1

ー/ー



さっきから、俺のことをずっと見続けている女がいる。
年齢的には……そうだな。タケル達よりずっと上だ。けどまだまだ若い。

腰の下くらいまでの長い真っ白な服を着て、メガネをかけた金髪カールの、つまりは日本人じゃなさそうだな。

「かわいいね、キミ」
おもむろにそばに寄ってきて、俺と目線を合わせてきて、そんな一言。
流暢な日本語だ、まあ俺にだって言葉はある程度分かるさ。
細い指で俺の頭の毛を撫で付ける。この手の女にありがちなキツ目の香水の匂いは全くない。つまりは好感の持てる人間だ。だから俺は彼女の手をぺろんと舐めた。

もう一発かわいいってな。この言葉に嘘偽りはない、ならばもう少し相手を……
「なるほどね、オオカミにしては結構従順だな」

思わず後ろへと飛び退いた!
なんだコイツいきなり? 誰もがみんな俺のことを犬と言っていた、だがコイツは俺の正体を知っているだと……?
毛を逆立て牙を剥く。低く唸り声を上げて……そうすればたいていの人間はすぐに怖がって去っちまうはずだ。だがこの女はずっと笑みを崩さない。何か隠しているとでも?

「全身の傷跡からしておそらく、ボス格の争いに負けたって感じかな?」
「それ以上しゃべるんじゃねえ……さもないと」
「さもないと、どうすんの?」
そう言われて気がついた、この女……いまの俺の言葉に答えた?
知っての通り俺はオオカミだ。つまりは人間どもと会話なんて出来るはずもなく。
まあ例外はタケルか。アイツはオオカミの血が流れているからな、普通に会話ができるんだ。
それとコタロー。敢えてあいつと会話は出来る様に心の奥底で通じるようにした。どんな原理かは俺だって知らねえがな。

で、つまりこの女もタケル同様に動物の血が流れているか、もしくは……スピリットに取り憑かれているか。
だとすれば俺はこの首輪を引きちぎり、もう一つの姿で戦うだけだ!

「ノーノー、私はアナタと戦う気はないよ、ただちょっと道を聞きたいだけ」
あまりに的外れな、しかし的を得ない答えに俺はしばらく呆然とした。道を教えろだと……?
「小学校ね。今度赴任することになったから」
「なら……向かいの道路を渡って10分くらい真っ直ぐだ」

サンキューと一言。女は俺の鼻先に軽くキスをしてくれた。
ドクンと鼓動が高鳴る……ああ、悪くねえ。けど……

「な、名前だけでも教えてくれるか?」
やべえ、なぜ動揺してるんだ俺。人間の若い女がキスしてくれたからか? 不甲斐ねえな俺も。
「リプリス・リー=リカルド。ちょっと覚えにくいかもしれないから、リリーでいいよ」
「あ、いや、それと何故俺のことを……」微笑みと共にあいつ……いや、リリーは小走りで正面の横断歩道を渡って去っちまった。

敵意は全く見えてこない。だが分からねえことだらけだ。しかし……また、会えそうな感じはしてたな。

ちょっぴり、胸の奥底が嬉しかった。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 2


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



さっきから、俺のことをずっと見続けている女がいる。
年齢的には……そうだな。タケル達よりずっと上だ。けどまだまだ若い。
腰の下くらいまでの長い真っ白な服を着て、メガネをかけた金髪カールの、つまりは日本人じゃなさそうだな。
「かわいいね、キミ」
おもむろにそばに寄ってきて、俺と目線を合わせてきて、そんな一言。
流暢な日本語だ、まあ俺にだって言葉はある程度分かるさ。
細い指で俺の頭の毛を撫で付ける。この手の女にありがちなキツ目の香水の匂いは全くない。つまりは好感の持てる人間だ。だから俺は彼女の手をぺろんと舐めた。
もう一発かわいいってな。この言葉に嘘偽りはない、ならばもう少し相手を……
「なるほどね、オオカミにしては結構従順だな」
思わず後ろへと飛び退いた!
なんだコイツいきなり? 誰もがみんな俺のことを犬と言っていた、だがコイツは俺の正体を知っているだと……?
毛を逆立て牙を剥く。低く唸り声を上げて……そうすればたいていの人間はすぐに怖がって去っちまうはずだ。だがこの女はずっと笑みを崩さない。何か隠しているとでも?
「全身の傷跡からしておそらく、ボス格の争いに負けたって感じかな?」
「それ以上しゃべるんじゃねえ……さもないと」
「さもないと、どうすんの?」
そう言われて気がついた、この女……いまの俺の言葉に答えた?
知っての通り俺はオオカミだ。つまりは人間どもと会話なんて出来るはずもなく。
まあ例外はタケルか。アイツはオオカミの血が流れているからな、普通に会話ができるんだ。
それとコタロー。敢えてあいつと会話は出来る様に心の奥底で通じるようにした。どんな原理かは俺だって知らねえがな。
で、つまりこの女もタケル同様に動物の血が流れているか、もしくは……スピリットに取り憑かれているか。
だとすれば俺はこの首輪を引きちぎり、もう一つの姿で戦うだけだ!
「ノーノー、私はアナタと戦う気はないよ、ただちょっと道を聞きたいだけ」
あまりに的外れな、しかし的を得ない答えに俺はしばらく呆然とした。道を教えろだと……?
「小学校ね。今度赴任することになったから」
「なら……向かいの道路を渡って10分くらい真っ直ぐだ」
サンキューと一言。女は俺の鼻先に軽くキスをしてくれた。
ドクンと鼓動が高鳴る……ああ、悪くねえ。けど……
「な、名前だけでも教えてくれるか?」
やべえ、なぜ動揺してるんだ俺。人間の若い女がキスしてくれたからか? 不甲斐ねえな俺も。
「リプリス・リー=リカルド。ちょっと覚えにくいかもしれないから、リリーでいいよ」
「あ、いや、それと何故俺のことを……」微笑みと共にあいつ……いや、リリーは小走りで正面の横断歩道を渡って去っちまった。
敵意は全く見えてこない。だが分からねえことだらけだ。しかし……また、会えそうな感じはしてたな。
ちょっぴり、胸の奥底が嬉しかった。