天地がひっくり返っている。空が光っているのか雪が輝いているのかさえ分からない。いつの間に手や足から伝わっていた雪を感じなくなっていた。重力0の浮遊感。再びゆっくりと天地が元に戻っていく……。
刹那、ものすごい衝撃。体中が押しつぶされるような圧迫感を感じる。痛い、なんて思う間もなかった……。僕は思った……こりゃ……骨が折れたかな……。
***
「アイツ……上手くピボットも使えてたな」
目を覚ますと、千晶の声が聞こえてきた。どうやら暖空と話をしているようだ。
「アイツ……冴木空澄って言ったか? 無茶しやがって……」
「千晶が挑発するような技、見せつけるから……」
やっぱり僕は転んだらしい……どうやって転んだか、覚えていない。ターンでミスはなかったはず。二人の会話からしてもコブで転んだわけではないようだ。なぜならピボットターンは、ブーツを中心として最小半径で回る技術だ。これがうまく使えていたのならスピードコントロールもできていたはずだから。
「アイツ……やったこともないくせにエアなんかやりやがって……」
「いきなりのバックフリップなんて……私たちの方が驚いちゃったわよ……ね?」
そうか……僕、気持ち良くなっちゃって、エアなんて飛んじゃったのか……。そりゃいきなり上手く着地なんかできないよな。
「あ、気付いたみたい……大丈夫?」
「……ったく……調子に乗ってんじゃねーよ」
僕は笑って誤魔化す。
「モーグル……嫌いになっちゃった?」
暖空が心配そうに覗き込んで来る。顔が……近い。僕もあの瞬間……天地がひっくり返った瞬間、見えたんだ……白と黒しかなかった景色に青色のキャンバスが……。