「......まだかッ...!」
「戦いは、まだ終わっちゃいない...!」
レオとイドは、先ほどの攻撃でほぼすべての体力を使ってしまったようだ。
2人はその場で座り込んでしまっている。
オリジンは、その2人のもとへゆっくりと近づいていく。
2人は動かない。
いや、動けない。
ここまでか...と、2人が死を覚悟したその時のことだった。
「「!!」」
突然何者かが側面からオリジンに“斬りかかってきた”。
ティエラだ。
彼の片手はインフィニティ・モードの力で再生し、その両手でダイヤモンド・ソードを握りしめている。
彼の斬撃はオリジンの首元に向かっていったが、バリアがそれを阻む。
ティエラの髪は黒と青が混じり、瞳は黄色になっている。
かつて、記憶を失っていたころの姿だ。
オリジンはバリアで吸収した衝撃をティエラに返すことで、ティエラを吹っ飛ばした。
ティエラは受け身をとると、再び剣を前に出し、体勢を整える。
そのとき、ティエラの髪は青に、瞳は地球のようなものに変化していった。
ついに、ティエラは本来の姿を取り戻したのだ。
(どうやら...俺が破壊した脳器官は『行き場を失った特殊能力を奪取し、貯蔵する器官』だけのようだな.......全てを破壊するのはさすがに難しかったか...)
ティエラは状況を整理する。
(よりにもよってバリアが残っているとは...厄介だ)
と、そのときだった。
オリジンのバリアが一瞬にして粉砕された。
(この技は...まさか!)
ティエラが周りを見渡し、見つけたのは、T・ユカ。
彼女の絶対殺陣(アポトーシス)の力だ。
直後、オリジンはなんとT・ユカの後ろに回っていた。
「クッ...!」
T・ユカは先ほど取り戻した特殊能力...植生形成の力で木を瞬時に生やすことで壁を設けた。
オリジンは殴打をT・ユカにお見舞いしようとしたが、その木によって阻まれてしまった。
オリジンの拳が木にはまってしまっている間に、T・ユカは即座に距離をとった。
「あの野郎...!バリアを犠牲にして回避しやがった...!」
「バリアを囮にして神速でお前の攻撃を回避、か...アイツも少しは学習するってことだな」
「...クソッ、どうすれば...!」
「頭を粉砕する。それで勝負は決まる」
「...そうだな」
2人はそんな会話を交わすと、再びオリジンのほうを見据える。
次の瞬間、オリジンに何かが命中した。
ミサイルだ。
ミサイルを喰らったオリジンはあまりの痛みに悶絶している。
2人が振り返ると、その先にはロケットランチャーを構えた兵士がいた。
服装からするに、米軍の者だろう。
「全軍!!総攻撃を仕掛けるぞ!!これはチャンスだ!!この機会を絶対に逃すな!!」
他の兵士たちもオリジンのほうへと総攻撃を仕掛けていく。
世界中から集った兵士たちは、武器を手にオリジンに突っ込んでいく。
そう、これはまたとないチャンスだ。
バリアは一度破壊されると、再構築するまでにインターバルがかかる。
それに、今のオリジンは度重なる連戦でこれまでにないほどに体力を消耗している状態なのだ。
だが、何の特別な力も持たない兵士など、オリジンにとってはそこまでの敵ではない。
「ま、待て!!無茶だ!!死んじまうぞ!!」
レオは兵士たちにそう叫ぶ。
すると、一人の兵士が立ち止まる。
自衛隊の者だ。
「死ぬことを心に留めずに戦場を歩く兵士が、どこにいる?」
そうレオに語り掛けながら、彼は笑った。
直後、彼は咆哮を上げながら、小銃のみという心細い装備にもかかわらず、オリジンへと突っ込んでいった。
レオは何も言い返すことなく、その様を見守った。
この瞬間が、後にレオの生涯を大きく左右することとなる。
オリジンは、突っ込んでくる兵士を次々と蹴散らしていく。
しかし、オリジンが相手の攻撃に押され始めているのもまた事実。
「いける!!いけるぞ!!俺たちの攻撃が聞いている!!」
「オリジン!人間の力をなめるなよォ!!」
戦闘機からの爆撃やミサイル発射、戦車砲による集中砲火でオリジンは八方ふさがりになっている。
「よし...このままなら...ッ!」
と、そのとき、オリジンの身体の周りが発光し始めた。
「!!あれはッ...まずい!!」
「撤退!一時撤退ィ―ッ!!」
そんな叫び声が聞こえたころ、オリジンの身体の周りに大量の幻日が顕現した。
だが、もう遅い。
彼らは総攻撃することばかりに気をとられていたため、後ろがつっかえてしまっていた。
「クソッ...!くっ...来るッ...!」
次の瞬間、大量の幻日が彼らを襲った。
彼らは一瞬にして吹き飛んだ。
ティエラらはその様子を目にし、戦慄した。
何度も見た景色...しかし、この景色の恐ろしさは何度見ても衰えることを知らない。
(やはり本来の力を取り戻しただけでは足りない...!なら...!)
オリジンは屍の山を踏み抜きながら進む。
残った兵士たちは未だオリジンに対して突っ込み続ける。
すると、ティエラが突然大きく息を吸い込んだ。
そして...
「皆!!下がってくれ!!あとは俺に任せろ!!皆は援護を頼む!!」
そう叫び、身構えた。
「ティエラ...!?」
T・ユカは驚きを隠せない。
「ユカ、お前もだ。援護を頼む。俺の手で...いや、俺たちの手で今度こそ200年の負の歴史を終わらせるぞ...!」
T・ユカは初めこそ驚いたかのような表情をし続けていたが、その表情はだんだんと決意の色へと変わっていき、ティエラに対して深いうなずきで返した。
「さあ、一緒に戦おう......ルナ!!」
次の瞬間、ティエラから青白いオーラが噴き出した。
あの時...精神世界でルナと久々に再開し、話した時...ティエラはある提案をルナにしていた。
「お前がいてもいい...かつ、俺が前に進めるような選択がある。それは ...」
『...?』
「お前が...俺と一緒に戦ってくれることだ」
『!!』
「俺は今ある者たちを護りたい。だけど、俺だけの力じゃ到底無理だ。だから、お前の力が必要だ。どうか、俺と一緒に前へ進んでほしい......どうだ?」
『うん、良いと思う!』
ティエラは安堵の表情を浮かべる。
「では、まずどうするか考えよう。無策に2人で突っ込んでも、結局やられるのがオチだ」
『そうだね...』
「......」
ティエラは考え込む。
と、そのときだった。
『ねえ、ティエラ』
「?」
『私に...考えがあるの』
「...なんだ?」
『あくまで、これは最終手段...でも、オリジンに勝つためにはこれしかない...』
青白いオーラを纏いながら、ティエラは片手を横に突き出す。
すると、次の瞬間、その腕の周りにあるものが現れた。
「あ...あれは...!?」
T・ユカは驚愕した。
それは、複数もの光弾だったのだ。
それは、幻日ではない。
ルナの能力...幻月だ。
と、そのとき、オリジンが彼ら目掛けて幻日を飛ばしてきた。
すると、
「させるか!!」
ティエラも幻月を飛ばす。
直後、2つの技はいくつもの場所でぶつかり合い、大爆発を起こした。
その後、ティエラは手元に”月光“を集める。
すると、それは瞬く間に剣の形になった。
かつて、ルナとティエラによる連携で使用していたセイクリッド・ソードだ。
と、そのとき、オリジンの身体の周りにバリアが再構築された。
兵士たちは一旦下がる。
それと入れ替わるかのようにティエラはオリジンのほうへと向かって行った。
オリジンはティエラへ視線を向けると、再び幻日を顕現させた。
ティエラも負けじと幻月を顕現させる。
直後、両者互いにそれぞれの技を飛ばした。
ティエラは弾幕を潜り抜けながら、だんだんと距離を詰める。
幻日と幻月の応酬が数分続いていたそのとき、幻月の一つがオリジンを覆うバリアに命中した。
すると、オリジンのバリアは一瞬にして崩壊した。
オリジンはもちろん、ティエラさえもが幻月の威力に驚愕した。
兵士たちは、オリジンからバリアが消えたことを確認すると、即座に攻撃に転じた。
再び大量の”鉄の塊“たちがオリジンを襲う。
オリジンは止まらぬ攻撃に動きを封じられた。
(さて......決めるなら今だ...!)
ティエラは“構える”。
セイクリッド・ソードでオリジンに狙いを定める。
そして...
「これで...終わらせるッ!!」
ティエラは、“消えた”。
見えない速度で多くの弾幕をかいくぐり、オリジンの目の前まで一気に迫る。
オリジンはティエラの斬撃に対応するため、セイクリッド・ソードの刀身の行方に気を張る。
そう、これは注意だった。
そして、油断でもあった。
オリジンが完全にセイクリッド・ソードの斬撃に“気をとられた”そのとき、ティエラのもう片方の手が、オリジンの頭部を思いっきり掴んだ。
次の瞬間、彼らを青白い光がまばゆく包む。
(あとは頼んだぞ...ルナ...!)
まっくろなせかい。
そこでは、一人の少女が独り、たたずんでいた。
少女の意識は朦朧としていた。
分かることと言えば、目の赤いバケモノやその他大勢のバケモノに襲われかけたこと、そして、頑張ってそれを退けようとしたことくらいだ。
白髪に灰色の瞳...退廃的という言葉の似合う容姿、そしてその様子を持つ彼女は、終わることのない暗闇を目にし、うなだれるしかなかった。
こんなはずじゃなかった。
彼女は、ただ世界中を歩きたかっただけだ。
少女は、生まれつき身体が弱かった。
そのため、物心がついた時から歩くことができず、車椅子とベッドの上で日常を送っていた。
だが、ある時に彼女を“知らない大人たち”が訪ね、こういった。
「我々が、これから君の夢を叶える」
少女の夢...それは、世界中を歩くことだった。
病院(せかい)から出られる...その希望に、彼女とその両親は盲目になっていた。
リスクがあることなど、知りもしなかった。
気づけば、彼女は歩けるようになっていた。
しかし、その代わりに彼女にはいつも“バケモノ”がつきまとっていた。
特に、赤い目を持つバケモノは厄介だった。
他のバケモノとは異なり、それは圧倒的な力を持っていた。
そして、彼女は赤い目のバケモノに集団で襲われ、いつしか長い眠りについていた。
つらかった。
苦しかった。
痛かった。
ずっとなにかに無理矢理吸われている気がした。
それは、あの”柱“に入れられたときからずっとだ。
この間に、彼女の意識はほぼ完全に途絶えた。
だが、あるとき、彼女は突然意識が楽になった。
だが、彼女の意識が回復することはなく、ただ暗闇の中で過ごすしかなかった。
少女は、顔を膝に埋める。
と、そのときだった。
突然、彼女の世界に一筋の光が入り始めた。
こんなことは、今までになかったのに。
光は次第に広がっていき、その源から、今度は手が出て来た。
その手は、誰かに差し伸べんとしていた。
少女は、その手を目にすると、一瞬で目に光を取り戻し、差し伸べられた手を一心不乱にとった。
次の瞬間、世界は光に覆われた。
今までの暗闇が嘘かのように、彼女は光に照らされた。
そして、彼女に手を差し伸べた者の正体も明らかになる。
その者は、青白い髪と月のような瞳を持つ、女神様のようだった。
少女は、彼女から離れまいと、“女神様”に抱き着いた。
“女神様”は、慈愛に満ちた微笑みで、少女を抱きしめ返した。
2人は、だんだんと、どこかへと昇り始めた。
上に行けば行くほど、とっても明るくて暖かい。
少女は、安心のあまり目に涙が浮かんだ。
そして、“女神様”の胸に顔をうずめた。
そのとき、“女神様”は少女の耳元で、一言、言った。
「今まで、よく頑張ったね」
とっても優しくて、思いっきり泣きたくなるような声だった。
少女は流れる涙もそのままに、笑顔を作りながら言葉を返す。
「私、もう歩き疲れちゃった」
2人はついに、“上”にある光へと到達した。
ありがとう、“女神様”......私を連れ出してくれて。
おかげで...やっと、ゆっくり休めるよ。
こうして、2人はまばゆく、あたたかい光に包まれていくのだった...
オリジンは青白い光とともに消滅した。
それと引き換えに、光に包まれたオリジンの肉体から様々な色の“光の塊”が飛び出し、それらはまるで流星群のように、彼らの立つ星に降り注ぐのであった...
その流星群は、祝福なのか、それとも呪いなのか...それは今そこにいる彼らに分かることではない。
これからの歴史が、それを証明していくのだ。
ティエラは、流星群を見つめる。
このとき、ティエラはオリジンとの『決戦』の直前にルナと話したことを思い出した。
「最終手段?」
『うん...。この力を使えば、私はもうティエラと一緒に入られない。この世とお別れしなきゃいけなくなるから』
「...そうか。極力使いたくはないな」
『...うん。それは私も同じ』
「だが...」
『......』
「それでこの戦いを終わらせられるのなら、俺はその力を使う」
『!!』
「この期間、俺は気づけたことがある」
『...気づけたこと?』
「ああ。俺の大切な人は、誰も死んじゃいない。なぜなら、ケンも...タイゾウも...それに、これまで一緒に戦ってきた仲間たちも、皆ここにいるから」
そういうと、ティエラは自身の胸に手を当てた。
「だから、たとえこの後の戦いでお前がこの世からいなくなったとしても、お前は死なない。少なくとも、俺の命が尽きるまではな」
そう言うと、ティエラは少し穏やかな笑みを漏らした。
ルナは少し驚いたかのような表情をしたが、その後はどこか安堵したような、そしてどこか寂しそうな表情をした。
『そっか...ティエラも変わっていくんだね』
「変わる?いや、何も変わることなんてないさ」
そう言うと、ティエラは改めてルナと向き合う。
そして、こんな言葉をルナに贈った。
「俺は、お前がどこに在ろうとも.....俺自身がいくら歳を経ようとも、お前をずっと愛し続ける」
『!!ッ...!............うんっ...!私も...!』
ルナは、声も瞳も震わせ、これまでにない幸せを噛み締めながら、そう答えを綴るのだった...
ティエラは天を見つめる。
そして、彼は天にこう告げた。
「終わったよ...ルナ。......これまで...ずっと俺のそばにいてくれて、ありがとう.....。俺は...今までお前と過ごせて...心の底から幸せだった...。これからもずっと...お前は“ここ”にいるよ」
ティエラは自身の胸に手を当てると、天に優しく微笑みかけた。
こうして、『災厄』との戦いは200年もの時を超え、ついに終わりを告げるのだった。