@ 31話
ー/ー
一回戦を勝ち上がれば二回戦では千晶との対戦だ。千晶に勝てれば表彰台が見える。
デュアルモーグルは二人で同時に滑る『対戦型』のトーナメントだ。一回戦は相手がエアの着地でバランスを崩し、そのままコブに入ったため転倒、そのおかげで僕は勝てた。タイムは29.70と1位の23秒台と大きく離れた平凡なタイムだったのに。
僕が静かに闘志を燃やす中、暖空は浮かない顔していて、いつもの笑顔を見せない。
「暖空、スランプなんだ」
僕の側にきた千晶が教えてくれた。
ターンのトレンドが上半身のぶれの大きいカーヴィングターン(スキーを縦方向に滑らせるターン)から上半身のぶれのより少ないスライドターン(スキー板を横にスライドさせるターン)に変わった。採点もそれに準じている。これは本来モーグルのターンの定義に『横や斜めに板をスライドさせない』が含まれている中、スピードの乗りやすいスライドターンの減点が緩和されることで、ターン技術の採点ウェイトを蔑ろにする、乱暴に言えば『速けりゃいい』が認められたとも言える。
僕たち上村愛子に魅せられた世代はこれに苦しんでいた。トップクラスの人たちは、僕なんかが見えていないものを見ている。光さえも通ることができないような僅かな隙間が見ることができる、その気づきが超一流の世界へと誘う。
スライドターンが途方もなく難しいわけではない。しかし天才たちも練習を積み重ね、自信をつけて本番に臨む。やはり天才たちも積み上げたものなくしては、その才能だけで最高のパフォーマンスを発揮できない。
暖空にいつもの笑顔がない……僕は暖空を二人っきりの場所へと呼び出した。
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僕が静かに闘志を燃やす中、暖空は浮かない顔していて、いつもの笑顔を見せない。
「暖空、スランプなんだ」
僕の側にきた千晶が教えてくれた。
ターンのトレンドが上半身のぶれの大きいカーヴィングターン(スキーを縦方向に滑らせるターン)から上半身のぶれのより少ないスライドターン(スキー板を横にスライドさせるターン)に変わった。採点もそれに準じている。これは本来モーグルのターンの定義に『横や斜めに板をスライドさせない』が含まれている中、スピードの乗りやすいスライドターンの減点が緩和されることで、ターン技術の採点ウェイトを蔑ろにする、乱暴に言えば『速けりゃいい』が認められたとも言える。
僕たち上村愛子に魅せられた世代はこれに苦しんでいた。トップクラスの人たちは、僕なんかが見えていないものを見ている。光さえも通ることができないような僅かな隙間が見ることができる、その気づきが超一流の世界へと|誘《いざな》う。
スライドターンが途方もなく難しいわけではない。しかし天才たちも練習を積み重ね、自信をつけて本番に臨む。やはり天才たちも積み上げたものなくしては、その才能だけで最高のパフォーマンスを発揮できない。
暖空にいつもの笑顔がない……僕は暖空を二人っきりの場所へと呼び出した。