第042話 一人の中に二人
ー/ー生体認証を行う黒い壁の右隣にあった小扉がギギギと開いた。
「ママっ!」
「おぅ、我が娘よ。元気にしてたか?」
サーシャは、久しぶりの抱擁をしようと駆け寄ったが、直前でサーシャの母親はそれを避けたため、彼女は盛大にこけた。
サーシャの母親は、シロウの前までやって来るまじまじと顔を眺めはじめた。
「ふぅむ………ほぅ………なるほど………」
「ま、最初に会ったキミと同一人物のようだな」
「えぇ…それは間違いありません」
「その反応………エラーの原因が分かってるってことだね」
「そうですね………」
「ふむ、ま、ここではなんだから入りな」
サーシャの母親はそう言うと、先程自身が出て来た扉を親指で指した。
こうして、パーティ一行は壁の中へと入って行ったのであった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥。
扉をくぐると、そこは前に来たコカトリスの狩場のままであった。
「流石に外側だけなのね」
「必要なのは外敵を入れないことだからな」
少しして到着したサーシャの母親たちが住む家も、前に来た時のままであった。
「ま、大したもんは何も無いけどくつろいでくれ」
リビングルームに招かれたパーティ一行は、ソファに腰を掛けた。
そこには既にサーシャの父親を始め、マコトの父母も座っている。
「このクッキー超うまー」
サーシャは座ると一人、提供されたクッキーをもっしゃもっしゃと食べ始めた。
いつもであればリリスの小言が飛び出すのであるが、流石に彼女の両親のいる前では空気を読んで黙っている。
「ま、うちの娘は置いといて、シロウさんや」
「あんた、一体何者なんだい?」
サーシャの母親の一言で、サーシャのクッキーを食べる音を除き、一瞬にして部屋は静寂で満たされた。
「みんな、今まで黙っていて済まない」
「信じて貰えるかどうか分からないが………俺には前世の記憶があるんだ………」
「成程の。それで黒い壁に引っかかったのか」
「あぁ、あの黒い壁に前世での名前を言われた時には、心底背筋が凍った思いをしたよ」
「正直、魔界からの刺客かと思ったくらいだ」
「魔界?ってモンスターがうじゃうじゃいる?」
サーシャは食べながら話を聞いていたようで、シロウの話に割って入って来た。
「いや、ここの世界でいう魔界とは別の世界さ」
「そこでの俺は、先代魔王の第二王子で………名は黒い壁の言ったとおりシリウス・ヴォノメドゥク」
「第二…王子っ!!!」
リリスは両の手のひらを頬に乗せ『第二王子』に一際反応した。
叔母のエリスはともかく、他のエルフの王族が平民出身の彼をリリスの伴侶と認めるわけもなく、出奔も考えていたくらいであった。
ちなみに、伴侶うんうんは完全にリリスの妄想に過ぎないのは言うまでもない。
「なんだぁ、リリスさんも所詮『身分厨』だったかぁ」
サーシャは、リリスを指差しながらからかう。
「お黙りっ!小娘っ!………あ………」
リリスは、つい何時ものような口調で発言したものの、すぐそばに彼女の父母が居たことを思い出し口ごもる。
「あぁ、気にしなくていいよ。むしろ、我が娘にマコトくん以外の友達が出来るとは思って無かったからね。仲良くしてやってくれると助かる」
「友達じゃないしぃ」
母親の言葉に、サーシャはアヒル口で否定するが、実は満更でもない顔をしていた。
「さて、話を続けてくれ」
その言葉にシロウは、首を縦に振って話を続けた。
「詳細は割愛するが、俺は魔界から精神体の状態で今の世界にやってきたのだが、そこで、ある家に行きついた」
「家の中は家族の嘆き悲しむ声で包まれていた………悪いとは思ったが彼らの家に入って中の様子を見てみた」
「そこに居たのは、危険な状態の妊婦で体内の胎児は死んで間もない状態だった」
「それがシロウの身体というわけじゃな」
「そうだ。帰るところも失っていた俺は、その子に憑依することにした」
「憑依して生体エネルギーを母子に与え続ければ状態を安定化させられるからね」
「で、現在に至る………というわけだ」
「信じるかどうかは任せる」
一瞬の静寂の後、最初に口を開いたのはサーシャだった。
「よっし。今日のところはお開きということで解散解散!さぁ帰ろう帰ろう!」
「えっ!?サーシャ君。今日の目的は例の物………」
「いいからいいから。さぁ、みんな帰ろう!」
サーシャは、シロウの腕を強引に引き、マコト以外の他のメンバーはサーシャの行動に困惑しながらコカトリス狩場を後にしたのだった。
「ちっ、感づいたか。流石は私の娘」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥。
「しかし、どうしたんじゃお主。例の物の件で行ったんじゃろ?」
「そうですわ、そうですわ。これじゃ、ただの時間の無駄ではありませんの」
「言っておくけど、あのままだとシロウさんはママの研究モルモットにされていたわ」
「それは考えすぎじゃろ」
「いえ、伯母上。この小娘の母親ですわよ?」
「うむ………なら、ありえるか」
「なに、その納得の仕方」
三人のやり取りを御者のシロウを始め、マコトとオフィーリアは苦笑しながら聞いていた。
「黙っていて本当に済まない」
「誰にでも言いたくないことはあるじゃろ」
「ですわね。真実が分かったところでシロウはシロウですもの」
「半分は第二王子だから、リリスさん的にはうおっしゃー!だもんね」
「お黙り!小娘」
「ははは………」
「ボクは驚きはしたけど、幼少の頃のシロウの事を考えたら納得かな」
「え?俺なんかしたっけ?」
「何をやらせても大人顔負けだったでしょ。ボクなんかいつもシロウを見倣いなさいって言われてたもん」
「それは済まなかった」
「もう過去の事だからいいけど」
この二人のやり取りを聞いたリリスは、二人の距離関係をようやく理解した。
「オフィーリアさん。私、貴方の事を誤解しておりましたわ」
「え!?あ、うん。誤解が解けて良かったよ。????」
なお、オフィーリアが、リリスの言葉の意味を理解するのは数日後であった。
こうして、母親に勝ち目が無い事を悟ったサーシャは、以後、謎の四角物の話題はしなくなったのであった。
「ママっ!」
「おぅ、我が娘よ。元気にしてたか?」
サーシャは、久しぶりの抱擁をしようと駆け寄ったが、直前でサーシャの母親はそれを避けたため、彼女は盛大にこけた。
サーシャの母親は、シロウの前までやって来るまじまじと顔を眺めはじめた。
「ふぅむ………ほぅ………なるほど………」
「ま、最初に会ったキミと同一人物のようだな」
「えぇ…それは間違いありません」
「その反応………エラーの原因が分かってるってことだね」
「そうですね………」
「ふむ、ま、ここではなんだから入りな」
サーシャの母親はそう言うと、先程自身が出て来た扉を親指で指した。
こうして、パーティ一行は壁の中へと入って行ったのであった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
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扉をくぐると、そこは前に来たコカトリスの狩場のままであった。
「流石に外側だけなのね」
「必要なのは外敵を入れないことだからな」
少しして到着したサーシャの母親たちが住む家も、前に来た時のままであった。
「ま、大したもんは何も無いけどくつろいでくれ」
リビングルームに招かれたパーティ一行は、ソファに腰を掛けた。
そこには既にサーシャの父親を始め、マコトの父母も座っている。
「このクッキー超うまー」
サーシャは座ると一人、提供されたクッキーをもっしゃもっしゃと食べ始めた。
いつもであればリリスの小言が飛び出すのであるが、流石に彼女の両親のいる前では空気を読んで黙っている。
「ま、うちの娘は置いといて、シロウさんや」
「あんた、一体何者なんだい?」
サーシャの母親の一言で、サーシャのクッキーを食べる音を除き、一瞬にして部屋は静寂で満たされた。
「みんな、今まで黙っていて済まない」
「信じて貰えるかどうか分からないが………俺には前世の記憶があるんだ………」
「成程の。それで黒い壁に引っかかったのか」
「あぁ、あの黒い壁に前世での名前を言われた時には、心底背筋が凍った思いをしたよ」
「正直、魔界からの刺客かと思ったくらいだ」
「魔界?ってモンスターがうじゃうじゃいる?」
サーシャは食べながら話を聞いていたようで、シロウの話に割って入って来た。
「いや、ここの世界でいう魔界とは別の世界さ」
「そこでの俺は、先代魔王の第二王子で………名は黒い壁の言ったとおりシリウス・ヴォノメドゥク」
「第二…王子っ!!!」
リリスは両の手のひらを頬に乗せ『第二王子』に一際反応した。
叔母のエリスはともかく、他のエルフの王族が平民出身の彼をリリスの伴侶と認めるわけもなく、出奔も考えていたくらいであった。
ちなみに、伴侶うんうんは完全にリリスの妄想に過ぎないのは言うまでもない。
「なんだぁ、リリスさんも所詮『身分厨』だったかぁ」
サーシャは、リリスを指差しながらからかう。
「お黙りっ!小娘っ!………あ………」
リリスは、つい何時ものような口調で発言したものの、すぐそばに彼女の父母が居たことを思い出し口ごもる。
「あぁ、気にしなくていいよ。むしろ、我が娘にマコトくん以外の友達が出来るとは思って無かったからね。仲良くしてやってくれると助かる」
「友達じゃないしぃ」
母親の言葉に、サーシャはアヒル口で否定するが、実は満更でもない顔をしていた。
「さて、話を続けてくれ」
その言葉にシロウは、首を縦に振って話を続けた。
「詳細は割愛するが、俺は魔界から精神体の状態で今の世界にやってきたのだが、そこで、ある家に行きついた」
「家の中は家族の嘆き悲しむ声で包まれていた………悪いとは思ったが彼らの家に入って中の様子を見てみた」
「そこに居たのは、危険な状態の妊婦で体内の胎児は死んで間もない状態だった」
「それがシロウの身体というわけじゃな」
「そうだ。帰るところも失っていた俺は、その子に憑依することにした」
「憑依して生体エネルギーを母子に与え続ければ状態を安定化させられるからね」
「で、現在に至る………というわけだ」
「信じるかどうかは任せる」
一瞬の静寂の後、最初に口を開いたのはサーシャだった。
「よっし。今日のところはお開きということで解散解散!さぁ帰ろう帰ろう!」
「えっ!?サーシャ君。今日の目的は例の物………」
「いいからいいから。さぁ、みんな帰ろう!」
サーシャは、シロウの腕を強引に引き、マコト以外の他のメンバーはサーシャの行動に困惑しながらコカトリス狩場を後にしたのだった。
「ちっ、感づいたか。流石は私の娘」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥。
「しかし、どうしたんじゃお主。例の物の件で行ったんじゃろ?」
「そうですわ、そうですわ。これじゃ、ただの時間の無駄ではありませんの」
「言っておくけど、あのままだとシロウさんはママの研究モルモットにされていたわ」
「それは考えすぎじゃろ」
「いえ、伯母上。この小娘の母親ですわよ?」
「うむ………なら、ありえるか」
「なに、その納得の仕方」
三人のやり取りを御者のシロウを始め、マコトとオフィーリアは苦笑しながら聞いていた。
「黙っていて本当に済まない」
「誰にでも言いたくないことはあるじゃろ」
「ですわね。真実が分かったところでシロウはシロウですもの」
「半分は第二王子だから、リリスさん的にはうおっしゃー!だもんね」
「お黙り!小娘」
「ははは………」
「ボクは驚きはしたけど、幼少の頃のシロウの事を考えたら納得かな」
「え?俺なんかしたっけ?」
「何をやらせても大人顔負けだったでしょ。ボクなんかいつもシロウを見倣いなさいって言われてたもん」
「それは済まなかった」
「もう過去の事だからいいけど」
この二人のやり取りを聞いたリリスは、二人の距離関係をようやく理解した。
「オフィーリアさん。私、貴方の事を誤解しておりましたわ」
「え!?あ、うん。誤解が解けて良かったよ。????」
なお、オフィーリアが、リリスの言葉の意味を理解するのは数日後であった。
こうして、母親に勝ち目が無い事を悟ったサーシャは、以後、謎の四角物の話題はしなくなったのであった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
生体認証を行う黒い壁の右隣にあった小扉がギギギと開いた。
「ママっ!」
「おぅ、我が娘よ。元気にしてたか?」
サーシャは、久しぶりの抱擁をしようと駆け寄ったが、直前でサーシャの母親はそれを避けたため、彼女は盛大にこけた。
サーシャの母親は、シロウの前までやって来るまじまじと顔を眺めはじめた。
「ふぅむ………ほぅ………なるほど………」
「ま、最初に会ったキミと同一人物のようだな」
「ま、最初に会ったキミと同一人物のようだな」
「えぇ…それは間違いありません」
「その反応………エラーの原因が分かってるってことだね」
「そうですね………」
「ふむ、ま、ここではなんだから入りな」
サーシャの母親はそう言うと、先程自身が出て来た扉を親指で指した。
こうして、パーティ一行は壁の中へと入って行ったのであった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥。
扉をくぐると、そこは前に来たコカトリスの狩場のままであった。
「流石に外側だけなのね」
「必要なのは外敵を入れないことだからな」
少しして到着したサーシャの母親たちが住む家も、前に来た時のままであった。
「ま、大したもんは何も無いけどくつろいでくれ」
リビングルームに招かれたパーティ一行は、ソファに腰を掛けた。
そこには既にサーシャの父親を始め、マコトの父母も座っている。
そこには既にサーシャの父親を始め、マコトの父母も座っている。
「このクッキー超うまー」
サーシャは座ると一人、提供されたクッキーをもっしゃもっしゃと食べ始めた。
いつもであればリリスの小言が飛び出すのであるが、流石に彼女の両親のいる前では空気を読んで黙っている。
いつもであればリリスの小言が飛び出すのであるが、流石に彼女の両親のいる前では空気を読んで黙っている。
「ま、うちの娘は置いといて、シロウさんや」
「あんた、一体何者なんだい?」
「あんた、一体何者なんだい?」
サーシャの母親の一言で、サーシャのクッキーを食べる音を除き、一瞬にして部屋は静寂で満たされた。
「みんな、今まで黙っていて済まない」
「信じて貰えるかどうか分からないが………俺には前世の記憶があるんだ………」
「信じて貰えるかどうか分からないが………俺には前世の記憶があるんだ………」
「成程の。それで黒い壁に引っかかったのか」
「あぁ、あの黒い壁に前世での名前を言われた時には、心底背筋が凍った思いをしたよ」
「正直、魔界からの刺客かと思ったくらいだ」
「正直、魔界からの刺客かと思ったくらいだ」
「魔界?ってモンスターがうじゃうじゃいる?」
サーシャは食べながら話を聞いていたようで、シロウの話に割って入って来た。
「いや、ここの世界でいう魔界とは別の世界さ」
「そこでの俺は、先代魔王の第二王子で………名は黒い壁の言ったとおりシリウス・ヴォノメドゥク」
「第二…王子っ!!!」
リリスは両の手のひらを頬に乗せ『第二王子』に一際反応した。
叔母のエリスはともかく、他のエルフの王族が平民出身の彼をリリスの伴侶と認めるわけもなく、出奔も考えていたくらいであった。
ちなみに、伴侶うんうんは完全にリリスの妄想に過ぎないのは言うまでもない。
叔母のエリスはともかく、他のエルフの王族が平民出身の彼をリリスの伴侶と認めるわけもなく、出奔も考えていたくらいであった。
ちなみに、伴侶うんうんは完全にリリスの妄想に過ぎないのは言うまでもない。
「なんだぁ、リリスさんも所詮『身分厨』だったかぁ」
サーシャは、リリスを指差しながらからかう。
「お黙りっ!小娘っ!………あ………」
リリスは、つい何時ものような口調で発言したものの、すぐそばに彼女の父母が居たことを思い出し口ごもる。
「あぁ、気にしなくていいよ。むしろ、我が娘にマコトくん以外の友達が出来るとは思って無かったからね。仲良くしてやってくれると助かる」
「友達じゃないしぃ」
母親の言葉に、サーシャはアヒル口で否定するが、実は満更でもない顔をしていた。
「さて、話を続けてくれ」
その言葉にシロウは、首を縦に振って話を続けた。
「詳細は割愛するが、俺は魔界から精神体の状態で今の世界にやってきたのだが、そこで、ある家に行きついた」
「家の中は家族の嘆き悲しむ声で包まれていた………悪いとは思ったが彼らの家に入って中の様子を見てみた」
「そこに居たのは、危険な状態の妊婦で体内の胎児は死んで間もない状態だった」
「家の中は家族の嘆き悲しむ声で包まれていた………悪いとは思ったが彼らの家に入って中の様子を見てみた」
「そこに居たのは、危険な状態の妊婦で体内の胎児は死んで間もない状態だった」
「それがシロウの身体というわけじゃな」
「そうだ。帰るところも失っていた俺は、その子に憑依することにした」
「憑依して生体エネルギーを母子に与え続ければ状態を安定化させられるからね」
「で、現在に至る………というわけだ」
「信じるかどうかは任せる」
「憑依して生体エネルギーを母子に与え続ければ状態を安定化させられるからね」
「で、現在に至る………というわけだ」
「信じるかどうかは任せる」
一瞬の静寂の後、最初に口を開いたのはサーシャだった。
「よっし。今日のところはお開きということで解散解散!さぁ帰ろう帰ろう!」
「えっ!?サーシャ君。今日の目的は例の物………」
「いいからいいから。さぁ、みんな帰ろう!」
サーシャは、シロウの腕を強引に引き、マコト以外の他のメンバーはサーシャの行動に困惑しながらコカトリス狩場を後にしたのだった。
「ちっ、感づいたか。流石は私の娘」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥。
「しかし、どうしたんじゃお主。例の物の件で行ったんじゃろ?」
「そうですわ、そうですわ。これじゃ、ただの時間の無駄ではありませんの」
「言っておくけど、あのままだとシロウさんはママの研究モルモットにされていたわ」
「それは考えすぎじゃろ」
「いえ、伯母上。この小娘の母親ですわよ?」
「うむ………なら、ありえるか」
「なに、その納得の仕方」
三人のやり取りを御者のシロウを始め、マコトとオフィーリアは苦笑しながら聞いていた。
「黙っていて本当に済まない」
「誰にでも言いたくないことはあるじゃろ」
「ですわね。真実が分かったところでシロウはシロウですもの」
「半分は第二王子だから、リリスさん的にはうおっしゃー!だもんね」
「お黙り!小娘」
「ははは………」
「ボクは驚きはしたけど、幼少の頃のシロウの事を考えたら納得かな」
「え?俺なんかしたっけ?」
「何をやらせても大人顔負けだったでしょ。ボクなんかいつもシロウを見倣いなさいって言われてたもん」
「それは済まなかった」
「もう過去の事だからいいけど」
この二人のやり取りを聞いたリリスは、二人の距離関係をようやく理解した。
「オフィーリアさん。私、貴方の事を誤解しておりましたわ」
「え!?あ、うん。誤解が解けて良かったよ。????」
なお、オフィーリアが、リリスの言葉の意味を理解するのは数日後であった。
こうして、母親に勝ち目が無い事を悟ったサーシャは、以後、謎の四角物の話題はしなくなったのであった。