「キーンコーンカーンコーン」
僕の担任の先生はそう言いながら教室に入ってきた。
チャイム先生というあだ名がついている担任は、いつも何からの時間になるとチャイムを口で再現する。
本名は誰も知らない。
今のはホームルームの始まりを告げるチャイムだ。
僕たちは各々の席へ戻っていく。
僕は元から立っていなかったけれど。
立って話す相手が居ないもんでね。
「はーい、今日はなんと!転校生を紹介します!入っておいで〜」
!
転校生かぁ、どんな子なんだろう。
僕はチラリと横の席を見た。
僕は一番後ろの席、それも窓側から二番目だ。
よってクラスの人数が一人少ない二組は僕の横の席が空いている。
転校生はここに来るのだろうか。
ガラララ、と少し立て付けの悪い扉が音を立てて開き、転校生が姿を見せた。
「「「…⁉︎」」」
皆言葉を失い、転校生を凝視していた。
「こんにちは、仙芽市立第一中学校から来ました。栗花落麗香です。趣味はランニング、小説を書くこと。好きな食べ物は甘いものです。これからよろしくお願いします」
と完璧な自己紹介をした転校生、栗花落さん。
優香と趣味が合いそうだな、と思う。
文芸部の俺もランニングをしているのだが、そんなことはどうでも良い。
へえ、小説書くんだ、僕の興味はそこ一点であった。
どんなジャンル?
どんな表現?
どんな…。
僕は僕の右の席に座っている、数少ない小説友達、倉津に声をかけた。
「な、気になるよな、栗花落さんがどんな小説を書いて…」
「そうだろ、お前もそうか。栗花落さんってどんな男が好きなんだろうな〜」
ん?
僕は周りを見渡した。
皆が気になるのは、栗花落さんの容姿らしい。
黒髪を腰まで伸ばし、身長は百五十五センチ程度。
制服がよく映える、美人系と可愛い系のハーフのような顔立ち。
笑ったら可愛らしくもあり、すましているとめちゃくちゃ美人。
そんな感じなのだが…。
美人は優香で十分。
優香を見飽きている僕は相当失礼なことを思った。
まあ優香はもう少しとっつきやすい感じなのだが。
「すっげ、可愛い…」
誰かが呟いたその言葉に、一同はうんうんと肯定した。
「え〜っと、席は…お、最上の隣が空いてるな、栗花落、あのちょっとクール系でイケメンな男子見えるか?あいつの隣の席が、お前の席だ」
は?
おいチャイム先生!
何言ってんだ!
僕の顔立ちは至って普通だぞ!
身長は平均より上だけど…。
やばい、目立ちすぎてあとで陽キャに殺されるかも。
今の時点で「なんでお前の隣なんだよ」という視線がグサグサ刺さって痛いのに…。
何でってくじ引きで僕がこの席になったんだよ!
栗花落さんは僕の隣の席に腰をかけ、ホームルームが始まった。
「あ、栗花落さん、よろしくお願いします」
「…」
僕がそう小声で挨拶をするも、栗花落さんは聞こえていなかったのか、ノーリアクションだ。
「あ、あの、」
「…プイ」
栗花落さんは顔を逸らし、拒絶反応を見せた。
あれ?もしかして僕、嫌われてる?