@ 23話
ー/ー
野次馬たちはやはりイベント目当てではなく、イベントを口実にした学佳目当てだったようだ。学佳がそう言ったのが聞こえたのなら、今までさんざん遠慮していた男子学生たちがゲームに参加しだす。
学佳がそう言ったときの表情は、軽く微笑んでいたようにも見え、真剣であったようにも見え、期待された感もあり、悪戯な感もあった。しかしどうであれ、学佳の言葉と面影には『男を動かす何か』が在った。
息を切らせながらも、そんな表情を見せた学佳に言われたなら黙っていられない、とばかりに同じく表情を変えた大晴も準備する。見ているよりも難しいようで、緑のターゲットストーンにうまく寄せられる学生はない。優理が大晴を気にかけてアドバイスを一言二言……。
「大晴くん、頑張って」
大晴の番が回ってきて、学佳が声援を入れる。それはその他大勢だった男子学生たちの反感を買い、大晴が手を挙げて応えたのなら、不満顔を大晴にぶつける。しかし茶髪で大柄の大晴がそちらに顔を向けるとモブたちは顔を背ける。
優理だけが大晴の側によると、
「羨ましいな、声援もらっちゃったりして」
と嫌味を言う。
「さっきのアドバイスは忘れていいからな、派手にやってくれ」
「今更なんでそんなことうを言う?」
「大晴がやらかした後、俺が決めたら、学佳ちゃんにかっこいい所見せられるだろ?!」
「俺がうまく決めたら?」
「そうしたら、前から誘っている通り、カーリング部に入ってくれ」
学佳が見つめる中での大晴の1投は、周囲の『外れろ』という期待を見事に裏切り、ターゲットストーンの一番近くに止まる。『すごいっ!』と学佳が飛び跳ねて喜んだのが、モブたちを微妙な空気に変えた。優理がその後に投げる準備をしていたが、そんな体育館の雰囲気を見て投げるのをやめた。
「やっぱり言ったとおりだろ……憎まれ役だって」
そして優理が小さく呟いた。
イベントが盛り上がってしまって大晴は居づらくなる。優理が再び声をかける間もなく、体育館を出て行ってしまう。学佳も大きく喜んだ手前、拍子抜けした。2人は目を見合わせて、手のひらを上に向けて両手を広げるジェスチャーを揃える。
「あのセンス……なんでバスケ、辞めちゃったのかな? もったいない」
「なんでカーリングやらないのかな?」
「なんで大晴くんなの? はじめから知ってたみたいだけど?」
「学佳ちゃんはスポーツマンが好きなわけ?」
「一生懸命な人が好きよ……って何の話?」
どこを見ているのか分からない学佳の目の先を辿ってみようとした優理は、学佳の顔から視線を外すことができないままだ。それがバレないようにいつもの軽い言葉で返事を往なす。
「いろいろ教えてほしいなって」
「大晴くんのこと、私も教えてほしいな。優理くん、あなた何か知っている感じよね?」
「そう? それなら部活帰りにお茶でもしながら話そっか?」
「……いいわ。そのうち分かると思うから……」
「そりゃ、残念」
すごく一生懸命な幼馴染がいたけど、小さいころから知ってるからか、ガサツなところもたくさん知ってるし、清潔感がないっていうか、恋愛対象じゃないのよね……。学佳は自身のセリフで幼いころの記憶を再生していた。
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野次馬たちはやはりイベント目当てではなく、イベントを口実にした学佳目当てだったようだ。学佳がそう言ったのが聞こえたのなら、今までさんざん遠慮していた男子学生たちがゲームに参加しだす。
学佳がそう言ったときの表情は、軽く微笑んでいたようにも見え、真剣であったようにも見え、期待された感もあり、悪戯な感もあった。しかしどうであれ、学佳の言葉と面影には『男を動かす何か』が在った。
息を切らせながらも、そんな表情を見せた学佳に言われたなら黙っていられない、とばかりに同じく表情を変えた大晴も準備する。見ているよりも難しいようで、緑のターゲットストーンにうまく寄せられる学生はない。優理が大晴を気にかけてアドバイスを一言二言……。
「大晴くん、頑張って」
大晴の番が回ってきて、学佳が声援を入れる。それはその他大勢だった男子学生たちの反感を買い、大晴が手を挙げて応えたのなら、不満顔を大晴にぶつける。しかし茶髪で大柄の大晴がそちらに顔を向けるとモブたちは顔を背ける。
優理だけが大晴の側によると、
「羨ましいな、声援もらっちゃったりして」
と嫌味を言う。
「さっきのアドバイスは忘れていいからな、派手にやってくれ」
「今更なんでそんなことうを言う?」
「大晴がやらかした後、俺が決めたら、学佳ちゃんにかっこいい所見せられるだろ?!」
「俺がうまく決めたら?」
「そうしたら、前から誘っている通り、カーリング部に入ってくれ」
学佳が見つめる中での大晴の1投は、周囲の『外れろ』という期待を見事に裏切り、ターゲットストーンの一番近くに止まる。『すごいっ!』と学佳が飛び跳ねて喜んだのが、モブたちを微妙な空気に変えた。優理がその後に投げる準備をしていたが、そんな体育館の雰囲気を見て投げるのをやめた。
「やっぱり言ったとおりだろ……憎まれ役だって」
そして優理が小さく呟いた。
イベントが盛り上がってしまって大晴は居づらくなる。優理が再び声をかける間もなく、体育館を出て行ってしまう。学佳も大きく喜んだ手前、拍子抜けした。2人は目を見合わせて、手のひらを上に向けて両手を広げるジェスチャーを揃える。
「あのセンス……なんでバスケ、辞めちゃったのかな? もったいない」
「なんでカーリングやらないのかな?」
「なんで大晴くんなの? はじめから知ってたみたいだけど?」
「学佳ちゃんはスポーツマンが好きなわけ?」
「一生懸命な人が好きよ……って何の話?」
どこを見ているのか分からない学佳の目の先を辿ってみようとした優理は、学佳の顔から視線を外すことができないままだ。それがバレないようにいつもの軽い言葉で返事を往なす。
「いろいろ教えてほしいなって」
「大晴くんのこと、私も教えてほしいな。優理くん、あなた何か知っている感じよね?」
「そう? それなら部活帰りにお茶でもしながら話そっか?」
「……いいわ。そのうち分かると思うから……」
「そりゃ、残念」
すごく一生懸命な幼馴染がいたけど、小さいころから知ってるからか、ガサツなところもたくさん知ってるし、清潔感がないっていうか、恋愛対象じゃないのよね……。学佳は自身のセリフで幼いころの記憶を再生していた。