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ー/ー「……悪かったな、2人とも」
胴体にも手足にも、それこそ包帯まみれ。生きてたのが不思議だってくらいボロボロにされてたって飼い主のおばさんは涙ながらに俺たちに話してくれた。
で、当の本人はというと、まだ覇気がないっていうか、妙にふ抜けた感じすらするんだよね。
いつもならば「ケッ、こんなの大したケガじゃねえよ」って毒づくくらいなのに。つーかまだ傷が痛むからなのかな?
「俺たち、奴に会ったよ」
そう言うと、やっぱり……ジンの目つきが鋭く変わったんだ。いや、元のあいつの目に。
「……どうやって見つけた?」
「俺だって犬の嗅覚持ってること、忘れてねえよな?」
ああ、そうだよな。ってあいつはまた元気ないモードに戻っちまった。だからこそ、俺は説明しなければならなかったんだ。
森の中で出会ったあの一連のことを。
「あいつ、ジンとはどういう関係なの?」
普通ならアイツも性格悪いから「言わねーよ」って吐き捨てるけどね。やっぱり違ってた。
「……弟だ。まあ血は繋がってねえけどな」
名前はザン。あいつの親父さんが拾ってきて、ジンの弟として一緒に育ったんだって。
「いずれ、親父の後を継ぐために……な。厳しかったけどその中に一本筋の通った不器用な優しさがあった。最高の親父だったさ」
そう話すと、俺が買ってきた焼き鳥をガツガツと元気に食べてくれた。栄養つけて早くケガ治せよな。
「けどな」
日の暮れかけた空を見上げ、またジンは続けた。
「親父の告げた最後の試練。それが俺とザンの一騎打ちだったんだ」
相手が敗北を認めるまでの死闘。命を落とす場合だってある。
周りを取り囲む親父の子分たちが目を光らすなか、戦いがはじまった。
「俺はザンを殺す気なんてなかった……あいつが引き下がってくれたらもうそれでよかったんだ」
「つまり、ジン……あなたは弟さんを」
「ああ、コタローの考えてる通り。勢い余って俺はザンの喉笛を噛みちぎって、そのまま崖の下へ落としちまったんだ」
ぞわっと、俺の背筋に冷たい汗が走った。
「助けに行ったのですか……?」
「いや、そのままだ。親父もザンが死んだと分かったからな」
え、というと……ジンを襲ったあいつは?
森の中で出会ったあいつはいったいなんなの!?
「俺にもそこら辺はよく分からねえ。しかし俺に対する激しい恨み……それを力に変えて生き返ったのかもな」
ジンは震える声で続けた。
「あいつに申し訳が立たなかった。ただ謝りたいって気持ちだけで。だから一切俺は……牙を向けたくなかったんだ」
「ちょ、つまりジンは一方的にボロボロにされちゃったってこと!?」
お前の気の済むまでやれ。殺しても構わねえ……って。
なすがままにされ、最後にザンがいった言葉。
ーこの程度で俺の気が済むとでも思ってるのか?ー
ああ、なんか分かる……あっちも一方的だと複雑な気分だろうと思うもん。
「いつかまた奴は……ザンは俺の前に姿を見せるだろう。今度こそ息の根を止めにな」
「それなんだけど、ジン」うん、言おうか言うまいか、俺の胸のぎりぎりで留めていたことがあった。
ー俺はお前に牙を向けない。そしてお前も俺とは戦えないー
ギリっと、ジンは鋭い歯を食いしばった。
「あいつ、知ってやがったのか」ってひとこと。なんだそりゃ?
「聞かなかったのか? つーかザンは何も言わなかったのか?」
そうだ、あいつは答えてくれなかったんだ。その言葉を信じるとしたら、俺はジンを助けることも加担することもできないんだし。
だからジン、教えてくれよ。ザンは俺になんか恩義とか貸し借りでもあるの? それとも……
「言いたくなかった。お前は……タケルには普通に生きてきて欲しかっただけだ」
普通って、もうワーウルフになれること自体もう普通じゃねーし!
そんな俺の言葉を鼻でフッと笑い飛ばして話してくれたんだ。すっげヤバいことを。
「タケル……初めてお前と出会った時、妙な匂いを感じ取ったんだ」
冗談とかでなくめっちゃ真面目な目だ。いつもの軽口叩くあいつじゃない。
「親父の……そう。俺たち狼の後を継ぐリーダーの匂いだ」
ええええええどういうことだよマジで、全然ワケわからねーし!
胴体にも手足にも、それこそ包帯まみれ。生きてたのが不思議だってくらいボロボロにされてたって飼い主のおばさんは涙ながらに俺たちに話してくれた。
で、当の本人はというと、まだ覇気がないっていうか、妙にふ抜けた感じすらするんだよね。
いつもならば「ケッ、こんなの大したケガじゃねえよ」って毒づくくらいなのに。つーかまだ傷が痛むからなのかな?
「俺たち、奴に会ったよ」
そう言うと、やっぱり……ジンの目つきが鋭く変わったんだ。いや、元のあいつの目に。
「……どうやって見つけた?」
「俺だって犬の嗅覚持ってること、忘れてねえよな?」
ああ、そうだよな。ってあいつはまた元気ないモードに戻っちまった。だからこそ、俺は説明しなければならなかったんだ。
森の中で出会ったあの一連のことを。
「あいつ、ジンとはどういう関係なの?」
普通ならアイツも性格悪いから「言わねーよ」って吐き捨てるけどね。やっぱり違ってた。
「……弟だ。まあ血は繋がってねえけどな」
名前はザン。あいつの親父さんが拾ってきて、ジンの弟として一緒に育ったんだって。
「いずれ、親父の後を継ぐために……な。厳しかったけどその中に一本筋の通った不器用な優しさがあった。最高の親父だったさ」
そう話すと、俺が買ってきた焼き鳥をガツガツと元気に食べてくれた。栄養つけて早くケガ治せよな。
「けどな」
日の暮れかけた空を見上げ、またジンは続けた。
「親父の告げた最後の試練。それが俺とザンの一騎打ちだったんだ」
相手が敗北を認めるまでの死闘。命を落とす場合だってある。
周りを取り囲む親父の子分たちが目を光らすなか、戦いがはじまった。
「俺はザンを殺す気なんてなかった……あいつが引き下がってくれたらもうそれでよかったんだ」
「つまり、ジン……あなたは弟さんを」
「ああ、コタローの考えてる通り。勢い余って俺はザンの喉笛を噛みちぎって、そのまま崖の下へ落としちまったんだ」
ぞわっと、俺の背筋に冷たい汗が走った。
「助けに行ったのですか……?」
「いや、そのままだ。親父もザンが死んだと分かったからな」
え、というと……ジンを襲ったあいつは?
森の中で出会ったあいつはいったいなんなの!?
「俺にもそこら辺はよく分からねえ。しかし俺に対する激しい恨み……それを力に変えて生き返ったのかもな」
ジンは震える声で続けた。
「あいつに申し訳が立たなかった。ただ謝りたいって気持ちだけで。だから一切俺は……牙を向けたくなかったんだ」
「ちょ、つまりジンは一方的にボロボロにされちゃったってこと!?」
お前の気の済むまでやれ。殺しても構わねえ……って。
なすがままにされ、最後にザンがいった言葉。
ーこの程度で俺の気が済むとでも思ってるのか?ー
ああ、なんか分かる……あっちも一方的だと複雑な気分だろうと思うもん。
「いつかまた奴は……ザンは俺の前に姿を見せるだろう。今度こそ息の根を止めにな」
「それなんだけど、ジン」うん、言おうか言うまいか、俺の胸のぎりぎりで留めていたことがあった。
ー俺はお前に牙を向けない。そしてお前も俺とは戦えないー
ギリっと、ジンは鋭い歯を食いしばった。
「あいつ、知ってやがったのか」ってひとこと。なんだそりゃ?
「聞かなかったのか? つーかザンは何も言わなかったのか?」
そうだ、あいつは答えてくれなかったんだ。その言葉を信じるとしたら、俺はジンを助けることも加担することもできないんだし。
だからジン、教えてくれよ。ザンは俺になんか恩義とか貸し借りでもあるの? それとも……
「言いたくなかった。お前は……タケルには普通に生きてきて欲しかっただけだ」
普通って、もうワーウルフになれること自体もう普通じゃねーし!
そんな俺の言葉を鼻でフッと笑い飛ばして話してくれたんだ。すっげヤバいことを。
「タケル……初めてお前と出会った時、妙な匂いを感じ取ったんだ」
冗談とかでなくめっちゃ真面目な目だ。いつもの軽口叩くあいつじゃない。
「親父の……そう。俺たち狼の後を継ぐリーダーの匂いだ」
ええええええどういうことだよマジで、全然ワケわからねーし!
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