ムーンライト侯爵家令嬢、ルナ・ムーンライトはすくすくと成長していた。
すると来るのは縁談話。
幸いなことに父、ガイア・ムーンライトは大切な娘を四十歳も歳の離れたおじさんと結婚させることはなかった。
父、ガイアは書斎で悩んでいた。
どのような理由をつけて縁談を断ろう、と。
中でも頭を悩ませているのはこの縁談。
「ロイドキャノン侯爵家令息、アース・ロイドキャノンからの縁談。断る理由があっても断れないな」
そう思いガイアは答えるのを先延ばしにしているのだ。
「あのガウロ・ロイドキャノンも立派な家名をもらって…昔を思い出す」
ガイアは懐かしき親友の姿を思い浮かべた。
「ん?」
ガイアはある一つの縁談に目を留め、顔を顰めた。
「なんだこの縁談は。六十歳のヨボヨボの爺さんからの縁談じゃないか。年齢差により断ろう」
ガイアはまた一つの縁談に目を留め、先ほどとは別の意味で顔を顰めた。
「ったく。縁談は普通十歳からだというのに…ん?サンライト侯爵家からの縁談…?あそこは令嬢しかいないはず」
ガイアは縁談をよく読み、こう呟いた。
「令嬢テラ・サンライトは女性が恋愛対象…?同い年なのに成長の仕方に差があるのだな」
ガイアは別に同性愛者に対しての偏見を持ち合わせていないためこの対応であったが、普通の人、大多数の人は同性愛者に対して好意的とは言い難い。
この先苦労するのが見える縁談であった。
テラ・サンライトは根っからの同性愛者である。
親のミラ・サンライズやテイズ・サンライズがそれを知ったのはテラが三歳になった時。
祭りで恋愛のタイプを調べるテキ屋というのがあり、娘がやりたいと言ったのでやらせてみると、そのタイプは女性にしか当てはまらないものであった。
そこで、テイズやミラは自分の娘が将来同性愛者になるのだと知ったのだった。
それを知ってもミラやテイズは娘を嫌うどころか溺愛した。
将来困らないように。
「っと。今ルナはどうしているだろう?」
ガイアは最愛の娘を思い浮かべ、一人書斎でニヤけた。
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「〜〜♪」
私は機嫌よくステップを踏みながら家の中をスキップで移動していた。
今日のご飯は美味しかった。
この世界にもうどんってあるんだな。
高級らしいけど。
私はもうすぐ三歳。
明日が私の誕生日だ。
私が楽しみにしているのはケーキである。
二歳の時にはちょっと不味かった。
まだ離乳食のケーキだったからだろう。
でも、歯が生え揃い、三歳になった時には普通のケーキが食べられるのだ。
多分。
魔法の練習はもちろん欠かしていない。
朝起きてから一時間、寝る前の一時間、そして空いている時間は八割魔法の鍛錬である。
残りの二割はガイアや母のエルメナと過ごしたりする時間である。
私は両親に一つ頼みたいことがあった。
それは…。
「ルナ様、もう寝るお時間ですよ〜」
まだ三百歳にも満たないというルカがそう言って私をベッドへと促した。
妖精族の寿命は約一万年。
まあ、三百歳ということは人間の年齢で言えば三歳。
精神年齢は大人らしいけど。
私と同い年である。
この世界の人族は十六歳で成人するため、お酒もその時から飲めるらしい。
ルカは千六百歳にならないとお酒は飲めないんだとか。
ルカは三百歳に今年なる。
そのパーティも明日行われる予定である。
そのためルカも少々機嫌が良い。
ルカは三百歳なので去年も普通のショートケーキだった。
私はケーキを食べるルカ達を羨ましげに見ながら離乳食ケーキを食べたものだ。
あの時の屈辱は忘れない。
私はベッドに入り、約一時間ほど魔法の鍛錬をし、目を瞑った。
まだ八時だ。
三歳というのは七時に寝なければいけないらしい。
魔法の鍛錬というのは普通に魔法を撃つ鍛錬や、魔法を極小や極大までにして繊細に操る鍛錬、体内の魔力の属性を即座に変える事ができるようにする属性変換訓練などをしている。
まあすぐ結果が出るわけではない。
コツコツコツコツ、積み重ねてゆくのだ。
きっとその先には私の目標があるのだろう。
そう信じて、進む。
それしか、私が生きている理由なんてないから。
一度死んでいるんだしね。
眠…い……
私は睡魔に敗北し、寝た。
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次の日__
ついに今日は誕生日。
屋敷を歩いていると通りすがりの執事や使用人、メイド達から
「お嬢様、お誕生日おめでとう御座います」
と声をかけられる。
悪い気分ではなかったが、どこかむず痒かった。
「おはようございます、ルナ様」
私に声をかけたのはルカ。
「そして三歳のお誕生日おめでとう御座います」
ちなみにルカは大体七歳くらいの姿をしている。
人間の速度で体は成長しているらしいけど。
「ありがと〜。ルカこそ、誕生日おめでと〜」
私は素直にルカの誕生日を祝福する。
妖精族って一万回もこの言葉を言われるのか。
羨ましい。
でも長く生きてりゃ生きてるほど良いってことでもないんだろうな…。
現に第一次世界大戦の時に迫害された妖精族も生きている者もいるようだし。
九千年も前の出来事だとあんまり実感湧かないな〜。
「ありがとうございます、お嬢様」
この国では事前に何が欲しいかを教えるという流儀である。
私がルカに何が欲しいか尋ねたところ、少し考えて、
「大変無礼を承知してお願い申し上げます。ルナ様と対等にお話をする権利が欲しいです」
と言ったのだ。
それくらいならお安い御用だと思ったが、ルカにとっては大変重要なことらしい。
目が笑っていなかった。
まあ、タメ口で話して良いかってことでOKだよね?
「ルナ〜〜!!誕生日おめでと〜〜〜!」
ガイアが私を見つけるなり抱きつきながら私を祝福する。
「むぐっ!ちょっとお父さん⁉︎ぐ、ぐるじい」
私がもがくと、ガイアが力を緩める。
「すまんすまん。今日はルナの誕生日だからお父さんもちょっとテンションあがっちゃってな」
ガイアはそう言って私を離し、頭をポンポンと撫でた。
ガイアはこう見えてA級討伐者。
しかもその中でも上位の実力者。
ギルド実力ランクS-の実力を持つ。
エルメナはA+だという。
S級にならなかった理由は貴族になって領地を平定するのに忙しいのにわざわざ面倒くさいS級の試験を受ける必要はない、という結論に達したらしい。
第二次大戦時にできたこの国を導き、魔物や敵から皆を守った英雄としても有名である。
そのため、侯爵家の地位を与えられたのだが…。
この国の五つの侯爵家は四家がガイアのパーティメンバー。
ガイアのパーティメンバーではない一家は宰相一家である。
この国には公爵家は存在しない。
なぜならそこまで活躍した家がいなかったためである。
ほとんど今の侯爵家がやったのだ。
本当は公爵家になってもおかしくなかったそんな英雄達はなぜ公爵家になれなかったのかというと、公爵家のみ家数に決まりがあり、三つまでと決まっている。
そのため公爵家へとなれなかったが代わりに与えられた者は、寿命である。
皆んなも疑問に思っていたんじゃないだろうか。
八百年前の戦争で活躍した人がなぜ今生きているのか、と。
寿命を伸ばしたのだ。
今年八百二十歳のエルメナ。
今年八百二十三歳のガイア。
どのくらい伸びたかは分からないらしい。
国宝レベルの秘薬を使ったため、前例がいなかったのである。
ちなみにエルメナもA級討伐者である。
ガイアやエルメナは最近は貴族になり忙しいためにあまり任務を受けていないが、その力は健在。
鍛錬も欠かしていない。
そんなガイアに思いっきり抱きしめられたら死んでしまう。
ガイアはもう少し力加減というのを覚えた方が良いと思う。
昼だが、私は夜寝るのが早いため、パーティは行われる。
大広間、というところで。
普段は使わない宴会会場のようなものだ。
「ハッピバースデーディ〜アル〜ナ〜エンドル〜カ〜!ハッピバースデートゥーユー!おめでと〜」
両親やメイド、使用人達が一斉に歌い上げ、拍手する。
ルカと私はそれぞれ自分のケーキに刺してある蝋燭の火を消した。
ちなみに今年のケーキはイチゴショートケーキだった。
美味しかった。
ルカは抹茶ケーキだった。
満足そうな顔をしていたし、良かったと思う。
さあ、次はルカのプレゼントタイムだ。
使用人達や両親からのプレゼントが贈られ、最後は私の番。
私は、
「友達になろう!」
と声をかけた。
ルカは笑顔で、
「うん!」
と答えた。
ちゃんと両親には言ってある。
ルカが嬉しいのか涙ぐんで抱きついてきた。
ルカが離れないので私にくっついたまま私にプレゼントが渡された。
服、帽子、手袋、さまざまな物が両親経由で私に渡される。
そしてルカからはシャンプーとトリートメントをもらった。
一年分。
高級だぁ。
私はシャンプーとトリートメントと言っただけなのに一年分も…。
「ルカ、ありがとう!」
私はひっついているルカにお礼を言い、抱きついた。
最後は両親。
私が頼んだのは…。
「明日街へ行っても良いか、というお願いだったな…。行って良いぞ〜!」
ただし、とガイアは続け、私は身構える。
「ルカを連れていけよ〜?」
私が考えていたことだった。
ルカは良いの?という視線を送ってきたのでウインクしておいた。
そうして、私には明日の予定と、友達ができたのだった。
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〈基本ステータス〉
個体名:ルナ・ムーンライト
二つ名:無し
年齢 :3
職業 :無職
レベル:1
筋力 :1
敏捷力:1
精神力:943
体力 :1
魔力 :2943
耐性 :無し
加護 :転生者の加護
称号 :無し
技能 :無し
使用可能魔法:氷魔法中級Level6、地魔法中級Level5、火魔法中級Level4、水魔法中級Level4、毒魔法中級Level1
主神スキル :[陰影]Level1
主神権能 :[影纏][影縫]
保持スキル :[全言語理解][能力奪取][経験値増加]Level16[食事]Level5[思考加速]Level5[鑑定]Level4[魔力感知]Level5[魔力操作]Level5[聴力強化]Level3[視力強化]Level3[嗅覚強化]Level1[触覚強化]Level3
保持タイトル:無し