3話 魔物の急増
ー/ー歩いて大体二十分くらいかな。魔法車の停車場まで。
フュリーナと一緒に少し早めに宮を出て向かったからまだ時間がある。この間に、双子姫に土産でも買っておく。
僕はお菓子系に詳しくないけど、今はフュリーナがいるから彼女に聞けば良いものを選んでくれるだろう。
ここは人が少ないからか、停車場の近くにある売店はかなり小さい。でも、珍しいものが多いみたい。都じゃ見ないような魔法具とかが置いてある。
魔法具技師ミーティルシア制作お手軽光魔法具とかある。本人がきていたのかな。じゃないと仕入れなんてできないだろうから。
僕の大切なお姫様のために魔法具買ってあげようかな。あの子は暗いとこがきらいだから喜んでくれそう。
「ベレンジェア様、最近外からきた流行りのクッキーがありますよ。双子姫様へのお土産にぴったりだと思います」
「へぇ、今ってそんなのが流行っているんだ。これにするよ。ありがと」
フュリーナはこういうのが好きなんだろう。楽しそうに見ている。
まだ時間があるから、珍味系をいくつか買っておこうかな。確か、ドクグリクッキーが今のお気に入りとか言っていたけど、他にもこの辺でしか売っていなさそうなものがあれば買っておけば喜んでくれるだろうから。
「……ベレンジェア様ってそういうのが好きなんですね」
「兄が好きなんだ」
「兄……えっと、デューゼ様とルノ様ですか? 」
身分を偽る時に、主様に近い関係でって事で主様のいとこの家名を名乗るように言われている。フュリーナの言う二人は、その主様のいとこに当たる人物。
僕が言っている兄は別なんだ。主様や他の本家の人達でもない。
僕と血の繋がりのある人。
「養子になる前の兄」
全部正直に話すわけにはいかないから、これだけしか言わない。養子だっていうのも主様と考えた設定の一つ。
その兄が誰なのかというのも、関わらない限りは言う必要がない。
「そうだったんですね」
「うん……って、そろそろ時間やばいんじゃない? 早く買って停車場行かないと」
ゆっくり話していて遅れましたなんていうわけにはいかない。
フュリーナと一緒に急いで会計を済ませて、停車場へ急ぐ。
**********
魔法車がくる予定時刻の五分前に停車場に到着。無事乗車。ほんとはもう少し早くに着く予定だったんだけど、入場確認に手間取って遅くなった。
間に合ったから別に良いんだけど。
まさか主様から渡された特別階級身分証が使えないなんて。あれがあれがあれば大丈夫とか言われてもらったのに。
「誰もいませんね」
「こんな時間にこんな田舎で乗る人なんていないんだろうね」
日が暮れてくると魔物が活発になってくる。人が住むような場所は魔物が来ないように対策してあるけど、ここから都へ行く途中、魔物が出やすい森や人が住んでいない平野がある。
魔法車にも一応結界魔法具があるけど、そこまで効果が高いわけではないから魔物の軍団と遭遇してしまえば、結界は壊れ魔法車に被害が出るだろう。
そんな危険を冒してまで魔法車に乗る強者は一人もいないようで、貸切状態だ。
「着くまで時間があるから寝ておけば? 」
「この時間は危険ですので、何かあった時に備えていた方が良いのではないでしょうか」
「主様の護衛を任しても良いような人達がいざという時に備えて待機しているんだから大丈夫でしょ」
結界魔法具を良いものに変えるという事ができない代わりにできた対策。魔物の軍団が来ても対応できるような人がこの時間帯魔法車を任されている。
だからと言って、絶対安全とは限らないんだけど。
「……そうだったんですね。では、少しだけ仮眠をとります」
「うん」
フュリーナが座って仮眠をとる間に、僕はまだ残っている仕事をする。各地にある映像投影魔法具に異常がないかの確認を小型魔法機械でやっておく。
主様が確認できていないだけで、人里に魔物が出ているかもしれないから、毎日魔物による被害がないのか確認しているんだ。
ついでに連絡がきていないかの確認も。
魔法車が都へ着くまで半日くらいくらいかかるから今日はゆっくり確認作業ができる。
「……」
時々見回りで色んな場所に行くけど、全体的にいつもよりも魔物の気配が多いな。念のため主様へ連絡しておいた方が良いかもしれない。
今のとこ確認している映像には魔物の被害はない。でも、今の状態じゃいつ被害が出てもおかしくはないだろう。
魔法車が一番被害に遭いそうだから、今まで以上の対策をしておいた方が良いだろうけど……
現在の結界魔法具が固定型で移動する魔法車のような乗り物に対応していない。どうにか対応する結界魔法具を製作したみたいだけど、強度がかなり落ちている。
夜間なら主宮の精鋭達がどうにかするだろうけど、魔物は日中活動していないわけではない。今のままでは日中の対策が不十分すぎる。
結界魔法具を作るくらいなら僕もできはするけど、時間を取れるか分からない。誰か腕の良い魔法具技師に頼むにしても、移動する乗り物に対して高強度の結界魔法具を作れる魔法具技師なんて一人しか思いつかない。
その魔法具技師は、ミーティルシアという名で活動している。売店にあった魔法具の製作者で、僕の兄。
こうして考えている間にも魔法車は進んでいる。双子宮に行って忙しくなる前に、この魔法車内で対策をある程度考えて連絡する必要がある。
頼めば作ってくれるだろうけど、設計図を描くのが苦手だからあの子が必要になってくる。
あの子への連絡も含めて頼んでみるか。
連絡魔法具で主様にメッセージを送る。忙しいだろうから返事が返ってくるのは遅くなるだろう。
**********
魔法機械で映像を見ていると、日が登ってきた。もうすぐ都に着くだろう。
「フュリーナ、フュリーナ」
都へ着く前にフュリーナを起こす。
「……ベレンジェア様? もうすぐ着くんですか? 」
「うん」
フュリーナが起きて窓を見ている。都は魔物が多く棲みつく危険地帯の魔の森で囲まれている。
今、近くに魔物はいない。暗い色の葉をつける木々が広がっている。
「そういえば双子宮は魔の森を抜けた先にあるのでしたよね? 最近、魔物を良く見かけるらしいので行く時は気をつけてください」
「うん。それってリーグに聞いた? ……軍部は魔物が増えているのを知っているって事か」
主様が知らないのだとすれば、軍部がこの現状を知って放っているって事になるけど……
数年で何が起きたらこんな状況になるんだか。
「双子宮の方は結界魔法で守られているらしいですが、いくら外の子で良い噂がないとしても、子供を魔の森の近くにいさせるなんて……主様は何を考えているのでしょう」
外の子? 双子宮には双子の姫がいる。その姫はかなりのわがまま姫だという噂は知っていたけど、なんでその事を主様は僕に黙っていたんだろう。
双子姫があの子らだって知っていればすぐにでも……だからか。
僕が真っ先に異動届を出すから。
「……双子姫が自分からそこに行きたいって言い出したんじゃない? 誰かの気でも引きたくて」
僕の気を引きたくてそこへ行ったは良いけど、僕の仕事の関係で呼びづらかった。というのも考えられるけど、こっちの方がしっくりくるかな。
僕と一緒に暮らせる場所が欲しい。どんな名目でも良いから、僕と一緒に暮らして恋人気分を味わいたい。
「……って事は、あの噂についても勝手に言われているだけか」
「ベレンジェア様は双子姫様に会った事があるんですか? 」
「うん。多分、主宮にいた時に……もう都だ。降りないと」
良かった。これ以上何か聞かれる前に魔法車が止まって。
双子姫が誰なのか。なぜ神獣でないのに主様が直々にギュリエンでおいているのか。
知られない方が良い事だから。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
歩いて大体二十分くらいかな。魔法車の停車場まで。
フュリーナと一緒に少し早めに宮を出て向かったからまだ時間がある。この間に、双子姫に土産でも買っておく。
僕はお菓子系に詳しくないけど、今はフュリーナがいるから彼女に聞けば良いものを選んでくれるだろう。
ここは人が少ないからか、停車場の近くにある売店はかなり小さい。でも、珍しいものが多いみたい。都じゃ見ないような魔法具とかが置いてある。
魔法具技師ミーティルシア制作お手軽光魔法具とかある。本人がきていたのかな。じゃないと仕入れなんてできないだろうから。
僕の大切なお姫様のために魔法具買ってあげようかな。あの子は暗いとこがきらいだから喜んでくれそう。
「ベレンジェア様、最近外からきた流行りのクッキーがありますよ。双子姫様へのお土産にぴったりだと思います」
「へぇ、今ってそんなのが流行っているんだ。これにするよ。ありがと」
フュリーナはこういうのが好きなんだろう。楽しそうに見ている。
まだ時間があるから、珍味系をいくつか買っておこうかな。確か、ドクグリクッキーが今のお気に入りとか言っていたけど、他にもこの辺でしか売っていなさそうなものがあれば買っておけば喜んでくれるだろうから。
「……ベレンジェア様ってそういうのが好きなんですね」
「兄が好きなんだ」
「兄……えっと、デューゼ様とルノ様ですか? 」
身分を偽る時に、主様に近い関係でって事で主様のいとこの家名を名乗るように言われている。フュリーナの言う二人は、その主様のいとこに当たる人物。
僕が言っている兄は別なんだ。主様や他の本家の人達でもない。
僕と血の繋がりのある人。
「養子になる前の兄」
全部正直に話すわけにはいかないから、これだけしか言わない。養子だっていうのも主様と考えた設定の一つ。
その兄が誰なのかというのも、関わらない限りは言う必要がない。
「そうだったんですね」
「うん……って、そろそろ時間やばいんじゃない? 早く買って停車場行かないと」
ゆっくり話していて遅れましたなんていうわけにはいかない。
フュリーナと一緒に急いで会計を済ませて、停車場へ急ぐ。
フュリーナと一緒に急いで会計を済ませて、停車場へ急ぐ。
**********
魔法車がくる予定時刻の五分前に停車場に到着。無事乗車。ほんとはもう少し早くに着く予定だったんだけど、入場確認に手間取って遅くなった。
間に合ったから別に良いんだけど。
まさか主様から渡された特別階級身分証が使えないなんて。あれがあれがあれば大丈夫とか言われてもらったのに。
「誰もいませんね」
「こんな時間にこんな田舎で乗る人なんていないんだろうね」
日が暮れてくると魔物が活発になってくる。人が住むような場所は魔物が来ないように対策してあるけど、ここから都へ行く途中、魔物が出やすい森や人が住んでいない平野がある。
魔法車にも一応結界魔法具があるけど、そこまで効果が高いわけではないから魔物の軍団と遭遇してしまえば、結界は壊れ魔法車に被害が出るだろう。
そんな危険を冒してまで魔法車に乗る強者は一人もいないようで、貸切状態だ。
「着くまで時間があるから寝ておけば? 」
「この時間は危険ですので、何かあった時に備えていた方が良いのではないでしょうか」
「主様の護衛を任しても良いような人達がいざという時に備えて待機しているんだから大丈夫でしょ」
結界魔法具を良いものに変えるという事ができない代わりにできた対策。魔物の軍団が来ても対応できるような人がこの時間帯魔法車を任されている。
だからと言って、絶対安全とは限らないんだけど。
「……そうだったんですね。では、少しだけ仮眠をとります」
「うん」
フュリーナが座って仮眠をとる間に、僕はまだ残っている仕事をする。各地にある映像投影魔法具に異常がないかの確認を小型魔法機械でやっておく。
主様が確認できていないだけで、人里に魔物が出ているかもしれないから、毎日魔物による被害がないのか確認しているんだ。
ついでに連絡がきていないかの確認も。
魔法車が都へ着くまで半日くらいくらいかかるから今日はゆっくり確認作業ができる。
「……」
時々見回りで色んな場所に行くけど、全体的にいつもよりも魔物の気配が多いな。念のため主様へ連絡しておいた方が良いかもしれない。
今のとこ確認している映像には魔物の被害はない。でも、今の状態じゃいつ被害が出てもおかしくはないだろう。
魔法車が一番被害に遭いそうだから、今まで以上の対策をしておいた方が良いだろうけど……
現在の結界魔法具が固定型で移動する魔法車のような乗り物に対応していない。どうにか対応する結界魔法具を製作したみたいだけど、強度がかなり落ちている。
夜間なら主宮の精鋭達がどうにかするだろうけど、魔物は日中活動していないわけではない。今のままでは日中の対策が不十分すぎる。
結界魔法具を作るくらいなら僕もできはするけど、時間を取れるか分からない。誰か腕の良い魔法具技師に頼むにしても、移動する乗り物に対して高強度の結界魔法具を作れる魔法具技師なんて一人しか思いつかない。
その魔法具技師は、ミーティルシアという名で活動している。売店にあった魔法具の製作者で、僕の兄。
こうして考えている間にも魔法車は進んでいる。双子宮に行って忙しくなる前に、この魔法車内で対策をある程度考えて連絡する必要がある。
頼めば作ってくれるだろうけど、設計図を描くのが苦手だからあの子が必要になってくる。
あの子への連絡も含めて頼んでみるか。
連絡魔法具で主様にメッセージを送る。忙しいだろうから返事が返ってくるのは遅くなるだろう。
**********
魔法機械で映像を見ていると、日が登ってきた。もうすぐ都に着くだろう。
「フュリーナ、フュリーナ」
都へ着く前にフュリーナを起こす。
「……ベレンジェア様? もうすぐ着くんですか? 」
「うん」
フュリーナが起きて窓を見ている。都は魔物が多く棲みつく危険地帯の魔の森で囲まれている。
今、近くに魔物はいない。暗い色の葉をつける木々が広がっている。
「そういえば双子宮は魔の森を抜けた先にあるのでしたよね? 最近、魔物を良く見かけるらしいので行く時は気をつけてください」
「うん。それってリーグに聞いた? ……軍部は魔物が増えているのを知っているって事か」
主様が知らないのだとすれば、軍部がこの現状を知って放っているって事になるけど……
数年で何が起きたらこんな状況になるんだか。
「双子宮の方は結界魔法で守られているらしいですが、いくら外の子で良い噂がないとしても、子供を魔の森の近くにいさせるなんて……主様は何を考えているのでしょう」
外の子? 双子宮には双子の姫がいる。その姫はかなりのわがまま姫だという噂は知っていたけど、なんでその事を主様は僕に黙っていたんだろう。
双子姫があの子らだって知っていればすぐにでも……だからか。
僕が真っ先に異動届を出すから。
「……双子姫が自分からそこに行きたいって言い出したんじゃない? 誰かの気でも引きたくて」
僕の気を引きたくてそこへ行ったは良いけど、僕の仕事の関係で呼びづらかった。というのも考えられるけど、こっちの方がしっくりくるかな。
僕と一緒に暮らせる場所が欲しい。どんな名目でも良いから、僕と一緒に暮らして恋人気分を味わいたい。
「……って事は、あの噂についても勝手に言われているだけか」
「ベレンジェア様は双子姫様に会った事があるんですか? 」
「うん。多分、主宮にいた時に……もう都だ。降りないと」
良かった。これ以上何か聞かれる前に魔法車が止まって。
双子姫が誰なのか。なぜ神獣でないのに主様が直々にギュリエンでおいているのか。
知られない方が良い事だから。