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第62話 絶対零度のバトルフィールド!

ー/ー



 氷の奔流が周辺を覆う。マティアス司令官の放った氷のレーザーは、周辺の大気と大地そのものを凍り付かせる一撃だった。
 白い閃光が屋上全域を走り抜け、地面は瞬時に白化し、厚い霜柱が盛り上がる。
 俺たちは凍り付く冷気の中で息を荒げていた。
 マティアス司令官の氷のレーザーをなんとか軽減したものの、その代償はあまりにも大きかった。
 四肢は痺れ、身体は重く、回復スプレーも焼け石に水だ。
 空気は張り詰め、肺に突き刺さるような痛みを与える。

「ぐっ……冷たっ……! 息が、できねぇぜ……!」
「足が……動かねぇ……!」
「さ、寒い……手が……凍りつく……」
「だ、駄目……体が……重い……!」

 俺たちは凍気に囚われた獲物のように足を床に縫い付けられていた。
 動けば動くほど霜が軋み、骨にまで冷たさが染み込む。模擬戦でこんな物騒な技使うとかウッソだろお前!
 その中を――マティアス司令官が歩いてくる。凍り付いたフィールドをものともせず、重厚な足取りは氷を砕く。

「……これが"アブソリュートゼロ"だ。実戦用なら人体を一瞬で凍らせ、粉砕することも可能だ。今回の模擬戦では威力を大幅に抑えている」
「ファッ!?」

 摸擬戦ならもっと威力抑えとけよ! 周辺凍らせるとかウッソだろお前!

「くっそ……マティアス司令官、洒落になってねぇぞ……!」
「やっぱ最高傑作の人間兵器だぜ……」
「いや……まだだ! 体勢を立て直すんだ」

 俺は凍える手を無理やり動かし、(ムチ)を構える。
 レイさんも竹刀を支え、ミカエルは銃口を向け、ヨウスケは震える手で回復スプレーを握り締めた。
 ヨウスケがスプレーで俺たち全員の体力を回復。
 俺はレイさんとの合体技"炎の鞭"で周辺の氷を溶かしていく。
 冷気は完全には消し切ることができなかったが、これで凍えることなく動けるようになったぜ。

「よーし、ここから反撃いくぜぇ〜」
「一転攻勢だオラァ!」

 その瞬間、マティアス司令官の姿が掻き消えた。
 スラスターの爆音が轟き、黒い閃光が俺たちの頭上を通り抜ける。

「はっや……!!」

 ジェット機さながらの急加速。空気が裂け、白い蒸気の尾が残る。
 視認できた時にはすでに至近距離。俺の背後にバズーカが突きつけられていた。

 ――ズドンッ!

 鋭い砲撃”ラピッドキャノン”が俺の背中を貫いた。
 実弾ではない訓練用の衝撃弾だが、それでも骨を粉砕するような衝撃。俺の身体は無様に地面を転がった。

「ねーイタいーもう! イッタいよもう!」
「タツヤさん!」

 ヨウスケが駆け寄ろうとするが、マティアス司令官はすかさずスラスターを逆噴射。
 地面すれすれを滑走しながらヨウスケの背後に回り込み、両腕に装着していたブレードでヨウスケを斬りつける。

「うわああああっ!!」

 ヨウスケは瞬時に棒を盾にし、ブレードをガードする。だが、ヨウスケとマティアス司令官の力の差は歴然だ。
 ヨウスケは大きなダメージを防げたものの、ブレードを防いだ衝撃で吹っ飛ばされてしまった。
 そこへレイさんが竹刀を振り上げて割って入る。

「動くと当たらないだろォ!?」

 竹刀がマティアス司令官の胴体を叩きつけ、火花が散る。ダメージが通ったみたいだな。
 マティアス司令官はわずかに後退し、旋回。そのまま空中で急制動をかける。

 ――ギィンッ!

 スラスターが逆光を放ち、マティアス司令官は瞬時に軌道を変える。宙返りしながらレイさんの背中へ回り、鋭い蹴りを叩き込んだ。

「ぐはぁっ!!」

 レイさんの身体が宙を舞い、柵に叩きつけられる。

「「レイさぁぁん!!」」

 俺とヨウスケが叫ぶ。そこでミカエルが二丁拳銃でマティアス司令官目掛けて連射した。

「今度こそ……!」
「遅い!」

 マティアス司令官は素早く手榴弾を取り出し、投げつける。

 ――ギィィィィンッ!!

 スタングレネードだ。爆音と閃光が炸裂し、俺たちの視界が真っ白に塗り潰された。
 耳鳴りが鼓膜を叩き、全身がバランスを失う。
 それと同時に、ミカエルが放った銃弾はすべてスタングレネードの爆風ではじき飛ばされてしまった。

「見えねぇ……! 動けねぇ……!」
「くそっ、どこにいる!?」

 その混乱の只中――背後に気配。
 だが気付いた時には遅かった。ブレードによる鋭い一撃が俺の背中に叩き込まれる。

「ぐはっ!!」

 次の瞬間、レイさんも、ヨウスケも、ミカエルも、それぞれ別方向から叩き伏せられていた。
 俺たちは地面に膝をつき、荒い息を吐いていた。

「……やっぱり……反撃の隙が……ねぇ……」
「このままじゃ一方的にやられっぱなしだ……」
「うぅ……もう……体が動かない……」

 俺たちは手も足も出ず、全滅寸前だ。マティアス司令官はそんな俺たちを見下ろし、静かに告げる。

「諦めるな。数々の試練を乗り越えてきた諸君の力はそんなものじゃないだろう? さぁ、立ち上がって来い!」

 その声には嘲笑も侮蔑もない。教官としての純粋な眼差しだ。俺は奥歯を噛みしめる。

「……っ、そうだな……! マティアス司令官だってきっと俺らに勝って欲しいはずだぜ!」
「オレたちみんな強くなったんだ。ここで軍人ホモビ撮影を諦めてたまるかよ!」
「みんな、今までの戦いで得た経験、戦術を最大限に活かすんだ」
「そうだね、おれたちの目標はあと少しなんだ……!」

 ヨウスケの回復スプレーで俺たち全員体勢を立て直した。
 すると、マティアス司令官が高くジャンプし、バズーカから砲弾をあちこちに撃ち始める。
 砲弾は地面に着弾と同時に氷塊を発生させた。その氷塊の中には炎が閉じ込められている。氷の中に炎ってどうなってんだよオイ!?
 やべぇよ……やべぇよ……今度は何する気だよ!?

「次は第3にして最後の必殺技”アストロキャノン”を発動する」
「ファッ!? まだ必殺技があるのかよォ!?」

 静かな声と共に、マティアス司令官のバズーカが変形を始める。砲身が開き、内部のコイルが雷光を帯びていた。炎、氷と来たら次は雷か?

「模擬戦用に威力は抑えてあるが、生身の人間が受けきれる保証は無い」

 やべぇよ……やべぇよ……炎と氷は俺たちの技で軽減できたが、雷を軽減する手段なんてねーぞ!

「タツヤさん、どうする!? オレたちには雷を軽減する手段が無い!」
「ミカエルは回復弾を、ヨウスケは回復スプレーを撒きまくれ! 俺とレイさんの必殺技でマティアス司令官の攻撃を軽減できるかやってみるぜ!」
「タツヤさん、心得たあああ!!」
「あぁ、全力で支援する」
「わかった!」

 ミカエルとヨウスケは防御・回復体勢に入る。俺とレイさんはマティアス司令官へ必殺技をぶち込むべく、奴の元へ走っていく!
 その時、マティアス司令官のバズーカの砲口から電気を帯びたレーザーが発射された!
 先ほどマティアス司令官がばら撒いた氷塊を照射して雷レーザーを乱反射させて広範囲を攻撃するという、なんともイカれた技だぜ!
 耳をつんざく雷鳴。全身を貫く電流。当然、俺たちに逃げ場などは無く……。

「「「「アッー!」」」」

 痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
 ミカエルとヨウスケが必死に回復するが、”アストロキャノン”の圧倒的威力の前ではみるみる体力を削られていく。
 ここで俺とレイさんが怯んでいては間違いなく全滅してしまう!

「レイさん、立ち止まってはダメだ! ここは何としても俺らの必殺技を叩き込むぜ!」
「おう! そろそろマティアス司令官をボコボコにしてやるどー!」

 今まで素早い飛行と身のこなしで俺たちの攻撃を避けてきたマティアス司令官。
 だが、奴の必殺技発動中は必ず地上で足を止めていることが分かったぜ。
 マティアス司令官が必殺技を発動している最中こそ攻撃を叩き込むチャンスだ。
 ……奴の必殺技の威力が半端じゃねーから近づくのも大変だけどな!
 そして俺とレイさんは大ダメージを受け続けながらもマティアス司令官に接近。

「はぁ……はぁ……そのキレイな金髪ロンゲをツルッパゲにしてやるぜぇ~!」
「……この攻撃を受けながら接近してくるとはな。大した奴だ」

 俺とマティアス司令官の身長差は30cm近くもある。ツルッパゲを狙うには奴の体をよじ登るしかない。
 無論、マティアス司令官がそんな隙をさらすはずもない。それでも俺は……。

「髪なんか必要ねぇんだよ!」

 シュパッ!!

 俺はマティアス司令官の後ろ髪を斬ってやったぜ。
 金髪ロングから金髪セミロングになったマティアス司令官。
 奴は表情一つ変えていないが、絶対に内心ショックを受けているぜぇ〜。
 マティアス司令官は脱力したのか、"アストロキャノン"の威力が落ちたようだぜ。その隙にレイさんが飛び掛かる。

「じゃあオラオラ来いよオラァ!!」

 レイさんの必殺技"おじさんブロー"がマティアス司令官に叩き込まれる。
 すると、マティアス司令官は"アストロキャノン"の発射を止めた。
 ナイト軍曹とハンニバル中将には"おじさんブロー"によるスタンは効かなかった。マティアス司令官はどうだ……?
 
「”アストロキャノン”を受けてもなお、怯むことなく突き進む力、そしてタツヤとレイの連携、見事だったぞ」
「ダルルオ~?」
「ファッ!? てめぇ手加減してんだったら演技でもいいからスタン食らったフリくらいしろよオラァ!?」

 的確すぎるツッコミを入れるレイさん。やはりマティアス司令官にスタンは効かなかった。
 だが、俺の"髪なんか必要ねぇんだよ"による脱力とレイさんの"おじさんブロー"による打撃で、マティアス司令官の身体に設置されている装置へのダメージはかなり通ったに違いないぜ。
 
「タツヤさん……オレ、もう……立てねぇかもしれねぇ……」
「俺だって……身体中が焼けて……」
「タツヤ、レイ、よくやった。おかげでみんな"アストロキャノン"を耐えきったぞ……!」
「待ってて……今、回復するから……」

 ヨウスケは膝をつきながらも必死に仲間へ回復スプレーを振りまく。
 俺とレイさんは必殺技を使い切った。ヨウスケの回復スプレーの残りは少ない。
 この先は少しでもダメージを軽減していかないと勝ち目は無いだろう。
 俺たちの中で必殺技をまだ使っていないのはミカエルとヨウスケだ。
 ミカエルとヨウスケの必殺技を使うタイミングを誤らないようにしなきゃな。

「よっし! 反撃開始だぜぇ~!」

 俺たちが反撃の構えを取ったその時、マティアス司令官は上空へ飛行。

「よくぞここまで来た。諸君のために最高のショーを見せてやろう!」
「ファッ!? 俺たちはマティアス司令官の3種の必殺技を耐え抜いたってのによ、まだ物騒な技を隠し持ってるのかよォ!?」

 マティアス司令官が空中で指を鳴らすと、周辺にばら撒かれていた氷塊が全て爆発。
 氷塊の中に包まれていた炎が時限爆弾の役割を果たしていたのだ。全方位から炎が俺たちを包み込む。

「うわああああ!! タツヤさん助けて~!!」

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!
 ここまで来て全滅とかもう許さねぇからなぁ!?


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次のエピソードへ進む 第63話 決戦の果てに!


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 白い閃光が屋上全域を走り抜け、地面は瞬時に白化し、厚い霜柱が盛り上がる。
 俺たちは凍り付く冷気の中で息を荒げていた。
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 空気は張り詰め、肺に突き刺さるような痛みを与える。
「ぐっ……冷たっ……! 息が、できねぇぜ……!」
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「いや……まだだ! 体勢を立て直すんだ」
 俺は凍える手を無理やり動かし、|鞭《ムチ》を構える。
 レイさんも竹刀を支え、ミカエルは銃口を向け、ヨウスケは震える手で回復スプレーを握り締めた。
 ヨウスケがスプレーで俺たち全員の体力を回復。
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 冷気は完全には消し切ることができなかったが、これで凍えることなく動けるようになったぜ。
「よーし、ここから反撃いくぜぇ〜」
「一転攻勢だオラァ!」
 その瞬間、マティアス司令官の姿が掻き消えた。
 スラスターの爆音が轟き、黒い閃光が俺たちの頭上を通り抜ける。
「はっや……!!」
 ジェット機さながらの急加速。空気が裂け、白い蒸気の尾が残る。
 視認できた時にはすでに至近距離。俺の背後にバズーカが突きつけられていた。
 ――ズドンッ!
 鋭い砲撃”ラピッドキャノン”が俺の背中を貫いた。
 実弾ではない訓練用の衝撃弾だが、それでも骨を粉砕するような衝撃。俺の身体は無様に地面を転がった。
「ねーイタいーもう! イッタいよもう!」
「タツヤさん!」
 ヨウスケが駆け寄ろうとするが、マティアス司令官はすかさずスラスターを逆噴射。
 地面すれすれを滑走しながらヨウスケの背後に回り込み、両腕に装着していたブレードでヨウスケを斬りつける。
「うわああああっ!!」
 ヨウスケは瞬時に棒を盾にし、ブレードをガードする。だが、ヨウスケとマティアス司令官の力の差は歴然だ。
 ヨウスケは大きなダメージを防げたものの、ブレードを防いだ衝撃で吹っ飛ばされてしまった。
 そこへレイさんが竹刀を振り上げて割って入る。
「動くと当たらないだろォ!?」
 竹刀がマティアス司令官の胴体を叩きつけ、火花が散る。ダメージが通ったみたいだな。
 マティアス司令官はわずかに後退し、旋回。そのまま空中で急制動をかける。
 ――ギィンッ!
 スラスターが逆光を放ち、マティアス司令官は瞬時に軌道を変える。宙返りしながらレイさんの背中へ回り、鋭い蹴りを叩き込んだ。
「ぐはぁっ!!」
 レイさんの身体が宙を舞い、柵に叩きつけられる。
「「レイさぁぁん!!」」
 俺とヨウスケが叫ぶ。そこでミカエルが二丁拳銃でマティアス司令官目掛けて連射した。
「今度こそ……!」
「遅い!」
 マティアス司令官は素早く手榴弾を取り出し、投げつける。
 ――ギィィィィンッ!!
 スタングレネードだ。爆音と閃光が炸裂し、俺たちの視界が真っ白に塗り潰された。
 耳鳴りが鼓膜を叩き、全身がバランスを失う。
 それと同時に、ミカエルが放った銃弾はすべてスタングレネードの爆風ではじき飛ばされてしまった。
「見えねぇ……! 動けねぇ……!」
「くそっ、どこにいる!?」
 その混乱の只中――背後に気配。
 だが気付いた時には遅かった。ブレードによる鋭い一撃が俺の背中に叩き込まれる。
「ぐはっ!!」
 次の瞬間、レイさんも、ヨウスケも、ミカエルも、それぞれ別方向から叩き伏せられていた。
 俺たちは地面に膝をつき、荒い息を吐いていた。
「……やっぱり……反撃の隙が……ねぇ……」
「このままじゃ一方的にやられっぱなしだ……」
「うぅ……もう……体が動かない……」
 俺たちは手も足も出ず、全滅寸前だ。マティアス司令官はそんな俺たちを見下ろし、静かに告げる。
「諦めるな。数々の試練を乗り越えてきた諸君の力はそんなものじゃないだろう? さぁ、立ち上がって来い!」
 その声には嘲笑も侮蔑もない。教官としての純粋な眼差しだ。俺は奥歯を噛みしめる。
「……っ、そうだな……! マティアス司令官だってきっと俺らに勝って欲しいはずだぜ!」
「オレたちみんな強くなったんだ。ここで軍人ホモビ撮影を諦めてたまるかよ!」
「みんな、今までの戦いで得た経験、戦術を最大限に活かすんだ」
「そうだね、おれたちの目標はあと少しなんだ……!」
 ヨウスケの回復スプレーで俺たち全員体勢を立て直した。
 すると、マティアス司令官が高くジャンプし、バズーカから砲弾をあちこちに撃ち始める。
 砲弾は地面に着弾と同時に氷塊を発生させた。その氷塊の中には炎が閉じ込められている。氷の中に炎ってどうなってんだよオイ!?
 やべぇよ……やべぇよ……今度は何する気だよ!?
「次は第3にして最後の必殺技”アストロキャノン”を発動する」
「ファッ!? まだ必殺技があるのかよォ!?」
 静かな声と共に、マティアス司令官のバズーカが変形を始める。砲身が開き、内部のコイルが雷光を帯びていた。炎、氷と来たら次は雷か?
「模擬戦用に威力は抑えてあるが、生身の人間が受けきれる保証は無い」
 やべぇよ……やべぇよ……炎と氷は俺たちの技で軽減できたが、雷を軽減する手段なんてねーぞ!
「タツヤさん、どうする!? オレたちには雷を軽減する手段が無い!」
「ミカエルは回復弾を、ヨウスケは回復スプレーを撒きまくれ! 俺とレイさんの必殺技でマティアス司令官の攻撃を軽減できるかやってみるぜ!」
「タツヤさん、心得たあああ!!」
「あぁ、全力で支援する」
「わかった!」
 ミカエルとヨウスケは防御・回復体勢に入る。俺とレイさんはマティアス司令官へ必殺技をぶち込むべく、奴の元へ走っていく!
 その時、マティアス司令官のバズーカの砲口から電気を帯びたレーザーが発射された!
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 耳をつんざく雷鳴。全身を貫く電流。当然、俺たちに逃げ場などは無く……。
「「「「アッー!」」」」
 痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
 ミカエルとヨウスケが必死に回復するが、”アストロキャノン”の圧倒的威力の前ではみるみる体力を削られていく。
 ここで俺とレイさんが怯んでいては間違いなく全滅してしまう!
「レイさん、立ち止まってはダメだ! ここは何としても俺らの必殺技を叩き込むぜ!」
「おう! そろそろマティアス司令官をボコボコにしてやるどー!」
 今まで素早い飛行と身のこなしで俺たちの攻撃を避けてきたマティアス司令官。
 だが、奴の必殺技発動中は必ず地上で足を止めていることが分かったぜ。
 マティアス司令官が必殺技を発動している最中こそ攻撃を叩き込むチャンスだ。
 ……奴の必殺技の威力が半端じゃねーから近づくのも大変だけどな!
 そして俺とレイさんは大ダメージを受け続けながらもマティアス司令官に接近。
「はぁ……はぁ……そのキレイな金髪ロンゲをツルッパゲにしてやるぜぇ~!」
「……この攻撃を受けながら接近してくるとはな。大した奴だ」
 俺とマティアス司令官の身長差は30cm近くもある。ツルッパゲを狙うには奴の体をよじ登るしかない。
 無論、マティアス司令官がそんな隙をさらすはずもない。それでも俺は……。
「髪なんか必要ねぇんだよ!」
 シュパッ!!
 俺はマティアス司令官の後ろ髪を斬ってやったぜ。
 金髪ロングから金髪セミロングになったマティアス司令官。
 奴は表情一つ変えていないが、絶対に内心ショックを受けているぜぇ〜。
 マティアス司令官は脱力したのか、"アストロキャノン"の威力が落ちたようだぜ。その隙にレイさんが飛び掛かる。
「じゃあオラオラ来いよオラァ!!」
 レイさんの必殺技"おじさんブロー"がマティアス司令官に叩き込まれる。
 すると、マティアス司令官は"アストロキャノン"の発射を止めた。
 ナイト軍曹とハンニバル中将には"おじさんブロー"によるスタンは効かなかった。マティアス司令官はどうだ……?
「”アストロキャノン”を受けてもなお、怯むことなく突き進む力、そしてタツヤとレイの連携、見事だったぞ」
「ダルルオ~?」
「ファッ!? てめぇ手加減してんだったら演技でもいいからスタン食らったフリくらいしろよオラァ!?」
 的確すぎるツッコミを入れるレイさん。やはりマティアス司令官にスタンは効かなかった。
 だが、俺の"髪なんか必要ねぇんだよ"による脱力とレイさんの"おじさんブロー"による打撃で、マティアス司令官の身体に設置されている装置へのダメージはかなり通ったに違いないぜ。
「タツヤさん……オレ、もう……立てねぇかもしれねぇ……」
「俺だって……身体中が焼けて……」
「タツヤ、レイ、よくやった。おかげでみんな"アストロキャノン"を耐えきったぞ……!」
「待ってて……今、回復するから……」
 ヨウスケは膝をつきながらも必死に仲間へ回復スプレーを振りまく。
 俺とレイさんは必殺技を使い切った。ヨウスケの回復スプレーの残りは少ない。
 この先は少しでもダメージを軽減していかないと勝ち目は無いだろう。
 俺たちの中で必殺技をまだ使っていないのはミカエルとヨウスケだ。
 ミカエルとヨウスケの必殺技を使うタイミングを誤らないようにしなきゃな。
「よっし! 反撃開始だぜぇ~!」
 俺たちが反撃の構えを取ったその時、マティアス司令官は上空へ飛行。
「よくぞここまで来た。諸君のために最高のショーを見せてやろう!」
「ファッ!? 俺たちはマティアス司令官の3種の必殺技を耐え抜いたってのによ、まだ物騒な技を隠し持ってるのかよォ!?」
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 氷塊の中に包まれていた炎が時限爆弾の役割を果たしていたのだ。全方位から炎が俺たちを包み込む。
「うわああああ!! タツヤさん助けて~!!」
 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!
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