ホテルでのランチの後、月下家は一悶着あった。きっかけは輝季の清白な一言だった。
「パパもママと同じゲームやってるんだね、同じ紙持ってた」
2人が同じパズルを行っていることが発覚する。目を見合わせる明と灯。『もしかして』と感じていた灯が先に目を逸らす。
明は『ひょっとしたらこのパズルは灯が差出人かも』と思っていた淡い期待が破られたことを知る。
子供たちが部屋へと引き払った後、明は灯に口火を切った。
「なぁ……今の生活を続けていくのが辛いって言ってたよな」
「…………えぇ」
「それって、このクロスワードパズルのように、俺達には結婚前しか思い出が少ないってことなのかな?」
(何もしてあげられていなかったな……)
明にその思いが蘇る。神妙な明の態度がまた灯の癪に障る。冬の乾いた湿度と低い気温は音のスピードを遅くする。だからであろうか? 灯は視線を合わせないままで、返答がない。
「パズルの答え……『いばしよとしがらみ』……家族の在り方を問うてきたってことなのかな……」
独り言にしかならない会話を続ける明。
「なぁ、2人で出かけるか?! 」
「?!」
灯は明の勘違いを知る由もない。
「輝季も小学校に入ったし、天恵がいるから輝季もあんし……ん……」
「やめて!」
灯の喚叫に天恵は部屋をそっと覗き見る。輝季の様子を見ると、ぐっすり眠っている。天恵は耳を澄ました。
「明さんは何か勘違いをしている。私は不安なだけ」
「不安だ、不安だって一体何が不安なんだ? ちゃんと言ってくれよ」
「…………天恵ちゃんよ……」
その一言に、思わず背筋が伸びる天恵。
「天恵が……?」