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戸惑い

ー/ー



「え……? あなただったなんて! じゃあ、翁に伝えておくっていうのは……?」
 鎖那はかつての話を思い出しながら尋ねる。
「出まかせだよ。そんな奴いやしねぇし」
 慚愧が鼻で嗤いながら言う。
「そうだったの……。あたしもまだまだね。あなたの嘘を見抜けないなんて」
 溜息混じりに呟く鎖那。
「誰も言わんだろ。真実を見ろとは」
「それはそうだけど」
 鎖那はうーんと顔をしかめる。
「この事実を知ったお前はどうする?」
 低い声での問いにきょとんとしてしまう。
「へ?」
「その秘密を一生抱え、俺の前から消えるか? それとも他の変わり者と同じように、消えずにともにい続けるか?」
 尋ねる慚愧の視線は刃のように冷たく、鋭い。
「後者に決まってる。いなくなるなんて嫌よ?」
 鎖那は笑顔で答えた。
「そんな奴、そうそういないと思っていた」
 慚愧は苦笑を浮かべる。
「ふふふ。それとね、あたしはあなたのことが心配なの」
「心配?」
 鎖那の言葉に首をかしげる。
「こんなに危なっかしい人、誰もいないわよ?」
 鎖那は舞扇を取り出して広げ、にっこりと笑う。
「……そうかよ」
 慚愧は苛立ちも込めて言葉を返す。
「あなたの目と髪、とっても綺麗。見惚れちゃってるわねぇ、多分」
 くすくすと鎖那が言う。
「は……? それ、本気で言っているのか?」
 鎖那の一言に文字通り、衝撃を受けた慚愧が聞き返す。
「そんなに驚かないでよ。あたしは素直に思ったことを言っただけよ」
 にこりと鎖那が笑い、舞扇を仕舞う。
「この見た目が美しい、と……?」
「今日のところはお腹いっぱいだから帰るわね」
 笑みを見せた鎖那を見送った。

「くっ、くはははは!」
 一人になった慚愧は、肩を震わせ嗤い出した。
 そんなことを言う人間なんて、誰一人いなかったのに。
 誰もそんなこと言わないと諦めていたのに。
 どうして〝今〟そんな言葉を残すんだ!
「本当に……あの娘は面白い」
 慚愧は少しだけ目を潤ませて呟いた。


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「え……? あなただったなんて! じゃあ、翁に伝えておくっていうのは……?」
 鎖那はかつての話を思い出しながら尋ねる。
「出まかせだよ。そんな奴いやしねぇし」
 慚愧が鼻で嗤いながら言う。
「そうだったの……。あたしもまだまだね。あなたの嘘を見抜けないなんて」
 溜息混じりに呟く鎖那。
「誰も言わんだろ。真実を見ろとは」
「それはそうだけど」
 鎖那はうーんと顔をしかめる。
「この事実を知ったお前はどうする?」
 低い声での問いにきょとんとしてしまう。
「へ?」
「その秘密を一生抱え、俺の前から消えるか? それとも他の変わり者と同じように、消えずにともにい続けるか?」
 尋ねる慚愧の視線は刃のように冷たく、鋭い。
「後者に決まってる。いなくなるなんて嫌よ?」
 鎖那は笑顔で答えた。
「そんな奴、そうそういないと思っていた」
 慚愧は苦笑を浮かべる。
「ふふふ。それとね、あたしはあなたのことが心配なの」
「心配?」
 鎖那の言葉に首をかしげる。
「こんなに危なっかしい人、誰もいないわよ?」
 鎖那は舞扇を取り出して広げ、にっこりと笑う。
「……そうかよ」
 慚愧は苛立ちも込めて言葉を返す。
「あなたの目と髪、とっても綺麗。見惚れちゃってるわねぇ、多分」
 くすくすと鎖那が言う。
「は……? それ、本気で言っているのか?」
 鎖那の一言に文字通り、衝撃を受けた慚愧が聞き返す。
「そんなに驚かないでよ。あたしは素直に思ったことを言っただけよ」
 にこりと鎖那が笑い、舞扇を仕舞う。
「この見た目が美しい、と……?」
「今日のところはお腹いっぱいだから帰るわね」
 笑みを見せた鎖那を見送った。
「くっ、くはははは!」
 一人になった慚愧は、肩を震わせ嗤い出した。
 そんなことを言う人間なんて、誰一人いなかったのに。
 誰もそんなこと言わないと諦めていたのに。
 どうして〝今〟そんな言葉を残すんだ!
「本当に……あの娘は面白い」
 慚愧は少しだけ目を潤ませて呟いた。