6
ー/ー
入ってくるなり「私の部屋と変わりないよ」だって。
そーゆー問題じゃねえだろーが。なんで保健の先生がわざわざ来るんだかなあ。
「ネグレクトってのもあるけど、タケルはご両親が亡くなって、さらに不在がちなお姉さんと暮らしてる……分かるでしょ? 」
言葉に詰まった。いくら俺でもこれに関しては言い返すことができなかった。
もし……もしもこの先生が厳しい目で俺を見ていたとしたら、間違いなく今の俺はアウトだ。速攻で施設に連れてかれてしまうだろう。姉貴がいるってことなんて、もうどうでもいいくらいに。まあその姉貴もここ最近は不在がちだし、同居人は……うん。目の前にいるコタローただ一人。つーかコタローって戸籍あるのかどうかも全然知らなかったな。
……って先生もうコタローと会話してるし!!!
「噂には聞いてたけど、キミが例の……」
「ご存知でしたか」
なんかすっげマジメなこと話してた。それに先生、あの鵼斬りを手にしてたし。
「まだまだ使いこなせてなさそうね」なんて先生はまるでこの妖刀を以前から知ってたみたいに話してるし。コタローは人見知りかなりあるから、大丈夫かなあ。
「いちおう、合格かな?」ってオイ!家の中ちらっと見て、でもってコタローと話しただけじゃねーか。一体何しに来たんだよ先生!
「平気だよね、コタロー君が一緒にいるのなら」サラッと先生はそんなこと言ってたけど、同居人が……いいのかよ、あいつで?
「それと、次回この近辺でビーストの発生が報告された時は、私と彼と、そしてタケルの3人で対処することにしたから。これは先生……いや、担当保護官からの命令よ」
えええええ保護官ってなんだよ! バケモノ退治くらい俺たちだけで充分だってば!
「タケル、先生に従いましょう。僕たちの保護責任を担っている方なのですから」すっげ落ち着いた顔でコタローは告げてくれた。つーかまるで先生の味方にでも着いたみたいじゃね?
「あー、これを無視するようならコタロー君の処遇にも影響するから覚えといて。私は2人の保護者でもあるのだから」
普通に考えて分かるでしょ。って先生は俺たちの前にどかっと腰を置いた。
「ここ近辺でもちょっと話題になってるっぽいのよ。彼のこと」
ギクって、俺の背筋に冷たい汗がつたい落ちた。
コタローは笑いながら応えてくれてるんだけどね。確かにコイツの服っていうか身なりはちょっとヤバいかも知れない。
でもって、これが学校経由して他の人に知られたらどうするの? って。
「まあ、そこらへんに関しては今後の課題かな」
⭐︎⭐︎⭐︎
先生が帰ったら、一気に疲れが出てきた。
「でも、なんか複雑ですね」ってコタローはちょっと困った顔してた。先生の代わりの元動くんだもんな。
まあ俺も複雑な気分なんだけどね。
そんなことで部屋の掃除やら外でコタローと修行とか、でもって俺の好きなナス尽くめの夕食にして、さっさと今日は寝ることにした。
...…うん、そこまではよかったんだ、そこまではね。
翌日、ジンの包帯が取れたって連絡が来て、俺とコタローはあいつの元へと行ったんだ。けど……
まだまだ全然覇気が無いっていうか、俺たちが来た時もしっぽ向けて伏せて寝てる状態だったし。
あ、とりあえず俺は好物の焼き鳥あげて、新しい先生の報告したんだけどね。
「……そっか」って塩対応。そのくせ焼き鳥はガツガツ食ってるし、なんかムカつく。
やっぱり弟に負けたのが精神的に来ちゃってるのかな。
「散歩に連れてきましょう」ってコタローの提案で、おばさんにお願いしてこのクソデカ犬を散歩へ出すことにした。
とはいえ、とぼとぼ力なく歩いててこっちだってすっげイラついてきたっていうか。
「ショック大きかったんですかね……」
「そっかな? ただの引きずりまくりのどうしようもない奴っしょ」
「あァ?」俺の挑発に睨み返してきた。成功だ!
「負けてヘコむくらいお前にだってあるだろーが!」
「じゃねーよ! 別人……じゃなくて別狼みてーに魂抜かれやがって、いつもの毒舌はどーしたんだって!」
「あ……」ようやく自分が強気に出られたことに気づいたっぽい。ジンってすっげ単純なのかもね。
「ったく、2人揃って俺をハメやがって」
「はめてたんじゃねーよ。元気出させたかっただけだって」
「よかったですね、いつものジンに戻れ……」
ふと、俺たちの後ろを歩いてたコタローの足が止まった。
「う……そ」また漏らすんじゃないかってほど目を大きく見開いてて、先生でも歩いてたのかな?
「なんだ、あれ……」ジンもだった。2人の見つめるその先には……ってえええええええ!?
クマだ。いや、クマだけどもそうじゃなくて。白と黒とのツートンカラーのあいつは、パンダぁ!?
けどパンダとはいっても動物園て見るようなかわいい姿じゃない。デカすぎるんだ。ぱっと見2メートルは余裕で超えてる。おまけに丸っこくない、例えるなら、プロレスラーがパンダのぬいぐるみに無理やり入ったかのような、つまりはガタイ良すぎてピンと背筋の伸びた姿だ。
そんなヤバげなパンダが、目の前の横断歩道をきちんと青信号で渡ってる。それも手をあげて。止まってる車の中にいる人も驚いた顔でずっと見てる、当たり前だけど。
「コタロー、刀は?」
「ええ、間違いないです」つまりはワーパンダってことか。背負ってる鵼斬りを軽く引き抜くと、刀身が青白く光を放っていたし。
でも……そう。敵意が全く見えてこないんだ。
イノシシだってコアラだってイタチだって、俺たちを目にするなりすぐ襲いかかってきた。つまりそんだけあいつらは凶暴だった、だけどこのパンダは変だ。ジンを含む3人共に奴と目が合ったのに完全スルー。イベントの着ぐるみの出来損ないみたいなその姿勢がいい巨体は、俺たちのことなんて全然構うことなくひょこひょこ歩いて、そのまま近くの林へと姿を消した。なんだよそれ!?
「分かったかタケル?」
「うん、敵意全然無かった……」ジンもそれに感付いてた。凶暴性も敵意もゼロ。しかも青信号をきちんと守って渡った優等生パンダだ。
つまり、いま俺たちは手を出しちゃいけないってことにも気づいてたってことかな。
あ、スマホ持ってたから撮っとけばよかった……いまさら。
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もし……もしもこの先生が厳しい目で俺を見ていたとしたら、間違いなく今の俺はアウトだ。速攻で施設に連れてかれてしまうだろう。姉貴がいるってことなんて、もうどうでもいいくらいに。まあその姉貴もここ最近は不在がちだし、同居人は……うん。目の前にいるコタローただ一人。つーかコタローって戸籍あるのかどうかも全然知らなかったな。
……って先生もうコタローと会話してるし!!!
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「ご存知でしたか」
なんかすっげマジメなこと話してた。それに先生、あの鵼斬りを手にしてたし。
「まだまだ使いこなせてなさそうね」なんて先生はまるでこの妖刀を以前から知ってたみたいに話してるし。コタローは人見知りかなりあるから、大丈夫かなあ。
「いちおう、合格かな?」ってオイ!家の中ちらっと見て、でもってコタローと話しただけじゃねーか。一体何しに来たんだよ先生!
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えええええ保護官ってなんだよ! バケモノ退治くらい俺たちだけで充分だってば!
「タケル、先生に従いましょう。僕たちの保護責任を担っている方なのですから」すっげ落ち着いた顔でコタローは告げてくれた。つーかまるで先生の味方にでも着いたみたいじゃね?
「あー、これを無視するようならコタロー君の処遇にも影響するから覚えといて。私は2人の保護者でもあるのだから」
普通に考えて分かるでしょ。って先生は俺たちの前にどかっと腰を置いた。
「ここ近辺でもちょっと話題になってるっぽいのよ。彼のこと」
ギクって、俺の背筋に冷たい汗がつたい落ちた。
コタローは笑いながら応えてくれてるんだけどね。確かにコイツの服っていうか身なりはちょっとヤバいかも知れない。
でもって、これが学校経由して他の人に知られたらどうするの? って。
「まあ、そこらへんに関しては今後の課題かな」
⭐︎⭐︎⭐︎
先生が帰ったら、一気に疲れが出てきた。
「でも、なんか複雑ですね」ってコタローはちょっと困った顔してた。先生の代わりの元動くんだもんな。
まあ俺も複雑な気分なんだけどね。
そんなことで部屋の掃除やら外でコタローと修行とか、でもって俺の好きなナス尽くめの夕食にして、さっさと今日は寝ることにした。
...…うん、そこまではよかったんだ、そこまではね。
翌日、ジンの包帯が取れたって連絡が来て、俺とコタローはあいつの元へと行ったんだ。けど……
まだまだ全然覇気が無いっていうか、俺たちが来た時もしっぽ向けて伏せて寝てる状態だったし。
あ、とりあえず俺は好物の焼き鳥あげて、新しい先生の報告したんだけどね。
「……そっか」って塩対応。そのくせ焼き鳥はガツガツ食ってるし、なんかムカつく。
やっぱり弟に負けたのが精神的に来ちゃってるのかな。
「散歩に連れてきましょう」ってコタローの提案で、おばさんにお願いしてこのクソデカ犬を散歩へ出すことにした。
とはいえ、とぼとぼ力なく歩いててこっちだってすっげイラついてきたっていうか。
「ショック大きかったんですかね……」
「そっかな? ただの引きずりまくりのどうしようもない奴っしょ」
「あァ?」俺の挑発に睨み返してきた。成功だ!
「負けてヘコむくらいお前にだってあるだろーが!」
「じゃねーよ! 別人……じゃなくて別狼みてーに魂抜かれやがって、いつもの毒舌はどーしたんだって!」
「あ……」ようやく自分が強気に出られたことに気づいたっぽい。ジンってすっげ単純なのかもね。
「ったく、2人揃って俺をハメやがって」
「はめてたんじゃねーよ。元気出させたかっただけだって」
「よかったですね、いつものジンに戻れ……」
ふと、俺たちの後ろを歩いてたコタローの足が止まった。
「う……そ」また漏らすんじゃないかってほど目を大きく見開いてて、先生でも歩いてたのかな?
「なんだ、あれ……」ジンもだった。2人の見つめるその先には……ってえええええええ!?
クマだ。いや、クマだけどもそうじゃなくて。白と黒とのツートンカラーのあいつは、パンダぁ!?
けどパンダとはいっても動物園て見るようなかわいい姿じゃない。デカすぎるんだ。ぱっと見2メートルは余裕で超えてる。おまけに丸っこくない、例えるなら、プロレスラーがパンダのぬいぐるみに無理やり入ったかのような、つまりはガタイ良すぎてピンと背筋の伸びた姿だ。
そんなヤバげなパンダが、目の前の横断歩道をきちんと青信号で渡ってる。それも手をあげて。止まってる車の中にいる人も驚いた顔でずっと見てる、当たり前だけど。
「コタロー、刀は?」
「ええ、間違いないです」つまりはワーパンダってことか。背負ってる鵼斬りを軽く引き抜くと、刀身が青白く光を放っていたし。
でも……そう。敵意が全く見えてこないんだ。
イノシシだってコアラだってイタチだって、俺たちを目にするなりすぐ襲いかかってきた。つまりそんだけあいつらは凶暴だった、だけどこのパンダは変だ。ジンを含む3人共に奴と目が合ったのに完全スルー。イベントの着ぐるみの出来損ないみたいなその姿勢がいい巨体は、俺たちのことなんて全然構うことなくひょこひょこ歩いて、そのまま近くの林へと姿を消した。なんだよそれ!?
「分かったかタケル?」
「うん、敵意全然無かった……」ジンもそれに感付いてた。凶暴性も敵意もゼロ。しかも青信号をきちんと守って渡った優等生パンダだ。
つまり、いま俺たちは手を出しちゃいけないってことにも気づいてたってことかな。
あ、スマホ持ってたから撮っとけばよかった……いまさら。