二人は中学校に進学していた。中高大と最大10年間所属できる馬術部を持つ名門、江南大付属中学。
「舞羽、舞香おはよう」
「……おはよう」 「おはよう、美都」
セーラ服をひらめかせて、後ろから二人に追い付いたのは
常盤美都。中学生になって、同じ馬術部で出会った親友だ。
「もうすぐ卒業だね……」
「ま、卒業って言っても校舎の場所が変わるだけで、代り映えしないけどね」
「……そうね」
感慨深く中等部の校舎を見つめる美都に、応える舞香。舞羽も下を向いていた目線を上げて曇り空を仰ぐと、少し冷たい風が通り抜ける。中等部の校舎は風に揺れているように儚く感じた。
「高等部に上がったら、他の中学の人も少しは入ってくるんだよね?」
「……そうだね、楽しみだね」
ふわりとスカートを、その遠心力で巻き上げながら高等部の方を振り返る舞香。見上げた舞羽と入れ替わるように視線を落とした美都、力なく応える。
それを気遣うように笑顔をぶつけて、舞羽は声のトーンを上げた。
「馬術部に入ってくれる人、いるかな……」
「……」 「……」
二人が返事をしないのは、無視しているからではない。三人ともそれを分かっている。舞羽の言葉に
応えたのは、同じ様に声のトーンを上げた舞香の言葉だった。
「美都、続けるんでしょ? 馬術」
「……うん……そうしようと……そうしたいと思ってる……」
「当たり前でしょ?! やめるなんて許さない」
二人の前に一歩飛び出した舞羽は、舞香と同じように、くるりとスカートを舞わせて怒った振りをした。