表示設定
表示設定
目次 目次




@13話 ピタゴラスイッチのテーマ

ー/ー





 飛田家に着くと夏陽はルームウェアではなく、小奇麗に見仕度を整えていた。


 


「来てくれてありがとう、上がって」


「話って何?」


「ま、とりあえず」


 中へ上がるよう促す夏陽。天恵が『簡単に女子の家に男子を呼べるわけないでしょう?!』と言っていたことを思い出し戸惑う。しかし手を引かれるまま夏陽の部屋に閉じ込められた。


 


「これ、お礼でプレゼント」


 言葉が言い終わらない内に、真一のデバイスが受信を知らせる。夏陽からの着信だ。


 


「何? これ」


「ピタゴラスイッチの曲。ピッタリでしょ? 私もお揃いにしたのよ」




 部屋の中で突っ立たままの真一をベッドの端に座らせると、側に夏陽が腰を下ろす。何をどう振舞ったら良いか分からないでいる。


『どれどれ……?』と携帯端末を取り上げられると、着信音を夏陽が送った『ピタゴラスイッチ』に勝手に変えられる。その距離が近い……。鼻孔の男の部分がどこなのか知識がないけれど、なぜか首を伸ばして抵抗を試みる。


 何を思ってここまで来たのか、ノーテンキに何も考えようとしなかった自分が露呈している現実。その現実に追い付いていないのは勇気か覚悟か、それとも理性と正義か……。


 


「誰もいないから、さ」


 言葉を重ねてくる夏陽。決断を迫られれば迫られる程、頭の中で追い詰められる。いずれにせよ真一は日和った。


 


「お、俺……べ、勉強ばっかで他は……なな、なにも知らないし……」


「簡単にできることをやるだけ、よ。でしょ?」


「きょ、協力するって、べ、勉強教えると、とかじゃ?」


「野暮なこと言わないで、さ」


 


「た、多分、こういう時にも冷静に決断、変に応じる男こそが飛田の理想とする頭脳なんじゃないかな?」


「だからまさに今が『機』に『臨』場面なんでしょう?」


 我ながら上手に言ったつもりだったが、跳ね返される。後はもう……逃げるに如かず、だった。


「俺……ちょっと、ごめん」


 後は夢中で自転車をこいだ。


 


  * * *


 


(蓮水と月下……一体何を……?)


 


 夏陽からの着信で、月下から着信があったことに気付く。しかし今、目の前に蓮水と居る月下に折り返しの連絡をする気にはなれない。


 2人が何を話しているのか気になったが、隠れて見ているだけ惨めになり、家へ帰った。家に帰って着信設定の画面を開いてみた。


 


「真一なら『ピタゴラスイッチ』とか合ってんじゃない」


 天恵がそう言っていた場面を思い出す。そして……


 


「ピタゴラスイッチの曲。ピッタリでしょ?」


 夏陽の言葉と重なった。


 


「じゃあ、今度あたしのおすすめ、真一にプレゼントするね」


「これ、お礼でプレゼント」


 天恵と夏陽、2人の言葉がリンクする。真一は着信設定を変えず。そのまま画面を閉じた。


 


【折り返し遅くなってごめん、まだ俺がやることが残っているなら、連絡待ってます】


 それからしばらくしてから、ぶっきら棒でひねくれた文章を送った。


 


(真一? 『まだ残っているなら……』ってどういう意味かしら? とりあえず蓮水くんと相談して、お義母さんの方も大丈夫そうなことを報告しておけばいっか?!)


 天恵は唇に当てていた人差し指を放した。




スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む @14話 図書館メモ


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 飛田家に着くと夏陽はルームウェアではなく、小奇麗に見仕度を整えていた。
「来てくれてありがとう、上がって」
「話って何?」
「ま、とりあえず」
 中へ上がるよう促す夏陽。天恵が『簡単に女子の家に男子を呼べるわけないでしょう?!』と言っていたことを思い出し戸惑う。しかし手を引かれるまま夏陽の部屋に閉じ込められた。
「これ、お礼でプレゼント」
 言葉が言い終わらない内に、真一のデバイスが受信を知らせる。夏陽からの着信だ。
「何? これ」
「ピタゴラスイッチの曲。ピッタリでしょ? 私もお揃いにしたのよ」
 部屋の中で突っ立たままの真一をベッドの端に座らせると、側に夏陽が腰を下ろす。何をどう振舞ったら良いか分からないでいる。
『どれどれ……?』と携帯端末を取り上げられると、着信音を夏陽が送った『ピタゴラスイッチ』に勝手に変えられる。その距離が近い……。鼻孔の男の部分がどこなのか知識がないけれど、なぜか首を伸ばして抵抗を試みる。
 何を思ってここまで来たのか、ノーテンキに何も考えようとしなかった自分が露呈している現実。その現実に追い付いていないのは勇気か覚悟か、それとも理性と正義か……。
「誰もいないから、さ」
 言葉を重ねてくる夏陽。決断を迫られれば迫られる程、頭の中で追い詰められる。いずれにせよ真一は日和った。
「お、俺……べ、勉強ばっかで他は……なな、なにも知らないし……」
「簡単にできることをやるだけ、よ。でしょ?」
「きょ、協力するって、べ、勉強教えると、とかじゃ?」
「野暮なこと言わないで、さ」
「た、多分、こういう時にも冷静に決断、変に応じる男こそが飛田の理想とする頭脳なんじゃないかな?」
「だからまさに今が『機』に『臨』場面なんでしょう?」
 我ながら上手に言ったつもりだったが、跳ね返される。後はもう……逃げるに如かず、だった。
「俺……ちょっと、ごめん」
 後は夢中で自転車をこいだ。
  * * *
(蓮水と月下……一体何を……?)
 夏陽からの着信で、月下から着信があったことに気付く。しかし今、目の前に蓮水と居る月下に折り返しの連絡をする気にはなれない。
 2人が何を話しているのか気になったが、隠れて見ているだけ惨めになり、家へ帰った。家に帰って着信設定の画面を開いてみた。
「真一なら『ピタゴラスイッチ』とか合ってんじゃない」
 天恵がそう言っていた場面を思い出す。そして……
「ピタゴラスイッチの曲。ピッタリでしょ?」
 夏陽の言葉と重なった。
「じゃあ、今度あたしのおすすめ、真一にプレゼントするね」
「これ、お礼でプレゼント」
 天恵と夏陽、2人の言葉がリンクする。真一は着信設定を変えず。そのまま画面を閉じた。
【折り返し遅くなってごめん、まだ俺がやることが残っているなら、連絡待ってます】
 それからしばらくしてから、ぶっきら棒でひねくれた文章を送った。
(真一? 『まだ残っているなら……』ってどういう意味かしら? とりあえず蓮水くんと相談して、お義母さんの方も大丈夫そうなことを報告しておけばいっか?!)
 天恵は唇に当てていた人差し指を放した。