「空澄くん……」
「空澄……もう泣くんじゃねーよ」
「うん……ごめんね二人とも……ありがとう……」
川がある……天の川のように1年に1度しか会えない訳ではないが、大会でしか会えないのにこの川を僕は渡れない……。千晶と暖空、2人は対岸にいるのに……。
その川は氷が張っていてどこを歩けばいいのか分からないように雪が覆っている。僕はいつもその氷の薄いところを踏んでしまって向こう岸へとたどり着かない。『どうして僕は飛べないんだろう』そう思うほどに。
二人はいつだって僕に笑顔で手を差し伸べてくれているのに……。
僕のために謂れのない悪口をぶつけられて、僕のために怒ってくれる、そして僕にまた笑顔をくれる。スキー部のとき僕はただ下を向いていただけだった。あの時が思い起こされる、情けない過去の僕。
僕は嬉しかったんだ……そんな友達、今までいなかったから。僕は今、悔しくて泣いたんじゃない。僕のために酷いことを言われている二人に、僕のために言い返してくれる二人に涙したのだった。
あの日と同じように青い空は雲一つないのに、僕が立っている雪は真っ白くない……いつも何かで濁っている。
「明日笑うために、今日を頑張ろう……空澄くん、笑おう!? 笑った方がいいよ」
泣いている僕に暖空は言った。『憧れのあの人』もイジメにあっていたことを聞いたことがある。
子どもの頃、『学校に行きたくないな』と思いながら下を向いて、自分の足元を見て歩いていても、一歩ずつ足を動かしていると、いつの間にか学校に着いている。そのとき『頑張って歩き始めれば、いつか目的地にたどり着く』ということを実感したという。今日の一歩を踏み出すことで、明日が変わる。
あの人の笑顔はそうやって培われてきた。
『困難のない人生は“無難”な人生、困難のある人生は“有難い”人生』