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もうひとつのプライド

ー/ー



 爆発物処理班のプライドを懸け、起爆装置の解除に躍起になっている真田とそれを見守る山本。爆発までの猶予は、あと五分となっていた!

「真田さん、どうするんですか! あと五分しか無いですよ!」

「うるさいな~わかってるよ! そんなに逃げたきゃ、お前一人で逃げればいいだろ」

「真田さん置いて一人で逃げられる訳無いでしょ! 逃げるなら、一緒に逃げましょう!」

「誰が逃げるかっ! 俺はこの起爆装置を解除する!」


「じゃあ~早く解除して下さいよ!」


「よしわかったよ! じゃあ『青』だ!」


「ちょっと待って下さい!」


青いコードを切ろうとする真田を、山本が慌てて制した。


「『青』って根拠は何です?」


「いや、何となく……」


「だめぇぇぇ~~っ! そんな曖昧な理由で切らないでえええぇぇぇ~~~っ!」


「なんだよ……急かしたり、止めたり、わからねぇ奴だな……」


「わからないのはアンタだっ! よくそんな理由でコードが切れますねっ!」


と、その時……繋ぎっぱなしにしていた山本のスマートフォンから、本部長の声が聴こえてきた。


『おい、真田!聴こえているか!』


「はい、聴こえてますよ。何ですか、本部長?」


『朗報だ。その起爆装置は、青のコードを切れば解除出来るそうだ!』


「えっ?」


長嶋本部長の言葉に、真田と山本は顔を見合わせる。


「どうして本部長がそんな事を知っているんですか?」


『実は、犯人から連絡があった。これは罠とかそういうものでは無い! 信頼出来る情報だ!』


どういう経緯で犯人がそれを教えてくれたのかは、二人には分からなかった。しかし、これでようやく安全に起爆装置を解除出来る……山本は、ホッと胸を撫で下ろした。


☆☆☆



「さあ、真田さん『青』です! 今度は止めたりなんかしませんから!」

「やっぱり『青』か……俺の睨んだ通りだったな……」

真田はニッパーを握りしめ、満足そうな表情で青いコードを凝視していた。





「だが……」

「だが?」











「犯人に教えてもらったコードなんて切る事は、プロの爆発物処理班のプライドがそれを許さない!!」

「なんでそぉ~~なるんだよおおおぉぉぉ~~~っ!」

「山本……非常に残念な事だが、この起爆装置を解除する手段はすべて絶たれた……
あとは、潔くこの場所で爆弾が爆発するのを責任を持って見守る以外に無い!」

「なに言ってんだあああっ! アンタが勝手に絶ってるだけだろうが~~っ!どうせ『絶つ』ならコードの方を絶ってくれよ~~っ!」

「山本、お前上手い事言うな~ハッハッハッハッ♪」

「笑ってる場合かっ!」

やっぱり、さっき一人で逃げていればよかった……山本は、今更ながらその事を心底後悔するのだった。


☆☆☆


「そうだ、そういえば一度やってみたかった事があるんだ」

真田は、そう呟くと胸のポケットから煙草を取り出す。

「爆発寸前の爆弾の前で煙草を吸ってやるゼェ~♪ワイルドだろぅ~?」

「なんで僕はこんな人についてきてしまったんだろう!」

爆弾の前でおどけてみせる真田と、この世の不幸をいっぺんに背負ったような顔の山本……

爆発までの時間は、あと四分を切っていた……




☆☆☆




突然、現場の部屋のドアが開き一人の男が飛び込んで来た。

「なにやってんだお前らっ! 『青』を切れと言っただろう!」

「誰だ、お前は?」

「俺はこの爆弾を仕掛けた犯人だ!なにモタモタしてる、早く起爆装置を解除しないか!」

「犯人?」

それを聞いて、思わず顔を見合わせる真田と山本。

実はこの犯人、電話で本部長からこの二人が起爆装置の解除を放棄してしまった事を聞き、シビレを切らしてこの現場へとやって来たのだ。

「しかしあいにくだな、犯人さんよ!この爆弾はここで爆発させる。命が惜しかったら、さっさと逃げるんだな!」

「冗談じゃ無い!爆発なんてさせるかっ!起爆装置は解除する!」

「うるせぇ!!」

「ダメだ! !」

「なんか、立場が逆になってるような……」


爆発まで、あと三分。



☆☆☆


ニッパーを握りしめ爆弾に近付こうとする犯人に、真田が勢いよくタックルをおみまいする。犯人と真田はそのままもつれ合って床をゴロゴロと転がった。

「邪魔するんじゃねえ!」

「それはこっちのセリフだっ!」

山本はといえば、そんな二人の様子を複雑な心境でただ見守るだけだった。

「いったい、どっちの味方すりゃあいいんだよ……」

時間は刻々と過ぎていく……

このままでは、いずれタイムオーバーとなり三人とも木っ端微塵になってしまうであろうという、その時だった……



パチン



「え……?」



いつの間にこの部屋に入って来たのだろう?掃除婦の格好をした一人のおばさんが、いとも簡単に起爆装置の導火線を切り離し、爆弾の傍に立っていた。


「アンタ達、掃除のジャマだから出て行ってくれんかね」

「は……?」

「このビル、爆弾仕掛けられたからって全員に避難命令が出てましたよね?」

「なんで今ここに、掃除のおばさんがいるんだ?」

突然のおばさんの登場に、一同は呆気に取られていた。

すると、そんな三人に対し掃除のおばさんはニッコリと微笑んでこう言うのだった。

「あたしゃ~このビルの掃除を30年やっとる……

今まで、一度だっては無いでしてな!」

「おみそれしました!!」


どんな職業にも、【プライド】というのはあるものである……


――おわり――


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 爆発物処理班のプライドを懸け、起爆装置の解除に躍起になっている真田とそれを見守る山本。爆発までの猶予は、あと五分となっていた!
「真田さん、どうするんですか! あと五分しか無いですよ!」
「うるさいな~わかってるよ! そんなに逃げたきゃ、お前一人で逃げればいいだろ」
「真田さん置いて一人で逃げられる訳無いでしょ! 逃げるなら、一緒に逃げましょう!」
「誰が逃げるかっ! 俺はこの起爆装置を解除する!」
「じゃあ~早く解除して下さいよ!」
「よしわかったよ! じゃあ『青』だ!」
「ちょっと待って下さい!」
青いコードを切ろうとする真田を、山本が慌てて制した。
「『青』って根拠は何です?」
「いや、何となく……」
「だめぇぇぇ~~っ! そんな曖昧な理由で切らないでえええぇぇぇ~~~っ!」
「なんだよ……急かしたり、止めたり、わからねぇ奴だな……」
「わからないのはアンタだっ! よくそんな理由でコードが切れますねっ!」
と、その時……繋ぎっぱなしにしていた山本のスマートフォンから、本部長の声が聴こえてきた。
『おい、真田!聴こえているか!』
「はい、聴こえてますよ。何ですか、本部長?」
『朗報だ。その起爆装置は、青のコードを切れば解除出来るそうだ!』
「えっ?」
長嶋本部長の言葉に、真田と山本は顔を見合わせる。
「どうして本部長がそんな事を知っているんですか?」
『実は、犯人から連絡があった。これは罠とかそういうものでは無い! 信頼出来る情報だ!』
どういう経緯で犯人がそれを教えてくれたのかは、二人には分からなかった。しかし、これでようやく安全に起爆装置を解除出来る……山本は、ホッと胸を撫で下ろした。
☆☆☆
「さあ、真田さん『青』です! 今度は止めたりなんかしませんから!」
「やっぱり『青』か……俺の睨んだ通りだったな……」
真田はニッパーを握りしめ、満足そうな表情で青いコードを凝視していた。
「だが……」
「だが?」
「犯人に教えてもらったコードなんて切る事は、プロの爆発物処理班のプライドがそれを許さない!!」
「なんでそぉ~~なるんだよおおおぉぉぉ~~~っ!」
「山本……非常に残念な事だが、この起爆装置を解除する手段はすべて絶たれた……
あとは、潔くこの場所で爆弾が爆発するのを責任を持って見守る以外に無い!」
「なに言ってんだあああっ! アンタが勝手に絶ってるだけだろうが~~っ!どうせ『絶つ』ならコードの方を絶ってくれよ~~っ!」
「山本、お前上手い事言うな~ハッハッハッハッ♪」
「笑ってる場合かっ!」
やっぱり、さっき一人で逃げていればよかった……山本は、今更ながらその事を心底後悔するのだった。
☆☆☆
「そうだ、そういえば一度やってみたかった事があるんだ」
真田は、そう呟くと胸のポケットから煙草を取り出す。
「爆発寸前の爆弾の前で煙草を吸ってやるゼェ~♪ワイルドだろぅ~?」
「なんで僕はこんな人についてきてしまったんだろう!」
爆弾の前でおどけてみせる真田と、この世の不幸をいっぺんに背負ったような顔の山本……
爆発までの時間は、あと四分を切っていた……
☆☆☆
突然、現場の部屋のドアが開き一人の男が飛び込んで来た。
「なにやってんだお前らっ! 『青』を切れと言っただろう!」
「誰だ、お前は?」
「俺はこの爆弾を仕掛けた犯人だ!なにモタモタしてる、早く起爆装置を解除しないか!」
「犯人?」
それを聞いて、思わず顔を見合わせる真田と山本。
実はこの犯人、電話で本部長からこの二人が起爆装置の解除を放棄してしまった事を聞き、シビレを切らしてこの現場へとやって来たのだ。
「しかしあいにくだな、犯人さんよ!この爆弾はここで爆発させる。命が惜しかったら、さっさと逃げるんだな!」
「冗談じゃ無い!爆発なんてさせるかっ!起爆装置は解除する!」
「うるせぇ!《《こんなポンコツ爆弾の解除なんて出来るか》》!」
「ダメだ! 《《こんな失敗作、爆発させられるか》》!」
「なんか、立場が逆になってるような……」
爆発まで、あと三分。
☆☆☆
ニッパーを握りしめ爆弾に近付こうとする犯人に、真田が勢いよくタックルをおみまいする。犯人と真田はそのままもつれ合って床をゴロゴロと転がった。
「邪魔するんじゃねえ!」
「それはこっちのセリフだっ!」
山本はといえば、そんな二人の様子を複雑な心境でただ見守るだけだった。
「いったい、どっちの味方すりゃあいいんだよ……」
時間は刻々と過ぎていく……
このままでは、いずれタイムオーバーとなり三人とも木っ端微塵になってしまうであろうという、その時だった……
パチン
「え……?」
いつの間にこの部屋に入って来たのだろう?掃除婦の格好をした一人のおばさんが、いとも簡単に起爆装置の導火線を切り離し、爆弾の傍に立っていた。
「アンタ達、掃除のジャマだから出て行ってくれんかね」
「は……?」
「このビル、爆弾仕掛けられたからって全員に避難命令が出てましたよね?」
「なんで今ここに、掃除のおばさんがいるんだ?」
突然のおばさんの登場に、一同は呆気に取られていた。
すると、そんな三人に対し掃除のおばさんはニッコリと微笑んでこう言うのだった。
「あたしゃ~このビルの掃除を30年やっとる……
今まで、一度だって《《掃除を途中で放り出した事》》は無いでしてな!」
「おみそれしました!!」
どんな職業にも、【プライド】というのはあるものである……
――おわり――