第61話 ウェポンスペシャリスト マティアス司令官!
ー/ー

ハンニバル中将との激戦を終えた翌日、俺たちは次の試験を受けるべく軍事基地屋上のヘリポートへ向かった。
屋上にはハイド伍長、ナイト軍曹、エーリッヒ大佐、ライナス、そしてハンニバル中将が立っている。
今回はいよいよマティアス司令官との戦いだ。しかし、マティアス司令官の姿が無い。
「おーい、マティアス司令官! 俺らに調教されるのが怖くなったのかぁ~?」
「司令官のくせに遅刻してんじゃねーぞコラ!」
そう思ったのも束の間、ジェット機の飛ぶ音が下方から聞こえてくる。
「私はここだ」
軍事基地の外側の下方から上昇してきたのはマティアス司令官だ。
SFチックな黒いパワードスーツで身に包み、背中にはジェットエンジンが装着されている。
「兄貴、あんな装備持ってるのかよ!?」
「マティアスのやつ、今日は派手にやってくれるじゃねーか」
ライナスはマティアス司令官のパワードスーツ姿を見て驚く。
一方、ハンニバル中将は見慣れた様子で微笑みながら声をかけていた。
マティアス司令官は軽やかな飛行を見せつけた後、俺たちのいる屋上へ着地した。
「うおっ!? こんなガチ装備のマティアス司令官と戦うのかよォ!?」
「安心したまえ。この装備は訓練用に性能を大幅に下げている。これから戦いのルールを説明するぞ」
俺たちはマティアス司令官から最後の試験の説明を受けた。
マティアス司令官が身に着けているダメージ計算装置へ一定量のダメージを与えると俺たちの勝利とのことだ。
ハンニバル中将の時は頭部の物体を奪い、一発逆転勝利を狙うことができた。
だが今回の戦いはきっちりダメージを与えていかなければいけない。いよいよラストバトルらしくなってきたぜ。
「ついにここまで来たな! 屈強な軍人ビデオモデル獲得は目の前だぜ!」
「最高のホモビを作るため、全力で戦うどー!」
「マティアス司令官はハンニバル中将と同じ人間兵器だ。相手は手加減しているとはいえ、こっちは全力で行くぞ」
「マティアス司令官、まさか本気出したりしないよね?」
「安心したまえ。私が生身の人間相手に本気で掛かることは無い」
「ならよかったー……」
「さぁ、全力で掛かってこい!」
俺は鞭を、レイさんが竹刀を、ミカエルは二丁拳銃を手にし、ヨウスケは棒を両手で握り締める。
「みんな頑張れー!」
ヨウスケは活力スプレーで俺たち全員のパワーと身体を強化。
すると、マティアス司令官は笑みを浮かべながら素早くバズーカを構えた。
マティアス司令官が構えるバズーカはハンニバル中将のものとは違い、ハイテクな見た目をしているぜ。
「まずは小手調べだ。イグニッション!」
「ファッ!?」
バトル開始早々、いきなりナイト軍曹の必殺技をぶっ放すとかウッソだろお前!!
マティアス司令官のバズーカから巨大な爆炎が放出された!
かつてのハンニバル中将と同様、予備動作やパワーチャージ無しで即座に発射。
ハンニバル中将のイグニッションと違ってハゲなければいいのだが……。
「みんな、もう説明は良いだろ? 今までと同じようにダメージ軽減しろ!」
「心得たあぁぁぁ!!」
「うん! 任せて!」
「あぁ、分かった」
俺たちはナイト軍曹やハンニバル中将の"イグニッション"を受け止めた時と同じ方法で対処する。
俺とレイさんは冷水シャワーで砲撃の威力を弱め、ヨウスケは回復スプレー撒きまくり、ミカエルはとにかくガードで耐える戦法だ。
ハンニバル中将のバズーカから繰り出される巨大な爆炎が俺たち全員を包み込む!
耳をつんざく爆音、視界を奪う閃光、全身を焼き尽くす灼熱――!
「「「「アッー!」」」」
痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
しかし、今の俺たちは過去の戦いで爆炎を軽減する術が上達していた。
おかげでマティアス司令官のイグニッションをだいぶ軽減できたぜ。
ハンニバル中将のイグニッションと違ってハゲ効果が無いのも助かったぜ。
「強くなったな、諸君」
「ダルルオ~?」
マティアス司令官は俺たちの成長を喜んでいるかのように、微笑みを見せながら言った。
「よーし、次は俺らの番だぜぇ~」
「いっくよ~!」
俺はマティアス司令官目掛けて鞭を伸ばし、レイさんは竹刀を両手で構えながら飛び掛かる。
そしてミカエルは遠方からマティアス司令官目掛けて銃弾を撃ち込む。だが……。
「遅い!」
マティアス司令官はその場で宙返りしながら背中のジェット機から炎の砲弾を放出した。
砲弾は地面に着弾と同時に爆発。近くにいた俺とレイさんは派手に吹っ飛ばされた。ねーイタいーもう! イッタいよもう!
俺とレイさんが爆炎に吹っ飛ばされて転がった瞬間、マティアス司令官はすでに次の行動へ移っていた。
背中のスラスターを最大出力で点火。重いスーツと巨体をものともせず、まるでジェット機のように急降下。
「速ぇっ……!!」
視界から消えたと思った瞬間、マティアス司令官は滑り込むように地面すれすれで滑空。
両手から2本のブレードを瞬時に取り出し、レイさんとヨウスケの胴体を横から斬りつけた。
「ぐはっ……!」
「うわー!」
レイさんとヨウスケはその場に倒れ込む。しかし、あれだけ鋭利なブレードで斬りつけられたにもかかわらず、レイさんとヨウスケの胴体は出血していない。なぜだ?
「このブレードは模擬試合用に切れ味を落としてある。つまり模造刀だと思って良い」
「じゃあ、もし本物のブレードで斬りつけられていたら……」
「間違いなく真っ二つになっていただろう」
「ファッ!?」
これが実戦じゃなくて命拾いしたぜ。
……いや、それでもレイさんとヨウスケは胴体を斬られた痛みで立ち上がれずにいた。
マティアス司令官はブレードを瞬時に収納しながら上空へ舞い上がる。手持ちのバズーカを回転させ、ガトリング砲に変形させた。
そして上空から無数の弾丸を俺たち目掛けて発射。ねーイタいーもう! イッタいよもう!
まるでロボットのように、空中で射撃と旋回を同時にこなしていやがる!
「くそっ、空を取られると不利だ!」
「ここは私の射撃で……!」
「ミカエル、頼んだぜ! ヨウスケ、回復できるか?」
「うん。何とか……」
ヨウスケは這いつくばりながら回復スプレーで俺たち全員の体力を回復。
ミカエルが二丁拳銃を乱射し、銃声が響き渡る。
だがマティアス司令官は空中で急停止、逆噴射を使ったホバリングで弾道を見切り、スライド移動で銃弾を軽々と回避。
直後、マティアス司令官はガトリング砲を再びバズーカに変形させ、ミカエル目掛けて砲弾を放つ。
砲弾は目にも留まらない速さで発射され、ミカエルは回避する間もなく被弾してしまう。
砲弾は着弾と同時に爆発し、ミカエルは吹っ飛ばされてしまった。
「がっ……くそっ、私でも追いつけない速さだ……!」
俺は咄嗟に鞭を伸ばし、マティアス司令官の足首を狙った。しかし……。
「遅い!」
だが、空中での急制動と急加速を繰り返すスラスター機動に翻弄され、全く捕らえられない。
それどころか逆に、鞭を掴まれ強引に引っ張られ、俺は地面に叩きつけられてしまった。
「ふん!」
「ねーイタいーもう! イッタいよもう!」
マティアス司令官が俺に気を取られているその隙にレイさんが高くジャンプ。竹刀のフルスイングを叩き込む!
「オラァァァ!」
バキィィンッ!
マティアス司令官のパワードスーツの胸部へ直撃した。だがマティアス司令官は微動だにせず、微笑を浮かべたままだ。
「良い一撃だ」
その瞬間、マティアス司令官は一瞬にしてレイさんの背後に回り込む。
そしてそのまま背中に蹴りを入れ、レイさんを勢いよく遠くへ吹っ飛ばした。レイさんは屋上の柵へ激突。
「ぐあっ……!」
「レイさぁぁん!!」
ヨウスケが急いで回復スプレーを撒くが、マティアス司令官の攻撃の手は止まらない。
マティアス司令官は空中で体を捻り、バズーカを真下に向け――。
「避けてみよ。レーザーキャノン!」
マティアス司令官は光り輝くレーザーを薙ぎ払うように放った。
高射程、広範囲、高威力のレーザーだ。そんな技を俺たちは回避できるはずもなく……。
「痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)」
「くそっ、こんなん避けられるわけねーだろ!」
「近接でも勝てない、遠距離も無理だなんて……」
俺たちの焦りを感じ取ったのか、マティアス司令官はふっと笑い、地面に着地する。
「冷却は完了した。そろそろ次の大技を見せてやろう」
その言葉に俺たち全員が緊張で息をのむ。マティアス司令官のバズーカの砲口からは氷色の光が収束する。
「ここで全員凍らせられたくなければ、諸君の技で冷気を軽減してみせよ」
「ファッ!?」
俺は急いで対処法を考える。"イグニッション"の時は冷水シャワーでダメージを軽減した。冷気を軽減……ならば……。
「俺とレイさんの合体技"炎の鞭"で軽減してみるぜ。ミカエルとヨウスケは回復を頼むぞ!」
「心得たあああ!! いくぜタツヤさん!」
「あぁ、回復弾でやれるとこまでやってみる」
「うん、わかった!」
俺はレイさんとの合体技"炎の鞭"を広範囲に放った。ミカエルとヨウスケは防御態勢に入る。
次の瞬間、白い閃光が迸った。冷気のレーザーが大地を這い、屋上全域を凍り付かせていく。
「「「「アッー!」」」」
痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
足元から一瞬で霜が走り、床も柵も、果ては空気すら白く凍りつく。
"炎の鞭"で冷気を軽減したおかげでなんとか持ちこたえた。しかし、俺たちの全身は凍えて鈍ってしまっていた。
ヨウスケが回復スプレーを吹きかけるが、冷気にかき消されるかのように効き目が薄い。
「動けねぇ……!」
「ま、まずは状態異常の回復しなきゃ……! さ、寒い……」
「そうだな、私の回復弾で……! しかし、腕が……」
俺たちは全身が凍り付き、体勢を立て直すことすらままならない。
氷結の音と蒸気の中、マティアス司令官がゆっくりと歩み寄ってくる。
足取りは重戦車のごとく揺るぎなく、一歩ごとに氷が砕け散る。
俺たちは必殺技を使うかどうか迷っていた。
だが、相手は人間離れした身体能力と技術を誇る人間兵器――。
ハンニバル中将の時は、最初に必殺技を無駄打ちしてしまったせいで俺たちが不利な状況に置かれていた。
つまり、ここぞという時以外は必殺技を使うべきでは無いだろう。
「……どうする、タツヤさん……?」
「……ッ、まだだ……! まだ諦めるわけにはいかねぇ!」
「しかし、どうやって動けば……」
氷に縛られた足は動かすこともできず、腕もわずかにしか動かすことができない。
迫りくるマティアス司令官に俺たち全身が竦む。
「さ、さすが最高傑作の人間兵器と言われているだけあるな。もうちょっと手加減して欲しいぜ!」
「最高傑作の人間兵器……か。周りは皆そう言うが、私は人間兵器としての力不足を技術で補っているだけだ」
「ファッ!? そんなクソデカバズーカを軽々と使いこなすマティアス司令官が力不足なわけねーだろ!」
「そうだそうだ! オレだってさっきはマティアス司令官の蹴りで遠くまで吹っ飛ばされたんだぞ!」
その時、マティアス司令官の表情からは笑みが消えていた。
「生身の人間と比べればな。筋力や体力は私よりハンニバルが上だ。だからこそ私はハンニバルと対等になれるよう、技術やテクニックを磨いてきたのだ」
「言われてみれば、マティアス司令官はハンニバル中将と違って力任せの攻撃をしてこない。そういうことだったのか」
「おう、そうなのか……。俺らからすると、どっちも怪力のバケモンだけどな……」
駄目だこりゃ。やっぱこいつめちゃくちゃ強ぇー……。
圧倒的強さを持つマティアス司令官相手に、俺たちは勝てるのか……?
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屋上にはハイド伍長、ナイト軍曹、エーリッヒ大佐、ライナス、そしてハンニバル中将が立っている。
今回はいよいよマティアス司令官との戦いだ。しかし、マティアス司令官の姿が無い。
「おーい、マティアス司令官! 俺らに調教されるのが怖くなったのかぁ~?」
「司令官のくせに遅刻してんじゃねーぞコラ!」
そう思ったのも束の間、ジェット機の飛ぶ音が下方から聞こえてくる。
「私はここだ」
軍事基地の外側の下方から上昇してきたのはマティアス司令官だ。
SFチックな黒いパワードスーツで身に包み、背中にはジェットエンジンが装着されている。
「兄貴、あんな装備持ってるのかよ!?」
「マティアスのやつ、今日は派手にやってくれるじゃねーか」
ライナスはマティアス司令官のパワードスーツ姿を見て驚く。
一方、ハンニバル中将は見慣れた様子で微笑みながら声をかけていた。
マティアス司令官は軽やかな飛行を見せつけた後、俺たちのいる屋上へ着地した。
「うおっ!? こんなガチ装備のマティアス司令官と戦うのかよォ!?」
「安心したまえ。この装備は訓練用に性能を大幅に下げている。これから戦いのルールを説明するぞ」
俺たちはマティアス司令官から最後の試験の説明を受けた。
マティアス司令官が身に着けているダメージ計算装置へ一定量のダメージを与えると俺たちの勝利とのことだ。
ハンニバル中将の時は頭部の物体を奪い、一発逆転勝利を狙うことができた。
だが今回の戦いはきっちりダメージを与えていかなければいけない。いよいよラストバトルらしくなってきたぜ。
「ついにここまで来たな! 屈強な軍人ビデオモデル獲得は目の前だぜ!」
「最高のホモビを作るため、全力で戦うどー!」
「マティアス司令官はハンニバル中将と同じ人間兵器だ。相手は手加減しているとはいえ、こっちは全力で行くぞ」
「マティアス司令官、まさか本気出したりしないよね?」
「安心したまえ。私が生身の人間相手に本気で掛かることは無い」
「ならよかったー……」
「さぁ、全力で掛かってこい!」
俺は|鞭《ムチ》を、レイさんが竹刀を、ミカエルは二丁拳銃を手にし、ヨウスケは棒を両手で握り締める。
「みんな頑張れー!」
ヨウスケは活力スプレーで俺たち全員のパワーと身体を強化。
すると、マティアス司令官は笑みを浮かべながら素早くバズーカを構えた。
マティアス司令官が構えるバズーカはハンニバル中将のものとは違い、ハイテクな見た目をしているぜ。
「まずは小手調べだ。イグニッション!」
「ファッ!?」
バトル開始早々、いきなりナイト軍曹の必殺技をぶっ放すとかウッソだろお前!!
マティアス司令官のバズーカから巨大な爆炎が放出された!
かつてのハンニバル中将と同様、予備動作やパワーチャージ無しで即座に発射。
ハンニバル中将のイグニッションと違ってハゲなければいいのだが……。
「みんな、もう説明は良いだろ? 今までと同じようにダメージ軽減しろ!」
「心得たあぁぁぁ!!」
「うん! 任せて!」
「あぁ、分かった」
俺たちはナイト軍曹やハンニバル中将の"イグニッション"を受け止めた時と同じ方法で対処する。
俺とレイさんは冷水シャワーで砲撃の威力を弱め、ヨウスケは回復スプレー撒きまくり、ミカエルはとにかくガードで耐える戦法だ。
ハンニバル中将のバズーカから繰り出される巨大な爆炎が俺たち全員を包み込む!
耳をつんざく爆音、視界を奪う閃光、全身を焼き尽くす灼熱――!
「「「「アッー!」」」」
痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
しかし、今の俺たちは過去の戦いで爆炎を軽減する術が上達していた。
おかげでマティアス司令官のイグニッションをだいぶ軽減できたぜ。
ハンニバル中将のイグニッションと違ってハゲ効果が無いのも助かったぜ。
「強くなったな、諸君」
「ダルルオ~?」
マティアス司令官は俺たちの成長を喜んでいるかのように、微笑みを見せながら言った。
「よーし、次は俺らの番だぜぇ~」
「いっくよ~!」
俺はマティアス司令官目掛けて|鞭《ムチ》を伸ばし、レイさんは竹刀を両手で構えながら飛び掛かる。
そしてミカエルは遠方からマティアス司令官目掛けて銃弾を撃ち込む。だが……。
「遅い!」
マティアス司令官はその場で宙返りしながら背中のジェット機から炎の砲弾を放出した。
砲弾は地面に着弾と同時に爆発。近くにいた俺とレイさんは派手に吹っ飛ばされた。ねーイタいーもう! イッタいよもう!
俺とレイさんが爆炎に吹っ飛ばされて転がった瞬間、マティアス司令官はすでに次の行動へ移っていた。
背中のスラスターを最大出力で点火。重いスーツと巨体をものともせず、まるでジェット機のように急降下。
「速ぇっ……!!」
視界から消えたと思った瞬間、マティアス司令官は滑り込むように地面すれすれで滑空。
両手から2本のブレードを瞬時に取り出し、レイさんとヨウスケの胴体を横から斬りつけた。
「ぐはっ……!」
「うわー!」
レイさんとヨウスケはその場に倒れ込む。しかし、あれだけ鋭利なブレードで斬りつけられたにもかかわらず、レイさんとヨウスケの胴体は出血していない。なぜだ?
「このブレードは模擬試合用に切れ味を落としてある。つまり模造刀だと思って良い」
「じゃあ、もし本物のブレードで斬りつけられていたら……」
「間違いなく真っ二つになっていただろう」
「ファッ!?」
これが実戦じゃなくて命拾いしたぜ。
……いや、それでもレイさんとヨウスケは胴体を斬られた痛みで立ち上がれずにいた。
マティアス司令官はブレードを瞬時に収納しながら上空へ舞い上がる。手持ちのバズーカを回転させ、ガトリング砲に変形させた。
そして上空から無数の弾丸を俺たち目掛けて発射。ねーイタいーもう! イッタいよもう!
まるでロボットのように、空中で射撃と旋回を同時にこなしていやがる!
「くそっ、空を取られると不利だ!」
「ここは私の射撃で……!」
「ミカエル、頼んだぜ! ヨウスケ、回復できるか?」
「うん。何とか……」
ヨウスケは這いつくばりながら回復スプレーで俺たち全員の体力を回復。
ミカエルが二丁拳銃を乱射し、銃声が響き渡る。
だがマティアス司令官は空中で急停止、逆噴射を使ったホバリングで弾道を見切り、スライド移動で銃弾を軽々と回避。
直後、マティアス司令官はガトリング砲を再びバズーカに変形させ、ミカエル目掛けて砲弾を放つ。
砲弾は目にも留まらない速さで発射され、ミカエルは回避する間もなく被弾してしまう。
砲弾は着弾と同時に爆発し、ミカエルは吹っ飛ばされてしまった。
「がっ……くそっ、私でも追いつけない速さだ……!」
俺は咄嗟に|鞭《ムチ》を伸ばし、マティアス司令官の足首を狙った。しかし……。
「遅い!」
だが、空中での急制動と急加速を繰り返すスラスター機動に翻弄され、全く捕らえられない。
それどころか逆に、|鞭《ムチ》を掴まれ強引に引っ張られ、俺は地面に叩きつけられてしまった。
「ふん!」
「ねーイタいーもう! イッタいよもう!」
マティアス司令官が俺に気を取られているその隙にレイさんが高くジャンプ。竹刀のフルスイングを叩き込む!
「オラァァァ!」
バキィィンッ!
マティアス司令官のパワードスーツの胸部へ直撃した。だがマティアス司令官は微動だにせず、微笑を浮かべたままだ。
「良い一撃だ」
その瞬間、マティアス司令官は一瞬にしてレイさんの背後に回り込む。
そしてそのまま背中に蹴りを入れ、レイさんを勢いよく遠くへ吹っ飛ばした。レイさんは屋上の柵へ激突。
「ぐあっ……!」
「レイさぁぁん!!」
ヨウスケが急いで回復スプレーを撒くが、マティアス司令官の攻撃の手は止まらない。
マティアス司令官は空中で体を捻り、バズーカを真下に向け――。
「避けてみよ。レーザーキャノン!」
マティアス司令官は光り輝くレーザーを薙ぎ払うように放った。
高射程、広範囲、高威力のレーザーだ。そんな技を俺たちは回避できるはずもなく……。
「痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)」
「くそっ、こんなん避けられるわけねーだろ!」
「近接でも勝てない、遠距離も無理だなんて……」
俺たちの焦りを感じ取ったのか、マティアス司令官はふっと笑い、地面に着地する。
「冷却は完了した。そろそろ次の大技を見せてやろう」
その言葉に俺たち全員が緊張で息をのむ。マティアス司令官のバズーカの砲口からは氷色の光が収束する。
「ここで全員凍らせられたくなければ、諸君の技で冷気を軽減してみせよ」
「ファッ!?」
俺は急いで対処法を考える。"イグニッション"の時は冷水シャワーでダメージを軽減した。冷気を軽減……ならば……。
「俺とレイさんの合体技"炎の鞭"で軽減してみるぜ。ミカエルとヨウスケは回復を頼むぞ!」
「心得たあああ!! いくぜタツヤさん!」
「あぁ、回復弾でやれるとこまでやってみる」
「うん、わかった!」
俺はレイさんとの合体技"炎の鞭"を広範囲に放った。ミカエルとヨウスケは防御態勢に入る。
次の瞬間、白い閃光が迸った。冷気のレーザーが大地を這い、屋上全域を凍り付かせていく。
「「「「アッー!」」」」
痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
足元から一瞬で霜が走り、床も柵も、果ては空気すら白く凍りつく。
"炎の鞭"で冷気を軽減したおかげでなんとか持ちこたえた。しかし、俺たちの全身は凍えて鈍ってしまっていた。
ヨウスケが回復スプレーを吹きかけるが、冷気にかき消されるかのように効き目が薄い。
「動けねぇ……!」
「ま、まずは状態異常の回復しなきゃ……! さ、寒い……」
「そうだな、私の回復弾で……! しかし、腕が……」
俺たちは全身が凍り付き、体勢を立て直すことすらままならない。
氷結の音と蒸気の中、マティアス司令官がゆっくりと歩み寄ってくる。
足取りは重戦車のごとく揺るぎなく、一歩ごとに氷が砕け散る。
俺たちは必殺技を使うかどうか迷っていた。
だが、相手は人間離れした身体能力と技術を誇る人間兵器――。
ハンニバル中将の時は、最初に必殺技を無駄打ちしてしまったせいで俺たちが不利な状況に置かれていた。
つまり、ここぞという時以外は必殺技を使うべきでは無いだろう。
「……どうする、タツヤさん……?」
「……ッ、まだだ……! まだ諦めるわけにはいかねぇ!」
「しかし、どうやって動けば……」
氷に縛られた足は動かすこともできず、腕もわずかにしか動かすことができない。
迫りくるマティアス司令官に俺たち全身が竦む。
「さ、さすが最高傑作の人間兵器と言われているだけあるな。もうちょっと手加減して欲しいぜ!」
「最高傑作の人間兵器……か。周りは皆そう言うが、私は人間兵器としての|力《・》|不《・》|足《・》を技術で補っているだけだ」
「ファッ!? そんなクソデカバズーカを軽々と使いこなすマティアス司令官が力不足なわけねーだろ!」
「そうだそうだ! オレだってさっきはマティアス司令官の蹴りで遠くまで吹っ飛ばされたんだぞ!」
その時、マティアス司令官の表情からは笑みが消えていた。
「生身の人間と比べればな。筋力や体力は私よりハンニバルが上だ。だからこそ私はハンニバルと対等になれるよう、技術やテクニックを磨いてきたのだ」
「言われてみれば、マティアス司令官はハンニバル中将と違って力任せの攻撃をしてこない。そういうことだったのか」
「おう、そうなのか……。俺らからすると、どっちも怪力のバケモンだけどな……」
駄目だこりゃ。やっぱこいつめちゃくちゃ強ぇー……。
圧倒的強さを持つマティアス司令官相手に、俺たちは勝てるのか……?