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第12話 クイーンパイピング②

ー/ー



 その日の放課後、私はネコ先輩に言われたとおり、彼女の所属する2年1組の教室を訪ねてみた。

(さてさて、ネコ先輩のクラスでは、いったいどんな光景が見られるのか……?) 

 昼休みが終わる直前に、
 
「ところで、クラスの女王決定戦って、いったいナニをするんですか? 男子じゃないんだから、まさか、タイマンの決闘ではないですよね?」

と、たずねると、ネコ先輩は、

「いつの時代のマンガの話しをしているんだ、キミは? 今回、ワタシたちのクラスのヒエラルキーの決め手になるのは、クラス()のデザインだ」

「クラス()って、体育大会とかで使うクラスの旗のことですよね? そんな物が、ヒエラルキー決定の決め手になるんですか?」

「あぁ、國際高校では、クラス()を体育大会だけでなく、文化祭など学校の行事ごとに使われるんだ。いわば、そのクラスの顔としての役割があるから、自分たちの気に入ったデザインにしたい、と考える生徒も多いようだからな。ここで、クラス旗のデザインを自分たちで決めることができれば、一年間クラスの中心人物として君臨できるということだ」

「はあ、そんなものなんですか……?」

 中学校時代は、行事ごとに熱心でない学校に通っていた私にとっては、いまひとつピンと来ない内容だったけど、高校生活の青春の一場面を客観的に観察させてもらうのも悪くないと思う。

 そんなことを考えながら、2年1組の教室を覗いてみると、ネコ先輩が言ったように、教室内には10名弱の女子生徒が残っていた。

 その中でも、教室の前方では気の弱そうな女子を真ん中に座らせながら、左右に3人ずつの女子が睨み合うように立っていた。

「あの……クラス旗のデザインは、今日中に決めなきゃいけないんだけど、どうしよう?」

 学級委員か文化委員を務めていると思われる小柄な女子生徒が、オドオドとしたようすでたずねると、

「そうだね、早く決めちゃって、制作に取り掛かろう」

と、向かって右側の明るい髪色の女子が発言する。
 一方、向かって左側に陣取っている女子は髪の毛色こそ暗めなものの、派手めな顔立ちで、両手の爪にはネイルが施されていることが遠目からでもわかった。不思議なことに、初対面のはずなのに、私はどこかで二人の顔を見たことがあるような気がした。

(この二人が、ネコ先輩が言ってた九院(くいん)さんと桑来(くわき)さんかな?)

 私が、興味を持って見守る中、ネイルの方の女子が
 
「ん〜、だね〜。これ以上、ウチらのワガママで、みんなに迷惑は掛けられないし……」

と答えると、明るい髪色の女子が返答した。

「どうするの? 多数決を取るにしても、もうクラスの連中は帰っちゃったけど?」

 二人の女子の間でバチバチと火花のようなものが飛び交う中、真ん中の気弱そうな女子生徒はオロオロしている。そのようすは、クラスの中の自分の立ち位置を見ているようで、なんだかシンパシーを感じてしまう。

「い、いちおう、もう一度、二人のデザイン案を確認させてもらうね?」

 彼女はそう言って、二枚のデザイン案を近くにいるメンバーに提示した。
 
 どんなデザイン案が出ているんだろう? と、後方のドアから確認しようと教室を覗き込もうと身体を傾けると、私の挙動に気づいた女子生徒から声をかけられた。

「あぁ、ネズコくんじゃないか? 委員長、1年の生徒がワタシたちのクラスのクラス旗のデザインを参考にしたいと見学に来ているんだが、教室内で見学させてあげても構わないかい?」

 ネコ先輩の言葉に、周囲のメンバーの顔色をうかがった女子は、

「わ、私がアイデアを出した訳じゃないから……九院(くいん)さん、桑来(くわき)さん、どうかな?」

と、さっきまで話し合っていた二人に確認する。

「あたしは別に構わないけど? 1年のコがデザインを参考にしたいって言うなら、断る理由もないし」
 
「ウチも別に良いよ? せっかくだから、そのコにも見てもらおうよ?」

 委員長からお伺いを立てられた九院(くいん)さんと桑来(くわき)さんの二人は、ノリノリで私を教室内に招き入れてくれた。

(うわ〜、なんか気まずいな〜)

 と感じながらも、私は張り付いたような笑みを浮かべながら、2年1組の教室に入らせてもらう。

「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて〜」

 そう言って、ネコ先輩の隣に腰掛けると、生物心理学研究会の上級生は、フフフと不敵な表情でちらりとこちらを見る。

 そんな先輩のようすを意図的にスルーして、二人が提案したクラス旗のデザイン案に目を向けると、なるほど、どちらのデザインも甲乙つけがたい出来映えだった。

 1つ目は、『NEVER GIVE UP』と大きく文字をメインにしつつ、イラストなどを入れない分、地味にならないように、背景に使用した黄色の補色である青や目立ちやすい黒を入っていて、アクセントがつけられてる。シンプルさをいかした配色やデザインで、メッセージがよく目立つスタイリッシュな印象だ。
 
 もう一方は、『勝利をつかめ!』という力強いメッセージとともに、担任教師をデフォルメ化したと思われる女性キャラクターが大きく目立つように入っている。色が短調でつまらなくならないように、背景の緑は明るいものと暗い物を使用し、文字には緑色と相性の良い黄色が選ばれていた。黒の縁取りや文字でアクセントも加えられていて、さらに読みやすく目立つようになっている。

 そうして、デザイン案を確認したネコ先輩は、楽しげにつぶやく。
 
「お互いのプライドとクラス内の立ち位置を賭けた争いだ。彼女たちは、どんな風に決着をつけるのかな? さあ、観察の時間だよ」


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 その日の放課後、私はネコ先輩に言われたとおり、彼女の所属する2年1組の教室を訪ねてみた。
(さてさて、ネコ先輩のクラスでは、いったいどんな光景が見られるのか……?) 
 昼休みが終わる直前に、
「ところで、クラスの女王決定戦って、いったいナニをするんですか? 男子じゃないんだから、まさか、タイマンの決闘ではないですよね?」
と、たずねると、ネコ先輩は、
「いつの時代のマンガの話しをしているんだ、キミは? 今回、ワタシたちのクラスのヒエラルキーの決め手になるのは、クラス|旗《き》のデザインだ」
「クラス|旗《き》って、体育大会とかで使うクラスの旗のことですよね? そんな物が、ヒエラルキー決定の決め手になるんですか?」
「あぁ、國際高校では、クラス|旗《き》を体育大会だけでなく、文化祭など学校の行事ごとに使われるんだ。いわば、そのクラスの顔としての役割があるから、自分たちの気に入ったデザインにしたい、と考える生徒も多いようだからな。ここで、クラス旗のデザインを自分たちで決めることができれば、一年間クラスの中心人物として君臨できるということだ」
「はあ、そんなものなんですか……?」
 中学校時代は、行事ごとに熱心でない学校に通っていた私にとっては、いまひとつピンと来ない内容だったけど、高校生活の青春の一場面を客観的に観察させてもらうのも悪くないと思う。
 そんなことを考えながら、2年1組の教室を覗いてみると、ネコ先輩が言ったように、教室内には10名弱の女子生徒が残っていた。
 その中でも、教室の前方では気の弱そうな女子を真ん中に座らせながら、左右に3人ずつの女子が睨み合うように立っていた。
「あの……クラス旗のデザインは、今日中に決めなきゃいけないんだけど、どうしよう?」
 学級委員か文化委員を務めていると思われる小柄な女子生徒が、オドオドとしたようすでたずねると、
「そうだね、早く決めちゃって、制作に取り掛かろう」
と、向かって右側の明るい髪色の女子が発言する。
 一方、向かって左側に陣取っている女子は髪の毛色こそ暗めなものの、派手めな顔立ちで、両手の爪にはネイルが施されていることが遠目からでもわかった。不思議なことに、初対面のはずなのに、私はどこかで二人の顔を見たことがあるような気がした。
(この二人が、ネコ先輩が言ってた|九院《くいん》さんと|桑来《くわき》さんかな?)
 私が、興味を持って見守る中、ネイルの方の女子が
「ん〜、だね〜。これ以上、ウチらのワガママで、みんなに迷惑は掛けられないし……」
と答えると、明るい髪色の女子が返答した。
「どうするの? 多数決を取るにしても、もうクラスの連中は帰っちゃったけど?」
 二人の女子の間でバチバチと火花のようなものが飛び交う中、真ん中の気弱そうな女子生徒はオロオロしている。そのようすは、クラスの中の自分の立ち位置を見ているようで、なんだかシンパシーを感じてしまう。
「い、いちおう、もう一度、二人のデザイン案を確認させてもらうね?」
 彼女はそう言って、二枚のデザイン案を近くにいるメンバーに提示した。
 どんなデザイン案が出ているんだろう? と、後方のドアから確認しようと教室を覗き込もうと身体を傾けると、私の挙動に気づいた女子生徒から声をかけられた。
「あぁ、ネズコくんじゃないか? 委員長、1年の生徒がワタシたちのクラスのクラス旗のデザインを参考にしたいと見学に来ているんだが、教室内で見学させてあげても構わないかい?」
 ネコ先輩の言葉に、周囲のメンバーの顔色をうかがった女子は、
「わ、私がアイデアを出した訳じゃないから……|九院《くいん》さん、|桑来《くわき》さん、どうかな?」
と、さっきまで話し合っていた二人に確認する。
「あたしは別に構わないけど? 1年のコがデザインを参考にしたいって言うなら、断る理由もないし」
「ウチも別に良いよ? せっかくだから、そのコにも見てもらおうよ?」
 委員長からお伺いを立てられた|九院《くいん》さんと|桑来《くわき》さんの二人は、ノリノリで私を教室内に招き入れてくれた。
(うわ〜、なんか気まずいな〜)
 と感じながらも、私は張り付いたような笑みを浮かべながら、2年1組の教室に入らせてもらう。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて〜」
 そう言って、ネコ先輩の隣に腰掛けると、生物心理学研究会の上級生は、フフフと不敵な表情でちらりとこちらを見る。
 そんな先輩のようすを意図的にスルーして、二人が提案したクラス旗のデザイン案に目を向けると、なるほど、どちらのデザインも甲乙つけがたい出来映えだった。
 1つ目は、『NEVER GIVE UP』と大きく文字をメインにしつつ、イラストなどを入れない分、地味にならないように、背景に使用した黄色の補色である青や目立ちやすい黒を入っていて、アクセントがつけられてる。シンプルさをいかした配色やデザインで、メッセージがよく目立つスタイリッシュな印象だ。
 もう一方は、『勝利をつかめ!』という力強いメッセージとともに、担任教師をデフォルメ化したと思われる女性キャラクターが大きく目立つように入っている。色が短調でつまらなくならないように、背景の緑は明るいものと暗い物を使用し、文字には緑色と相性の良い黄色が選ばれていた。黒の縁取りや文字でアクセントも加えられていて、さらに読みやすく目立つようになっている。
 そうして、デザイン案を確認したネコ先輩は、楽しげにつぶやく。
「お互いのプライドとクラス内の立ち位置を賭けた争いだ。彼女たちは、どんな風に決着をつけるのかな? さあ、観察の時間だよ」