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@ 1話 出会い

ー/ー





 毎年お盆の時期と正月の時期夏と冬に、僕はお祖母ちゃんのいる長野へ遊びに来ていた。


 父も母も『夏の方が涼しくていいな、冬は雪ばっかりで来るのも大変だ』とお祖母ちゃんの家に着くたびに同じことを言う。


 でも僕は冬が好きだった。雪が好きだった。自宅は都会とは言えなかったけれど、ここに来ると夏と違って蝉が鳴いているわけでもなく、余計な雑音はすべて雪が吸い取ってくれる。


 リフトを伝って山に登れば、リフトの音さえも山と雪が隠してくれて、目の前に広がるのは、眩しいばかりの白と黒のコントラストだけだ。


 


 雪はただそこに在るだけで全てを覆いつくしてくれる。真っ白く……只々真っ白に心までも塗りつぶしていく。葉もない木に降り積もった雪は木の色を黒く見せる。


 ピアノの鍵盤ほど白黒隔たれていないそれは、まるで水墨画の世界。淋しさを感じさせる中で柔らかく、どこかほんのり温かい……そう、雪は温かい……。情調が冷たいせいか、雪を見ていると心の方が少し温かくなる。


 


 新年正月が心機一転、真っ白なところからスタートを切るように、全てがリセットされたようで雪の降る季節のこの場所が好きだった。


 


 


***


 


 


 2006年、中学二年生、14歳のことだった。僕、冴木空澄(さえきあすみ)はいつもと同じように正月、お祖母ちゃんの家に帰省すると、僕はいつもと同じように山へと入った。


 


 シーズンのスキー場はどこも混み合う。帰省している家族連れはもちろん、大学のサークルや恋人たち、出会い目的の男女、エトセトラ・エトセトラ……。


 この年は2月10日から始まるトリノオリンピック開催でスキー客たちは盛り上がっていた。


 


 それなりにスキーの腕前に自信のあった僕は、人混みを避けるように地元民しか立ち入らない、コース外へと足を踏み入れた。


 リフトを降りると、『コース外危険』と看板が警告する方、所謂バックカントリーへと向かう。スキー客たちが踏み入れていない雪は、優しく僕を迎え入れたようにみえた。




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 毎年お盆の時期と正月の時期夏と冬に、僕はお祖母ちゃんのいる長野へ遊びに来ていた。
 父も母も『夏の方が涼しくていいな、冬は雪ばっかりで来るのも大変だ』とお祖母ちゃんの家に着くたびに同じことを言う。
 でも僕は冬が好きだった。雪が好きだった。自宅は都会とは言えなかったけれど、ここに来ると夏と違って蝉が鳴いているわけでもなく、余計な雑音はすべて雪が吸い取ってくれる。
 リフトを伝って山に登れば、リフトの音さえも山と雪が隠してくれて、目の前に広がるのは、眩しいばかりの白と黒のコントラストだけだ。
 雪はただそこに在るだけで全てを覆いつくしてくれる。真っ白く……只々真っ白に心までも塗りつぶしていく。葉もない木に降り積もった雪は木の色を黒く見せる。
 ピアノの鍵盤ほど白黒隔たれていないそれは、まるで水墨画の世界。淋しさを感じさせる中で柔らかく、どこかほんのり温かい……そう、雪は温かい……。情調が冷たいせいか、雪を見ていると心の方が少し温かくなる。
 新年正月が心機一転、真っ白なところからスタートを切るように、全てがリセットされたようで雪の降る季節のこの場所が好きだった。
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 2006年、中学二年生、14歳のことだった。僕、|冴木空澄《さえきあすみ》はいつもと同じように正月、お祖母ちゃんの家に帰省すると、僕はいつもと同じように山へと入った。
 シーズンのスキー場はどこも混み合う。帰省している家族連れはもちろん、大学のサークルや恋人たち、出会い目的の男女、エトセトラ・エトセトラ……。
 この年は2月10日から始まるトリノオリンピック開催でスキー客たちは盛り上がっていた。
 それなりにスキーの腕前に自信のあった僕は、人混みを避けるように地元民しか立ち入らない、コース外へと足を踏み入れた。
 リフトを降りると、『コース外危険』と看板が警告する方、所謂バックカントリーへと向かう。スキー客たちが踏み入れていない雪は、優しく僕を迎え入れたようにみえた。