@ 28話 マフラー
ー/ー
「宮東、君の見立ては正しい。恐らく要因はミッドライフ・クライシス、それだろう」
蓮水は即答だった。その言葉で表情を明るくした真一に蓮水は言葉を続けた。天恵との話の途中、真一は蓮水に呼び出された。真一への着信の主は蓮水だったのだ。
本来の蓮水の要件は、先日の盗撮投稿の件だ。
「こいつがストーカーの犯人でまず間違えないだろうさ。ベンチで座っている僕たちを撮ったのもコイツだった」
それは暮田だ。
「僕は12/25、ボナペティで奴を見ているのさ。君たち2人が入店した後表れ、月下が先に帰ったら奴の姿が見えなくなった」
「あのとき店の外まで送って行ったのは、それを確認するため?」
「それ以外何があるっていうのさ?」
「あ、いや、その……」
「ははぁん、宮東。君も月下も暮田と同じくドラマかぶれの恋愛を楽しんでるようだね」
その言い方に少しばかりカチンときた真一。言葉に感情を乗せる。
「どういう意味だよ!」
「ははは、図星だな宮東。推理するに君の着信音は『ピタゴラスイッチ』。そしてどういうわけかそれを月下に隠している。だからつまりその着信音は月下以外の女性が絡んでいる」
「な、なんで……??」
「簡単さ。一つは暮田が写真を撮ったあの時刻、後ろに君が写り込んでいて、そのとき『ピタゴラスイッチ』の着信音を僕は聞いている。そして月下がそれに気を取られたのも感付いている」
「…………」
怒りの感情は驚きの感情にあっさり負ける。
「更に昨日君は好きな人と会っていた。にも拘らず僕の着信に2コール目には受話している。それは急いで出たことを意味する。なぜ? それは月下に聞かれたくないため。着信音なんぞに無頓着な君がそうなる理由は他の女性が紛れ込んでいる以外答えはない」
「なんで……?」
「なんで? ……その答えは『君が月下を好きだから』以外の答えが必要なのかい?」
「蓮水だって天恵のことが好きなんじゃないのか?」
真一は勢いで言ってしまった。後悔の念が過る。
「僕かい? 僕はもう月下のことは何とも思っていないさ」
「何かあったのか?」
蓮水の答えに思い切って言葉が飛び出る。
「性格の不一致さ」
「は?」
「彼女は雨が好きなんだ……で僕は雨が嫌い……そんなところさ」
そう言って蓮水は少し昔話をした。それは真一には今まで触ることができなかった蓮水の過去……。
真一は、これを以って蓮水が天恵にもう、恋愛感情を抱えていないことに安堵した。しかしその安堵は蓮水の次の言葉によって打ち消された。
「ところで宮東。まさかとは思うが、その恋愛話は僕の推理より先があるのかい?」
「どういうことだ?」
「僕の話はまだ続きがあるってことさ」
「先も何も……俺は蓮水の提案通りアナグラム入りのパズルを天恵に渡そうと思っているけど?」
「……そうか。では僕の勘違いかな?!」
「良く分からないけど、この話には続きはない」
これ以上蓮水に言い当てられたくない真一は打ち切った。
「分かった……では宮東。ミッドライフ・クライシスの根本はそれだとして、離婚問題の原因とされてしまった月下に対してどうするつもりなんだい? まさか君の口からそのまま伝えるわけにもいくまい?」
蓮水の言葉でハッとする真一。思い出す……天恵を。
「……もしかして、天恵はもう知ってるかも?!」
「どういうことだい?」
「トレードマークのマフラーをしていなかったんだ。お母さんの形見であるマフラー……」
真一は最近の出来事を蓮水に話す。
「なるほど。僕が見たマフラーはやはり月下のマフラーで間違いなかったわけか」
「どういうことだ?」
「さっきの恋愛話の続きはこれに繋がるってことさ。知っての通り僕は毎朝ジョギングを行っている」
「……知らないけどな」
「通称アンダーパス通りの並木に見覚えのあるマフラーが結ばれていたからさ。その事象は今朝のことだ。君とのことで月下がマフラーをどうこうするって言うのはおかしいから、違うとは思っていはいたが……」
蓮水は一体どこまで街の情報を持っているのであろうか? 言葉が見つからない。
「……つまりホテルの絵葉書をご両親がそれぞれ相手の葉書を見てしまい、同じパズルを行っていることに気付いた。パズルの送り主が月下だと分かってしまい……お義母さんはお母さんの話に言及してしまった……」
「だから天恵は摩己さんを彷彿させるマフラーをしなくなった……」
「宮東。そんなことをして、月下のお義母さんが喜ぶと思うかい?」
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蓮水は即答だった。その言葉で表情を明るくした真一に蓮水は言葉を続けた。天恵との話の途中、真一は蓮水に呼び出された。真一への着信の主は蓮水だったのだ。
本来の蓮水の要件は、先日の盗撮投稿の件だ。
「こいつがストーカーの犯人でまず間違えないだろうさ。ベンチで座っている僕たちを撮ったのもコイツだった」
それは暮田だ。
「僕は12/25、ボナペティで奴を見ているのさ。君たち2人が入店した後表れ、月下が先に帰ったら奴の姿が見えなくなった」
「あのとき店の外まで送って行ったのは、それを確認するため?」
「それ以外何があるっていうのさ?」
「あ、いや、その……」
「ははぁん、宮東。君も月下も暮田と同じくドラマかぶれの恋愛を楽しんでるようだね」
その言い方に少しばかりカチンときた真一。言葉に感情を乗せる。
「どういう意味だよ!」
「ははは、図星だな宮東。推理するに君の着信音は『ピタゴラスイッチ』。そしてどういうわけかそれを月下に隠している。だからつまりその着信音は月下以外の女性が絡んでいる」
「な、なんで……??」
「簡単さ。一つは暮田が写真を撮ったあの時刻、後ろに君が写り込んでいて、そのとき『ピタゴラスイッチ』の着信音を僕は聞いている。そして月下がそれに気を取られたのも感付いている」
「…………」
怒りの感情は驚きの感情にあっさり負ける。
「更に昨日君は|好きな人《月下》と会っていた。にも拘らず僕の着信に2コール目には受話している。それは急いで出たことを意味する。なぜ? それは月下に聞かれたくないため。着信音なんぞに無頓着な君がそうなる理由は他の女性が紛れ込んでいる以外答えはない」
「なんで……?」
「なんで? ……その答えは『君が月下を好きだから』以外の答えが必要なのかい?」
「蓮水だって天恵のことが好きなんじゃないのか?」
真一は勢いで言ってしまった。後悔の念が過る。
「僕かい? 僕はもう月下のことは何とも思っていないさ」
「何かあったのか?」
蓮水の答えに思い切って言葉が飛び出る。
「性格の不一致さ」
「は?」
「彼女は雨が好きなんだ……で僕は雨が嫌い……そんなところさ」
そう言って蓮水は少し昔話をした。それは真一には今まで触ることができなかった蓮水の過去……。
真一は、これを以って蓮水が天恵にもう、恋愛感情を抱えていないことに安堵した。しかしその安堵は蓮水の次の言葉によって打ち消された。
「ところで宮東。まさかとは思うが、その恋愛話は僕の推理より先があるのかい?」
「どういうことだ?」
「僕の話はまだ続きがあるってことさ」
「先も何も……俺は蓮水の提案通りアナグラム入りのパズルを天恵に渡そうと思っているけど?」
「……そうか。では僕の勘違いかな?!」
「良く分からないけど、この話には続きはない」
これ以上蓮水に言い当てられたくない真一は打ち切った。
「分かった……では宮東。ミッドライフ・クライシスの根本はそれだとして、離婚問題の原因とされてしまった月下に対してどうするつもりなんだい? まさか君の口からそのまま伝えるわけにもいくまい?」
蓮水の言葉でハッとする真一。思い出す……天恵を。
「……もしかして、天恵はもう知ってるかも?!」
「どういうことだい?」
「トレードマークのマフラーをしていなかったんだ。お母さんの形見であるマフラー……」
真一は最近の出来事を蓮水に話す。
「なるほど。僕が見たマフラーはやはり月下のマフラーで間違いなかったわけか」
「どういうことだ?」
「さっきの恋愛話の続きはこれに繋がるってことさ。知っての通り僕は毎朝ジョギングを行っている」
「……知らないけどな」
「通称アンダーパス通りの並木に見覚えのあるマフラーが結ばれていたからさ。その事象は今朝のことだ。君とのことで月下がマフラーをどうこうするって言うのはおかしいから、違うとは思っていはいたが……」
蓮水は一体どこまで街の情報を持っているのであろうか? 言葉が見つからない。
「……つまりホテルの絵葉書をご両親がそれぞれ相手の葉書を見てしまい、同じパズルを行っていることに気付いた。パズルの送り主が月下だと分かってしまい……|お義母《灯》さんは|お母《摩己》さんの話に言及してしまった……」
「だから天恵は摩己さんを彷彿させるマフラーをしなくなった……」
「宮東。そんなことをして、月下のお義母さんが喜ぶと思うかい?」