@ 24話 クロスワールド
ー/ー
** 12/24 終業式の後 ② **
「ね、あんたたちさ、何か面白そうなこと企んでるわよね? お姉さんにもそれ、教えてくれない? そうしたらお姉さんもあんたたちの知りたいこともっと、教えてあげられるでしょう?」
12/24の終業式後。真一たちが当時のことを根ほり葉ほり聞くものだから、音穏もその企てを知りたくなった。
真一はまだ天恵にも話していない計画の概要を音穏に見せた。しかし音穏にはこの一枚の紙を見ただけでは何も分からない。
「〇印でできる言葉は決定しています」
「クロス……パズル? だっけ? こういうの」
「クロスワードパズル、ですね」
「そうそう、クロス
ワールドパズル」
「?! そうです、これはクロス
ワールドなんです!」
そう言うと新しい紙に手早く図を書き込んで、今度は天恵と音穏の2人に見せつける。

「なんかさっきより簡単そうになったわね」
「パズルは簡単な方が良いんです」
「そういうものなの?」
「これならどうです? もっと簡単になった」
「これってこの街の地図?」
「そう大街さんの言葉がヒントになってたった今完成した」
「お父さんとお義母さんの思い出を辿った答えがクロスワードの答えになるってわけね!」
「そうなんだけど、この【横の3】だけ良いワードが見つからない……」
「どこ?」
音穏が覗き込んでしばし考え込む。
「『し』で始まる言葉じゃないと……」
真一も考え込む。
「この地図でホテル、結婚式にまつわる言葉」
「でも縦6が『しきじょう』だから」
灯が幼稚園を退職した年に摩己は30歳の誕生日を迎える前に亡くなった。天恵5歳。そして天恵が小学校入学前に、と結婚したのが灯29歳、明31歳だった。その結婚式を挙げたのが帝郷ホテル、家族になった場所である。
「だね、ここのワードは地図に則さなくてもよいと思う。大街さん、何か月下家に関わるこぼれ話なんてないですかね? 何でもよいです、ヒントになれば……」
「そうねぇ……」
『天恵ちゃん、どんどん摩己に似てきてコワイわ。灯ちゃんが言ってたのも分かる』真一は音穏の言葉を思い出した。
「大街さん、灯さんと摩己さんの関係ってどうでしたか?」
「親交はなかったはずだわ。でも摩己は高校時代有名だったから、一方的に灯ちゃんが摩己のこと知ってるって感じかな?!」
真一が知る限りでは、灯と摩己の関係は良好ではなかったと感じている。なぜなら灯は仏壇の摩己にしか手を合わせたことはなく、お墓参りに行って線香や花を手向けたことはないと聞いていたからだ。だから真一はさっきの音穏の言葉が思い出されたのだ。
「さっきの『摩己さんに似てコワイって』灯さんは一体なんて言ってたんですか?」
「それはね……私から聞いたって言わないでね……」
** 12/28 **
「ミッドライフ・クライシスってやつだね」
「何それ?」
「第二思春期さ」
こうして【横3】のワードは『ししゅんき』に決定した。その真意を月下明・灯がどう受け取るかは分からない。
30歳~39歳が、一番自己満足度が低いという。自分に自信が無いからというのがその要因の大多数である。自己決定が幸福度には大事で、満足を得るために『変化』の決断をする者もいる、それが灯の心理と言える。それが今回の『離婚』の真相だと真一は感じているからだ。
「ところで少し気になっただけなんだけどさ、珍しく今日はいつものマフラーしてないんだね?」
「う……ん……そうね……」
歯切れの悪い言葉と共に、例の人差し指を唇に当てると、そのまま天恵は黙り込んだ。
ベンチの側に置いてあった花束は新しいものに代えられているのが目についた。何かを感じ取った真一が話を続けようとしたとき、真一のデバイスが着信を知らせる。それはピタゴラスイッチのテーマだった。
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** 12/24 終業式の後 ② **
「ね、あんたたちさ、何か面白そうなこと企んでるわよね? お姉さんにもそれ、教えてくれない? そうしたらお姉さんもあんたたちの知りたいこともっと、教えてあげられるでしょう?」
12/24の終業式後。真一たちが当時のことを根ほり葉ほり聞くものだから、音穏もその企てを知りたくなった。
真一はまだ天恵にも話していない計画の概要を音穏に見せた。しかし音穏にはこの一枚の紙を見ただけでは何も分からない。
「〇印でできる言葉は決定しています」
「クロス……パズル? だっけ? こういうの」
「クロスワードパズル、ですね」
「そうそう、クロス|ワールド《・・・・》パズル」
「?! そうです、これはクロス|ワールド《・・・・》なんです!」
そう言うと新しい紙に手早く図を書き込んで、今度は天恵と音穏の2人に見せつける。
「なんかさっきより簡単そうになったわね」
「パズルは簡単な方が良いんです」
「そういうものなの?」
「これならどうです? もっと簡単になった」
「これってこの街の地図?」
「そう大街さんの言葉がヒントになってたった今完成した」
「お父さんとお義母さんの思い出を辿った答えがクロスワードの答えになるってわけね!」
「そうなんだけど、この【横の3】だけ良いワードが見つからない……」
「どこ?」
音穏が覗き込んでしばし考え込む。
「『し』で始まる言葉じゃないと……」
真一も考え込む。
「この地図でホテル、結婚式にまつわる言葉」
「でも縦6が『しきじょう』だから」
灯が幼稚園を退職した年に摩己は30歳の誕生日を迎える前に亡くなった。天恵5歳。そして天恵が小学校入学前に、と結婚したのが灯29歳、明31歳だった。その結婚式を挙げたのが帝郷ホテル、家族になった場所である。
「だね、ここのワードは地図に則さなくてもよいと思う。大街さん、何か月下家に関わるこぼれ話なんてないですかね? 何でもよいです、ヒントになれば……」
「そうねぇ……」
『天恵ちゃん、どんどん摩己に似てきてコワイわ。灯ちゃんが言ってたのも分かる』真一は音穏の言葉を思い出した。
「大街さん、灯さんと摩己さんの関係ってどうでしたか?」
「親交はなかったはずだわ。でも摩己は高校時代有名だったから、一方的に灯ちゃんが摩己のこと知ってるって感じかな?!」
真一が知る限りでは、灯と摩己の関係は良好ではなかったと感じている。なぜなら灯は仏壇の摩己にしか手を合わせたことはなく、お墓参りに行って線香や花を手向けたことはないと聞いていたからだ。だから真一はさっきの音穏の言葉が思い出されたのだ。
「さっきの『摩己さんに似てコワイって』灯さんは一体なんて言ってたんですか?」
「それはね……私から聞いたって言わないでね……」
** 12/28 **
「ミッドライフ・クライシスってやつだね」
「何それ?」
「第二思春期さ」
こうして【横3】のワードは『ししゅんき』に決定した。その真意を月下明・灯がどう受け取るかは分からない。
30歳~39歳が、一番自己満足度が低いという。自分に自信が無いからというのがその要因の大多数である。自己決定が幸福度には大事で、満足を得るために『変化』の決断をする者もいる、それが灯の心理と言える。それが今回の『離婚』の真相だと真一は感じているからだ。
「ところで少し気になっただけなんだけどさ、珍しく今日はいつものマフラーしてないんだね?」
「う……ん……そうね……」
歯切れの悪い言葉と共に、例の人差し指を唇に当てると、そのまま天恵は黙り込んだ。
ベンチの側に置いてあった花束は新しいものに代えられているのが目についた。何かを感じ取った真一が話を続けようとしたとき、真一のデバイスが着信を知らせる。それはピタゴラスイッチのテーマだった。