@ 22話 常ノ呂高校カーリング部
ー/ー
冴棋大晴は時間を持て余していた。優理にカーリングに誘われた入学式、それを断って以来、各運動部を冷やかし廻るだけの日々。
体育館を覗き込むと、大晴の炯眼が学佳を射る。
(何してんだ俺……)
第一体育館には学佳の可愛さに群がる野次馬男子が数名、同等に思われたくない想いよりも学佳に見惚れてしまう大晴。それは『異性』としてなのか、『一生懸命さ』になのか、何に魅了されたか自分の気持ちが分からない。
スリーポイントシュートを放った学佳の視線は、リングの向こうにある体育館の入口の一つに大晴の姿を映した。
「大晴くん……」
瞬間、そう呟いたが、クルリと背を向けて自陣へと走る。学佳が背を向けたと同時にボールがリングを潜り落ちる。
「おい、あれ、冴棋だろ?」
「上杉中の冴棋じゃね?」
バスケ部男子の誰かが大晴を指さしたように見えた。気付いた大晴は第二体育館の方へとそぞろ歩きで離れる。
第二体育館に向かう途中、トレーニングルームではカーリング部が柔軟やヨガを行っていた。何故カーリング部だと分かったかと言えば、そこで1人だけ筋トレを行っている国立優理がいたからだった。
「おや? 冴棋大晴くんではでは?」
優理がひょうひょうと話しかけてくる。
「カーリング部も筋トレなんかするんだな?」
カーリングは、投げる、掃く、歩く……全身を使うスポーツだ。筋力トレーニングで、筋肥大や筋持久力、筋力向上は当然パフォーマンスを高める。
「ランニングやサイクリングだってするんだぜ?!」
「なんでみんなと同じストレッチをやらないんだ?」
「……あいにく……先輩たちとどうやら趣味が合わないみたいなんだ……」
大晴と話す優理をコソコソと見ているのは感じている。
「……そうみたいだな……」
「今日は町のカーリングホールが使えない日だからこの後、第一体育館で、フロアカーリングをやるんだ、することないなら見に来いよ? 遊びみたいなもんだから、参加してもいいし」
優理はそれがこの退屈な練習より楽しみなのか、一段高い声を放った。
◆◇◆◇
第一体育館ではまだ女バスが練習を行っていた。防球ネットを隔ててカーリング部が体育館の一片を使用して、フロアカーリングなるものが始められた。
フロアカーリングはフロッカーと呼ばれるストーンを投げて、緑の『ターゲットストーン』への距離を競うゲームである。
新入部員獲得のためのイベントを兼ねていたようで、前前から宣伝もしていたらしい、それなりに人が集まった。時折、学佳も見ている。
初めからいた野次馬はひょっとして、このイベントを待つ間で学佳を見ていただけなのかもしれない、なんて大晴は思い直した。
「ここね、ここ狙って」
投手のカーリング部員に、優理の指示が体育館中に波紋する。それ以外の部員たちが声をかけてはいるが、体験学生はまだ誰一人として投げていない。
「どこが遊びだって……?」
優理がカーリング同様に見立てて、ターゲットから投者に向かって出す指示は真剣なものだ。もちろんスイープはない。口調が荒い訳ではないが練習の一環も含んでいるのでマジだ。大晴は呟かずにはいられなかった。
先輩たちは新入部員である優理が指示役であるスキップを担っているのが気に入らないようで、イベントは盛り上がってはいない。
「先輩たちと趣味が合わない、ね。なるほど……」
優理を見て一つ息を吐く。それを退屈だと取ったのか、優理がターゲットストーンの場所から声を張る。
「大晴、やってみないか?」
一斉に浴びた視線の雨から避けようと大きく息を吸い込んだとき、他方から声が降る。
「ね、やってみせてよ」
声の主に振り返るとそれは、学佳だった。
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冴棋大晴は時間を持て余していた。優理にカーリングに誘われた入学式、それを断って以来、各運動部を冷やかし廻るだけの日々。
体育館を覗き込むと、大晴の|炯眼《けいがん》が学佳を射る。
(何してんだ俺……)
第一体育館には学佳の可愛さに群がる野次馬男子が数名、同等に思われたくない想いよりも学佳に見惚れてしまう大晴。それは『異性』としてなのか、『一生懸命さ』になのか、何に魅了されたか自分の気持ちが分からない。
スリーポイントシュートを放った学佳の視線は、リングの向こうにある体育館の入口の一つに大晴の姿を映した。
「大晴くん……」
瞬間、そう呟いたが、クルリと背を向けて自陣へと走る。学佳が背を向けたと同時にボールがリングを潜り落ちる。
「おい、あれ、冴棋だろ?」
「上杉中の冴棋じゃね?」
バスケ部男子の誰かが大晴を指さしたように見えた。気付いた大晴は第二体育館の方へとそぞろ歩きで離れる。
第二体育館に向かう途中、トレーニングルームではカーリング部が柔軟やヨガを行っていた。何故カーリング部だと分かったかと言えば、そこで1人だけ筋トレを行っている国立優理がいたからだった。
「おや? 冴棋大晴くんではでは?」
優理がひょうひょうと話しかけてくる。
「カーリング部も筋トレなんかするんだな?」
カーリングは、投げる、掃く、歩く……全身を使うスポーツだ。筋力トレーニングで、筋肥大や筋持久力、筋力向上は当然パフォーマンスを高める。
「ランニングやサイクリングだってするんだぜ?!」
「なんでみんなと同じストレッチをやらないんだ?」
「……あいにく……先輩たちとどうやら趣味が合わないみたいなんだ……」
大晴と話す優理をコソコソと見ているのは感じている。
「……そうみたいだな……」
「今日は町のカーリングホールが使えない日だからこの後、第一体育館で、フロアカーリングをやるんだ、することないなら見に来いよ? 遊びみたいなもんだから、参加してもいいし」
優理はそれがこの退屈な練習より楽しみなのか、一段高い声を放った。
◆◇◆◇
第一体育館ではまだ女バスが練習を行っていた。防球ネットを隔ててカーリング部が体育館の一片を使用して、フロアカーリングなるものが始められた。
フロアカーリングはフロッカーと呼ばれるストーンを投げて、緑の『ターゲットストーン』への距離を競うゲームである。
新入部員獲得のためのイベントを兼ねていたようで、前前から宣伝もしていたらしい、それなりに人が集まった。時折、学佳も見ている。
初めからいた野次馬はひょっとして、このイベントを待つ間で学佳を見ていただけなのかもしれない、なんて大晴は思い直した。
「ここね、ここ狙って」
投手のカーリング部員に、優理の指示が体育館中に波紋する。それ以外の部員たちが声をかけてはいるが、体験学生はまだ誰一人として投げていない。
「どこが遊びだって……?」
優理がカーリング同様に見立てて、ターゲットから投者に向かって出す指示は真剣なものだ。もちろんスイープはない。口調が荒い訳ではないが練習の一環も含んでいるのでマジだ。大晴は呟かずにはいられなかった。
先輩たちは新入部員である優理が指示役であるスキップを担っているのが気に入らないようで、イベントは盛り上がってはいない。
「先輩たちと趣味が合わない、ね。なるほど……」
優理を見て一つ息を吐く。それを退屈だと取ったのか、優理がターゲットストーンの場所から声を張る。
「大晴、やってみないか?」
一斉に浴びた視線の雨から避けようと大きく息を吸い込んだとき、他方から声が降る。
「ね、やってみせてよ」
声の主に振り返るとそれは、学佳だった。