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悪鬼の上手な燃やし方

ー/ー



 彼らは東山トンネルへと向かった。

「ここで停まって」

 トンネルに入る手前で、停車する。

「一応、車に結界をかけておきます」青木は言った。すでに結界の中に入っているため、襲われる危険があった。

「すみません、よろしくお願いします」

 車に結界をかけたあと、彼らは反対車線へと出る。

「トンネルの奥にいる」杉田は言う。

 普段明るいはずのトンネルの中は真っ暗だった。なんらかの理由で照明がすべて消えてしまっているようだった。

 この状況は人には不利で、悪鬼には有利だった。暗闇でこちらは何も見えないうえに、光のない場所では闇の力が強くなる。

「大丈夫、これは予想してた。ところで、ちょっとやってみたいことがあるんだけど、中に生きてる人いるっぽい?」

「いや、いない。生きてる人の気配がない」

「オッケ。じゃあ、ちょっとサポートお願い」

「いいよ。何をすればいいの?」

「まずは悪鬼をあのトンネルの中に結界で閉じ込める」

「わかった」

 杉田は手を青木の背中に当てる。青木は手を合わせたあと、両手を地面に押し当てた。結界がトンネルを囲うように張られた。

「それで、次は?」

「爆破する」言いながら、彼は手を合わせる。そしてふっ、と鋭く息を吐く。

「イーヒ ジン アグチ イダシャルフ イシュカ」彼は天呪を唱える。

 彼はそっと、手を離す。手の間に、青い火の球ができあがっていた。彼はそれを右手に乗せて、前へ歩き出す。

 トンネルに入るすぐ手前で止まって、青い火の球を思い切り投げた。その直後、踵を返してトンネルから離れた。

 杉田が結界を張る。青木は結界の中に入った。

 青い光がトンネル内を満たした。それとほぼ同時に、落雷が目の前に落ちたかのような爆音が聞こえた。

 青木たちの張った結界が壊れた。それによって、トンネル内に閉じ込められていた青い火が、トンネル外へと広がった。そして、青木たちにも襲い掛かった。

「ははっ、やりすぎた!」彼は笑いながら言った。

「笑い事じゃないから! どんだけ霊力こめてんだっつの!」

 幸い、杉田の張った結界は青い火に耐えた。

「ごめんごめん。確実に仕留めようと思って、めいっぱい霊力を込めたから。でもさすがにやりすぎたわ。あれ、京都市内にぶちこんだら、確実に街が吹っ飛ぶな」

「その前にうちらが死ぬわ」

「大丈夫、その時は俺が結界で守るから」

「はいはい。それより一旦戻ろ? 堀田さん、待ってるよ」

 その時、トンネル内の明かりがぱっと灯る。

「あっ、明かりがついた」杉田が言う。

「あの悪鬼が明かりを消してたんだろうね。ほら、霊って電気系統に干渉できるから」青木は言う。

「でも、大昔の霊でしょ? 機械の仕組みなんてわかるの?」

「逆に、機械の構造を理解して動かしてる霊なんているのか?」

「うーん、そういえばいないかも。霊って、どうやって機械に干渉してるんだろうね?」

「それ考えるのはいいんだけどさ、堀田さんのところに戻るんじゃないの?」

「あ」

 二人は堀田の待つ車へと戻った。

「すごい爆発でしたね。爆破の天呪を使ったんですか?」堀田は言った。

「はい。トンネルに逃げ込んだんで、トンネルごと結界に閉じ込めて、燃やしてやりましたよ」

「さすがです。ところで、これからどうします? もうそろそろ、四時になりますけど」彼は腕時計を見せる。針は午後三時五十分あたりを示していた。

「帰りましょう」青木は言う。

「え、待って。もう少し倒していったほうがいいんじゃない? だってまだ、残ってる人がいるかもしれないし」

「いや、それはまずい。夜に近づけば近づくほど、闇の力が強くなるから、暗くなる前に結界から出ないと、俺らが危なくなる」

「でも、京都にいる人たちは危ない目に遭ってるのに私たちだけ帰るなんて」

「俺もできれば京都に残ってる人を全員を助けたい。ただ、京都の人たちが危ない目に遭ってるからっていって、麻奈が危ない目に遭っていいわけじゃないから」

 それを聞いた杉田は、はっとしたような表情を浮かべてから、うつむいた。

「そっか、そうだよね。ここで無茶したら、私はよくても雅哉とか堀田さんまで危険な目に遭うんだよね。そこまで考えてなかった、ごめん」

「いや、俺も気持ちは麻奈とおんなじだから、やらなきゃってなる気持ちもわかるよ。でも、どうしてもここへ来るまでに俺らは時間がかかっちゃったし。むしろ、トンネル塞いでた悪鬼を倒しただけでも十分えらいよなうちら、って思ってたほうがさ、気持ちも楽じゃん。な?」

 杉田はうなずく。

 三人はその場でUターンして、帰る。逆走になってしまってはいたが、道が封鎖されているので、対向車が来ることはない。

 車で道路を走っていって、あと少しで結界から出られるというところまで来たところで、杉田は眉をひそめる。

「雅哉、結界の手前になんかいる」彼女は言う。

「悪鬼だよな、あれ」青木は言う。

「うん。待ち伏せされてたね・・・・・・私たちの存在に気づいて、先回りしてあそこで待ってたのかも」

 青木は車を停めた。

「やるしかない。堀田さんも降りてください。車内にいるところを襲われたら守れないんで」

「一応、僕も多少は戦えます。ある程度休んで、少しは回復しましたから」堀田は言って、車から降りる。

 結界の前にいる悪鬼は、人の頭に犬の胴体がついていて、大きさが馬ほどもあるようなものだった。頭のほうは皮膚が焼けただれていて、半分溶けているような状態だった。胴体のほうは、全身の毛が抜け落ちていて、同じく焼けただれた皮膚が露出していた。

 彼らは知るよしもないが、これはサタンの代弁者を殺した悪鬼だった。


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 彼らは東山トンネルへと向かった。
「ここで停まって」
 トンネルに入る手前で、停車する。
「一応、車に結界をかけておきます」青木は言った。すでに結界の中に入っているため、襲われる危険があった。
「すみません、よろしくお願いします」
 車に結界をかけたあと、彼らは反対車線へと出る。
「トンネルの奥にいる」杉田は言う。
 普段明るいはずのトンネルの中は真っ暗だった。なんらかの理由で照明がすべて消えてしまっているようだった。
 この状況は人には不利で、悪鬼には有利だった。暗闇でこちらは何も見えないうえに、光のない場所では闇の力が強くなる。
「大丈夫、これは予想してた。ところで、ちょっとやってみたいことがあるんだけど、中に生きてる人いるっぽい?」
「いや、いない。生きてる人の気配がない」
「オッケ。じゃあ、ちょっとサポートお願い」
「いいよ。何をすればいいの?」
「まずは悪鬼をあのトンネルの中に結界で閉じ込める」
「わかった」
 杉田は手を青木の背中に当てる。青木は手を合わせたあと、両手を地面に押し当てた。結界がトンネルを囲うように張られた。
「それで、次は?」
「爆破する」言いながら、彼は手を合わせる。そしてふっ、と鋭く息を吐く。
「イーヒ ジン アグチ イダシャルフ イシュカ」彼は天呪を唱える。
 彼はそっと、手を離す。手の間に、青い火の球ができあがっていた。彼はそれを右手に乗せて、前へ歩き出す。
 トンネルに入るすぐ手前で止まって、青い火の球を思い切り投げた。その直後、踵を返してトンネルから離れた。
 杉田が結界を張る。青木は結界の中に入った。
 青い光がトンネル内を満たした。それとほぼ同時に、落雷が目の前に落ちたかのような爆音が聞こえた。
 青木たちの張った結界が壊れた。それによって、トンネル内に閉じ込められていた青い火が、トンネル外へと広がった。そして、青木たちにも襲い掛かった。
「ははっ、やりすぎた!」彼は笑いながら言った。
「笑い事じゃないから! どんだけ霊力こめてんだっつの!」
 幸い、杉田の張った結界は青い火に耐えた。
「ごめんごめん。確実に仕留めようと思って、めいっぱい霊力を込めたから。でもさすがにやりすぎたわ。あれ、京都市内にぶちこんだら、確実に街が吹っ飛ぶな」
「その前にうちらが死ぬわ」
「大丈夫、その時は俺が結界で守るから」
「はいはい。それより一旦戻ろ? 堀田さん、待ってるよ」
 その時、トンネル内の明かりがぱっと灯る。
「あっ、明かりがついた」杉田が言う。
「あの悪鬼が明かりを消してたんだろうね。ほら、霊って電気系統に干渉できるから」青木は言う。
「でも、大昔の霊でしょ? 機械の仕組みなんてわかるの?」
「逆に、機械の構造を理解して動かしてる霊なんているのか?」
「うーん、そういえばいないかも。霊って、どうやって機械に干渉してるんだろうね?」
「それ考えるのはいいんだけどさ、堀田さんのところに戻るんじゃないの?」
「あ」
 二人は堀田の待つ車へと戻った。
「すごい爆発でしたね。爆破の天呪を使ったんですか?」堀田は言った。
「はい。トンネルに逃げ込んだんで、トンネルごと結界に閉じ込めて、燃やしてやりましたよ」
「さすがです。ところで、これからどうします? もうそろそろ、四時になりますけど」彼は腕時計を見せる。針は午後三時五十分あたりを示していた。
「帰りましょう」青木は言う。
「え、待って。もう少し倒していったほうがいいんじゃない? だってまだ、残ってる人がいるかもしれないし」
「いや、それはまずい。夜に近づけば近づくほど、闇の力が強くなるから、暗くなる前に結界から出ないと、俺らが危なくなる」
「でも、京都にいる人たちは危ない目に遭ってるのに私たちだけ帰るなんて」
「俺もできれば京都に残ってる人を全員を助けたい。ただ、京都の人たちが危ない目に遭ってるからっていって、麻奈が危ない目に遭っていいわけじゃないから」
 それを聞いた杉田は、はっとしたような表情を浮かべてから、うつむいた。
「そっか、そうだよね。ここで無茶したら、私はよくても雅哉とか堀田さんまで危険な目に遭うんだよね。そこまで考えてなかった、ごめん」
「いや、俺も気持ちは麻奈とおんなじだから、やらなきゃってなる気持ちもわかるよ。でも、どうしてもここへ来るまでに俺らは時間がかかっちゃったし。むしろ、トンネル塞いでた悪鬼を倒しただけでも十分えらいよなうちら、って思ってたほうがさ、気持ちも楽じゃん。な?」
 杉田はうなずく。
 三人はその場でUターンして、帰る。逆走になってしまってはいたが、道が封鎖されているので、対向車が来ることはない。
 車で道路を走っていって、あと少しで結界から出られるというところまで来たところで、杉田は眉をひそめる。
「雅哉、結界の手前になんかいる」彼女は言う。
「悪鬼だよな、あれ」青木は言う。
「うん。待ち伏せされてたね・・・・・・私たちの存在に気づいて、先回りしてあそこで待ってたのかも」
 青木は車を停めた。
「やるしかない。堀田さんも降りてください。車内にいるところを襲われたら守れないんで」
「一応、僕も多少は戦えます。ある程度休んで、少しは回復しましたから」堀田は言って、車から降りる。
 結界の前にいる悪鬼は、人の頭に犬の胴体がついていて、大きさが馬ほどもあるようなものだった。頭のほうは皮膚が焼けただれていて、半分溶けているような状態だった。胴体のほうは、全身の毛が抜け落ちていて、同じく焼けただれた皮膚が露出していた。
 彼らは知るよしもないが、これはサタンの代弁者を殺した悪鬼だった。