第九話 映画館での幕間

ー/ー



 次に野平さんと会うのは一週間後に決まった。それから僕は毎日、野平さんとラインでやりとりした。さすがに通話はハードルが高いので、メッセージとスタンプのやりとりだ。
 お昼に食べた社食のミックスフライ定食の画像や最近見て面白かったアニメの感想を送ると彼女も似たようなものを送ってくる。
 こちらからメッセージを送るとすぐに既読がつくのは何気に嬉しい。さらに野平さんからメッセージが送られてきたときは、嬉しさは倍増だ。
 思えば瑞樹とはこんな風にラインのやりとりをしなかったな。もっとしっかりと瑞樹とコミュニケーションをとっていればとも思ったが、それはもう今更だ。

 そうこうしているうちに一週間はあっという間にすぎて、映画デート当日となった。そうだ、これはデートなのだ。前回のはデートというよりは、出会いであった。出会って次はデート、最終的に付き合えるかどうかはわからないがまずは野平さんと映画を楽しもうと思う。彼女も僕とデートするのが楽しいと思ってもらえたら、無上の喜びだ。

 僕は待ち合わせ場所の難波駅前のセブンイレブンに十二時四十五分に到着した。なんと野平さんはもう到着していた。サングラスにマスクをしている高身長女性をみつけるのはたやすい。
 この日の野平さんは黒いコートにその下は丸い襟首のお嬢様がきるようなブラウスを着ている。むふふっなメロン巨乳の形がはっきりわかる。うっすら目を細めると花柄のブラジャーが見えるような気がする。これはわざとだろうか。ただ、あまりガン見するのは失礼なので、隙をみてみることにする。
 下はタイトな黒スカートで野平さんの長い足によく似合っている。最初にあったときは野平さんの美巨乳に目をうばわれたが、足や太ももも、むっちちりしてエロいということに気づかさされる。いよいよもって顔のことは気にならなくなりそうだ。

「こんにちわ」
 野平さんは顔の前で軽く手をふる。アイドル声優並みの可愛らしい声が耳に心地よい。
「こんにちわ」
 僕も挨拶する。会うのは二度目なので、初めのころよりは緊張度合いは低い。それでもまだ若干緊張はするけどね。

 僕たちはマルイに向かう。すでに映画のチケットは野平さんがネットで購入済みであった。野平さんって用意がいいな。いや、ここは僕が準備しておかないといけなかったのでは。日曜日の映画なんて混んでいるので、簡単に買えるとはかぎらないではないか。これも反省ポイントだな。いや、反省会はあとでいくらでもできる。
 ここは挽回しないとね。

「そうだ、野平さん。何かのみませんか?」
 僕は映画館奥の売店のメニュー表を見る。映画館って乾燥していて喉が渇くんだよね。
「うーん……」
 野平さんは指をL字にして顎に手をあて考える。彼女の顔は分からないが、可愛らしい仕草だ。
 野平さんの魅力がどんどん見つかるな。
 もしかしてこれが沼る直前という物の高揚感だろうか。体温が少し高くなる気がするが、それは心地よいものであった。

「よかったら、大き目の飲み物を買ってシェアしませんか。私全部飲み切る自信がなくて」
 野平さんはサングラスをこちらにむける。視線が感じられたような気がする。
 それはもしかして、間接キスをしてもいいということだろうか。嫌いな人と女性は飲み物をシェアしたりなんかしない。ということは僕は飲み物をシェアしてもいいぐらいには気にいられているということか。

 僕は野平さんのリクエストでゼロカロリーコーラのLサイズを購入した。彼女もソフトドリンクの中ではコーラはトップクラスに好きだということだ。ちなみに一位はやはりメロンソーダであった。

 野平さんは入り口の係員にスマートフォンの画面を見せる。
 係員は僕たちに入場者特典のセルシートを手渡す。僕のは天宮りりぃで野平さんは黒崎エリカであった。
「じゃあトレードしましょうか」
 僕たちは推しのキャラが交互に手渡されたので、トレードした。
 黒崎エリカは仮面の幻想マスクドファンタジーの中でも巨乳のお姉さんキャラだ。
 野平さんとかぶるところがあるな。
「りりぃちゃんがゲットできてラッキーですね」
 野平さんは嬉しそうに微笑む。この笑うときの漏れる吐息がエッチな感じがしていいな。これも彼女の魅力の一つだ。
「僕もエリカをもらえてよかったです」
 うふふっとすでに僕のお気に入りになりつつある微笑みを野平さんはする。表情が読めなくても仕草や笑い方、声の出し方なんかで感情がなんとなく分かる気がするな。

 劇場版「仮面の幻想 ペルソナの誓い」は文句なし、掛け値なしの傑作であった。
 戦闘シーンが映画館ならではのど迫力でシナリオも涙なしでは語れない。
 特にりりぃ、まどか、エリカの三人が記憶を敵であるシャドウに奪われながらもも前回の魔法少女である鏡の魔法少女の協力で撃破するのは胸が熱くなる展開であった。
 前シリーズの魔法少女加賀美(かがみ)(みさき)の登場シーンには野平さんはおもうわずおおっと高い声を上げていた。
 僕は思わず野平さんの横顔を見る。
 このとき野平さんは興奮したのか僕の手を握った。
 彼女の手は温かくて心地よい。癖になりそうだ。
 僕の目には野平さんの顔は認識できなかった。さすがに映画館の中ではサングラスをとっていたが、顔はモザイクがかかっていて、良くわからなかった。
 しかし、前回と違う点がある。あの時はクレヨンで塗りつぶされたようでまったく顔がわからなかった。今回もわからないのはわからないが、モザイクは薄くてもう少しで見えそうな気がする。
 例えは悪いが成人向け動画のごく薄いモザイクがイメージに近い。例えが悪すぎるので、口外はできないが。これは進歩といって良いのだろうか。
 僕は進歩と受け取ることにした。

 映画館で飲んだ0カロリーコーラの刺激は忘れられないものになった。
 
 


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第十話 思いもよらない提案


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 次に野平さんと会うのは一週間後に決まった。それから僕は毎日、野平さんとラインでやりとりした。さすがに通話はハードルが高いので、メッセージとスタンプのやりとりだ。 お昼に食べた社食のミックスフライ定食の画像や最近見て面白かったアニメの感想を送ると彼女も似たようなものを送ってくる。
 こちらからメッセージを送るとすぐに既読がつくのは何気に嬉しい。さらに野平さんからメッセージが送られてきたときは、嬉しさは倍増だ。
 思えば瑞樹とはこんな風にラインのやりとりをしなかったな。もっとしっかりと瑞樹とコミュニケーションをとっていればとも思ったが、それはもう今更だ。
 そうこうしているうちに一週間はあっという間にすぎて、映画デート当日となった。そうだ、これはデートなのだ。前回のはデートというよりは、出会いであった。出会って次はデート、最終的に付き合えるかどうかはわからないがまずは野平さんと映画を楽しもうと思う。彼女も僕とデートするのが楽しいと思ってもらえたら、無上の喜びだ。
 僕は待ち合わせ場所の難波駅前のセブンイレブンに十二時四十五分に到着した。なんと野平さんはもう到着していた。サングラスにマスクをしている高身長女性をみつけるのはたやすい。
 この日の野平さんは黒いコートにその下は丸い襟首のお嬢様がきるようなブラウスを着ている。むふふっなメロン巨乳の形がはっきりわかる。うっすら目を細めると花柄のブラジャーが見えるような気がする。これはわざとだろうか。ただ、あまりガン見するのは失礼なので、隙をみてみることにする。
 下はタイトな黒スカートで野平さんの長い足によく似合っている。最初にあったときは野平さんの美巨乳に目をうばわれたが、足や太ももも、むっちちりしてエロいということに気づかさされる。いよいよもって顔のことは気にならなくなりそうだ。
「こんにちわ」
 野平さんは顔の前で軽く手をふる。アイドル声優並みの可愛らしい声が耳に心地よい。
「こんにちわ」
 僕も挨拶する。会うのは二度目なので、初めのころよりは緊張度合いは低い。それでもまだ若干緊張はするけどね。
 僕たちはマルイに向かう。すでに映画のチケットは野平さんがネットで購入済みであった。野平さんって用意がいいな。いや、ここは僕が準備しておかないといけなかったのでは。日曜日の映画なんて混んでいるので、簡単に買えるとはかぎらないではないか。これも反省ポイントだな。いや、反省会はあとでいくらでもできる。
 ここは挽回しないとね。
「そうだ、野平さん。何かのみませんか?」
 僕は映画館奥の売店のメニュー表を見る。映画館って乾燥していて喉が渇くんだよね。
「うーん……」
 野平さんは指をL字にして顎に手をあて考える。彼女の顔は分からないが、可愛らしい仕草だ。
 野平さんの魅力がどんどん見つかるな。
 もしかしてこれが沼る直前という物の高揚感だろうか。体温が少し高くなる気がするが、それは心地よいものであった。
「よかったら、大き目の飲み物を買ってシェアしませんか。私全部飲み切る自信がなくて」
 野平さんはサングラスをこちらにむける。視線が感じられたような気がする。
 それはもしかして、間接キスをしてもいいということだろうか。嫌いな人と女性は飲み物をシェアしたりなんかしない。ということは僕は飲み物をシェアしてもいいぐらいには気にいられているということか。
 僕は野平さんのリクエストでゼロカロリーコーラのLサイズを購入した。彼女もソフトドリンクの中ではコーラはトップクラスに好きだということだ。ちなみに一位はやはりメロンソーダであった。
 野平さんは入り口の係員にスマートフォンの画面を見せる。
 係員は僕たちに入場者特典のセルシートを手渡す。僕のは天宮りりぃで野平さんは黒崎エリカであった。
「じゃあトレードしましょうか」
 僕たちは推しのキャラが交互に手渡されたので、トレードした。
 黒崎エリカは仮面の幻想マスクドファンタジーの中でも巨乳のお姉さんキャラだ。
 野平さんとかぶるところがあるな。
「りりぃちゃんがゲットできてラッキーですね」
 野平さんは嬉しそうに微笑む。この笑うときの漏れる吐息がエッチな感じがしていいな。これも彼女の魅力の一つだ。
「僕もエリカをもらえてよかったです」
 うふふっとすでに僕のお気に入りになりつつある微笑みを野平さんはする。表情が読めなくても仕草や笑い方、声の出し方なんかで感情がなんとなく分かる気がするな。
 劇場版「仮面の幻想 ペルソナの誓い」は文句なし、掛け値なしの傑作であった。
 戦闘シーンが映画館ならではのど迫力でシナリオも涙なしでは語れない。
 特にりりぃ、まどか、エリカの三人が記憶を敵であるシャドウに奪われながらもも前回の魔法少女である鏡の魔法少女の協力で撃破するのは胸が熱くなる展開であった。
 前シリーズの魔法少女|加賀美《かがみ》岬《みさき》の登場シーンには野平さんはおもうわずおおっと高い声を上げていた。
 僕は思わず野平さんの横顔を見る。
 このとき野平さんは興奮したのか僕の手を握った。
 彼女の手は温かくて心地よい。癖になりそうだ。
 僕の目には野平さんの顔は認識できなかった。さすがに映画館の中ではサングラスをとっていたが、顔はモザイクがかかっていて、良くわからなかった。
 しかし、前回と違う点がある。あの時はクレヨンで塗りつぶされたようでまったく顔がわからなかった。今回もわからないのはわからないが、モザイクは薄くてもう少しで見えそうな気がする。
 例えは悪いが成人向け動画のごく薄いモザイクがイメージに近い。例えが悪すぎるので、口外はできないが。これは進歩といって良いのだろうか。
 僕は進歩と受け取ることにした。
 映画館で飲んだ0カロリーコーラの刺激は忘れられないものになった。