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昔と変わらない

ー/ー



「村山君さ、絶対伊沢さんのこと好きだよな」青木は言う。

「うん、絶対そうだよね。雅哉が、付き合ってるの?って聞いたら顔赤くして固まってたからね。すごいわかりやすかった」

「あの二人がカップルになったらどうなるんだろうな。てか、もう今頃告白しててもおかしくないかんじではあるけど、どうする、明日になって付き合い始めました、とか言われたら?」

「占うかな、相性とか」

「あーそっか、麻奈って占い師だったっけ」

 杉田は占い師兼霊媒師というかたちで活動をしていた。顧客の未来を占いつつ、霊視もして、必要に応じて助言や除霊を行っていたのだ。青木とは、その仕事を通して知り合った。彼女のところへ客として彼が来たのだ。

 そこで二人は、ホテルの入口に差し掛かる。そしてそのまま、夜空の下へと出て行く。

「うん。そういう依頼もね、結構あるんだよね。私たち最近付き合い始めたんですけど相性どうですかね、とか。なんならもうすでに結果が頭の中に浮かんでるんだけど、聞く?」

「え、まじ? 聞く」

「あのね」彼女は言葉を探すように、しばらく黙る。

 その時、彼は堀田と小野田が駐車場に二人でいるのを見かける。

「あ、堀田さん、小野田ちゃん。こんばんは」彼は堀田たちに向かって手を振る。「何してんの?」彼は尋ねる。

「修行です! 術の使い方、堀田さんから教わろうと思って。たぶんうちら、明日組むことになると思うんで」小野田は言う。

「あれ、そうなの?」

「いや、そうと決まってるわけじゃないんですけど、ほら、伊沢さんは村山さんと、青木さんは杉田さんと組む気がして、そしたらうちら余るから組むことになるよねって二人で話してて。それで」

「ああ。そしたら明日、二人を一緒にしようか。せっかくだからさ」

「ありがとうございます。ちょっとなんとか、明日までに術を使えるようになろうと思います」

「うん、まあでも、無理はしないで。早めに切り上げて、休みな」彼は手を振りながら、去っていく。

「ごめんごめん、いたからつい話しかけちゃった。せっかく占ってくれてたのにね」彼は杉田のほうに向きなおって、謝る。

「いや、全然いいよ。ちょっと言葉を整理する時間も必要だったから」彼女は言う。そして、占いの結果を話し始める。

「あのね、伊沢さんが人とはあんまり話さないタイプで、自分の意志はしっかり持ってるっていうタイプで、村山さんは人のために動くのが好きで、リードしてもらいたいっていうタイプなんだよね。

 伊沢さんは女の人なんだけどちょっと男ぽくて、村山さんは逆に男の人だけど女性的な特徴、たとえば相手の気持ちをくみとって動いたりとか、そういうのをもってるタイプ。

 あとね、村山さんがあんまりしっかり者っていうかんじじゃなくて、ちょっと抜けてたりとか、途中で自信をなくしちゃったりとかしちゃうタイプだから、自分の意志をしっかり持ってる伊沢さんとは相性はいいんだよね。だから、本当にぴったりだと思う、あの二人は」

「すごいな、なんか全部当たってる気がするわ」

「まあね、プロですから」彼女はドヤ顔で言う。

「いやまじですごいよ。つか、そこまでわかっちゃうなら、自分が付き合うときとかも、相手の男が自分に合うかどうかとかも全部わかっちゃうじゃん。てかさ、麻奈ってさ、彼氏いたことあんの?」彼は尋ねる。

「ないよ」

「え⁉ なんで? 普通にモテたでしょ。かわいいし」

「かわいくない。褒めたってなんも出ないぞ。占いもちゃんと料金とるからね」

「え、褒めたからタダでやってくれるんじゃないの?」

「褒めただけでタダになるとか、安すぎんだろ、私の占い。つか、彼氏いない歴イコール年齢だし。黒歴史えぐんな!」

「いやでも、まじめな話、モテない理由がわからない」

「それはほら、私、霊能力とかもってるじゃん? その子の顔見ただけでいつケガするとかがわかっちゃって、それそのまま言って気持ち悪がられたり、幽霊が見えるせいで頭おかしい子扱いされたりして、もう散々だったよ」

「あー、そういうの俺もあったわ。なんかもはや、生きてる人からよりも、霊のほうにモテるよな、俺らみたいな霊視える人たちって。俺が視えるってわかったとたん、話しかけてくる(やつ)がいっぱいいてさ」

「そうなんだ。私の場合はモテたっていうか、自分から話しかけにいってた。生きてる人よりも、死んでる人とのほうが話が合うし、いろいろ教えてもらえたりもしたから、ずっと死んだ人と話してた。だから私、こういう夜の散歩好きなんだよね。霊と話せるから」

 じつは、夜の散歩をしたい、と言い出したのは杉田のほうだった。青木からごはんに誘われたときに、「おなかすかせるついでに夜の散歩に行きたい」と言ったのだ。それに青木がついてきたかたちになる。

「へー。俺は逆だったな。視えるのがただひたすらしんどくて、力とかちゃんと身に着けて身を守れるようになるまではずっと無視するか逃げるかしてたわ。今は違うけど、子供の頃はめっちゃビビリだったから」

「ビビリの雅哉とか、全然想像つかないわ」

「まあビビリつっても、幽霊に対してだけね。クラスでは普通に明るかった」

「あ、やっぱ生粋の陽キャか、お前。もしかして彼女とかもいた?」

「いたよ」

「やっぱりそうか! お前、私の敵じゃねーか!」彼女は青木の横腹を殴る。

「いたっ! けっこうガチで殴ってきたな」

「うるさい、リア充め! 爆発しろ!」

「いや、違う違う! いたっつっても、続きがあるんだよ」彼は両手を前に出して、制止のポーズをとる。

「何?」

「いや、向こうから告白されて」

「やっぱリア充じゃねーか!」

「違うんだって。そいつ、二股だったの!」

「え?」彼女は回し蹴りをしようしてあげていた足を下ろした。

「すでに彼氏いるのに俺に告白してきて、しかも、彼氏とは別れたって俺には嘘ついてたんだよね。俺、それが嘘だって知らなかったから普通にオッケーしちゃったのね。

 そしたら、あとになってそいつの彼氏が俺のところに来て、てめーなに俺の女に手え出してんだ、みたいになってガチギレしてきて。俺はそいつにぼこぼこにされたうえに、同時に彼女も失ったっていう。二股かけてるってその時にはわかってて、もう別れるしかなかったからさ。しかも、それが最初で最後の恋愛だからね。全然リア充じゃないから。今も、彼女いないし」

「へえー。でも許さん。私なんか、告白されることすらなかった。ずっといじめられっ子だったし」

「うーん、そんなにリア充がうらやましいんだったらさ――」

 俺と付き合ってみる? 

 彼はこの一言を言う機会をずっとうかがっていた。そのために彼は、彼氏いたの、と尋ねたりして、さりげなく今の彼女がフリーかどうか確かめた。

 京都での行動で二人組に賛成したのも、効率がいいからという理由だけではなく、彼女と二人きりで行動できるからだった。もし村山が言い出さなかったら、彼から言い出すつもりでいた。

 もっとも、向こうはこちらのそういう気持ちにはまったく気づいていないようだったが。しかもこちらを意識しているそぶりもない。

「なに?」彼女は聞き返す。

「村山君と伊沢さんが付き合いだしたらお前、爆発するんじゃね?」

「うるせえええ!」

 しかし言えない。今の、気のいい兄貴分みたいなポジションを失ってしまうかもしれないと思うと、怖い。

 彼は昔と変わらず、ビビリだ。


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「村山君さ、絶対伊沢さんのこと好きだよな」青木は言う。
「うん、絶対そうだよね。雅哉が、付き合ってるの?って聞いたら顔赤くして固まってたからね。すごいわかりやすかった」
「あの二人がカップルになったらどうなるんだろうな。てか、もう今頃告白しててもおかしくないかんじではあるけど、どうする、明日になって付き合い始めました、とか言われたら?」
「占うかな、相性とか」
「あーそっか、麻奈って占い師だったっけ」
 杉田は占い師兼霊媒師というかたちで活動をしていた。顧客の未来を占いつつ、霊視もして、必要に応じて助言や除霊を行っていたのだ。青木とは、その仕事を通して知り合った。彼女のところへ客として彼が来たのだ。
 そこで二人は、ホテルの入口に差し掛かる。そしてそのまま、夜空の下へと出て行く。
「うん。そういう依頼もね、結構あるんだよね。私たち最近付き合い始めたんですけど相性どうですかね、とか。なんならもうすでに結果が頭の中に浮かんでるんだけど、聞く?」
「え、まじ? 聞く」
「あのね」彼女は言葉を探すように、しばらく黙る。
 その時、彼は堀田と小野田が駐車場に二人でいるのを見かける。
「あ、堀田さん、小野田ちゃん。こんばんは」彼は堀田たちに向かって手を振る。「何してんの?」彼は尋ねる。
「修行です! 術の使い方、堀田さんから教わろうと思って。たぶんうちら、明日組むことになると思うんで」小野田は言う。
「あれ、そうなの?」
「いや、そうと決まってるわけじゃないんですけど、ほら、伊沢さんは村山さんと、青木さんは杉田さんと組む気がして、そしたらうちら余るから組むことになるよねって二人で話してて。それで」
「ああ。そしたら明日、二人を一緒にしようか。せっかくだからさ」
「ありがとうございます。ちょっとなんとか、明日までに術を使えるようになろうと思います」
「うん、まあでも、無理はしないで。早めに切り上げて、休みな」彼は手を振りながら、去っていく。
「ごめんごめん、いたからつい話しかけちゃった。せっかく占ってくれてたのにね」彼は杉田のほうに向きなおって、謝る。
「いや、全然いいよ。ちょっと言葉を整理する時間も必要だったから」彼女は言う。そして、占いの結果を話し始める。
「あのね、伊沢さんが人とはあんまり話さないタイプで、自分の意志はしっかり持ってるっていうタイプで、村山さんは人のために動くのが好きで、リードしてもらいたいっていうタイプなんだよね。
 伊沢さんは女の人なんだけどちょっと男ぽくて、村山さんは逆に男の人だけど女性的な特徴、たとえば相手の気持ちをくみとって動いたりとか、そういうのをもってるタイプ。
 あとね、村山さんがあんまりしっかり者っていうかんじじゃなくて、ちょっと抜けてたりとか、途中で自信をなくしちゃったりとかしちゃうタイプだから、自分の意志をしっかり持ってる伊沢さんとは相性はいいんだよね。だから、本当にぴったりだと思う、あの二人は」
「すごいな、なんか全部当たってる気がするわ」
「まあね、プロですから」彼女はドヤ顔で言う。
「いやまじですごいよ。つか、そこまでわかっちゃうなら、自分が付き合うときとかも、相手の男が自分に合うかどうかとかも全部わかっちゃうじゃん。てかさ、麻奈ってさ、彼氏いたことあんの?」彼は尋ねる。
「ないよ」
「え⁉ なんで? 普通にモテたでしょ。かわいいし」
「かわいくない。褒めたってなんも出ないぞ。占いもちゃんと料金とるからね」
「え、褒めたからタダでやってくれるんじゃないの?」
「褒めただけでタダになるとか、安すぎんだろ、私の占い。つか、彼氏いない歴イコール年齢だし。黒歴史えぐんな!」
「いやでも、まじめな話、モテない理由がわからない」
「それはほら、私、霊能力とかもってるじゃん? その子の顔見ただけでいつケガするとかがわかっちゃって、それそのまま言って気持ち悪がられたり、幽霊が見えるせいで頭おかしい子扱いされたりして、もう散々だったよ」
「あー、そういうの俺もあったわ。なんかもはや、生きてる人からよりも、霊のほうにモテるよな、俺らみたいな霊視える人たちって。俺が視えるってわかったとたん、話しかけてくる|霊《やつ》がいっぱいいてさ」
「そうなんだ。私の場合はモテたっていうか、自分から話しかけにいってた。生きてる人よりも、死んでる人とのほうが話が合うし、いろいろ教えてもらえたりもしたから、ずっと死んだ人と話してた。だから私、こういう夜の散歩好きなんだよね。霊と話せるから」
 じつは、夜の散歩をしたい、と言い出したのは杉田のほうだった。青木からごはんに誘われたときに、「おなかすかせるついでに夜の散歩に行きたい」と言ったのだ。それに青木がついてきたかたちになる。
「へー。俺は逆だったな。視えるのがただひたすらしんどくて、力とかちゃんと身に着けて身を守れるようになるまではずっと無視するか逃げるかしてたわ。今は違うけど、子供の頃はめっちゃビビリだったから」
「ビビリの雅哉とか、全然想像つかないわ」
「まあビビリつっても、幽霊に対してだけね。クラスでは普通に明るかった」
「あ、やっぱ生粋の陽キャか、お前。もしかして彼女とかもいた?」
「いたよ」
「やっぱりそうか! お前、私の敵じゃねーか!」彼女は青木の横腹を殴る。
「いたっ! けっこうガチで殴ってきたな」
「うるさい、リア充め! 爆発しろ!」
「いや、違う違う! いたっつっても、続きがあるんだよ」彼は両手を前に出して、制止のポーズをとる。
「何?」
「いや、向こうから告白されて」
「やっぱリア充じゃねーか!」
「違うんだって。そいつ、二股だったの!」
「え?」彼女は回し蹴りをしようしてあげていた足を下ろした。
「すでに彼氏いるのに俺に告白してきて、しかも、彼氏とは別れたって俺には嘘ついてたんだよね。俺、それが嘘だって知らなかったから普通にオッケーしちゃったのね。
 そしたら、あとになってそいつの彼氏が俺のところに来て、てめーなに俺の女に手え出してんだ、みたいになってガチギレしてきて。俺はそいつにぼこぼこにされたうえに、同時に彼女も失ったっていう。二股かけてるってその時にはわかってて、もう別れるしかなかったからさ。しかも、それが最初で最後の恋愛だからね。全然リア充じゃないから。今も、彼女いないし」
「へえー。でも許さん。私なんか、告白されることすらなかった。ずっといじめられっ子だったし」
「うーん、そんなにリア充がうらやましいんだったらさ――」
 俺と付き合ってみる? 
 彼はこの一言を言う機会をずっとうかがっていた。そのために彼は、彼氏いたの、と尋ねたりして、さりげなく今の彼女がフリーかどうか確かめた。
 京都での行動で二人組に賛成したのも、効率がいいからという理由だけではなく、彼女と二人きりで行動できるからだった。もし村山が言い出さなかったら、彼から言い出すつもりでいた。
 もっとも、向こうはこちらのそういう気持ちにはまったく気づいていないようだったが。しかもこちらを意識しているそぶりもない。
「なに?」彼女は聞き返す。
「村山君と伊沢さんが付き合いだしたらお前、爆発するんじゃね?」
「うるせえええ!」
 しかし言えない。今の、気のいい兄貴分みたいなポジションを失ってしまうかもしれないと思うと、怖い。
 彼は昔と変わらず、ビビリだ。