『ボイスレコーダー!』舞羽に言われたことを思い出す。しかし都合よくそんなものなんて、持っていない。
全力疾走したかのように、急に鼓動が早まり、息が浅くなる。顔も熱い、こめかみの辺りから熱が放出されているようだ。
体育館組の部員が体育館へと向かう姿が視界に入り込む。向こうからは見えないだろうが、桜の木に寄るように体を体育館の陰へと滑り込ませる。
(あなた……ちょっと……早く、何か言ってよ~)
この酸素の薄い空間に、もう舞香は耐えられない。舞羽の告白シーンを何回か聞いていた舞香は、これが告白だと閃いた瞬間に、それらの情報に基づくイメージが脳裏に浮かんでいた。
彼が決意し、やっと顔を上げ、舞香を見つめる。深呼吸のように息を深く吐いた後、勢いよく吸い込んだ空気と共に言葉を吐き出……せずボソッと呟いた。
「俺と……付き合ってくんね?」 「ごめんなさい!」
舞香は言い終わるとほぼ同時に断った。『内気な自分は、間を置いたら呑まれる』さっきの間で、そうシミュレーションできていた。
そして頭を下げて立ち去る、その背中に……。
「何だ、舞羽より簡単かと思ったのに」
同じ顔なら、モテる舞羽より付き合い易い、お手軽感があったのだろう。彼の言葉が突き刺さった。
舞香は録音なんてしてなくて良かったと心の中で呟くのだった。