そう言うと同時に、サラマンダーは炎息を放った__
その炎は一瞬にして森を灰にし、妖精族の姿など跡形もない。
ルカの脳裏にはここで暮らした日のことが浮かんでいた。
ミルネに腕を引っ張られ、走り出す。
いつの間にか立ち止まってしまっていたのだ。
「我が中途半端な仕事をするわけないだろう」
そう言ってサラマンダーは消えた。
ルカたちが目を凝らすと、サラマンダーがいたところには人間。
ミルネが長老には黙っててと言われたけど、と口を開く。
「さっきの奴は主神スキルによってあんな化け物になっていたのよ。“ラグナロク”という組織に所属している、神獣部隊の中で一番弱い神獣。称号は〈尾〉。今回きたのはその中で一番強い〈尾〉の隊長。ラグナロク本隊の階級で言うと兵長に当たるわ。ラグナロクはそれより少し弱い、それを量産して兵としているわ。あの堕妖精は村を壊滅させられて、逃げてきたの。その証拠に胸元に黒い刻印があった。あれは、ラグナロクが殺しそびれた相手に浮かぶ、死の刻印。ラグナロクは襲う前に結界を張る。その結果以内のもので、結界の外に出たものは、死の刻印が浮き出る。位置はラグナロクにリアルタイムで把握され、殺される。以前長老に教えられたの。妖精族を殺したわけは分からないけど…。逃げて、逃げて、逃げ延びて、そして強い人に出会って、あなたたちは守ってもらいなさい」
主神スキルとは妖精族が三百歳になると使用可能となる能力のこと。
ミルネはそう言って自分達の胸元に浮かんだ紋章を指差す。
「その呪縛から、逃れられるように」
そう言ってミルネは身を翻した。
「「ミルネ!ミルネも一緒に行かなきゃヤダよ!!」」
「分かってる。一緒に逃げよう!」
そう言ってミルネは私たちに笑いかけた。
「危ない!!!!!」
そうミルネが叫んだ。
私たちがミルネを見ると、ミルネは、
「逃げ…て」
と言ってパタンと倒れた。
「「え?」」
ミルネに傷はない。
「ははっ。死んだ死んだ」
そう言った先にいたのは…
「「アディ兄⁉︎」」
そう、アデスだった。
「「妖精族のみんなはさっき焼かれたはずじゃ…」」
「いやいや、俺が戦うわけないじゃん。俺が今回の黒幕なんだからさ」
え?
「「なんでそんなこと言うの?」」
私は悲しかった。
「は、その女は俺よりも劣っているにも関わらず俺の告白を断ったやつだぜ?歳の差が何とかだと言ってよ。村全体に責任がある。あのサラマンダーはラグナロクから借り受けたんだよ、俺が入ることを条件にな。それに、あの堕妖精は、囮だ。あいつはラグナロクのメンバーだ。本人は嫌だと言っていたが、死の刻印を付けた途端大人しくなりやがった。まあ、あいつは最後俺たちに反抗したから消したけどな、妖精族と共に」
「「…!」」
私は最後まで必死に戦っていた堕妖精を思い出した。
彼女は自ら妖精族の盾となり死んでいった。
私とミカが絶句する中、アデスはミルネの遺体を蹴った。
「「やめて!」」
私たちはそう言ってミルネの遺体を担ぎ、アデスから逃げるように走った。
アデスはまだ語り続ける。
「俺の主神スキルは[死霊使]だぜ?お前らに勝てるわけないだろw。そして、お前らを逃すわけもないだろ?俺が触れても、俺の攻撃に当たっても、俺の半径一メートル以内に近づいても!俺の視界に入った途端お前らの命は俺が握っているんだよ。そして!生物は等しく死ぬんだ!」
「さあ、おしゃべりはここまでだ。逃げられねぇんだよ、お前らは。死ね、[命…」
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
ミカside
「死ね、[命…」
お父さんも、お母さんも、ミルネも死んだのに、アディ兄が…。
私の家族を奪わないで…。
奪わないでよ!
私は主神スキルを行使した。
「私の主神スキルは!少し前まで[武士]だった!でも、雷に打たれた時、進化した!」
覚えがあったのだろう。
アデスは笑い顔が真顔になった。
「今の私の主神スキルは![雷剣使]!あなたみたいな、雑魚には負けない!」
「くそっ。こいつ主神スキル進化してやがったのか…。サラマンダーを持ってくればよかった。チッあいつ帰りやがったな。死ね!お前みたいなチビに誰が負けるか![命奪]!!!」
「死ねぇ!私の!家族を!返せぇぇぇ!出よ[剣]!」
そう言って私は手を剣に変えた。
ルカが驚いた顔をしていたが今はそれどころではない。
「[|雷剣射出]!」
主神スキルの相性は最悪。
精神系と近接系だからだ。
だからこそ、ミカは遠距離を選んだ。
「当たれぇぇぇぇぇ!!!」
雷剣はアデス目掛けて飛んでいく__
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
雷剣は見頃アディ兄、いや、アデスの胸に刺さった。
「うっ!」
心臓のあたりに激痛が走る。
私も直撃したようだ。
やはり不可視の攻撃は避けられなかった。
命が、吸い取られてゆく。
ね、む、、い。
そう思いながら、私は最後の技を行使した。
私が生き残るため、そして、ルカを守るための最善策。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
ルカside
アディ兄、いや、アデスは死んだ。
でも、ミカも…。
「ミカ、ミカ、起きて!!」
私は必死にミカを揺さぶる。
ゴロゴロゴロゴロ。
「こんな時まで、ミカの嫌いな雷…」
するとドンガラガッシャーンという音を立てて、雷がミカに直撃した。
「キャァ!」
私は咄嗟に目を瞑り、次に目を開けた時、ミカは消えていた。
雷で焼き払われた?
そんなことあり得るの?
「はっはっは。こりゃ一本取られた。あんな雑魚に俺がやられるとは」
⁉︎
アデスが喋った⁉︎
「ちょっ、なんで生きてんのよ!」
私がすごい声で問い詰める。
「あ〜うるさいうるさい。俺は常に命をストックしてんだよ。命を奪うからな。だが、今回のストックはミルネの命一つだけだ。だから俺は撤退するが…。その刻印があるぎりお前は逃れられない。地の果てまで追いかけて殺してやるからな。くっくっくっ。ん?何故かミカの命が入ってきて居ないが…まあ良い。では、さらばだ。次に会った時、お前はどんな顔をするんだろうな〜?」
くそ!くそ!
悔しい!
私に力がないことが悔しい!
双子を守れなかったことも悔しい!
何より、騙されていた自分も悔しい!!
雨が降る。
降り頻る雨の中、ただ一人、ポツンと居座る少女。
その少女、ルカは、焼けた森の中、大声で泣き続けた__
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
〈基本ステータス〉
個体名:ルナ・ムーンライト
二つ名:無し
年齢 :3
職業 :無職
レベル:1
筋力 :1
敏捷力:1
精神力:943
体力 :1
魔力 :2943
耐性 :無し
加護 :転生者の加護
称号 :無し
技能 :無し
使用可能魔法:氷魔法中級Level6、地魔法中級Level5、火魔法中級Level4、水魔法中級Level4、毒魔法中級Level1
主神スキル :[陰影]Level1
主神権能 :[影纏][影縫]
保持スキル :[全言語理解][能力奪取][経験値増加]Level16[食事]Level5[思考加速]Level5[鑑定]Level4[魔力感知]Level5[魔力操作]Level5[聴力強化]Level3[視力強化]Level3[嗅覚強化]Level1[触覚強化]Level3
保持タイトル:無し