第8話 若手隊士達 -2/4-
ー/ー
今日の座学は、赤プレートと、精霊結晶(フィカセラム)についての授業だった。
入って来た講師がリーオではなく、アプリアだったので皆がざわついた。
「おはようございます。皆さん。今日は私が授業を行います。気を引き締めて聞いて下さいね」
アプリアが微笑んだ。
「では、今日はいよいよ『精霊結晶(フィカセラム)』の授業です。技術教本の七十頁を開いて下さい――作成手順をお教えしますから、実際に作って、後日提出して頂きます。宿題ですね」
プラグは既に眠かったが、精霊結晶については気になっていたので、なんとか、起きている事にした。シオウはかなり眠そうだ。……教本を立てて、既に眠る気に見える。
「皆さんは『赤プレート』をご存じですよね。ああ、出さなくても大丈夫ですよ。『翻訳』『飛翔』『治療』『火』や『水』など。その赤いプレートの原料になっているのが、精霊結晶(フィカセラム)です」
教本には、結晶の絵が描かれていた。
「一週間、一ヶ月。毎日精霊が祝詞を唱え、祈り、自分の霊力を形することで、結晶が生まれます。精霊の『涙』から結晶ができる事もありますが、そちらはプレートには使えず、すぐに消えてしまいます」
アプリアが説明した。
『精霊結晶(フィカセラム)』
精霊が毎日、決まった時間に祈りを捧げ、望んだ効果を付与して結晶を作る。
付けたい効果が難しい物であるほど、作るのに日数が掛かる。
『精霊の涙(フィカティア/フィカティアー)』
精霊が泣いた時、涙が結晶に変わる事がある。これは現象としてそうなっているだけで、霊力が籠もっている訳では無い。一、二分ほどで消えて無くなる。
ちなみに、フィカティアの『ティア』は『涙』という意味で、『庭』という意味の『クロスティア』のティア、風という意味のティアはそれぞれ発音が違う。
「祝詞は教本にある通りですが、これは人間が唱える必要はありません。結晶作りは精霊の仕事だと思って頂いて大丈夫です。祈りはゼクナ語で行われます。例文は『ル・フィーラ・アラード・ノラ・フィーラ・ガルデ・ディアタス・ア・ミーア・ドーゼス・フィカセラム』……『私の祈りでフィカセラムを作ります』とありますが、この祝詞は付けたい効果によって違います。毎回同じ言葉を決めて、唱えれば良いようですね。もう一つ、似た物に『精霊の涙』があります」
「これは雑学なのですが。とても強い精霊の場合『精霊の涙』が、そのまま精霊結晶になる事もあります。これはとても貴重なので、もらったらプレートにはせず、大切に、家宝にして下さい。とんでもない値段が付きますが、間違っても売ってはいけません。絵のように、宝飾品にする事もありますね」
教本には、セラ国やストラヴェル国、他の国に伝わる『精霊の涙』の装飾品が描かれていた。セラ国の例は金色のネックレスと、聖母の金冠で、どちらも緑色の『涙』がはめ込まれている。ストラヴェルの物は綺麗な水色の『涙』で、こちらは指輪になっていた。
――精霊結晶の見た目は、宝石と変わらないのだが、耐久性は低いので欠けやすい。
しかし『精霊の涙』は高い硬度を持つので、価値が跳ね上がる。
「わが国に伝わる精霊の涙は、一つだけ。王様の証しとなっていますね。指輪です。この結晶は精霊大戦の折『ルルミリー=エルタ』という水一族の精霊がこの国の初代国王、ビアス・ヴァシュカ様に贈ったと言われています。詳細は残っていないのですが、伝説は幾つもあります。おとぎ話を知っている方も多いのでは?」
アプリアの言葉に、候補生の大半が頷いた。
――色々な話が伝わっているが、大筋は同じだ。
迫害され、住む場所を無くして困っていた『ルルミリー=エルタ』に、ビアスは「ここに住めば良い」と言ってクレナ湖を教えた。ルルミリーはクレナ湖を気に入って、湖の守り神となり、加護として涙を授けた……。
「この逸話が、首都をここにした理由ですね。彼女は今もクレナ湖にいると言われています。何の精霊なのかは分かりませんが、素敵ですね」
アプリアが微笑んだ。
『ルルミリー=エルタ』
黒いドレスを着た、銀に近い水色の髪、耳の尖った美少女として描かれている事が多いが、プラグは会った事が無い。
精霊は多いので不思議は無いが、水一族でも知っている者はいないと思う。
……人間は権威付けの為、おとぎ話として、実在しない精霊を作る事があるので、その一例かもしれない。
アプリアが続ける。
「精霊結晶や、精霊の涙は、不思議な輝きを持つ事があります。虹色とか、光が当たると色が変わる等……。効果もあり、貴重なので、精霊を痛めつけて、涙や結晶を作らせよう、という人もいますが、その方法ではできないので覚えておいて下さい。結晶は精霊の『真心(まごころ)』です。所有者を大切に思って、守りたいという、祈りを込めて分けてくれる物なので、その精霊だと思って、しっかり管理して下さいね」
「さて、話を戻しましょう。精霊結晶は精霊に作って貰えますが、その効果は、精霊使いが一緒に考える事もできます。ただ、難しい効果を付けると、とても時間が掛かります――どんな物なら、どのくらいの期間でできそうか。精霊と相談して、卒業までに結晶を提出すること。これが宿題です」
「ですが……真心なので、もし完成しなくても、採点には関わりません。簡単な効果で構いませんから、一つ、作ってみてください。先程言ったように、管理は厳重に。なぜなら、精霊結晶からは赤プレートが作れてしまうからです」
『赤プレート』には作り方が二種類ある。
一つは、自然精霊を見つけて、巫女が白プレートに封印する方法。
――これはラ=ヴィアを見つけた後の授業だったので、プラグ達は不参加だった。
そういえばアルスとシオウもやっていないので、できる事なら、補習を申し出た方がいいかもしれない。
もう一つが精霊結晶から作る方法だ。
精霊結晶から『赤プレート』を作るには巫女と紅玉鳥の力が必要で、事前に精霊結晶の審査がある。
赤プレートは、プレート管理施設で、効果の実験と耐久時間の確認、所有者登録が必要なのだが――結晶から違法にプレートを作る闇巫女も存在する。
プレートと違って精霊結晶自体に所有制限は無いのだが、その点も踏まえて効果を決める必要がある。
(耳の痛い話だ……)
プラグは内心で溜息を吐いていた。
「作った結晶は、本来は騎士か、騎士団が管理するのですが、ここでは、候補生と精霊の友情の証しとして、卒業後、所有しても良い事になっています。よほど得意で無ければ、一年ではそこまでの効果、大きさの物はできないので、宝飾品(アクセサリー)にする人が多いです。殆どの候補生が精霊とは卒業と同時に別れる事になりますから、思い出の品と言うことですね。おすすめの効果は教本に書いてあるので、そこから選ぶか、似たような効果を自分で考えて、精霊と相談してみても良いでしょう」
教本には簡単な結晶の例として、大きさ、効果、祝詞が載っていた。
「精霊の特性に合わせた効果を付けるのが普通ですが、このくらいの簡単な効果なら、どの精霊でも一月ほどで出来ると思います。毎年の事なので、慣れている精霊もいますよ」
『恋愛が成就する(かもしれない)効果』
『落としものをしない(かもしれない)効果』
『躓いて転ばない(かもしれない)効果』
『しゃっくりが出ない(かもしれない)効果』
見事に、おまじないだ。地味に便利なような、何とも言いがたい効果だ。
(俺も、これくらいにしておけばよかったな……)
プラグはいよいよ、嘆息した。お守りくらいで、大した効果は付けていなかったのだが……悪用する方が効果を曲げたのだろう。もっと、効果を限定した物を作った方が良かった。
例えば、誰々がどうした時に、この効果が一回だけ発動する。など。
条件付けが難しいが、やろうと思えばできるはずだ。
カド=ククナは結晶作りが得意な精霊なので、効果について軽く考えていたのだ。
……それだけ相手を信頼していた、と言う事もあるのだが……。
候補生達から、なにこれ、どれにしよう、という声が聞こえる。
「ああ。精霊によっては、作るのが得意で、短期間で、たくさんできてしまう場合もあります。その場合は、余分は全て提出していだき――つまり、騎士団が没収して、持ち帰るのは一つだけになります。結晶ができたらコリント隊士、リゼラ隊士、私か、リーオ隊士に提出をお願いします。精霊によって得意、不得意がありますので、できなくても気に病まないように、精霊との付き合いは、根気よく、です。ね。では、これで授業はお終いです」
アプリアは颯爽と去って行った。男子達が溜息を吐いた。
「やっぱアプリア隊士、格好いいよな……」
「ああ。美人だし……話も分かりやすい」
「近づいたらいい匂いしそう。女子から見ても格好いいだろ?」
そう言ったのは癖の無い、短いブラウンの髪に藍色の目の男子――マシルで、ちょうど隣にキールがいた。座学の席は決まっていないので、ほぼ来た順に座っているが、アドニスのようにいつも前の方を取る生徒もいる。プラグはこだわりは無いので、アルスとシオウの隣になる事もあれば、離れる事もあった。今日はアルスとシオウに挟まれている。
キールが少し考える。
「うん? そうかな。考えた事なかった」
キールの返事はマシルが望んだ物では無かったようだ。
「えー。そっかー。まあでも美人だとは思うよな?」
「うん、それは勿論。なんか綺麗過ぎてどう反応すれば良いのか分からないの。あんな美人、街でも見た事ないもの。リズさんも綺麗だしここって不思議」
「ああ確かに。お前もまあ綺麗な方だぜ。っと、冗談だ。飯、行くか」
「そうね」
他の生徒達も席を立った。
「あー、恋愛成就とか、できるなら欲しいな」「転ばないやつ便利じゃない?」
「どれもおまじないよね」「貰えるの嬉しい」「できるかなぁ」という女子達の弾んだ声が聞こえる。
(精霊結晶か……ナダ=エルタは、まだやった事が無いだろうな)
プラグはナダ=エルタの事を考えた。
初めての結晶作りは中々難しいので、卒業までに完成しないかもしれない。
ただ、評価対象では無いらしいので気長にやろうと思った。
「どうしたの?」
と言ったのはアルスだった。
「うん、気長にやろうと思って。本を置いてこないと」
プラグは立ち上がって、教本をまとめて、出口へ向かった。
■ ■ ■
精霊結晶の授業の後――昼食の席で、何やら男子達が騒ぎ始めた。
ちょうど手袋の配布がされて、コリントとリゼラがいたのが原因らしい。
配布が終わった後に話し掛けていて、そのままコリントとリゼラは囲まれてしまった。
一番、熱心に話しているのは……ヘッセ伯爵の三男、アラーク・ル・ヘッセだ。
アラークは背中の真ん中ほどまである、長い黒髪巻き毛を首の後ろで一つに結った少年で、瞳も黒い。前髪は真ん中分けで、目は吊り目で、眉も角度がきつい。見た目の通り、負けん気の強い性格をしている。先日の組み分けでも上位クラス、八位に入った実力者だ。
「すみません、もう一回、早めに試験してもらうことって出来ないんですか?」
アラークは強い口調で言っていて、真剣だ。
他の男子達も、皆、同じ事を言っている。
「そうそう、ちょっと、あの問題は難しかったし」
「なんか、無駄に不安になるっていうか」
「それか、もう武術と学科分けて貼り出して貰うとか」
するとコリントは深く頷いた。
「わかる。気持ちはとても良く分かる。今年は特に厳しいからな。わかった、隊長達に言ってみる」
するとリゼラが。
「今日、午後から先輩達が戻ってくるから、少し楽になるかも。あ、私達の方がね。今、人手不足なのよ。でも毎年、学科と実技は分けて貼り出してるから、それは簡単だわ。成績はちゃんと付けてあるから、来週か、再来週には出せるはずよ。ごめんね、不安にさせちゃって」
と言って宥めていた。
「先輩達って?」
男子の言葉にリゼラが苦笑する。
「若手隊士よ。二十歳以下の先輩達。これから交代で訓練も見てくれるから、皆、めげずに頑張ってね。面談とか進路相談とかも誰か固定でやってくれると思うわ。あと、女の人はみんな美人だけど、皆つよーい、から。三倍、二倍もらった人は覚悟しておいて」
リゼラの言葉に、一部の男子――プラグと、シオウ、アドニス、フィニーが固まった。
「とにかく、再試験は早めにお願いします!」
アラークが言った。
「わかったわ。隊長次第だけどね、伝えてみる。さ、お腹空いてるでしょ、食べて。午後からも頑張って」
リゼラの言葉に男子達が頷き席に戻った。
「三倍か……ああぁやだな……戻ってくるなよ……無理だって……」
と言ったのは、シオウだった。プラグも頷くほか無い。
「今朝の人も凄く強そうだったからな……」
プラグはクラリーナを思い出した。するとアドニスが瞬きをした。
「あれ、もう会ったんですか?」
――アドニスは真面目に教室に入っていて、窓から見ていなかったらしい。
「うん。走っていたら、併走してきて。鍛練が趣味だと言っていた」
プラグは答えた。
「どんな人だったんです?」
「女性で、薄ピンク色の長い髪をしていて、すごく足が速くて『飛翔』でついて来てと急かされた。名前はクラリーナ・ザーヴェ」
外見を聞いたアドニスが手を打った。
「ああ、あの方ですか! 僕もちらりとお会いしました。そうだったんですね。だから入って来たとき、あんなに汗だくだったんだ」
アドニスが言った。
「あ。そういえば言っていたな。教科書、ありがとう」
忘れていた会話を思い出して、プラグは礼を言った。……これから君達も走るかもしれない、とは言わないでおいた。
「いえ、アルスちゃんが持ってきてくれましたから。置いただけです」
アドニスがアルスを見た。するとイアンチカが。
「ピンクの髪……もしかして、美人だった?」
と尋ねたので、プラグは頷いた。
「たぶん。けどそれどころじゃなかった。午後の稽古で、またね、と言われたけど、もう会いたくない……」
「うわぁ……頑張ってね」
イアンチカは言ったが、プラグは項垂れた。今日、無事に戻って来られるだろうかと危惧していると、アルスに、彼女の左側にいた女子が話しかけてきた。セピア色の髪に灰色の目……確か名前はベアトラだった。
「そういえばアルスちゃん、あの事はいいの?」
「?」
アルスが首を傾げる。
「ほら……昨日の。リゼラさんに言わなくていいの?」
「あ……うん、考えたけど、別に良いわ。今忙しそうだし」
「そうなの? でもやっぱり不便じゃない?」
すると一つ向こうにいた黒髪に、茶色の瞳の少女――カトリーヌが首を傾げた。彼女は貴族だったはずだ。
「そうなのですか? でも、そろそろ替わった方がいいのではなくて……? やはり、不便でしょう。ガーラさんやキャンベルさんから、プラグさんの方が、良く気にしていると伺っていますけど……?」
「あー、それね……」
アルスは珍しく歯切れが悪い。そしてプラグを見て、うーん、と言った。
プラグが首を傾げると、アルスはまた「うーん」と唸ってしまった。
「――どうしたんですか?」
と先に聞いたのはアドニスだ。アルスが自分の頭をさすりながら答える。
「実は……うーん。ローナの部屋に空きベッドがあって、移動したら? って誘われてるのよ」
アルスの言葉に、プラグも含めた付近の男子は納得した。アドニスはほんの一瞬、しまったという空気を出し、消して「そうなんですね」と当たり障りの無い事を言った。
プラグは少し考えた。
アルスからしたら断る理由は無い……というか、空き部屋は他にもあるので、未だに男子と同室な方がおかしいのだ。ただ、アルスは迷っているらしい。カトリーヌの様子を見ると、純粋に、男子と一緒で過ごしにくいのでは? と思われているようだ。
プラグも「うーん」と唸ってしまった。断る理由は何も無い。
するとゼラトが首を傾げた。
「揃って唸ってないで、さくっと決めたら? 別に女子部屋でよくね?」
悪気の無い言葉にプラグは困ってしまった。確かに、その通りだ。
(なんと言った物か……)
アルスはさっぱりしているから、プラグとしては何の不満も無い。
二十五号室は、初日にアルスが決めた規則(ルール)を守っているおかげで、問題は起きていないし、プラグもアルスの存在に慣れて来て、こうして指摘されて、そう言えば女の子だったなと思い出したくらいだ。シオウはアルスに興味がないらしく、別に何でもどうでもいい、という感じだ。
ただ確かに、男女が一緒というのはあまり良くない。
プラグは何を言うべきか少し迷った。
……おそらくプラグや、アルスのちょっとした一言で決まってしまうだろう。
「確かにそうだけど――」
プラグは一旦、ゼラトに言葉を返した。
「だろ?」
「うん。でも、考えてみれば、貴重というか……滅多に無いことだし。一年経ったら、良く過ごせたな、って、なると思うんだ。だからやってみるのも良いんじゃ無いか? アルスが良ければだけど」
……アルスは『とても楽しい』と言ってくれたらしい。
プラグには何が正解か分からなかったので、ほとんど丸投げしてしまった。
もう少し上手い言い方ができれば、と思ったのだがこれで背一杯だった。
「――確かに、貴重かも……そうね、そうしようかしら」
アルスは乗り気なようだ。プラグは頷いて、苦笑した。
「今の所、なんとかやってるし、嫌になったら替わればいいし、空きがあるなら、たまには女子棟にも泊まりに行ったらどうだろう? リーオ隊士がいいと言えばだけど……」
女子同士で騒ぐのもきっと楽しいだろう。
「そうね、それもいいかも。もうしばらく、やってみましょうか。……うん、そうするわ! 決めた。もうこのままでいいわ。とりあえず!」
アルスは力強く頷いた。
プラグも、アルスがそう言うなら、と思って微笑んだ。
「お互い、変な噂が立たないように気を付けないとな」
これが一番心配なので、笑いつつもしっかり言っておく。
プラグは、アルスをからかう輩がいたら、制裁を加えるかもしれない、と思った。
そこで『言葉が足りない問題』を思い出し、試しに口に出してみようと思った。
「――何か言う輩がいたら、殴ってしまうかもしれない」
場の空気が凍ってしまったので、プラグは言わない方が良かった、と思った。
アルスはこれにも大きく頷いた。
「そうね、気を付けましょう! ……プラグはこんな感じだから、この子、大丈夫なのよ。ホントに。シオウはなんか何でもどうでもいい、って感じだし」
言った後、アルスがカトリーヌを見て苦笑した。
カトリーヌも「そうですね」と言っている。納得してくれたようだ。
――プラグはシオウの事を今思い出したのだが、見ると確かに聞いていない。
『ん? 何か言ってたか?』と言う顔をするので、さすがだと思った。
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入って来た講師がリーオではなく、アプリアだったので皆がざわついた。
「おはようございます。皆さん。今日は私が授業を行います。気を引き締めて聞いて下さいね」
アプリアが微笑んだ。
「では、今日はいよいよ『精霊結晶(フィカセラム)』の授業です。技術教本の七十頁を開いて下さい――作成手順をお教えしますから、実際に作って、後日提出して頂きます。宿題ですね」
プラグは既に眠かったが、精霊結晶については気になっていたので、なんとか、起きている事にした。シオウはかなり眠そうだ。……教本を立てて、既に眠る気に見える。
「皆さんは『赤プレート』をご存じですよね。ああ、出さなくても大丈夫ですよ。『翻訳』『飛翔』『治療』『火』や『水』など。その赤いプレートの原料になっているのが、精霊結晶(フィカセラム)です」
教本には、結晶の絵が描かれていた。
「一週間、一ヶ月。毎日精霊が祝詞を唱え、祈り、自分の霊力を形することで、結晶が生まれます。精霊の『涙』から結晶ができる事もありますが、そちらはプレートには使えず、すぐに消えてしまいます」
アプリアが説明した。
『精霊結晶(フィカセラム)』
精霊が毎日、決まった時間に祈りを捧げ、望んだ効果を付与して結晶を作る。
付けたい効果が難しい物であるほど、作るのに日数が掛かる。
『精霊の涙(フィカティア/フィカティアー)』
精霊が泣いた時、涙が結晶に変わる事がある。これは現象としてそうなっているだけで、霊力が籠もっている訳では無い。一、二分ほどで消えて無くなる。
ちなみに、フィカティアの『ティア』は『涙』という意味で、『庭』という意味の『クロスティア』のティア、風という意味のティアはそれぞれ発音が違う。
「祝詞は教本にある通りですが、これは人間が唱える必要はありません。結晶作りは精霊の仕事だと思って頂いて大丈夫です。祈りはゼクナ語で行われます。例文は『ル・フィーラ・アラード・ノラ・フィーラ・ガルデ・ディアタス・ア・ミーア・ドーゼス・フィカセラム』……『私の祈りでフィカセラムを作ります』とありますが、この祝詞は付けたい効果によって違います。毎回同じ言葉を決めて、唱えれば良いようですね。もう一つ、似た物に『精霊の涙』があります」
「これは雑学なのですが。とても強い精霊の場合『精霊の涙』が、そのまま精霊結晶になる事もあります。これはとても貴重なので、もらったらプレートにはせず、大切に、家宝にして下さい。とんでもない値段が付きますが、間違っても売ってはいけません。絵のように、宝飾品にする事もありますね」
教本には、セラ国やストラヴェル国、他の国に伝わる『精霊の涙』の装飾品が描かれていた。セラ国の例は金色のネックレスと、聖母の金冠で、どちらも緑色の『涙』がはめ込まれている。ストラヴェルの物は綺麗な水色の『涙』で、こちらは指輪になっていた。
――精霊結晶の見た目は、宝石と変わらないのだが、耐久性は低いので欠けやすい。
しかし『精霊の涙』は高い硬度を持つので、価値が跳ね上がる。
「わが国に伝わる精霊の涙は、一つだけ。王様の証しとなっていますね。指輪です。この結晶は精霊大戦の折『ルルミリー=エルタ』という水一族の精霊がこの国の初代国王、ビアス・ヴァシュカ様に贈ったと言われています。詳細は残っていないのですが、伝説は幾つもあります。おとぎ話を知っている方も多いのでは?」
アプリアの言葉に、候補生の大半が頷いた。
――色々な話が伝わっているが、大筋は同じだ。
迫害され、住む場所を無くして困っていた『ルルミリー=エルタ』に、ビアスは「ここに住めば良い」と言ってクレナ湖を教えた。ルルミリーはクレナ湖を気に入って、湖の守り神となり、加護として涙を授けた……。
「この逸話が、首都をここにした理由ですね。彼女は今もクレナ湖にいると言われています。何の精霊なのかは分かりませんが、素敵ですね」
アプリアが微笑んだ。
『ルルミリー=エルタ』
黒いドレスを着た、銀に近い水色の髪、耳の尖った美少女として描かれている事が多いが、プラグは会った事が無い。
精霊は多いので不思議は無いが、水一族でも知っている者はいないと思う。
……人間は権威付けの為、おとぎ話として、実在しない精霊を作る事があるので、その一例かもしれない。
アプリアが続ける。
「精霊結晶や、精霊の涙は、不思議な輝きを持つ事があります。虹色とか、光が当たると色が変わる等……。効果もあり、貴重なので、精霊を痛めつけて、涙や結晶を作らせよう、という人もいますが、その方法ではできないので覚えておいて下さい。結晶は精霊の『真心(まごころ)』です。所有者を大切に思って、守りたいという、祈りを込めて分けてくれる物なので、その精霊だと思って、しっかり管理して下さいね」
「さて、話を戻しましょう。精霊結晶は精霊に作って貰えますが、その効果は、精霊使いが一緒に考える事もできます。ただ、難しい効果を付けると、とても時間が掛かります――どんな物なら、どのくらいの期間でできそうか。精霊と相談して、卒業までに結晶を提出すること。これが宿題です」
「ですが……真心なので、もし完成しなくても、採点には関わりません。簡単な効果で構いませんから、一つ、作ってみてください。先程言ったように、管理は厳重に。なぜなら、精霊結晶からは赤プレートが作れてしまうからです」
『赤プレート』には作り方が二種類ある。
一つは、自然精霊を見つけて、巫女が白プレートに封印する方法。
――これはラ=ヴィアを見つけた後の授業だったので、プラグ達は不参加だった。
そういえばアルスとシオウもやっていないので、できる事なら、補習を申し出た方がいいかもしれない。
もう一つが精霊結晶から作る方法だ。
精霊結晶から『赤プレート』を作るには巫女と紅玉鳥の力が必要で、事前に精霊結晶の審査がある。
赤プレートは、プレート管理施設で、効果の実験と耐久時間の確認、所有者登録が必要なのだが――結晶から違法にプレートを作る闇巫女も存在する。
プレートと違って精霊結晶自体に所有制限は無いのだが、その点も踏まえて効果を決める必要がある。
(耳の痛い話だ……)
プラグは内心で溜息を吐いていた。
「作った結晶は、本来は騎士か、騎士団が管理するのですが、ここでは、候補生と精霊の友情の証しとして、卒業後、所有しても良い事になっています。よほど得意で無ければ、一年ではそこまでの効果、大きさの物はできないので、宝飾品(アクセサリー)にする人が多いです。殆どの候補生が精霊とは卒業と同時に別れる事になりますから、思い出の品と言うことですね。おすすめの効果は教本に書いてあるので、そこから選ぶか、似たような効果を自分で考えて、精霊と相談してみても良いでしょう」
教本には簡単な結晶の例として、大きさ、効果、祝詞が載っていた。
「精霊の特性に合わせた効果を付けるのが普通ですが、このくらいの簡単な効果なら、どの精霊でも一月ほどで出来ると思います。毎年の事なので、慣れている精霊もいますよ」
『恋愛が成就する(かもしれない)効果』
『落としものをしない(かもしれない)効果』
『躓いて転ばない(かもしれない)効果』
『しゃっくりが出ない(かもしれない)効果』
見事に、おまじないだ。地味に便利なような、何とも言いがたい効果だ。
(俺も、これくらいにしておけばよかったな……)
プラグはいよいよ、嘆息した。お守りくらいで、大した効果は付けていなかったのだが……悪用する方が効果を曲げたのだろう。もっと、効果を限定した物を作った方が良かった。
例えば、誰々がどうした時に、この効果が一回だけ発動する。など。
条件付けが難しいが、やろうと思えばできるはずだ。
カド=ククナは結晶作りが得意な精霊なので、効果について軽く考えていたのだ。
……それだけ相手を信頼していた、と言う事もあるのだが……。
候補生達から、なにこれ、どれにしよう、という声が聞こえる。
「ああ。精霊によっては、作るのが得意で、短期間で、たくさんできてしまう場合もあります。その場合は、余分は全て提出していだき――つまり、騎士団が没収して、持ち帰るのは一つだけになります。結晶ができたらコリント隊士、リゼラ隊士、私か、リーオ隊士に提出をお願いします。精霊によって得意、不得意がありますので、できなくても気に病まないように、精霊との付き合いは、根気よく、です。ね。では、これで授業はお終いです」
アプリアは颯爽と去って行った。男子達が溜息を吐いた。
「やっぱアプリア隊士、格好いいよな……」
「ああ。美人だし……話も分かりやすい」
「近づいたらいい匂いしそう。女子から見ても格好いいだろ?」
そう言ったのは癖の無い、短いブラウンの髪に藍色の目の男子――マシルで、ちょうど隣にキールがいた。座学の席は決まっていないので、ほぼ来た順に座っているが、アドニスのようにいつも前の方を取る生徒もいる。プラグはこだわりは無いので、アルスとシオウの隣になる事もあれば、離れる事もあった。今日はアルスとシオウに挟まれている。
キールが少し考える。
「うん? そうかな。考えた事なかった」
キールの返事はマシルが望んだ物では無かったようだ。
「えー。そっかー。まあでも美人だとは思うよな?」
「うん、それは勿論。なんか綺麗過ぎてどう反応すれば良いのか分からないの。あんな美人、街でも見た事ないもの。リズさんも綺麗だしここって不思議」
「ああ確かに。お前もまあ綺麗な方だぜ。っと、冗談だ。飯、行くか」
「そうね」
他の生徒達も席を立った。
「あー、恋愛成就とか、できるなら欲しいな」「転ばないやつ便利じゃない?」
「どれもおまじないよね」「貰えるの嬉しい」「できるかなぁ」という女子達の弾んだ声が聞こえる。
(精霊結晶か……ナダ=エルタは、まだやった事が無いだろうな)
プラグはナダ=エルタの事を考えた。
初めての結晶作りは中々難しいので、卒業までに完成しないかもしれない。
ただ、評価対象では無いらしいので気長にやろうと思った。
「どうしたの?」
と言ったのはアルスだった。
「うん、気長にやろうと思って。本を置いてこないと」
プラグは立ち上がって、教本をまとめて、出口へ向かった。
■ ■ ■
精霊結晶の授業の後――昼食の席で、何やら男子達が騒ぎ始めた。
ちょうど手袋の配布がされて、コリントとリゼラがいたのが原因らしい。
配布が終わった後に話し掛けていて、そのままコリントとリゼラは囲まれてしまった。
一番、熱心に話しているのは……ヘッセ伯爵の三男、アラーク・ル・ヘッセだ。
アラークは背中の真ん中ほどまである、長い黒髪巻き毛を首の後ろで一つに結った少年で、瞳も黒い。前髪は真ん中分けで、目は吊り目で、眉も角度がきつい。見た目の通り、負けん気の強い性格をしている。先日の組み分けでも上位クラス、八位に入った実力者だ。
「すみません、もう一回、早めに試験してもらうことって出来ないんですか?」
アラークは強い口調で言っていて、真剣だ。
他の男子達も、皆、同じ事を言っている。
「そうそう、ちょっと、あの問題は難しかったし」
「なんか、無駄に不安になるっていうか」
「それか、もう武術と学科分けて貼り出して貰うとか」
するとコリントは深く頷いた。
「わかる。気持ちはとても良く分かる。今年は特に厳しいからな。わかった、隊長達に言ってみる」
するとリゼラが。
「今日、午後から先輩達が戻ってくるから、少し楽になるかも。あ、私達の方がね。今、人手不足なのよ。でも毎年、学科と実技は分けて貼り出してるから、それは簡単だわ。成績はちゃんと付けてあるから、来週か、再来週には出せるはずよ。ごめんね、不安にさせちゃって」
と言って宥めていた。
「先輩達って?」
男子の言葉にリゼラが苦笑する。
「若手隊士よ。二十歳以下の先輩達。これから交代で訓練も見てくれるから、皆、めげずに頑張ってね。面談とか進路相談とかも誰か固定でやってくれると思うわ。あと、女の人はみんな美人だけど、皆つよーい、から。三倍、二倍もらった人は覚悟しておいて」
リゼラの言葉に、一部の男子――プラグと、シオウ、アドニス、フィニーが固まった。
「とにかく、再試験は早めにお願いします!」
アラークが言った。
「わかったわ。隊長次第だけどね、伝えてみる。さ、お腹空いてるでしょ、食べて。午後からも頑張って」
リゼラの言葉に男子達が頷き席に戻った。
「三倍か……ああぁやだな……戻ってくるなよ……無理だって……」
と言ったのは、シオウだった。プラグも頷くほか無い。
「今朝の人も凄く強そうだったからな……」
プラグはクラリーナを思い出した。するとアドニスが瞬きをした。
「あれ、もう会ったんですか?」
――アドニスは真面目に教室に入っていて、窓から見ていなかったらしい。
「うん。走っていたら、併走してきて。鍛練が趣味だと言っていた」
プラグは答えた。
「どんな人だったんです?」
「女性で、薄ピンク色の長い髪をしていて、すごく足が速くて『飛翔』でついて来てと急かされた。名前はクラリーナ・ザーヴェ」
外見を聞いたアドニスが手を打った。
「ああ、あの方ですか! 僕もちらりとお会いしました。そうだったんですね。だから入って来たとき、あんなに汗だくだったんだ」
アドニスが言った。
「あ。そういえば言っていたな。教科書、ありがとう」
忘れていた会話を思い出して、プラグは礼を言った。……これから君達も走るかもしれない、とは言わないでおいた。
「いえ、アルスちゃんが持ってきてくれましたから。置いただけです」
アドニスがアルスを見た。するとイアンチカが。
「ピンクの髪……もしかして、美人だった?」
と尋ねたので、プラグは頷いた。
「たぶん。けどそれどころじゃなかった。午後の稽古で、またね、と言われたけど、もう会いたくない……」
「うわぁ……頑張ってね」
イアンチカは言ったが、プラグは項垂れた。今日、無事に戻って来られるだろうかと危惧していると、アルスに、彼女の左側にいた女子が話しかけてきた。セピア色の髪に灰色の目……確か名前はベアトラだった。
「そういえばアルスちゃん、あの事はいいの?」
「?」
アルスが首を傾げる。
「ほら……昨日の。リゼラさんに言わなくていいの?」
「あ……うん、考えたけど、別に良いわ。今忙しそうだし」
「そうなの? でもやっぱり不便じゃない?」
すると一つ向こうにいた黒髪に、茶色の瞳の少女――カトリーヌが首を傾げた。彼女は貴族だったはずだ。
「そうなのですか? でも、そろそろ替わった方がいいのではなくて……? やはり、不便でしょう。ガーラさんやキャンベルさんから、プラグさんの方が、良く気にしていると伺っていますけど……?」
「あー、それね……」
アルスは珍しく歯切れが悪い。そしてプラグを見て、うーん、と言った。
プラグが首を傾げると、アルスはまた「うーん」と唸ってしまった。
「――どうしたんですか?」
と先に聞いたのはアドニスだ。アルスが自分の頭をさすりながら答える。
「実は……うーん。ローナの部屋に空きベッドがあって、移動したら? って誘われてるのよ」
アルスの言葉に、プラグも含めた付近の男子は納得した。アドニスはほんの一瞬、しまったという空気を出し、消して「そうなんですね」と当たり障りの無い事を言った。
プラグは少し考えた。
アルスからしたら断る理由は無い……というか、空き部屋は他にもあるので、未だに男子と同室な方がおかしいのだ。ただ、アルスは迷っているらしい。カトリーヌの様子を見ると、純粋に、男子と一緒で過ごしにくいのでは? と思われているようだ。
プラグも「うーん」と唸ってしまった。断る理由は何も無い。
するとゼラトが首を傾げた。
「揃って唸ってないで、さくっと決めたら? 別に女子部屋でよくね?」
悪気の無い言葉にプラグは困ってしまった。確かに、その通りだ。
(なんと言った物か……)
アルスはさっぱりしているから、プラグとしては何の不満も無い。
二十五号室は、初日にアルスが決めた規則(ルール)を守っているおかげで、問題は起きていないし、プラグもアルスの存在に慣れて来て、こうして指摘されて、そう言えば女の子だったなと思い出したくらいだ。シオウはアルスに興味がないらしく、別に何でもどうでもいい、という感じだ。
ただ確かに、男女が一緒というのはあまり良くない。
プラグは何を言うべきか少し迷った。
……おそらくプラグや、アルスのちょっとした一言で決まってしまうだろう。
「確かにそうだけど――」
プラグは一旦、ゼラトに言葉を返した。
「だろ?」
「うん。でも、考えてみれば、貴重というか……滅多に無いことだし。一年経ったら、良く過ごせたな、って、なると思うんだ。だからやってみるのも良いんじゃ無いか? アルスが良ければだけど」
……アルスは『とても楽しい』と言ってくれたらしい。
プラグには何が正解か分からなかったので、ほとんど丸投げしてしまった。
もう少し上手い言い方ができれば、と思ったのだがこれで背一杯だった。
「――確かに、貴重かも……そうね、そうしようかしら」
アルスは乗り気なようだ。プラグは頷いて、苦笑した。
「今の所、なんとかやってるし、嫌になったら替わればいいし、空きがあるなら、たまには女子棟にも泊まりに行ったらどうだろう? リーオ隊士がいいと言えばだけど……」
女子同士で騒ぐのもきっと楽しいだろう。
「そうね、それもいいかも。もうしばらく、やってみましょうか。……うん、そうするわ! 決めた。もうこのままでいいわ。とりあえず!」
アルスは力強く頷いた。
プラグも、アルスがそう言うなら、と思って微笑んだ。
「お互い、変な噂が立たないように気を付けないとな」
これが一番心配なので、笑いつつもしっかり言っておく。
プラグは、アルスをからかう輩がいたら、制裁を加えるかもしれない、と思った。
そこで『言葉が足りない問題』を思い出し、試しに口に出してみようと思った。
「――何か言う輩がいたら、殴ってしまうかもしれない」
場の空気が凍ってしまったので、プラグは言わない方が良かった、と思った。
アルスはこれにも大きく頷いた。
「そうね、気を付けましょう! ……プラグはこんな感じだから、この子、大丈夫なのよ。ホントに。シオウはなんか何でもどうでもいい、って感じだし」
言った後、アルスがカトリーヌを見て苦笑した。
カトリーヌも「そうですね」と言っている。納得してくれたようだ。
――プラグはシオウの事を今思い出したのだが、見ると確かに聞いていない。
『ん? 何か言ってたか?』と言う顔をするので、さすがだと思った。