第八話 次の約束

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 僕は近鉄難波駅の改札近くまで、野平(のひら)麻里子(まりこ)さんを送った。
「そうだ、せっかくだからライン交換しませんか?」
 野平さんがハンドバックからスマートフォンを取り出す。ラインのQRコードを見せる。
 遠慮なく僕はQRコードを読み込み、友達登録した。これで僕は野平さんと友達になった。
 まずは第一歩前進というわけだ。
 野平さんのアイコンは黒色ロングヘアーの女の子が何かを叫んでいるようなイラストのものだった。楳図かずおチックなイラストだ。顔半分が縦線だらけだ。
 これは野平さんの素顔に近いものだろうか。
 叫んでいる顔なのでいまいち元の顔がわからない。
 僕はといえば実家で飼っている猫のちくわぶの画像だ。ちくわぶは白黒まだら模様の毛色で、ちょうど眉のあたりがお公家さんのようになっている。

「それでは今日は帰りますね。ラインですけど気軽に送って下さい。私も遠慮なく送りますね」
 野平さんはサングラスとマスクをつけた顔の横で手を振り、改札を抜けて行った。
 僕は野平さんが見えなくなるまで見送った。


 最寄り駅の住吉大社で降りた僕はスーパーで割り引きの唐揚げ弁当とコーラを買い、帰宅した。
 レンジで温めた唐揚げ弁当を食べているとチロリンとスマートフォンが鳴る。
 これはさっそく野平さんからかと期待して、画面を見ると阿良又からだった。
 うーん、ちょっと残念かな。

「それでどうだった?」
 阿良又からの短いメッセージに僕はどう答えるか悩む。
 野平さんの症状はかなりプライバシーの部分なので、いくら仲の良い友人でも気軽に伝えるべきではないよな。

「喫茶店でお茶して、ライン交換した」
 僕は阿良又に返信する。
 うん、嘘はついていない。

「それは良かったな。次につながるといいな」
 阿良又のメッセージの次に黒猫が万歳しているスタンプが送られてくる。
 僕は兎耳のマリアのありがとうという吹き出しつきのスタンプを返信する。

 唐揚げ弁当を食べ終えた僕は野平さんにお礼のメッセージを送ることにした。
 社会人としてお礼を言うのは当然だ。それに野平さんも気軽に送ってくださいって言ってたし。でもぐいぐいいくのも引かれないかな。
 十分ほど悩んだ僕はえいっと勇気を出して、メッセージを送る。
「今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
 というメッセージを送る。
 社交辞令っぽいけどこれなら、がっついている感がなくていいだろう。
 驚いたことにすぐに既読がついた。

「こちらこそ、ありがとうございました。お話、楽しかったです」
 それはやはり社交辞令だろう。野平さんからの返信を見て僕は思った。
 と思っていたらしゅぽっという音と共にURLリンクが送られてきた。
 それは映画のサイトであっても。
 仮面の幻想劇場版のサイトであった。
 そう言えばマッチングアプリのメッセージで野平さんは仮面の幻想が好きだと言っていたな。
「良かったら来週の日曜日に見に行きませんか?」
 このメッセージを見て、僕はまたガッツポーズをとる。
 あちら側から誘いがあるなんて。
 ということは少なくともまた確実に会えるということだ。

 僕は一応スマートフォンのカレンダーを見る。まあ、当然のように予定は無いよね。
「ぜひ行きましょう(^o^)」
 僕はメッセージを送った。
 これまたすぐに既読がつく。
 スマートフォンの向こうには野平さんがいるのか。そう思うとうれしいな。
 けど、なんかおじさん構文みたいになってしまった。まあ、送ってしまったものは仕方がない。
 もしかして、浮かれてるのかな。
 それから詳しい日時を僕たちは決めた。
 また同じコンビニ前に13時に待ち合わせ、映画の上映は14時だ。
 やっとスマートフォンの手帳アプリを使いこなす日がやってきた。

 僕はにやにやしながらこの日は眠りについた。
 



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 僕は近鉄難波駅の改札近くまで、野平《のひら》麻里子《まりこ》さんを送った。「そうだ、せっかくだからライン交換しませんか?」
 野平さんがハンドバックからスマートフォンを取り出す。ラインのQRコードを見せる。
 遠慮なく僕はQRコードを読み込み、友達登録した。これで僕は野平さんと友達になった。
 まずは第一歩前進というわけだ。
 野平さんのアイコンは黒色ロングヘアーの女の子が何かを叫んでいるようなイラストのものだった。楳図かずおチックなイラストだ。顔半分が縦線だらけだ。
 これは野平さんの素顔に近いものだろうか。
 叫んでいる顔なのでいまいち元の顔がわからない。
 僕はといえば実家で飼っている猫のちくわぶの画像だ。ちくわぶは白黒まだら模様の毛色で、ちょうど眉のあたりがお公家さんのようになっている。
「それでは今日は帰りますね。ラインですけど気軽に送って下さい。私も遠慮なく送りますね」
 野平さんはサングラスとマスクをつけた顔の横で手を振り、改札を抜けて行った。
 僕は野平さんが見えなくなるまで見送った。
 最寄り駅の住吉大社で降りた僕はスーパーで割り引きの唐揚げ弁当とコーラを買い、帰宅した。
 レンジで温めた唐揚げ弁当を食べているとチロリンとスマートフォンが鳴る。
 これはさっそく野平さんからかと期待して、画面を見ると阿良又からだった。
 うーん、ちょっと残念かな。
「それでどうだった?」
 阿良又からの短いメッセージに僕はどう答えるか悩む。
 野平さんの症状はかなりプライバシーの部分なので、いくら仲の良い友人でも気軽に伝えるべきではないよな。
「喫茶店でお茶して、ライン交換した」
 僕は阿良又に返信する。
 うん、嘘はついていない。
「それは良かったな。次につながるといいな」
 阿良又のメッセージの次に黒猫が万歳しているスタンプが送られてくる。
 僕は兎耳のマリアのありがとうという吹き出しつきのスタンプを返信する。
 唐揚げ弁当を食べ終えた僕は野平さんにお礼のメッセージを送ることにした。
 社会人としてお礼を言うのは当然だ。それに野平さんも気軽に送ってくださいって言ってたし。でもぐいぐいいくのも引かれないかな。
 十分ほど悩んだ僕はえいっと勇気を出して、メッセージを送る。
「今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
 というメッセージを送る。
 社交辞令っぽいけどこれなら、がっついている感がなくていいだろう。
 驚いたことにすぐに既読がついた。
「こちらこそ、ありがとうございました。お話、楽しかったです」
 それはやはり社交辞令だろう。野平さんからの返信を見て僕は思った。
 と思っていたらしゅぽっという音と共にURLリンクが送られてきた。
 それは映画のサイトであっても。
 仮面の幻想劇場版のサイトであった。
 そう言えばマッチングアプリのメッセージで野平さんは仮面の幻想が好きだと言っていたな。
「良かったら来週の日曜日に見に行きませんか?」
 このメッセージを見て、僕はまたガッツポーズをとる。
 あちら側から誘いがあるなんて。
 ということは少なくともまた確実に会えるということだ。
 僕は一応スマートフォンのカレンダーを見る。まあ、当然のように予定は無いよね。
「ぜひ行きましょう(^o^)」
 僕はメッセージを送った。
 これまたすぐに既読がつく。
 スマートフォンの向こうには野平さんがいるのか。そう思うとうれしいな。
 けど、なんかおじさん構文みたいになってしまった。まあ、送ってしまったものは仕方がない。
 もしかして、浮かれてるのかな。
 それから詳しい日時を僕たちは決めた。
 また同じコンビニ前に13時に待ち合わせ、映画の上映は14時だ。
 やっとスマートフォンの手帳アプリを使いこなす日がやってきた。
 僕はにやにやしながらこの日は眠りについた。