第5話 リリアーナ王女の笑顔と「お好み焼き」の波紋 -2
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「あ、あの……わたくし、リリアーナと申します。あなた様が、昨日、その……とても珍しい香りのするお料理を作られたと聞いて……」
か細い声で語る少女は、病弱なのか、顔色があまり良くない。
食欲不振で、王宮の料理にも飽き飽きしていると噂に聞いていた王女、リリアーナに間違いなかった。
彼女の背後には、付き添いの侍女が一人立っている。
その侍女は、どこか怯えたような目で、ヴィクトリアが所属する騎士団の宿舎の方向をちらりと見ていた。
(もしかして、ヴィクトリアさんのところで、何か話が……?)
花子はピンと来た。
ヴィクトリアが「悪くはない」と言ったことが、侍女の耳に入り、それが王宮の噂話として広まったのだろう。
王宮の噂話は、こうして侍女たちの間で広まっていくものだ。
まさか、それが王女様の耳にまで届くとは。
「あ、はい! 私が花子、いえフローラです。どうぞ、お入りください!」
まさか王女様自らが来るとは思わず、花子は驚きつつも、急いで部屋に招き入れた。
リリアーナは、部屋に充満するお好み焼きの匂いに、目を輝かせた。
彼女の瞳が、好奇心と期待でキラキラと輝いている。
「この香り……わたくし、初めてでございます……」
花子は焼き立ての熱々のお好み焼きを、簡易な皿に盛りつけ、召喚したお好みソースとマヨネーズをたっぷりと、しかし美しくかけた。
ソースの深い茶色とマヨネーズの白が織りなすコントラストが、食欲をそそる芸術品のようだ。
その上に、削り節がヒラヒラと踊り、鮮やかな青のりが彩りを添える。
見た目にも華やかで、食欲をそそる。
「どうぞ、召し上がれ!」
リリアーナは恐る恐るフォークを取り、小さく切り分けて口に運んだ。
一口、二口……。
リリアーナの瞳が、みるみるうちに大きく見開かれていく。
その小さな口が、ゆっくりと咀嚼を繰り返す。
そして、次の瞬間。
「っ……! 美味しいっ! こんなの、食べたことないわ!」
リリアーナの顔に、ひまわりのような満面の笑みが広がった。
病弱で常に顔色が悪かった彼女の頬が、わずかに紅潮している。
その笑顔は、まるで部屋の中にパッと花が咲いたかのようだ。
「甘くて、香ばしくて……フワフワなのに、中にシャキシャキもする!」
リリアーナは目を閉じて、その複雑な食感を味わうように呟いた。
「初めてたべました! このマヨネーズとソースというものが、こんなに合うなんて……! 何度でも食べたいですわ!」
彼女は夢中で食べ進め、あっという間にお好み焼きを平らげてしまった。
最後の一口を飲み込むと、満足そうにフーッと息を吐いた。
その表情は、心から満たされた、純粋な喜びで輝いていた。
「フローラ様、わたくし、毎日あなたの料理が食べたいですわ!」
その言葉は、花子の心に温かく響いた。
リリアーナの無邪気な笑顔が、何よりも花子にとっての「聖女」としての報酬だった。
故郷で、一人でグルメを追求していた頃には得られなかった、誰かの「美味しい」という笑顔。
この笑顔のために、自分はここにいるのかもしれない。
この異世界での自分の存在意義を、花子は確かに感じていた。
その日、リリアーナ王女が「聖女様の珍しい料理がとても美味しい」と王に報告したことで、王宮内は小さな騒ぎになった。
「王女様があんなに召し上がるとは……!」
「一体、どのような料理なのだ?」
噂はあっという間に広がり、王宮のあちこちで、花子の料理の話題が囁かれるようになった。
そして、その情報は、王宮料理長グスタフの耳にも届き、彼は眉間に深い皺を刻んでいた。
彼の料理人としてのプライドが、じわじわと侵食され始めていた。
(なんだ、あの小娘の料理など……。王女様がお戯れになられているだけだろう……!)
グスタフはそう自分に言い聞かせたが、王女の報告の熱量と、王宮内に広がる奇妙な「香ばしい匂い」の噂が、彼の心をざわつかせた。
彼の長年の経験が、その匂いの中に、これまで嗅いだことのない「何か」を感じ取っていた。
それは、彼の料理の常識を揺るがす、不穏な予感だった。
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か細い声で語る少女は、病弱なのか、顔色があまり良くない。
食欲不振で、王宮の料理にも飽き飽きしていると噂に聞いていた王女、リリアーナに間違いなかった。
彼女の背後には、付き添いの侍女が一人立っている。
その侍女は、どこか怯えたような目で、ヴィクトリアが所属する騎士団の宿舎の方向をちらりと見ていた。
(もしかして、ヴィクトリアさんのところで、何か話が……?)
花子はピンと来た。
ヴィクトリアが「悪くはない」と言ったことが、侍女の耳に入り、それが王宮の噂話として広まったのだろう。
王宮の噂話は、こうして侍女たちの間で広まっていくものだ。
まさか、それが王女様の耳にまで届くとは。
「あ、はい! 私が花子、いえフローラです。どうぞ、お入りください!」
まさか王女様自らが来るとは思わず、花子は驚きつつも、急いで部屋に招き入れた。
リリアーナは、部屋に充満するお好み焼きの匂いに、目を輝かせた。
彼女の瞳が、好奇心と期待でキラキラと輝いている。
「この香り……わたくし、初めてでございます……」
花子は焼き立ての熱々のお好み焼きを、簡易な皿に盛りつけ、召喚したお好みソースとマヨネーズをたっぷりと、しかし美しくかけた。
ソースの深い茶色とマヨネーズの白が織りなすコントラストが、食欲をそそる芸術品のようだ。
その上に、削り節がヒラヒラと踊り、鮮やかな青のりが彩りを添える。
見た目にも華やかで、食欲をそそる。
「どうぞ、召し上がれ!」
リリアーナは恐る恐るフォークを取り、小さく切り分けて口に運んだ。
一口、二口……。
リリアーナの瞳が、みるみるうちに大きく見開かれていく。
その小さな口が、ゆっくりと咀嚼を繰り返す。
そして、次の瞬間。
「っ……! 美味しいっ! こんなの、食べたことないわ!」
リリアーナの顔に、ひまわりのような満面の笑みが広がった。
病弱で常に顔色が悪かった彼女の頬が、わずかに紅潮している。
その笑顔は、まるで部屋の中にパッと花が咲いたかのようだ。
「甘くて、香ばしくて……フワフワなのに、中にシャキシャキもする!」
リリアーナは目を閉じて、その複雑な食感を味わうように呟いた。
「初めてたべました! このマヨネーズとソースというものが、こんなに合うなんて……! 何度でも食べたいですわ!」
彼女は夢中で食べ進め、あっという間にお好み焼きを平らげてしまった。
最後の一口を飲み込むと、満足そうにフーッと息を吐いた。
その表情は、心から満たされた、純粋な喜びで輝いていた。
「フローラ様、わたくし、毎日あなたの料理が食べたいですわ!」
その言葉は、花子の心に温かく響いた。
リリアーナの無邪気な笑顔が、何よりも花子にとっての「聖女」としての報酬だった。
故郷で、一人でグルメを追求していた頃には得られなかった、誰かの「美味しい」という笑顔。
この笑顔のために、自分はここにいるのかもしれない。
この異世界での自分の存在意義を、花子は確かに感じていた。
その日、リリアーナ王女が「聖女様の珍しい料理がとても美味しい」と王に報告したことで、王宮内は小さな騒ぎになった。
「王女様があんなに召し上がるとは……!」
「一体、どのような料理なのだ?」
噂はあっという間に広がり、王宮のあちこちで、花子の料理の話題が囁かれるようになった。
そして、その情報は、王宮料理長グスタフの耳にも届き、彼は眉間に深い皺を刻んでいた。
彼の料理人としてのプライドが、じわじわと侵食され始めていた。
(なんだ、あの小娘の料理など……。王女様がお戯れになられているだけだろう……!)
グスタフはそう自分に言い聞かせたが、王女の報告の熱量と、王宮内に広がる奇妙な「香ばしい匂い」の噂が、彼の心をざわつかせた。
彼の長年の経験が、その匂いの中に、これまで嗅いだことのない「何か」を感じ取っていた。
それは、彼の料理の常識を揺るがす、不穏な予感だった。