@ 30話 笑顔
ー/ー
2010年、18歳。田沢湖の大会デュアルモーグルに出場していた。
この年はバンクーバーオリンピックが開催され、上村愛子選手は4位だった。この時のインタビューで『何で一段一段なんだろう』と大粒の涙を流したのが印象的だ。
長野7位、ソルトレイク6位、トリノ5位、そしてバンクーバー4位……どうしてもメダルに届かない……。
涙は似合わない……僕からすれば彼女は『成功者』だ。オリンピックを目標にする人たちが少なくない中、彼女はすでに4回も出場している、『夢をかなえた人』の部類に入るはず。しかし彼女は涙する……。
偉人たちの軌跡は常に『成功体験』。成功を知ることで、その何百万倍もいる失敗者たちの言葉を押さえて『諦めない』ことがその秘訣とされる。
しかし僕は感じた……才能者で勝ち組と思われる上村愛子もまた、チャレンジャーなのだ。諦めないのは何か……『挑戦』と『成功した姿の自分』。ここが自身の限界だ、と決めた者から脱落していく勝負の世界。
才能ある失敗者だって大勢いる。現状に満足した者から取り残され、才能は朽ち果てていく……。
『才能がない』と思う人は、折角あるかもしれない『才能を入れる器』が圧倒的に足りてない。無能な僕ができることは、あるかもしれない才能を信じてその才能を満たせる準備と挑戦をし続けるしかない。結果と才能は後からついてくる。
所詮『才能』とは他人の評価だ。うぬぼれている奴なんかいない。
上村愛子の涙は僕の悩みなんて『できない奴の言い訳だ』と切り捨ててくれた。
* * *
『お前も飛ぶのが好きだったら、難易度の高いトリックを身に付けろよ。それが自信にもなって……』千晶は簡単にそんなことを言っていたけど、3Dエアがそんなに甘いはずであるわけない。僕は特訓に次ぐ特訓を重ねるしかなかった。
吹っ切れた僕は自信を携えて田沢湖に来た。練習での成功率はまだ50%だけれども、最高難度のトリック、コーク(斜め回転)と(1080度・横3回転)を組み合わせた大技『コーク1080』を引っ提げて僕はこの大会に臨む。
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才能ある失敗者だって大勢いる。現状に満足した者から取り残され、才能は朽ち果てていく……。
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所詮『才能』とは他人の評価だ。うぬぼれている奴なんかいない。
上村愛子の涙は僕の悩みなんて『できない奴の言い訳だ』と切り捨ててくれた。
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『お前も飛ぶのが好きだったら、難易度の高いトリックを身に付けろよ。それが自信にもなって……』千晶は簡単にそんなことを言っていたけど、3Dエアがそんなに甘いはずであるわけない。僕は特訓に次ぐ特訓を重ねるしかなかった。
吹っ切れた僕は自信を携えて|田沢湖《ここ》に来た。練習での成功率はまだ50%だけれども、最高難度のトリック、コーク(斜め回転)と(1080度・横3回転)を組み合わせた大技『コーク1080』を引っ提げて僕はこの大会に臨む。