6話 双子宮
ー/ー
ミュンティンのおかげで双子宮へ向かえる。双子宮は都から少し離れた場所にある。
確か、南東あたりの魔の森を抜けた先だったかな。
南東の魔の森は少し薄暗いからか他の地方よりも魔物の出現率が高いんだよね。
僕は魔物が出ようが出まいが関係ないんだけど。
少し急いでいるから、魔の森を抜けて双子宮まで着くのに三十分くらい。転移魔法を使わずに魔の森を抜ける事なんてなかったけど、意外と広かったんだ。
魔の森を抜けてすぐに人も魔物も寄せ付けない大きな門がある。この門が魔の森から出てきた魔物の侵入を阻んでいるんだろう。
「エレなの……みゅ? しゃ……ぴゅぅ……みゅぅ」
僕のお姫様がお出迎えしてくれた。でも、門は開けてくれない。
悲しそうに俯いている。
「フォルからもらった大事な指輪売られちゃったから、エレはフォルと一緒だめなの……みゅぅ」
「売られた? 」
「みゅぅ。ここの家具も全部前にいた侍女さんが売ったの……だから、フォル入れない」
それであの威嚇か。それに、主様が僕に頼んだのは、この子から頼まれたわけじゃなく、全部売られたというのを知っていたからか。
その侍女については主様がちゃんと対応してくれているだろうから任せておこう。
それより、この悲しんでいるお姫様を慰めるとこから始めないと。
「僕は君が僕があげた安物の指輪でそこまで悲しんでくれるだけで嬉しいよ。それだけ大事にしてくれていたんだ。指輪はまた買ってあげる。今度はちゃんとした婚約指輪」
「……やなの。結婚指輪欲しいの」
あまり変わらないよ。
僕を入れない理由がなくなったのか、門を開けに行ってくれている。
開閉レバーが外にあるみたいでそこへ行って、一生懸命レバーを下げている。
でも、錆びていて硬いようで動いていない。
「ふんみゅぅぅぅ」
レバーに乗って下げようとしている。危ないからやめてほしいんだけど。
というか、ゼロはいないの? いつもエレ……僕のお姫様はもう一人の御巫候補のゼロと一緒にいるのに。
ゼロ呼べば済む話なのになんで自分でやってるんだろう。
「エレ、ゼロ呼んできな。待ってるから」
「やなの。ゼロにばれずにここまでがんばったんだから。フォルがいつくるか知るためにお花を渡すのまでがんばったんだから。たまにはゼロもびっくりしろなの」
双子姫としてここで生活していて何があったらそんな事を考えて意地になるんだか。
怪我する前にやめてほしいのにやめる気配がない。
「ふきゃん……ぴぇ……ふぇぇぇん」
落ちて泣き出した。
慰めに行ってやりたいけど、流石に身長の三倍はあろう高さの門を越えるには魔法使わないと。
……ここにはエレとゼロ以外いないのか。心配かける事になるかもしれないけど、あのまま泣かせておくよりはましか。
強化魔法を使って門を飛び越えてエレの側に行ってあげる。
でも、これだけじゃ泣き止まないから、優しく抱きしめてあげる。
「……ふにゅ……すやぁ」
「寝ないで」
「寝てないの。くんくんなの……フォル、今日はエレのお部屋でねむねむさんなの。お仕事明日から。おやすみ大事。エレはフォルと遊びたいの」
あの宮に行ってから都に行く事すらなく、何年もずっと遊んであげられていなかった。エレは一度も連絡をくれなかったけど、ずっと遊びたいのを我慢させていたのかな。
レバーから落ちた時に怪我はしていなかったみたいで、僕から離れてぴょんぴょんと跳ねている。これはエレが楽しい時にとる行動の一つ。
それにしても、急に休めなんて言うから久々なのに魔法使いまくっているのばれたかと思ったよ。
「むにゅぅ。そろそろゼロを呼ばないと拗ねられる気がするの。ゼロが拗ねるとエレと遊んでくれなくなるか……エレにはフォルがいるの……でも、ゼロもいないとなの。フォル、ゼロのところ行くの」
「うん。行くのは良いけど、危ないから走らないでよ」
エレはすぐに転ぶから。歩いているだけでも。走ると余計に転ぶ。
「なら、おてて繋ぐの。それならエレも転ばないの」
エレはそろそろ十六くらいにはなるはずだけど、魔法で見た目を幼くしているみたいで、見た目は五、六歳の子供にしか見えない。しかもエレは同年代よりも少し身長が低い。
手を繋ぐとなるとエレが大変そう。
あまり体力がない子だから抱っこして連れて行ってあげた方が良いかな。
僕がエレを抱っこしてあげると、嬉しそうに頬擦りをする。確か、これってエレの一番の愛情表現だった気がする。
「エレがエレのお部屋に案内するの。ゼロもエレのお部屋で一緒にいるから」
エレに案内してもらうかは置いておいて、とりあえず宮の中に入る。
外はエレとゼロが二人だけで管理できているからか、色とりどりで綺麗な花々が咲いていた。宮の中は埃っぽく、家具がほとんどない。
全部前にここにいた侍女が売ったとか言っていたからまだほとんど買えていないんだろう。
「けほっ」
エレは今日は休めって言うけど、埃だけは早めにどうにかしておくべきかな。エレが埃を吸って咳が出ているから。
あと、光魔法具の設置もしておかないと。それも売られているみたいで薄暗い。
子供二人だけの場所で生活に必要なものまで売っているとは。
中央区の軍部よりタチ悪いかも。
「……それ俺のエレなんだ。エレ俺のなんだ……キシャー!」
いやそうな青い瞳が僕に向けられる。
エレに着せられたのか、自分から着ているのか不明だけど、エレとお揃いの白いワンピースを着ている。僕が主宮にいた頃は男だからとか言っていやがっていたのに、エレのためならここまでするか。
というか、エレは僕があげた指輪の件があったから仕方ないとは思えないけど仕方ないって事にするとして、なんでゼロにまでこんな態度取られないとなの。
エレが一度僕を見ると、楽しそうにゼロを見て「べー」と言いながら舌を出している。
「それするのそっちだろ! 何年もほっといて、連絡魔法具持ってないのに帰ってきてくれなくて。俺らが会いたくなったら連絡するだろうとか思ってたとしてもそれやるのはそっちなんだ! 」
あー、うん。これは僕が悪いな。まさか連絡くれないのが連絡魔法具を持っていなかったからか。
あれまで売られたのかな。
ずっと寂しかったのか、ゼロがそう言った後、涙ぐんで僕に抱きついてきた。
こんなに寂しい思いをさせていた分、これからはちゃんと一緒にいてあげないと。
「……エレ、エレ語使え。俺にしか分からねぇように、結婚しましたって言え」
「ふにゃんみゅるみゅぬ」
エレの謎言語。言葉を覚えるのが遅かったエレが意思表示のために使っていたのが初めだったかな。言葉を覚えた今もずっとこんな調子で使っている。
僕らはエレが話せなくてもなんて言いたいのか分かるから、エレ語でも問題なく話せる。今回のようにゼロに強制されて全部丸聞こえの時もあるけど。
エレは言ってやりましたみたいな顔でゼロを見ている。ゼロも良く言ったみたいな顔でエレを見ている。
「ゼロ、エレのお部屋へいくの」
「エレ、ゼロ、じゃなかった。俺の部屋に行くんだ」
エレの部屋で一緒にとか言っていたけど、一つに部屋を一緒に使っているのか。だとしても、なんで互いに自分の部屋だと主張しているのかは不明だけど。
喧嘩になる前に止めた方が良いかな。喧嘩すると二人して泣きまくりそうだから。
「二人共同じゃだめなの? 」
「だめなの。エレのお部屋でゼロとフォルと一緒に……ふにゅ……別に良いのかも」
解決してくれた。
ゼロが両手を広げて僕を見てる。それにエレが気づいたのか声に出さずに威嚇している。
エレをこっちによこせって事かな。
何も言わないからほっといてエレとゼロの部屋に行くか。
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魔の森を抜けてすぐに人も魔物も寄せ付けない大きな門がある。この門が魔の森から出てきた魔物の侵入を阻んでいるんだろう。
「エレなの……みゅ? しゃ……ぴゅぅ……みゅぅ」
僕のお姫様がお出迎えしてくれた。でも、門は開けてくれない。
悲しそうに俯いている。
「フォルからもらった大事な指輪売られちゃったから、エレはフォルと一緒だめなの……みゅぅ」
「売られた? 」
「みゅぅ。ここの家具も全部前にいた侍女さんが売ったの……だから、フォル入れない」
それであの威嚇か。それに、主様が僕に頼んだのは、この子から頼まれたわけじゃなく、全部売られたというのを知っていたからか。
その侍女については主様がちゃんと対応してくれているだろうから任せておこう。
それより、この悲しんでいるお姫様を慰めるとこから始めないと。
「僕は君が僕があげた安物の指輪でそこまで悲しんでくれるだけで嬉しいよ。それだけ大事にしてくれていたんだ。指輪はまた買ってあげる。今度はちゃんとした婚約指輪」
「……やなの。結婚指輪欲しいの」
あまり変わらないよ。
僕を入れない理由がなくなったのか、門を開けに行ってくれている。
開閉レバーが外にあるみたいでそこへ行って、一生懸命レバーを下げている。
でも、錆びていて硬いようで動いていない。
「ふんみゅぅぅぅ」
レバーに乗って下げようとしている。危ないからやめてほしいんだけど。
というか、ゼロはいないの? いつもエレ……僕のお姫様はもう一人の御巫候補のゼロと一緒にいるのに。
ゼロ呼べば済む話なのになんで自分でやってるんだろう。
「エレ、ゼロ呼んできな。待ってるから」
「やなの。ゼロにばれずにここまでがんばったんだから。フォルがいつくるか知るためにお花を渡すのまでがんばったんだから。たまにはゼロもびっくりしろなの」
双子姫としてここで生活していて何があったらそんな事を考えて意地になるんだか。
怪我する前にやめてほしいのにやめる気配がない。
「ふきゃん……ぴぇ……ふぇぇぇん」
落ちて泣き出した。
慰めに行ってやりたいけど、流石に身長の三倍はあろう高さの門を越えるには魔法使わないと。
……ここにはエレとゼロ以外いないのか。心配かける事になるかもしれないけど、あのまま泣かせておくよりはましか。
強化魔法を使って門を飛び越えてエレの側に行ってあげる。
でも、これだけじゃ泣き止まないから、優しく抱きしめてあげる。
「……ふにゅ……すやぁ」
「寝ないで」
「寝てないの。くんくんなの……フォル、今日はエレのお部屋でねむねむさんなの。お仕事明日から。おやすみ大事。エレはフォルと遊びたいの」
あの宮に行ってから都に行く事すらなく、何年もずっと遊んであげられていなかった。エレは一度も連絡をくれなかったけど、ずっと遊びたいのを我慢させていたのかな。
レバーから落ちた時に怪我はしていなかったみたいで、僕から離れてぴょんぴょんと跳ねている。これはエレが楽しい時にとる行動の一つ。
それにしても、急に休めなんて言うから久々なのに魔法使いまくっているのばれたかと思ったよ。
「むにゅぅ。そろそろゼロを呼ばないと拗ねられる気がするの。ゼロが拗ねるとエレと遊んでくれなくなるか……エレにはフォルがいるの……でも、ゼロもいないとなの。フォル、ゼロのところ行くの」
「うん。行くのは良いけど、危ないから走らないでよ」
エレはすぐに転ぶから。歩いているだけでも。走ると余計に転ぶ。
「なら、おてて繋ぐの。それならエレも転ばないの」
エレはそろそろ十六くらいにはなるはずだけど、魔法で見た目を幼くしているみたいで、見た目は五、六歳の子供にしか見えない。しかもエレは同年代よりも少し身長が低い。
手を繋ぐとなるとエレが大変そう。
あまり体力がない子だから抱っこして連れて行ってあげた方が良いかな。
僕がエレを抱っこしてあげると、嬉しそうに頬擦りをする。確か、これってエレの一番の愛情表現だった気がする。
「エレがエレのお部屋に案内するの。ゼロもエレのお部屋で一緒にいるから」
エレに案内してもらうかは置いておいて、とりあえず宮の中に入る。
外はエレとゼロが二人だけで管理できているからか、色とりどりで綺麗な花々が咲いていた。宮の中は埃っぽく、家具がほとんどない。
全部前にここにいた侍女が売ったとか言っていたからまだほとんど買えていないんだろう。
「けほっ」
エレは今日は休めって言うけど、埃だけは早めにどうにかしておくべきかな。エレが埃を吸って咳が出ているから。
あと、光魔法具の設置もしておかないと。それも売られているみたいで薄暗い。
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中央区の軍部よりタチ悪いかも。
「……それ俺のエレなんだ。エレ俺のなんだ……キシャー!」
いやそうな青い瞳が僕に向けられる。
エレに着せられたのか、自分から着ているのか不明だけど、エレとお揃いの白いワンピースを着ている。僕が主宮にいた頃は男だからとか言っていやがっていたのに、エレのためならここまでするか。
というか、エレは僕があげた指輪の件があったから仕方ないとは思えないけど仕方ないって事にするとして、なんでゼロにまでこんな態度取られないとなの。
エレが一度僕を見ると、楽しそうにゼロを見て「べー」と言いながら舌を出している。
「それするのそっちだろ! 何年もほっといて、連絡魔法具持ってないのに帰ってきてくれなくて。俺らが会いたくなったら連絡するだろうとか思ってたとしてもそれやるのはそっちなんだ! 」
あー、うん。これは僕が悪いな。まさか連絡くれないのが連絡魔法具を持っていなかったからか。
あれまで売られたのかな。
ずっと寂しかったのか、ゼロがそう言った後、涙ぐんで僕に抱きついてきた。
こんなに寂しい思いをさせていた分、これからはちゃんと一緒にいてあげないと。
「……エレ、エレ語使え。俺にしか分からねぇように、結婚しましたって言え」
「ふにゃんみゅるみゅぬ」
エレの謎言語。言葉を覚えるのが遅かったエレが意思表示のために使っていたのが初めだったかな。言葉を覚えた今もずっとこんな調子で使っている。
僕らはエレが話せなくてもなんて言いたいのか分かるから、エレ語でも問題なく話せる。今回のようにゼロに強制されて全部丸聞こえの時もあるけど。
エレは言ってやりましたみたいな顔でゼロを見ている。ゼロも良く言ったみたいな顔でエレを見ている。
「ゼロ、エレのお部屋へいくの」
「エレ、ゼロ、じゃなかった。俺の部屋に行くんだ」
エレの部屋で一緒にとか言っていたけど、一つに部屋を一緒に使っているのか。だとしても、なんで互いに自分の部屋だと主張しているのかは不明だけど。
喧嘩になる前に止めた方が良いかな。喧嘩すると二人して泣きまくりそうだから。
「二人共同じゃだめなの? 」
「だめなの。エレのお部屋でゼロとフォルと一緒に……ふにゅ……別に良いのかも」
解決してくれた。
ゼロが両手を広げて僕を見てる。それにエレが気づいたのか声に出さずに威嚇している。
エレをこっちによこせって事かな。
何も言わないからほっといてエレとゼロの部屋に行くか。