22話 土地神様と番外競技 その二
ー/ー
「どういうことだ……?」
思わず疑問を口から漏らした。
だって、服装は違えど目の前にいるのはどう見たってサラそのものだ。しかし、一瞬振り返って確認すると後ろにもたしかに彼女がいる。一体どうなってるんだ。
「……念のため訊くけど、親戚とかじゃないよな」
「し、知らないヨ」
「……だよな」
後ろのサラに小声で確認するが、予想通りの答えが返ってきた。
そりゃそうだ。こっちのサラが知ってるのなら、彼女がここまで驚くことはない。そもそも、向こうの現れ方も明らかに人間技じゃなかったしな。
「アンタは何者だ。なんでサラの姿をしてる」
「……」
訊ねるも返事はなく、変わらずゆっくりと近づいてくる夏制服のサラ。
睨み合いを続けたままジリジリと横へと移動する。
正体は分からないが、コイツに近付くのは絶対にマズイと本能が告げている。どうにかして逃げないと手遅れになる気がする。
「……サラ、走れるか?」
相手に悟られないように小声で確認すると、僕の後ろのサラは小さく頷いた。
即座に僕は彼女の手を取り、駆け出そうと足に力を込め──
───セッチャン。
足に力を込めた瞬間、頭の中に懐かしさを感じる声が響いた。
そして同時に、身体が石のように動かなくなってしまった。
今の声は……騎馬戦の前にも聞こえた、サラの声だ。
そして全身を掴まれたようなこの感覚。僕はコレを知っている。
(神通力……)
《お願い、待って。話を聞いて》
再び頭の中にサラと同じような声が響く。
よくキリさんがやっている神通力による交信術だ。おそらくその発信源は目の前に立っているサラの姿をした何かだろう。
友人とよく似た姿に神の力。どう考えても怪しいが……その声に敵意は感じられない。
「……アンタ、何者なんだ」
「は、話せるの? すげぇ……土地の神の守護は伊達じゃねえなぁ」
少しだけ毒気を抜かれながら訊ねると、サラの姿をした何かは驚いたように呟いた。
その声は頭の中に響いたものと同じ、サラの声。しかしその話し方は日本固有の訛り方をしている。イントネーション的に東北とかその辺のイメージだろうか。
柔らかな喋り方だが、こうして対峙しているだけで肌がゾワゾワして嫌な感じがする。なんだろう、この感じも前にどこかであったような……。
「驚かせてごめんなせえ。用が済んだら、すぐに退散すぅけん」
「用っていうのは……」
「貴方達二人にあるものを……あるべきものを、返しに」
僕らに……返しに?
ダメだ、意味が分からない。少なくとも、このサラみたいなよく分からない存在と会った覚えはないし、当然何かを貸した覚えもない。
「は、話だけデモ聞いてみナイ?」
警戒を解かずに睨みつけていると、僕の後ろにいるサラが口を開いた。
「聞くってお前……」
「イヤなカンジはするケド……悪いヒト? じゃなさソーダヨ」
……言われてみれば、たしかにそうだな。
冷静になって考えると、目の前のサラの姿をした誰かさんは僕らの前に現れただけでまだ何もしていない。
なぜかこう、見ただけで本能的に逃げ出したくなるような嫌な感じが身体中を這い回ってはいるけど……何もしていない相手を危険と判断するのは尚早か。
「分かった。けど、ヤバそうなら全力で逃げるぞ」
「今ワタシタチ動けないケドネ」
「それもそうだ。すいません、コレどうにかできません?」
「ごめんなせぇ。おらにはどうにもできんのよ」
「ソッカ。ならこのまま話ソーゼ」
「だな。あ、これ力抜いても体勢変わらないから慣れたら楽だわ」
「じゅ、順応が早ぇ。土地神に連なる人間ってすげぇんだなぁ」
土地神様も神通力のコントロールができなくなったりするからな。多分似たようなものだろう。
しかしこれ、背中に重心向けるとかなりくつろげるな。気分はリクライニングシートに転がっている気分だ。立ってるけど。
「さっきもそうでしたけど、土地神様について話すってことは……貴方も神様なんですか?」
「あ、はいぃ。一応そげになりますねぇ」
「一応て……まあいいや。どうして貴方はサラの姿を? それと僕らに返すものっていうのは……」
「ええと、それは──ぐ……ぅっ!」
あらためて訊ねた途端、突然目の前の神様? は顔を顰めて胸を押さえてその場に蹲った。
薄暗くて見えづらいが、表情は苦しそうで顔色も悪そうに思える。
「え、ちょっ……大丈夫で──」
───ゾワッッッ!!!
身体が動かないので視線だけを下げて心配したのも束の間、今までの比じゃないレベルの悪寒が走った。
そして……倒れ伏す神様の身体から漏れ出すように、黒い霧のような何かが床に広がり始めた。
同時に思い出した。この嫌悪感、そして黒く広がる目の前の物体。これは……
「……呪い!?」
そう、以前リンギクさんとニシユキさんの身に起こった呪い事件。あの時に発生していた黒い靄にそっくりだった。
あの時は色々あって、本来の呪いとは違って命に関わるものじゃなかったらしいけど……今目の前に広がっているこれは明らかに違う。
本能的な嫌悪ではなく、恐ろしいまでの危機感。絶対に触れるなと頭の中で警鐘が鳴り響いている。
「っ……よりにもよって、ここで限界なんて……! 二人とも、逃げて!」
「そー言われましテモ……!」
「身体が……!」
驚く僕の足元で倒れたままの神様が苦しそうに叫ぶが、その指示に従うことができない。
僕らの意思とは別に、身体が神通力によって縛られたままなのだ。これじゃ動くことなんてできやしな……ん?
「あ、あれ? 靄が……」
逃げようともがいていると、突然黒い靄の広がりが止まり、倒れている神様へと収束していった。
恐ろしい感覚はまだ抜けていないけれど……もしかして、この神様が助けてくれたのだろうか。
「あ、あの……」
「……」
倒れていた神様はのっそりと立ち上がり、こちらを冷ややかな目で見つめてきた。
……様子が、おかしい。目が虚ろだし、さっきまでと違って何も話さない。
何かがヤバイ。そう思った瞬間、彼女の手元に突然大きな棒状の物体が出現した。
これは……大鎌だろうか。いや待て、なんでこっちに近付いて……一体何をするつもりだ!?
「っ、やめ──」
僕の隣を素通りするようにサラへと腕を伸ばす姿を見て、割り込もうと無理矢理身体を動かす。
さっきの噴出した呪い。それを吸い込むように収束させ、明らかに様子がおかしくなった神様。そんなものが物騒な刃物を持って近付くなんて、碌でもないことになるに決まっている。
それは分かりきっているのに、身体が動かない。動かす度に骨が折れそうなほどの鈍い痛みが走る。
クソッ、動け、動け!
身体が折れようがなんだろうが、サラだけは守らないと──
───絶対、放してたまるか!!
あの時よりも上手く、ちゃんと守ってやらないと!
全身からミシミシと音が鳴る。痛みが走る。涙が出そうなくらいの吐き気が襲う。
それでも、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を助けようと足を動かしていたその時──
───ガシャァァン!
「───ぁぁあああああ!!?」
ガラスが割れる音と共に、悲鳴を上げる真っ白な神様が窓から飛び込んできた。
「ぐぇっ!?」
文字通り室内に飛んできた白い存在が勢いよくサラの皮を被った存在にぶつかり、ふっ飛ばされるように入口の方へ転がっていった。それと同時に身体の感覚が元に戻り、拘束が解けたように手足が動かせるようになった。
……今突っ込んできたの、キリさんだよな? いや、それよりも今は……
「サラ! 大丈夫!?」
「わ、ワタシよりセッチャンだヨ! ダイジョーブなノ!?」
サラの両肩を掴んで安否を確認すると、逆に心配されてしまった。
この様子ならコイツは大丈夫そうだ。それに、僕もあの時みたいにならなくてよかっ……あれ?
あの時って、いつのことだっけ? まあいいや、とにかく無事でよかった。
「……っ」
僕らが互いの無事を確認し合っていると、視界の端でサラの姿をした神様が逃げるように廊下へ飛び出していくのが見えた。
ちょっと待て、まだまだ訊きたいことが山ほどあるん痛たたた。
「なんかすげえ身体が痛いんだけど僕今どうなってんの? 手足繋がってる?」
「繋がってるケド色んなトコから血が出てる! セッチャン動いたらダメ……キリチャンもダイジョーブ!?」
「ぁ痛たたた……んはっ! セキさんにサラちゃん、無事!?」
「その言葉をそのまま返しますよ」
「セッチャンもだろーがヨ」
ガラス片は身体中に付いてるけど、無事みたいだな。割かし元気そうだ。
安心したのも束の間、少し落ち着きを取り戻した僕らはすぐに疑問が大量に湧いてきた。
「キリさん、なんで飛んできたんですか? いやその前に、さっきのサラみたいな神様は一体……」
「校舎もDarkになってるし、ナニが起きてンノ?」
「あ、ちょっと待って。説明の前に……」
質問攻めをする僕らに対し、キリさんは身体を淡く光らせ始めた。それからパン、と両手で一拍すると……身体に纏っていた光が広がるように、周囲が少し明るくなっていった。
「何をしたんです?」
「さっきのが逃げんように結界を張ったんよ。無いとは思うけど、どっか行ったら危ないけえね」
さっきの、というのはサラの姿をした神様のことで間違いないだろう。
結界を張ったということは、以前言っていた『お役目』の一つである人ならざるものによる異変ってやつなんだろうな。明らかにさっきの神様、様子がおかしくなってたし。
「教えてくださいキリさん。さっきのサラの見た目をした神様は何なんですか? というか、今どういう状況なのか、説明してください」
「勿論。あ、じゃけどその前に……」
キリさんは思い出したかのように神通力を発動し、目の前に円状の白い光の塊を出現させた。
ポケットのようになっているらしく、その光へ両手を突っ込んで少し弄って何かを引っ張り出そうとし……ちょっと待て。
「……キリチャン。何をダソーとしてるノデ?」
「見間違いでなければ引っ張り出してるのが人の足に見えるんですが」
「あ、これ盆提灯先生よ。一緒に連れて来たんじゃけど……なんか引っ掛かって取れんな」
連れて来たというか、持ち込んだというか……そんな異空間収納みたいなこともできるのか、この神様。人まで運べるとは便利なもんだな。
「手伝オッカ?」
「うん、ありがとう。このままあんまり長いこと異空間に入れとると窒息するかもしれんけえ、早く出さんにゃねぇ」
「「ボンチョさ───ん!!」」
便利だなぁ、なんて思っていたところで平然ととんでもねえことを言われ、僕らは急いでボンチョさんを引っ張り出すことになった。
……そういえばこの土地神様、肝心なところで感覚がズレてるんだったな……。
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「……サラ、走れるか?」
相手に悟られないように小声で確認すると、僕の後ろのサラは小さく頷いた。
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足に力を込めた瞬間、頭の中に懐かしさを感じる声が響いた。
そして同時に、身体が石のように動かなくなってしまった。
今の声は……騎馬戦の前にも聞こえた、サラの声だ。
そして全身を掴まれたようなこの感覚。僕はコレを知っている。
(神通力……)
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「……アンタ、何者なんだ」
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その声は頭の中に響いたものと同じ、サラの声。しかしその話し方は日本固有の訛り方をしている。イントネーション的に東北とかその辺のイメージだろうか。
柔らかな喋り方だが、こうして対峙しているだけで肌がゾワゾワして嫌な感じがする。なんだろう、この感じも前にどこかであったような……。
「驚かせてごめんなせえ。用が済んだら、すぐに退散すぅけん」
「用っていうのは……」
「貴方達二人にあるものを……あるべきものを、返しに」
僕らに……返しに?
ダメだ、意味が分からない。少なくとも、このサラみたいなよく分からない存在と会った覚えはないし、当然何かを貸した覚えもない。
「は、話だけデモ聞いてみナイ?」
警戒を解かずに睨みつけていると、僕の後ろにいるサラが口を開いた。
「聞くってお前……」
「イヤなカンジはするケド……悪いヒト? じゃなさソーダヨ」
……言われてみれば、たしかにそうだな。
冷静になって考えると、目の前のサラの姿をした誰かさんは僕らの前に現れただけでまだ何もしていない。
なぜかこう、見ただけで本能的に逃げ出したくなるような嫌な感じが身体中を這い回ってはいるけど……何もしていない相手を危険と判断するのは尚早か。
「分かった。けど、ヤバそうなら全力で逃げるぞ」
「今ワタシタチ動けないケドネ」
「それもそうだ。すいません、コレどうにかできません?」
「ごめんなせぇ。おらにはどうにもできんのよ」
「ソッカ。ならこのまま話ソーゼ」
「だな。あ、これ力抜いても体勢変わらないから慣れたら楽だわ」
「じゅ、順応が早ぇ。土地神に連なる人間ってすげぇんだなぁ」
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しかしこれ、背中に重心向けるとかなりくつろげるな。気分はリクライニングシートに転がっている気分だ。立ってるけど。
「さっきもそうでしたけど、土地神様について話すってことは……貴方も神様なんですか?」
「あ、はいぃ。一応そげになりますねぇ」
「一応て……まあいいや。どうして貴方はサラの姿を? それと僕らに返すものっていうのは……」
「ええと、それは──ぐ……ぅっ!」
あらためて訊ねた途端、突然目の前の神様? は顔を顰めて胸を押さえてその場に蹲った。
薄暗くて見えづらいが、表情は苦しそうで顔色も悪そうに思える。
「え、ちょっ……大丈夫で──」
───ゾワッッッ!!!
身体が動かないので視線だけを下げて心配したのも束の間、今までの比じゃないレベルの悪寒が走った。
そして……倒れ伏す神様の身体から漏れ出すように、黒い霧のような何かが床に広がり始めた。
同時に思い出した。この嫌悪感、そして黒く広がる目の前の物体。これは……
「……呪い!?」
そう、以前リンギクさんとニシユキさんの身に起こった呪い事件。あの時に発生していた黒い靄にそっくりだった。
あの時は色々あって、本来の呪いとは違って命に関わるものじゃなかったらしいけど……今目の前に広がっているこれは明らかに違う。
本能的な嫌悪ではなく、恐ろしいまでの危機感。絶対に触れるなと頭の中で警鐘が鳴り響いている。
「っ……よりにもよって、ここで限界なんて……! 二人とも、逃げて!」
「そー言われましテモ……!」
「身体が……!」
驚く僕の足元で倒れたままの神様が苦しそうに叫ぶが、その指示に従うことができない。
僕らの意思とは別に、身体が神通力によって縛られたままなのだ。これじゃ動くことなんてできやしな……ん?
「あ、あれ? 靄が……」
逃げようともがいていると、突然黒い靄の広がりが止まり、倒れている神様へと収束していった。
恐ろしい感覚はまだ抜けていないけれど……もしかして、この神様が助けてくれたのだろうか。
「あ、あの……」
「……」
倒れていた神様はのっそりと立ち上がり、こちらを冷ややかな目で見つめてきた。
……様子が、おかしい。目が虚ろだし、さっきまでと違って何も話さない。
何かがヤバイ。そう思った瞬間、彼女の手元に突然大きな棒状の物体が出現した。
これは……大鎌だろうか。いや待て、なんでこっちに近付いて……一体何をするつもりだ!?
「っ、やめ──」
僕の隣を素通りするようにサラへと腕を伸ばす姿を見て、割り込もうと無理矢理身体を動かす。
さっきの噴出した呪い。それを吸い込むように収束させ、明らかに様子がおかしくなった神様。そんなものが物騒な刃物を持って近付くなんて、碌でもないことになるに決まっている。
それは分かりきっているのに、身体が動かない。動かす度に骨が折れそうなほどの鈍い痛みが走る。
クソッ、動け、動け!
身体が折れようがなんだろうが、サラだけは守らないと──
───絶対、放してたまるか!!
《《あの時》》よりも上手く、ちゃんと守ってやらないと!
全身からミシミシと音が鳴る。痛みが走る。涙が出そうなくらいの吐き気が襲う。
それでも、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を助けようと足を動かしていたその時──
───ガシャァァン!
「───ぁぁあああああ!!?」
ガラスが割れる音と共に、悲鳴を上げる真っ白な神様が窓から飛び込んできた。
「ぐぇっ!?」
文字通り室内に飛んできた白い存在が勢いよくサラの皮を被った存在にぶつかり、ふっ飛ばされるように入口の方へ転がっていった。それと同時に身体の感覚が元に戻り、拘束が解けたように手足が動かせるようになった。
……今突っ込んできたの、キリさんだよな? いや、それよりも今は……
「サラ! 大丈夫!?」
「わ、ワタシよりセッチャンだヨ! ダイジョーブなノ!?」
サラの両肩を掴んで安否を確認すると、逆に心配されてしまった。
この様子ならコイツは大丈夫そうだ。それに、僕も《《あの時》》みたいにならなくてよかっ……あれ?
あの時って、いつのことだっけ? まあいいや、とにかく無事でよかった。
「……っ」
僕らが互いの無事を確認し合っていると、視界の端でサラの姿をした神様が逃げるように廊下へ飛び出していくのが見えた。
ちょっと待て、まだまだ訊きたいことが山ほどあるん痛たたた。
「なんかすげえ身体が痛いんだけど僕今どうなってんの? 手足繋がってる?」
「繋がってるケド色んなトコから血が出てる! セッチャン動いたらダメ……キリチャンもダイジョーブ!?」
「ぁ痛たたた……んはっ! セキさんにサラちゃん、無事!?」
「その言葉をそのまま返しますよ」
「セッチャンもだろーがヨ」
ガラス片は身体中に付いてるけど、無事みたいだな。割かし元気そうだ。
安心したのも束の間、少し落ち着きを取り戻した僕らはすぐに疑問が大量に湧いてきた。
「キリさん、なんで飛んできたんですか? いやその前に、さっきのサラみたいな神様は一体……」
「校舎もDarkになってるし、ナニが起きてンノ?」
「あ、ちょっと待って。説明の前に……」
質問攻めをする僕らに対し、キリさんは身体を淡く光らせ始めた。それからパン、と両手で一拍すると……身体に纏っていた光が広がるように、周囲が少し明るくなっていった。
「何をしたんです?」
「さっきのが逃げんように結界を張ったんよ。無いとは思うけど、どっか行ったら危ないけえね」
さっきの、というのはサラの姿をした神様のことで間違いないだろう。
結界を張ったということは、以前言っていた『お役目』の一つである人ならざるものによる異変ってやつなんだろうな。明らかにさっきの神様、様子がおかしくなってたし。
「教えてくださいキリさん。さっきのサラの見た目をした神様は何なんですか? というか、今どういう状況なのか、説明してください」
「勿論。あ、じゃけどその前に……」
キリさんは思い出したかのように神通力を発動し、目の前に円状の白い光の塊を出現させた。
ポケットのようになっているらしく、その光へ両手を突っ込んで少し弄って何かを引っ張り出そうとし……ちょっと待て。
「……キリチャン。何をダソーとしてるノデ?」
「見間違いでなければ引っ張り出してるのが人の足に見えるんですが」
「あ、これ盆提灯先生よ。一緒に連れて来たんじゃけど……なんか引っ掛かって取れんな」
連れて来たというか、持ち込んだというか……そんな異空間収納みたいなこともできるのか、この神様。人まで運べるとは便利なもんだな。
「手伝オッカ?」
「うん、ありがとう。このままあんまり長いこと異空間に入れとると窒息するかもしれんけえ、早く出さんにゃねぇ」
「「ボンチョ|さ《サ》───|ん《ン》!!」」
便利だなぁ、なんて思っていたところで平然ととんでもねえことを言われ、僕らは急いでボンチョさんを引っ張り出すことになった。
……そういえばこの土地神様、肝心なところで感覚がズレてるんだったな……。