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@ 20話

ー/ー





 練習を切り上げて、女子CCに出場する先輩の応援にと試合場へと足を運ぶと千晶がいた。たくさんの仲間に囲まれて楽しそうに話す千晶。部活のメンバーじゃないのにみんなの輪の中心にいて、大笑いしている。


 遠くからそれを見ている僕に暖空が声を掛けてくれた。


 


「空澄君、少しお茶でもしない?」


 


 僕はその微笑みに誘われて休憩所について行く。


 


「千晶は学校でも人気モノなんだね」


「そ、男にも女にも、何故か人気あるのよね、アイツ」


 


 ため息交じりの言葉を吐いて悪戯に頬を膨らませてみせる。屋内でも吐く息は空気を白く濁らせる。


 


「これじゃあ……久しぶりだけど、あんまり話せないかなぁ」


「私では不満?」


「そんなこと……僕は暖空と話せた方が嬉しいよ」


「ふふ……嬉しいわね」


「でも千晶にはもっと色々教えてもらわないと……暖空が言ったんだからね、モーグル、千晶に教われって」


「そうね……でも千晶、最近私とは口きいてくれないんだ」


 


 そう言って暖空はまたため息を吐いた。今度は目を伏せて……。


 


 


 薪割のように縦に割った大木をイメージするような丈夫なベンチに腰を掛ける。丸太小屋のコンセプトに合っているが、どこのスキー場も似たようなロッジテイストで代り映えもしない。


 周囲はブーツのせいでぎこちなく歩く人たちが行きかう。コーヒーを飲んで座っていると、暖空というブランドに惹かれていろんな高校の男子たちが暖空の周りに集まってきた。そのことだけは普段、僕の周りには起き得ない様相。落ち着かない。


 


 


 


「雪ノ瀬さんじゃない?」


「俺とお茶しようよ」


「ファンなんです」


 


 次々と現れる男たちの『何だお前?!』という視線に耐えかねたのと、男たちが群がる輪の向こうに不機嫌な顔を向けている千晶を見つけて僕は席を立つ。


 レストランを出ると千晶の姿が見えない。


 


 騒がしい人だかりができているその中に千晶を発見した。カラフルなウェアに囲まれて雪上に花が咲いたように女性たち囲まれている千晶。


 千晶と暖空、同学校の同学年の才能ある美男美女、二人並んで(●●●●●)話題にされることが多い。W杯で活躍している二人には、ファンも多いようだ。


 


 


「今日は誰の応援?」


「うちの高校」


「スキーしてない時は可愛い~」


「可愛いって言うな! スキーしてる時は凛々しいだろ?」


 


 段々と騒ぎが大きくなっていく。女子たちの黄色い声で埋もれて行く。


 


「私にスキー教えて~」「あ、私も!」「千晶君はスキー下手な人はお断りなのよ、ね~」「雪ノ瀬暖空とは付き合っているの?」「悔しいけどお似合いよね~」「天才同士」


「暖空? スキーが上手い奴は嫌だね、可愛くない……」


 


 千晶の言葉は深く吐きだされた白い息のようにすぐには消えてなくならなかった。しばらく辺りを漂っていたように思う。


 そんなことも気付かない千晶はさらに言葉を重ねる。どうしてだろう? 雪は音も何もかも隠してくれるときと、雪の白がくっきりと爪痕を残すとき……。矛盾した二つの力を突き付ける。


 


「あ、さっきの彼女、スキー教えてあげるよ、この後一緒にどう?」


 


 その時僕はハッと振り返った。そこには僕のコーヒーをもって追いかけて来てくれた暖空の姿があった。


 


「暖空……」


 


 僕が暖空に近寄って受け取ろうとしたコーヒーは暖空の手から滑り落ちた。300円のコーヒーは白い雪を茶色く濁して溶かした。




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 遠くからそれを見ている僕に暖空が声を掛けてくれた。
「空澄君、少しお茶でもしない?」
 僕はその微笑みに誘われて休憩所について行く。
「千晶は学校でも人気モノなんだね」
「そ、男にも女にも、何故か人気あるのよね、アイツ」
 ため息交じりの言葉を吐いて悪戯に頬を膨らませてみせる。屋内でも吐く息は空気を白く濁らせる。
「これじゃあ……久しぶりだけど、あんまり話せないかなぁ」
「私では不満?」
「そんなこと……僕は暖空と話せた方が嬉しいよ」
「ふふ……嬉しいわね」
「でも千晶にはもっと色々教えてもらわないと……暖空が言ったんだからね、モーグル、千晶に教われって」
「そうね……でも千晶、最近私とは口きいてくれないんだ」
 そう言って暖空はまたため息を吐いた。今度は目を伏せて……。
 薪割のように縦に割った大木をイメージするような丈夫なベンチに腰を掛ける。丸太小屋のコンセプトに合っているが、どこのスキー場も似たようなロッジテイストで代り映えもしない。
 周囲はブーツのせいでぎこちなく歩く人たちが行きかう。コーヒーを飲んで座っていると、暖空というブランドに惹かれていろんな高校の男子たちが暖空の周りに集まってきた。そのことだけは普段、僕の周りには起き得ない様相。落ち着かない。
「雪ノ瀬さんじゃない?」
「俺とお茶しようよ」
「ファンなんです」
 次々と現れる男たちの『何だお前?!』という視線に耐えかねたのと、男たちが群がる輪の向こうに不機嫌な顔を向けている千晶を見つけて僕は席を立つ。
 レストランを出ると千晶の姿が見えない。
 騒がしい人だかりができているその中に千晶を発見した。カラフルなウェアに囲まれて雪上に花が咲いたように女性たち囲まれている千晶。
 千晶と暖空、同学校の同学年の才能ある美男美女、|二人並んで《●●●●●》話題にされることが多い。W杯で活躍している二人には、ファンも多いようだ。
「今日は誰の応援?」
「うちの高校」
「スキーしてない時は可愛い~」
「可愛いって言うな! スキーしてる時は凛々しいだろ?」
 段々と騒ぎが大きくなっていく。女子たちの黄色い声で埋もれて行く。
「私にスキー教えて~」「あ、私も!」「千晶君はスキー下手な人はお断りなのよ、ね~」「雪ノ瀬暖空とは付き合っているの?」「悔しいけどお似合いよね~」「天才同士」
「暖空? スキーが上手い奴は嫌だね、可愛くない……」
 千晶の言葉は深く吐きだされた白い息のようにすぐには消えてなくならなかった。しばらく辺りを漂っていたように思う。
 そんなことも気付かない千晶はさらに言葉を重ねる。どうしてだろう? 雪は音も何もかも隠してくれるときと、雪の白がくっきりと爪痕を残すとき……。矛盾した二つの力を突き付ける。
「あ、さっきの彼女、スキー教えてあげるよ、この後一緒にどう?」
 その時僕はハッと振り返った。そこには僕のコーヒーをもって追いかけて来てくれた暖空の姿があった。
「暖空……」
 僕が暖空に近寄って受け取ろうとしたコーヒーは暖空の手から滑り落ちた。300円のコーヒーは白い雪を茶色く濁して溶かした。