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@ 20話

ー/ー





 こんなやせ細った穏やかなお爺様から、あんなに大きな声が出たかと思うと改めて驚きだ。のんきな気持ちが引き締まったのは間違いない。


 


「彼女は何も置いてはいきませんでしたよ」


「あ、でも……それは……?」


「これは別の方から、わたくしが預かったものです」


「はぁ……」


 あの流れでみせられたのなら明が勘違いしたって無理もない。怪訝な表情を浮かべたのなら、住職はすぐにそれを悟ったようだ。


 


「あなたはご自身のことばかりに目が向いているようですな。先程の女性にも申しましたが、捉われていれば盲目と同じですよ」


「はい……?!」


 住職が何を言いたいのか全く分からない明。生返事を返す。


 


「あなたは神社へ何しに来たのですか? 確信のない手紙の在り処を聞くためにわたくしに会いにでも来たのですか? それほどわたくしめは暇に見えると……?! まぁ外れてはいまいが……」


「あ、いえ、そんな、つもりじゃ……」


「みなさま、神社はお詣りに参じていただいております場でありますが……」


「あ、じゃあ、自分も……」


 そう言って拝殿に向かおうとしたが、手水(ちょうず)で清めていないことに気付く。そこで舎へ足を向けたなのなら、そもそも鳥居を潜るときも素通りだったことを思い出す。


 


「ああよいよい。小事に拘っていたら大事が進まぬ。そういうことは初めから意識しているからこそ大事の一つになる」


 住職に言われるまま拝殿の前に立つ。


 


「賽銭は多くて構わぬぞ」


 明は幾らあるか分からないが、小銭全部入れようと決めて財布を取り出す。こういう時に限って銀色の硬貨が何枚か見える。目を瞑って全てを握って放つ! ジャラジャラと賽銭箱の奥に落ちていく未練を断ち切るように大鈴の綱を掴む。


 


(あれ? これ先に鳴らすのか? 二拝? 二礼だっけ? 二拍か?)


 チラッと住職を盗み見る。


 


「よいよい、好きに詣れ」


 そう言って笑っていた。


 


「落ち着かれましたかな?」


「あ、はい。すみませんでした」


「よいよい。ではこれを……」


 そう言って先程の封筒を明に差し出した。


 


「これは妻からのものではない、と先程……だから自分のではないのでは?」


「あなたのおっしゃる女性からではありませんよ、つまりあなたの妻君からではありません。ただあなた宛てなのは間違いない」


「……? 一体誰から?」


「さてさて、それはお教えできませんな。ははは」


 


 手紙を開いたのなら【縦6の鍵 家族になった場所】とだけ書かれていた。明はそれを確認したのなら、住職に一礼をして神社を後にした。一瞥即解……縦6の鍵は再び大通りを幼稚園側に渡ったボナペティの向かいの大きな建物を指している、しかし明の足は自宅へと向かった。




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 こんなやせ細った穏やかなお爺様から、あんなに大きな声が出たかと思うと改めて驚きだ。のんきな気持ちが引き締まったのは間違いない。
「彼女は何も置いてはいきませんでしたよ」
「あ、でも……それは……?」
「これは別の方から、わたくしが預かったものです」
「はぁ……」
 あの流れでみせられたのなら明が勘違いしたって無理もない。怪訝な表情を浮かべたのなら、住職はすぐにそれを悟ったようだ。
「あなたはご自身のことばかりに目が向いているようですな。先程の女性にも申しましたが、捉われていれば盲目と同じですよ」
「はい……?!」
 住職が何を言いたいのか全く分からない明。生返事を返す。
「あなたは神社へ何しに来たのですか? 確信のない手紙の在り処を聞くためにわたくしに会いにでも来たのですか? それほどわたくしめは暇に見えると……?! まぁ外れてはいまいが……」
「あ、いえ、そんな、つもりじゃ……」
「みなさま、神社はお詣りに参じていただいております場でありますが……」
「あ、じゃあ、自分も……」
 そう言って拝殿に向かおうとしたが、|手水《ちょうず》で清めていないことに気付く。そこで舎へ足を向けたなのなら、そもそも鳥居を潜るときも素通りだったことを思い出す。
「ああよいよい。小事に拘っていたら大事が進まぬ。そういうことは初めから意識しているからこそ大事の一つになる」
 住職に言われるまま拝殿の前に立つ。
「賽銭は多くて構わぬぞ」
 明は幾らあるか分からないが、小銭全部入れようと決めて財布を取り出す。こういう時に限って銀色の硬貨が何枚か見える。目を瞑って全てを握って放つ! ジャラジャラと賽銭箱の奥に落ちていく未練を断ち切るように大鈴の綱を掴む。
(あれ? これ先に鳴らすのか? 二拝? 二礼だっけ? 二拍か?)
 チラッと住職を盗み見る。
「よいよい、好きに詣れ」
 そう言って笑っていた。
「落ち着かれましたかな?」
「あ、はい。すみませんでした」
「よいよい。ではこれを……」
 そう言って先程の封筒を明に差し出した。
「これは妻からのものではない、と先程……だから自分のではないのでは?」
「あなたのおっしゃる女性からではありませんよ、つまりあなたの妻君からではありません。ただあなた宛てなのは間違いない」
「……? 一体誰から?」
「さてさて、それはお教えできませんな。ははは」
 手紙を開いたのなら【縦6の鍵 家族になった場所】とだけ書かれていた。明はそれを確認したのなら、住職に一礼をして神社を後にした。一瞥即解……縦6の鍵は再び大通りを幼稚園側に渡ったボナペティの向かいの大きな建物を指している、しかし明の足は自宅へと向かった。