乗馬は厩舎で遊ぶより楽しかった。徐々に跨る馬が大きくなるにつれ、馬上からの視界が変わっていく……目線の高さの分だけ世界は広がりを見せ、開けた展望の分だけ未来は無限の可能性を示した。
「舞羽待ってよ~」
「え~、だって遅いんだもん舞香」
馬の呼吸や体温が自分に伝わってくる。自動車では味わえない不思議な一体感。自転車とは違う風の感覚。
舞羽は馬に『意志』を伝えるのではなく、馬の『意思』を受け止めているようなコミュニケーション、幼くして正に人馬一体といえた。
決して舞香が下手なわけではない。まだまだ馬に乗せられている感は否めないが、馬を愉しんでいる。
「やっと追い付いたぁぁ」
「ふふ……じゃあ行くよ!」
「えぇぇ、もう~?!」
舞羽から見て、馬も舞香を許している。少し疲れた顔をしている舞香を見て微笑んだ舞羽は、馬の胴を足で叩くことなく馬が駈歩で進みだす。返したはずの微笑みを躱された舞香は、慌ててお願いをする。
「行って! ね、追いかけて」
馬は『ピンッ』と耳を立てて、舞香の言葉を聞いたようだ。
姉妹が馬を並べて歩む姿は、いつも馬場を色鮮やかに華やかせるのだった。