出題編2-4
ー/ー「どうぞ」
私は部屋にあった椅子に腰かけ、新見博士と向かい合うように座る。
「ありがとうございます」
湯気を立てる紅茶の香りが、鼻の奥まで広がっていった。お茶を淹れる時に曇ってしまった眼鏡を拭きながら、新見博士も腰かけた。
「あの、一つだけ聞いてもいいですか?」
「ん?」
ふうふうと息を吹き替えて紅茶を冷ましながら、博士は答える。
「前島教授とは、どういう関係なんですか?」
「ああ、実は僕と彼は同級生なんですよ」
そういいながら、博士は名刺を取り出した。そこには、メールアドレスが記されている。アルファベットと数字の羅列を見ると、前半は新見博士のローマ字読み、後半は八桁の数字で構成されている。
「ここが生年月日ですね。教授と同じでしょう? これは、どうぞ」
「ありがとうございます」
私はその名刺を大事に手帳に挟んだ。代わりに、自分のものを一枚取り出して、両手で差し出す。「それで、聞きたかったことはなんですか?」
「ええ。最近、彼はどうしているのかなと。ご存じの通り、彼はあまり人付き合いというものに興味がない。せっかく、こちらが休みをとって話をしたいと思っていても、なかなか連絡すらできないですからね。せめて、彼の好きな研究はしっかりとできているのかなと」
「もちろん、講義以外の時間はずっと部屋にこもって好きなだけ研究していますよ」
私は、そういって前島教授の普段の生活の様子を伝えた。
「そうですよね。彼らしい」
新見博士は小さく笑った。しかし、その笑いは懐かしむようだった。
「なら良かった。また、彼に連絡をするように言っておいてもらえますか。もちろん、ここから無事に帰ることができればですが」
最後の言葉には、明らかに含みを持たせるように言ったのがわかった。おそらく、火野博士の一件を言っているのだろう。
「それについてなんですが、新見博士はどんな現象で火野博士が殺害されたと思っていますか?」
「殺害? 渡橋さんは、殺人事件だとお考えですか?」
「いや、確定ではないですけれども。警察の方もそう言っているので、その可能性は高いのかなと」
私がそういうと、新見博士は顎に手を当てて思考を巡らせる。
「確かに、その可能性は高いです。ですが、現実的にその方法を説明できない。ここの研究所にあるどんな薬品を使用しても、あそこまでの短時間で火野博士の体を焼き切ることは難しい。事実、火野博士が亡くなった時間は不明ですが、岩塚君が部屋の前を通りかかった時点では生きていたでしょうし」
そうだ。この問題の難点として、岩塚さんが部屋の前を通ったこと。岩塚さんが犯人でもない限り、匂いに気が付いて誰かに報告しているはずだ。しかし、その証言を信じるならば少なくとも研究室で火野博士が焼かれていたという可能性はかなり低くなる。
「密閉しながら、いや、それでも膨張した空気の処理をするために喚起をしないといけない。地下だから窓もないし、換気扇も回っていなかったらしいしね」
「それに、換気扇で流していればその換気扇の近くにある人が気が付くはずですもんね。換気扇がどこに続いていても、客間の下に続いていれば誰かが気が付くはずですよね」
そこまで言うと、二人とも思考が行き詰ってしまった。
「なら、新見博士は誰か火野博士を恨んでいた人に心当たりはありませんか?」
状況から考えると、なかなか難しい。そもそも、その仕事は探偵さんのほうが慣れもあって得意な気がする。ただ、動機に踏み込むのは私のほうが得意なはずだ。
「そうだね。君は、というより一般の人たちは知らないだろうけど、火野博士はあまり知られていないかもしれないけれども、かなり女癖やギャンブル癖が悪かったんだよ」
それは意外な事実だった。もちろん、会ったこともない相手だからわからないけれども、不真面目なタイプだったのだろうか。しかし、私はそれに違和感を覚えた。
「まあ、それは別に火野博士の自由ですけど。なら、言い方は悪いですけれどもこんな辺鄙な場所に籠るのは不便じゃないですか?」
こんな山奥にわざわざ電気を持ってきて、研究所を立てると、どうしても不便だ。ギャンブルができるような場所は近くには無かったし、女性も普段は副島さんしかいないだろう。女癖が悪いということは、複数の女性を抱くことを目的にしている人が多いから、なんだか腑に落ちない。
「うん、それに関しては僕たちの中でもかなり話題になっていたからね」
なら、どうしてこんな場所に研究所を立てたのだろう。もともと、火野博士は東京で研究できる環境があったのだから、そこならば女性遊びもギャンブルもできそうなものなのに。
「まあ、つまりはあまり万人に好かれるタイプではないってことだね。噂によると、火野博士は甲斐博士と交際していたらしいけれども、そこは本人たちに聞いてみないとわからないよ」
「あの二人が……」
まあ、私も男の人なら甲斐博士とお付き合いしたいけれども、それは動機になりそうな要因ではあった。男女の関係なんて、どうとでも解釈できる。
「すいません、なんだかブルーになるような話ばっかり聞いてしまって」
「いや、いいんだよ。なんだか、探偵みたいだね。でも、これ以上のことは僕から出てこないからね」
「わかりました、ありがとうございました!」
私は深々と頭を下げて、新見博士の部屋から出てきた。なんだか、言葉の一つも逃して忘れないように頭を使っていたから、疲れてしまった。とりあえず、部屋に戻って探偵さんに連絡することにした。
ちょうど、ベッドに腰かけたところだった。お尻のポケットに振動が走る。「不明な番号……あっ、探偵さんだ」
電話を終わった後に、電話帳に登録するのを忘れていた。
通話開始のボタンを押すと、元気な探偵さんの声がスピーカーから聞こえてくる。
「もしもし、そっちはどうかしら? 何か新しいことがわかったり、面白いアイデアを思いついた?」
何だかいつも通りの探偵さんのテンションで、ちょっとだけほっとする。
いつもと言ったが、話すのはこれで三度目だ。しかし、回数以上に自分の中に探偵さんの存在が馴染んでいる。閉鎖的な空間で、あまり年齢の近い人と関わっていないからだろうか。大学の友人には、何事もなかったかのように返事をしているので火野博士が死亡したという背景を踏まえて話をできるのはここにいる人たちと前島教授、探偵さんだけだった。「いや、すいません。まだ何も詳しいことはわからなくて。ちょうど警察さんも到着したので、あまり私が目立って動くこともできませんし。とりあえず、建物内の情報を自分なりに整理してみたんですけど……」
そう言って私は見取り図を描いたメモを取り出して懇切丁寧に説明した。
「なるほどありがとう。警察の動きはどう?」
警察の動き……普段がどうかを知らないのだが、上手くいっているとは思えない。至って、順当な動きをしている気がする。
「まあ、とりあえずいつもの捜査、その流れを追っているくらいですかね。ただ、化学のプロである私たち研究者でも思いつかないので、火野博士が殺害された件はなかなか解決は難しそうですね」
「それはそうね、仕方ないことだわ。こっちは捜査方針を決めて、いろいろと考えていたところ。どうせ、そっちでやることもないでしょ?」
確かに、普段から携帯ゲームをするわけでもないし、頻繁にメッセージのやりとりをするタイプではない私は退屈していた。正直、話し相手も基本的には年齢も立場も上の人だらけで、新見博士との会話も気を使ってもらった割に疲弊したのは否定できない。ここにいつまで閉じ込められるのかはわからないが、普段は読まない文庫本でも、今なら手に取るかもしれない。それくらいには暇だった。
「そうでしょそうでしょ。だから、暇なら電話でもしてあげようと思って。それで、まずは優先順位を決めたんだけども」
電話越しの探偵さんは、私にはすべてお見通しだとでも言いたいように得意げだ。
「優先順位ですか。じゃあ、優先順位が高い方から情報を集めればいいんですね」
「そうそう、だんだんとわかってきたんじゃない? いいワトソンになりそう」
ワトソンがホームズの助手だということは知っている。私も、このころにはかなり乗り気だった。きっと、こんな経験は二度とない。
「それで、何から調べればいいですか?」
私が意気揚々と聞くと、探偵さんも嬉しそうに話し始めた。
「まずは、不知火の状況を詳しく探るわ。さすがに肉眼ではっきりと見えるほどに強力な不知火が自然に発生するとは考えにくい。さらには、殺人が発生したその直後。子供でも何者かが意図的に不知火現象を発生させているとしか思う。犯人の狙いもそう」
それは探偵さんの言う通りだった。私はこの目で本物の不知火現象を目撃したことはないが、そんなにはっきりと見えるものだろうかという疑念は常に抱いていたうえで、こうもしっかりと断言されるとその疑念は確信へと変わった。
しかし、何の為かと聞かれると想像もつかない。
「まあ、いろいろとあるけれども基本的には伝承になぞらえることかしら」
「でも、それって漫画や小説をより盛り上げるためじゃないんですか?」
「フィクションの世界ではね。ただ、意外とその中にも役に立つ場合がある。一つは、注意を逸らす効果。実際に、不知火が全く事件と関係がないことだってあり得る。それなら、私たちの脳のリソースを無駄に消費させていることで犯人の目論見は成功しているわ」
それはそうだけど、それならもっといいやり方があるような気もする。
「もう一つは、刷り込み。例えば、調理場のナイフが一本、どこかに消えた状態で刺殺体が、見つかればあなたはどう思う?」
「そのナイフで殺害されたんじゃないかと思います」
「そう。すると、ナイフがいつ無くなったのかという風に考えてしまい殺害時刻を制限してしまう。ただ、実は別の刃物で既に殺害されているとその推理はすべてが無駄になるどころか、正解から遠ざかる」
なるほど、そんなことが可能なのか。確かに言われてみればそうだと納得できる。なら、この不知火はどういう意味があるのだろうか。
「もちろん、火野博士殺害に対する何らかの刷り込みであることも考慮しなきゃいけないけれども、もっと警戒する必要があるわ」
「え、なんですか?」
「この殺人が別に火野博士の一件で済むとは確定していない。これ以降の殺人のために仕組まれた不知火かもしれない」
その言葉が耳の穴から体に吸い込まれて、脳が理解した瞬間に体がさあっと凍る気がした。その言い方、断定の口調では無かったけれども探偵さんの声には、確かに確信の色が見えた。「それで、登松刑事はこの不知火に対してはどんなふうに操作を進めているの?」
「それが……登松刑事がいうにはそんなものは事件には関係ないって言われてしまいまして。一応、余裕があれば調べておくとは言っていたんですけど」
あの態度では、きっと調べないだろうなあという事もくみ取り、少し誇張して探偵さんに伝えた。登松刑事も長岡博士と同じように現実主義者の側面がある。まあ、刑事としては正しい姿勢だとは思うけれども。
「はぁ!?」
探偵さんの声はあまりにも大きく、電話を耳に近づけていた私はあわてて遠ざける。
「どう考えても犯人が目的をもってやっているに決まっているじゃない。そういう変なプライドがあるから出世がうまくいかないのよ」
探偵さんはぷりぷりと怒っている。おそらく登松刑事は私が伝承を信じて不知火について調べることを要望していると思っているんだろうけど、少しは捜査をしてくれてもいいのにとは私も思う。探偵さんの存在は明かせないのだが、根拠もあるのだ。登松刑事は刑事ドラマでいうところの、頭でっかちな背広組といったタイプであることは一目でわかる。「まあ、仕方ないわ。それで、あなたの話を聞いた限りで想像できる可能性を色々と考えてみたの。ちょっと待っててね」
電話口から、ファイルのようなものをめくる音が聞こえた。情報をまとめていたのだろうか。この人ならば脳みそで全てを記憶して論理を構築してもおかしくないけど、流石にそれは漫画の世界だけだろうか。
「まず考えられるのが、本物の不知火現象と同じように光を屈折させて海の上になら出現させることね。これが最も手軽だとは思うけど、その可能性は薄いと言わざるを得ないわね。。その夜は晴れか曇りかくらいは誰でも調べればわかる情報だけど、どれくらい明るいかはある程度しかわからない。別に犯行から目をそらす程度のものだと犯人が思っていればそれでもいいけど、もしも殺害方法に関わるような重大事項なら不知火を発生させるということに何かしら確実な方法を用いるでしょ」
「そうですよね。蜃気楼程度のもやもやしたものならともかく、私が見たものは確かに炎だったと思います」
いや、正確に炎とは言い切れないけども光の反射や屈折で発生した現象と言われれば疑問符が浮かぶ。昨日の不知火にはそれくらいの勢いを感じた。
「五感に関しては、あなたのいう事をすべて信じるしかないからね。あなたがそういうならその可能性は消してもいいわ。なら次にくるのはプラズマね」
「プラズマ?」
聞き覚えのある単語に、なんだか安心した。すんなりイメージが湧いた。
「そう、あのプラズマ。わかるでしょ? これが意外と怪火現象の原因となっていたりするのよ。激しい光がそうさせるのかしらね。現在、観測されている怪火現象のほとんどはプラズマが原因であると考えられているのも事実よ」
プラズマとは物質の三態と呼ばれる状態の四つ目である。私は最初にこう説明をされたときに矛盾しているだろうと思ったが、最もわかりやすい説明ではあった。より詳しく言えば気体を構成する分子が電離し陽イオンと電子に分かれて運動している状態。自然界で言えば、雷やオーロラが該当する。
「怪火現象として有名な球電などはプラズマ説が唱えられているものも多いわ。不知火もそうだけど、昔の人が遠くから電気を見れば炎だと勘違いするのはいたって自然なことではあるしね」探偵さんの言うことは、もっともだった。日本で電灯が初めて設置されたのはまだ百年と少し前。元号で言えば明治のころだ。それまでの光と言えば基本は火を灯すものだったため、光=火という等式に、なんの違和感もない。
「でも、プラズマってことは何か発生する原因がありそうですよね。昨日の天気は、プラズマが頻発するような感じではなかったと思うんですけど」
「そうね。球電現象が起こる場合にはかなりの確率でその地域、もしくは周囲で雷が落ちたりしているからね。でも、ちゃんと気象情報を確認したんだけど昨日は日本中で快晴だったからね。それこそ、あなたたちが揃って炎と見間違えるレベルの大きさになることは考えづらいかも」
そこから、いくつか探偵さんが不知火現象の原因になりそうなものを挙げていった。それは私に説明するのと同時に、探偵さん自身が説明をすることによって頭の中を整理しているのだろう。結局、どれも確信に至るほどではない。そもそも、怪火現象自体がまだまだ謎の多いものなので一朝一夕で原因が判明することはないだろう。なら、別の線しかない。
「なら、人為的なやり方で海上に炎を出現させるのにもっとも適したのはなんですか?」
私の問いかけに、探偵さんはファイルを数回めくった後で力強く言った。
「ギリシア火薬ね。これなら百人中百人が炎と言っても不思議じゃない。なにせ、本物の炎なんだから」
ギリシア火薬? 私はそもそも火薬という字を当てはめるのに時間がかかった。
「ギリシア火薬というのは、東ローマ帝国で使用された焼夷兵器の名称よ。海上に撒くと海水と反応して発火する液体らしいわ」
「それって、禁水性物質が含まれた液体ってことですか?」
禁水性物質とは、水と接触することで発火、発熱する物質の事だ。代表的な物質ではアルカリ金属類のカリウムやナトリウムである。
「おそらくそうでしょうね。でも、アルカリ金属類だと燃えるよりは爆発するみたいなイメージだから少し違うんじゃない? あなたたちが見た炎は少しの時間ではあっても燃え続けていたんでしょう?」
「そうですね。瞬間的な爆発ではなかったと思います。周りに燃焼物もないでしょうから、アルカリ金属類ではなさそうですね。それを考えると、生石灰も違いそうですね」
生石灰、酸化カルシウムの事だ。これも禁水性物質である。しかし、生石灰は熱を発するだけで火を発生させるには何か媒介となる物質が必要だ。
「そう。だから、私は二リン化三カルシウムと石油の混合物じゃないかと思っているわ」
二リン化三カルシウムという言葉を聞いて、私はあわてて脳内のタンスを次から次へと引っ張り出した。アルカリ金属とかプラズマならすぐに取り出せる場所に置いてあるが、二リン化三カルシウムはなかなか奥にしまっているようで思い出すまでかなり時間がかかってしまった。
しかし、その物質の特性。さらには化学反応によって発生する物質の特性まで思い出したところで私ははっとした。確かに、二リン化三カルシウムによるものならばあの光景もすんなり飲み込める。
「あなたも知っていると思うけれど、二リン化三カルシウムは水と反応してホスフィンを発生させる。そのホスフィンは空気中の酸素と反応して発火する。それが、もっともギリシア火薬の特徴にあうんじゃないかしら」
それは探偵さんの言う通りだ。実際に私が見た光景も二リン化三カルシウムからホスフィンが生成されて、ホスフィンが海の水と反応したものなら納得できる。しかし、ホスフィン単体の反応では火力が不足するのでそれに石油を混ぜ合わせたのだろう。
「私もそれは賛成です。少なくとも、私があの光景を再現しろと言われれば私も二リン化三カルシウムと石油の混合物を作ろうと考えます」
「まあ、ギリシア火薬っぽいものが作れるだけなんだけども今回はそれで充分よね」
「ギリシア火薬っぽいってどういうことですか?」
製法で言えば、それしか考えられないほどに条件は合致している。
「実際のギリシア火薬かどうかはわからないのよ」
それから探偵さんは、まずギリシア火薬とは何かという事について説明してくれた。私は歴史にはまったく自信がないので、おとなしく聞いているだけだった。そもそも東ローマ帝国という過去の国に対するイメージすらわかない。
ギリシア火薬は水に反応して燃える以外にも、水をかけて消火はできないので砂や尿をかけることや、海上以外の白兵戦でも使われたというらしい。それなら、二リン化三カルシウムと石油の混合物だとは断定できない。
「ただ、この時の製法はきちんとした文献には全く残っていないのよ。しかも、数々の戦争を記した伝記ではその使われ方が出ているだけだから、その伝記の記述に合わないという理由で数々の科学者が再現に失敗してきたの」
「そんな歴史があったんですね」
私の研究分野とは違うので知らなくて当然だが、研究所の人たちはちょうど炎に関する研究をしているならギリシア火薬について知っていてもおかしくない。それに興味を持って独自に再現すれば、意図的に不知火を発生させることができるかもしれない。
「まあ、正確な再現なんて不可能なんじゃないかしら」
「それはどうしてですか?」
少なくともその当時にできた事であれば、その資源が全て失われてでもいない限りはいずれ誰かが再現できるのではないだろうかと思う。。
「もちろん、そうなんだけどね。ただ、その当時と言えば現代の科学どころか周期表という考えすらも生まれていないのよ。ただ、現在を生きる科学者に周期表を知らない人なんていないはずだから、そもそもの考え方に違いがあるわけ。正確に物を知ることは、それだけの可能性を失うことになるのよ」
その言葉は探偵さんの推理に対する考えにも似ていた。
何かが決まれば、それ以外の可能性は消滅する。
例えば、自分にとって大事な人が犯人だった場合には、まるで相手を追い詰めるようにどんどんその他の可能性をつぶしていく必要がある。もちろん、更生を促すことが正しいのはわかるがそこまで割り切ることができるだろうか。
その時だった。ドアをノックする音が聞こえたのだ。
ちょうど、探偵さんも私も話していない空白の時間に突然、意識に飛び込んできたその音に私は警戒心を強める。
「とにかく、話はあとね。気を付けて。それと、私と話していたことは悟られないでね。電話帳も不明な番号か適当な名前を入れておくこと。じゃ」
素早くそう言い切ってから、探偵さんはすぐに電話を切った。
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