをしてんだよ。で、俺はオモロイから、見物」
「なるほどね。車で行くの?」
「いや、移動は地下鉄を予定している。駐車場を探すのが手間なのでな」
「車だったら、そのままで出掛けられたのにね」
「車でもこの格好のままじゃ出掛けられません、近所の人に見られたら恥ずかしいです」
「そうかなー、可愛いじゃない」

 他人事なので俺が気軽に言うと、さすがの敬一クンも、ちょっと顔を赤らめた。

「もう可愛いって年齢じゃないです」
「うむ、大丈夫だな。では、小物を外すので、衣装の上に服を着たまえ」

 ちょっと大きめのアタッシュケースに、猫耳カチューシャだのファー付き手袋だのを、白砂サンは手際よく収納した。
 チラッと見えたケースの中には、メイク道具なんかがキッチリ詰まっている。

「では、()ってくる」
「おう、いってら〜」

 アタッシュケースを抱えた白砂サンは、敬一クンと一緒に出掛けて()った。


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次のエピソードへ進む 10.シノさんのお誘い


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 次の店休日の朝、冷蔵庫を開けたら何にも|入《ハイ》ってなかった。
 メゾンに引っ越して来て以来、ほぼ毎食シノさんのところで食べていて、自室の冷蔵庫になまじな食材……食パンとか牛乳程度のものでも、入れておくと手を付けないまま駄目にしてしまうことが続いていた。
 その結果、買い物を控えるようになってて、ビールすら|入《ハイ》ってない冷蔵庫を眺めて、もう部屋に冷蔵庫を置くのを|止《や》めた|方《ほう》が良いんじゃないかって気分にもなって、俺は諦めてシノさんのペントハウスに向かった。
「こんな格好で出掛けるんですか?」
 ペントハウスの玄関を開けると、なにやら困惑した感じの敬一クンの声がした。
「装飾パーツを外して、このセパレートスーツだけにすればタイトになる。上からシャツとズボンを身に付けられる。大丈夫だ」
「向こうで着替える……って選択肢は?」
「現地の更衣室は混雑する。使用すると時間が掛り、イベントを楽しむ時間が減ってしまうから、その選択肢は無い」
 白砂サンの声もするな〜と思いながらリビングに|入《ハイ》ると、最近ではすっかり大活躍しているグリーンの応接セット|風《ふう》ソファのところに、おかしな格好をした白砂サンと敬一クンがいた。
 敬一クンは黒っぽい、白砂サンは白っぽい、と色味は違うが同じデザインのシャツとパンツを着ている。
 しかもパンツは太腿丸出しのショート丈だし、シャツはタンクトップというかホルターネックのショート丈で、シャツと言うよりほぼ胸当てだ。
 ゆえに、白砂サンの真っ白なおなかと、敬一クンの引き締まった腹筋が、丸見えになっている。
 生地は短く細かい起毛素材で、変にツヤがある上に、かなりストレッチが効いているらしく、体にピッタリフィットしてるから、敬一クンの立派な胸筋や背筋がハダカみたいにはっきり見えた。
 あんまり見事な体型なので、履いてるのが短パンでなくビキニパンツとかブーメランパンツだったら、海外ドラマの男性ストリッパーにソックリというエロすぎる衣装だ。
 だが、その基本の水着みたいなところ、白砂サンが次々に取り出す金属のように見えるが、装着する時の音はもっと柔らかい材質の何か……で作られた、防具のようなものを取り付けていく。
 俺の乏しい知識から最初に思い出されたのは、ドラクエ3の女戦士だったが、肩パットじゃなくて黒マントを羽織っていて、腰にサッシュベルトみたいな剣帯を付け、そこに剣を下げさせた。
 長手袋に長ブーツも身に着けているが、それらにはところどころにファーがついていて、とどめは被っている鍔広帽にぴょこんとたっている猫耳だ。
 なんというか、猫の怪傑ゾロみたいに見える。
「どうしたの、その格好?」
「おはようございます、多聞さん」
 振り返った敬一クンは、いつもと同じように俺に挨拶をした。
「休みなのに、早いじゃん」
 お気に入りのカウチ部分にあぐらをかいて座っているシノさんは、仮装はしておらず、いつものだらけた室内着だ。
「冷蔵庫がカラッポだったんだよ」
 俺の返事に、シノさんは右手でクイッとキッチンを示した。
「セイちゃん特製のミートパイあるぜ」
 俺が皿に乗せたパイとサーバーに残ってたコーヒーを両手に戻ってきた時も、白砂サンはまだ敬一クンの周りをグルグルしながら、衣装のチェックをしていた。
「そんで、その格好なんなの?」
「セイちゃんはこれから、コスプレイベントに出掛けるんヨ。ケイちゃんをお供にしてナ」
「コスプレ? じゃあそれってアニメかなんかの衣装?」
「うむ、私が今ハマッているソシャゲのキャラだよ。敬一は|黒猫騎士《ブラックニャイト》のノワールで、私は|白猫騎士《ホワイトニャイト》のブランだ」
「ああ、|猫騎士《ニャイト》でGOとかいう?」
「そうだ」
 確か全年齢向けのゲームって聞いてた気がするんだけど、そんなフェロモンダダ漏れみたいなコスだったの? と思ったが。
 考えてみたら元は多分、二足歩行の猫が着ている服だから、元キャラのヘソは毛皮に覆われて見えなくなり、エロのカケラも無いのだろう。
 じゃあなんで着ぐるみにしないの? とちょびっとだけ思ったけど、白砂サンも敬一クンも似合ってたので、ツッコミはしなかった。
「お出掛け|前《まえ》の、最終チェックをしてんだよ。で、俺はオモロイから、見物」
「なるほどね。車で行くの?」
「いや、移動は地下鉄を予定している。駐車場を探すのが手間なのでな」
「車だったら、そのままで出掛けられたのにね」
「車でもこの格好のままじゃ出掛けられません、近所の人に見られたら恥ずかしいです」
「そうかなー、可愛いじゃない」
 他人事なので俺が気軽に言うと、さすがの敬一クンも、ちょっと顔を赤らめた。
「もう可愛いって年齢じゃないです」
「うむ、大丈夫だな。では、小物を外すので、衣装の上に服を着たまえ」
 ちょっと大きめのアタッシュケースに、猫耳カチューシャだのファー付き手袋だのを、白砂サンは手際よく収納した。
 チラッと見えたケースの中には、メイク道具なんかがキッチリ詰まっている。
「では、|行《い》ってくる」
「おう、いってら〜」
 アタッシュケースを抱えた白砂サンは、敬一クンと一緒に出掛けて|行《い》った。