舞香も一度だけ告白を受けたことがある。中学二年生になって、五月の体育祭の準備をしている頃だった。
放課後、部活に行く前、男の子たちに体育館横の桜の木の下に寄るように告げられた。
不安になって美都に相談すると、いつもなら『仕方ないなぁ~一緒に行ってあげるよ』と言うはずの美都が、『大丈夫だから舞香、一人でいってらっしゃ~い』と意味深な笑みを浮かべただけで、突き放されてしまう。
帰りのホームルームが終わると、重い足取りで体育館へと向かう。誰もいない……仕方なく桜の木の下に入って待つ。
暫く黙って桜の木を見ていると、桜の木には大きな毛虫が沢山這っている。
「きゃっ」と、短く驚いたのをきっかけに、その場を去ろうとしたところで男子が一人、舞香の元へやって来た。
多分、舞羽のクラスの男子だったと記憶を探る。
「ご、ごめん……待たせたな……」
一瞬だけ目を合わせた彼は、桜の木の根元辺りで視線があっちこっちに泳いでいる。
「あ、うん……大丈夫……」
舞香は返事を返すと、突然に閃いた。『これは告白?』彼にもう一度視線を置く。落ち着かないように、右足から左足、左足から右足へと重心をずらしている。左手はポケットに突っこんだまま、右手は頭の後ろをひっきりなしに搔いている。