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@ 24話

ー/ー



 足元の雪しか見えない。頭も視界も真っ白だ。まるで吹雪の中を滑っているようだった。立ち上がって競技を再開したが足に力が入らない。膝が笑っている。立ち上がっては転び、また立ち上がっては転んだ……。僕は文字通り転がり落ちた。


 フィニッシュラインを何とか越えると失笑の渦だった。


「アイツ、何しに来たんだよ」
「スキーしたことないんじゃね?」
「小学生の方がまだ滑れるよ」
「恥ずかしいったらありゃしねぇ―な」
「よく大会にエントリーできたな」






 ゴールエリアに集まる観客の声がハッキリ声が聞こえる。僕はただ下を向くしかできなかった。






「一生懸命やっている人にそんなこと言わないで!」


 暖空だった。その一声で一瞬静けさが流れる。しかしそれは一瞬だけのことだった。不特定多数の中に隠れた誰かが呟いた。


「あれ、雪ノ瀬暖空じゃね?」
「そう言えばアイツ、碓氷千晶とも仲良く話してたな」
「何であんな奴が雪ノ瀬や碓氷と?」
「雪ノ瀬って最近調子に乗ってね?」
「ちょっと可愛いからってチヤホヤされて、な」
「ゲレンデだからだ、つーの」


 悪口は暖空にまで広がる。


「おい! 今言った奴出て来い!」


 千晶が客席に詰め寄る。


「碓氷、アイツもムカつくよな」
「しょぼいエアしかできねーくせに」
「あんな奴と一緒に居るわけだ。まともにターンできない奴とエア飛べない奴」
「だせぇ〜んだよ」


「空澄も暖空のこともバカにするんじゃねー! ふざけんな出て来いオラァ!」


 千晶が観客席になだれ込む……最悪の事態になった。僕のせいだ……。気が付くと僕は声を出して泣いていた。みんなに聞こえるほど大きな声で。


「ちっ、何だアイツ大声で泣きやがって。みっともねぇ」
「泣くならあんな惨めな滑走するんじゃねぇーよな」
「何かしらけちまったな」


 モーグルをやっている人間ならだれでも知っている。トリックが複雑であればあるほど、ジャンプの高さが必要となる。その分タイムが落ちる。だから難易度の高いエアは諸刃の剣ともいえる。千晶は難易度の高いトリックができないわけではない、ターン・タイム・エアのバランスを考えトリックを選択しているに過ぎない。僕のせいで千晶は謂れのない罵声を浴びせられたのだ……乱闘騒ぎは僕の泣き声で幕を閉じた。


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 足元の雪しか見えない。頭も視界も真っ白だ。まるで吹雪の中を滑っているようだった。立ち上がって競技を再開したが足に力が入らない。膝が笑っている。立ち上がっては転び、また立ち上がっては転んだ……。僕は文字通り転がり落ちた。
 フィニッシュラインを何とか越えると失笑の渦だった。
「アイツ、何しに来たんだよ」
「スキーしたことないんじゃね?」
「小学生の方がまだ滑れるよ」
「恥ずかしいったらありゃしねぇ―な」
「よく大会にエントリーできたな」
 ゴールエリアに集まる観客の声がハッキリ声が聞こえる。僕はただ下を向くしかできなかった。
「一生懸命やっている人にそんなこと言わないで!」
 暖空だった。その一声で一瞬静けさが流れる。しかしそれは一瞬だけのことだった。不特定多数の中に隠れた誰かが呟いた。
「あれ、雪ノ瀬暖空じゃね?」
「そう言えばアイツ、碓氷千晶とも仲良く話してたな」
「何であんな奴が雪ノ瀬や碓氷と?」
「雪ノ瀬って最近調子に乗ってね?」
「ちょっと可愛いからってチヤホヤされて、な」
「ゲレンデだからだ、つーの」
 悪口は暖空にまで広がる。
「おい! 今言った奴出て来い!」
 千晶が客席に詰め寄る。
「碓氷、アイツもムカつくよな」
「しょぼいエアしかできねーくせに」
「あんな奴と一緒に居るわけだ。まともにターンできない奴とエア飛べない奴」
「だせぇ〜んだよ」
「空澄も暖空のこともバカにするんじゃねー! ふざけんな出て来いオラァ!」
 千晶が観客席になだれ込む……最悪の事態になった。僕のせいだ……。気が付くと僕は声を出して泣いていた。みんなに聞こえるほど大きな声で。
「ちっ、何だアイツ大声で泣きやがって。みっともねぇ」
「泣くならあんな惨めな滑走するんじゃねぇーよな」
「何かしらけちまったな」
 モーグルをやっている人間ならだれでも知っている。トリックが複雑であればあるほど、ジャンプの高さが必要となる。その分タイムが落ちる。だから難易度の高いエアは諸刃の剣ともいえる。千晶は難易度の高いトリックができないわけではない、ターン・タイム・エアのバランスを考えトリックを選択しているに過ぎない。僕のせいで千晶は謂れのない罵声を浴びせられたのだ……乱闘騒ぎは僕の泣き声で幕を閉じた。