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@ 27話

ー/ー





「天恵ちゃんが摩己さんに似すぎていてコワくなることがある。あのマフラーをして自転車に乗る天恵ちゃんを初めて見たとき、高校時代に戻った錯覚さえした」


「灯……」


 灯の不安をまだ理解し得ない明はただ、灯の次の言葉を待つしかできない。


 


「輝希も天恵ちゃんを慕っている、ひょっとしたら私よりもって……」


 ここでようやく何となく先が見えた明、灯の肩に手を掛ける。


 


 摩己のこともあったわけで、灯との結婚の際、明は母親に別居の条件を突き付けた。それが明の母親のお門違いの恨みを買ったことになってしまい、灯に当て付けがましく天恵を可愛がる……四面楚歌に思えた。


 


「情けないけれど私、天恵ちゃんにに嫉妬している。摩己さんへの劣等感? 分からない……だけど何となく居場所がないのよ! 私は一体何者なの?!」


 明には灯の言葉が良く分かる、『自分が一体何者なのか?』それは明だって同様に感じているからだ。


 きっと灯は、高校時代華々しかった憧れの明が今、守ってばかりいて魅力がない男に見えているのだろう。そう思ってしまうと、灯を励ます手段が見当たらない。


 何かを変えるために『離婚』は必要なのだろう。明の頭が灯の言葉からそう理解したのなら、明には自信が持てないまま……そう、高校時代に失った自信は取り戻せないまま。


 


 無言の刻は明にプレッシャーを与え続ける。天恵は音を立てずに布団に入った。


 


◆◇◆◇


 


「行ってきます!」


 ホテルのランチから一夜明け、そう言って自転車に跨る天恵の首にはあの、トレードマークのマフラーは巻かれていなかった。


 


「珍しく今日はいつものマフラーしてないんだね?」


「う……ん……そうね……」


 歯切れの悪い言葉と共に、例の人差し指を唇に当てると、そのまま天恵は黙り込んだ。


 そんな天恵を真一の目はジッと観察している。真一は何を思ったであろうか?


 


「天恵……この間、蓮水と何を話してたんだい? ほら、12/26アンダーパス通りのベンチで見かけたから」


「え?!」


 突拍子もない真一の言葉に思わず真一の目を見る。同時に真一は、天恵の態度は話が逸れたことによる安堵の方が大きい、と診断する。


 


「知らないわけないだろ? 写真が出回ってるんだから」


「……そうね……でも……真一はそんな写真が出回らなくたって知ってたんでしょ?」


「……気付いた?」


 あの投稿された写真を拡大すると、天恵たちのベンチの向こうに真一が小さく映りこんでいる。この話だって天恵にとって良い話ではないはずなのに、マフラーの話をするより『まだマシ』、ってことになる。


 


 恐らくあの『ピタゴラスワード・パズル』だけでは月下家の離婚問題は解決しない。するわけがない。ピタゴラススイッチの目的は、『結果、大きなことを成す』ことだ。そのための過程でしかない。


 


『努力の過程を知らない人には、突然の信じられない結果を奇跡と思うことだろう』


 


 その努力は必ずしも大変なことでなくて良い。大変な努力をしなければ大きな成果が上がらない訳ではない、努力のハードルを下げることがピタゴラスイッチだと真一は考える。


 


 だからこの『マフラー』こそがきっと、真に月下家の問題解決への糸口になるだろうことを真一は確信するのだった。


 雨が降り出した……そしてピタゴラスイッチのテーマが流れた。




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「天恵ちゃんが摩己さんに似すぎていてコワくなることがある。あのマフラーをして自転車に乗る天恵ちゃんを初めて見たとき、高校時代に戻った錯覚さえした」
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 灯の不安をまだ理解し得ない明はただ、灯の次の言葉を待つしかできない。
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 ここでようやく何となく先が見えた明、灯の肩に手を掛ける。
 摩己のこともあったわけで、灯との結婚の際、明は母親に別居の条件を突き付けた。それが明の母親のお門違いの恨みを買ったことになってしまい、灯に当て付けがましく天恵を可愛がる……四面楚歌に思えた。
「情けないけれど私、天恵ちゃんにに嫉妬している。摩己さんへの劣等感? 分からない……だけど何となく居場所がないのよ! 私は一体何者なの?!」
 明には灯の言葉が良く分かる、『自分が一体何者なのか?』それは明だって同様に感じているからだ。
 きっと灯は、高校時代華々しかった憧れの明が今、守ってばかりいて魅力がない男に見えているのだろう。そう思ってしまうと、灯を励ます手段が見当たらない。
 何かを変えるために『離婚』は必要なのだろう。明の頭が灯の言葉からそう理解したのなら、明には自信が持てないまま……そう、高校時代に失った自信は取り戻せないまま。
 無言の刻は明にプレッシャーを与え続ける。天恵は音を立てずに布団に入った。
◆◇◆◇
「行ってきます!」
 ホテルのランチから一夜明け、そう言って自転車に跨る天恵の首にはあの、トレードマークのマフラーは巻かれていなかった。
「珍しく今日はいつものマフラーしてないんだね?」
「う……ん……そうね……」
 歯切れの悪い言葉と共に、例の人差し指を唇に当てると、そのまま天恵は黙り込んだ。
 そんな天恵を真一の目はジッと観察している。真一は何を思ったであろうか?
「天恵……この間、蓮水と何を話してたんだい? ほら、12/26アンダーパス通りのベンチで見かけたから」
「え?!」
 突拍子もない真一の言葉に思わず真一の目を見る。同時に真一は、天恵の態度は話が逸れたことによる安堵の方が大きい、と診断する。
「知らないわけないだろ? 写真が出回ってるんだから」
「……そうね……でも……真一はそんな写真が出回らなくたって知ってたんでしょ?」
「……気付いた?」
 あの投稿された写真を拡大すると、天恵たちのベンチの向こうに真一が小さく映りこんでいる。この話だって天恵にとって良い話ではないはずなのに、マフラーの話をするより『まだマシ』、ってことになる。
 恐らくあの『ピタゴラスワード・パズル』だけでは月下家の離婚問題は解決しない。するわけがない。ピタゴラススイッチの目的は、『結果、大きなことを成す』ことだ。そのための過程でしかない。
『努力の過程を知らない人には、突然の信じられない結果を奇跡と思うことだろう』
 その努力は必ずしも大変なことでなくて良い。大変な努力をしなければ大きな成果が上がらない訳ではない、努力のハードルを下げることがピタゴラスイッチだと真一は考える。
 だからこの『マフラー』こそがきっと、真に月下家の問題解決への糸口になるだろうことを真一は確信するのだった。
 雨が降り出した……そしてピタゴラスイッチのテーマが流れた。