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@ 37話

ー/ー



 渾身のバックフリップアイアンクロス! 僕が初めて飛んだトリック。雪飛沫が僕を追うように弧を描く。空と地面が交互に入れ替わる。
 自分の体重をしっかり受け止めて着地する。後はスピード勝負だ!






 フィニッシュラインを潜り抜ける……。ゴールエリアの観客たちは大歓声だ。それだけでも分かる、いい滑りができた……見ている人が喜ぶ滑りを。
 千晶が僕の横に並ぶ。全力を尽くした。急激に疲れが襲う、膝が揺れる。喉がカラカラだ、息が切れて酸素が足らない。
 そんな僕を千晶が支えてくれた。雪は眩しいほど輝いている。




 二人がジャッジを待つ、緊張の場面だ……五人の審判員各5点の持ち点をターン・タイム・エアそれぞれ採点して得点数の多い方が勝者となる。


 青:碓氷千晶15・赤:冴木空澄10




 全ての審判員が千晶に3点、空澄に2点をつけた……。先にフィニッシュラインを割ったのは千晶だった。
 負けた……第一エアは千晶もコーク1080を飛んでいた。全力を出し切った僕は結局、ターン・エア・タイム全てにおいて及ばなかった。
 奇跡は起きなかった……どうしても越えられない壁。それでも千晶が横を滑ってくれたからこそ、千晶がいたからこそ僕に最高の滑りが引き出されたと理解した。


「上手くなったな、モーグル」


 千晶が僕に呟いた。それは対岸何て遠いところからではなく、すぐ近くで言われている実感だ。驚いて僕が千晶を見ると、千晶は照れて慌ててそっぽを向いた。そんなこと言われたら……もう、モーグルは辞めれない。やっぱり雪は、ほんのり温かい。
 そんな僕らを暖空が笑顔で見守っていた。


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 渾身のバックフリップアイアンクロス! 僕が初めて飛んだトリック。雪飛沫が僕を追うように弧を描く。空と地面が交互に入れ替わる。
 自分の体重をしっかり受け止めて着地する。後はスピード勝負だ!
 フィニッシュラインを潜り抜ける……。ゴールエリアの観客たちは大歓声だ。それだけでも分かる、いい滑りができた……見ている人が喜ぶ滑りを。
 千晶が僕の横に並ぶ。全力を尽くした。急激に疲れが襲う、膝が揺れる。喉がカラカラだ、息が切れて酸素が足らない。
 そんな僕を千晶が支えてくれた。雪は眩しいほど輝いている。
 二人がジャッジを待つ、緊張の場面だ……五人の審判員各5点の持ち点をターン・タイム・エアそれぞれ採点して得点数の多い方が勝者となる。
 青:碓氷千晶15・赤:冴木空澄10
 全ての審判員が千晶に3点、空澄に2点をつけた……。先にフィニッシュラインを割ったのは千晶だった。
 負けた……第一エアは千晶もコーク1080を飛んでいた。全力を出し切った僕は結局、ターン・エア・タイム全てにおいて及ばなかった。
 奇跡は起きなかった……どうしても越えられない壁。それでも千晶が横を滑ってくれたからこそ、千晶がいたからこそ僕に最高の滑りが引き出されたと理解した。
「上手くなったな、モーグル」
 千晶が僕に呟いた。それは対岸何て遠いところからではなく、すぐ近くで言われている実感だ。驚いて僕が千晶を見ると、千晶は照れて慌ててそっぽを向いた。そんなこと言われたら……もう、モーグルは辞めれない。やっぱり雪は、ほんのり温かい。
 そんな僕らを暖空が笑顔で見守っていた。