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逢いたいが情、見たいが病Ⅴ   Love longs , and longing aches.

ー/ー



「ブレスって鶏肉だよね」

 え、そういうこと?
 で、何で睨まれたんだ僕。
 と崇直を見たら、シェフとにらめっこしてた。

「よくご存知で笠神さん」

 シェフは少し得意げな顔だ。

「でも、アニョーも良質で有名なんですよ」

 あ、もしかして崇直アニョー知らなかった?

「シェフ、アニョーってなんですか」

 なんだ、紅緒も知らなかったのか。

「失礼、アニョーは子羊のことです。今日は良いフランス産のアニョーが手に入ったので」

 ほら、崇直。

「ラム肉、好物だったよね、崇直」
 
()()()()()()のラムチョップね」

 何故か嫌味で返されたぞ。今日は妙に突っかかるな。

「ここだけの話なんですが」

 突然、シェフが内緒話でもするように頬に手を当て前かがみになった。
 思わず僕らも身を起こし、聞き耳を立てる。

「いつもはニュージーランド産のラムなんですよ、実は」

 へぇ、そうなんだ。だってよ、良かったな崇直。

「フレンチビストロなのに、ね」

 とここで微笑む。
 うん、笑顔が素敵な人だ。この笑顔で、充分もてなされた気分になれるよ。

「でもクセがなくて、その上いい肉なんですよこれが。しかも安い」

 と、裏話をしてるかのようにトーンを落として言う。
 へー、と感心してたらあのプロバンス風煮込みの豚は千葉県産だと種明かししてくれた。
 いたく豚の煮込みを気に入ってた崇直が、それを聞いてとても嬉しそうに笑っていた。

「では、デザートをお持ちしますね」

 笑顔でそう言うとさり際に田中に笑いかけ、厨房へ戻っていった。

「川崎さん、あ、シェフね」

 と、田中がこちらに向き直る。

「W大の法科出るんだよ。俺らと同じように現役合格したくせに司法修習生蹴って調理学校へ行ったんだ」

 えー、司法試験合格しても研修蹴って良いんだ。
 義務じゃないから、選べるのか。

「料理好きが高じたとかじゃないんだよね、理由が」

 あ、W大って。

「W大って、ベーの先輩じゃん」

「あたしは法科じゃないよ、わーちゃん」

「知ってる。文転したんだって?」

「うん。第一文学部。来年は日本語の先生だよ〜」

「へー」

 ん。崇直何か言いたそうだな。
 何だ、聞こえないよ。

「変わった人だろ」

 え? 誰がって、あシェフのことか。

「良い顔してたからね。あの顔は良いわぁ」

 確かに自分の仕事に誇りを持ってる感じは良いよな。
 特に客に媚びないところとか。

「お客様は神様なんて言われてるけど、本来は対等なんだよ」

 だよね、と紅緒が笑顔で答えてくれた。

「デザートのイル・フロッタント塩キャラメルソースとラベンダー香るクレームブリュレでございます」

 紅緒が嬉しそうに自分のイル・フロッタントを受け取るとそのまま僕の方へ差し出した。

「わーちゃん、それ一口ちょうだい。あたしのも取っていいよ〜」

 と握ったスプーンを伸ばしてきた。

「べー、サンキュー。じゃ、半分こしよっか」

 そう言ったらもうコレ以上無い位の笑顔でうん、と答えてくれた。

「だから、わーちゃん大好き」

 あはは、その好きは、まぁ、いいけどさ。
 もちろん紅緒は遠慮なく、僕のブリュレのカラメリゼを叩き割り半分を器用に取り分けた。 




みんなのリアクション

「ブレスって鶏肉だよね」
 え、そういうこと?
 で、何で睨まれたんだ僕。
 と崇直を見たら、シェフとにらめっこしてた。
「よくご存知で笠神さん」
 シェフは少し得意げな顔だ。
「でも、アニョーも良質で有名なんですよ」
 あ、もしかして崇直アニョー知らなかった?
「シェフ、アニョーってなんですか」
 なんだ、紅緒も知らなかったのか。
「失礼、アニョーは子羊のことです。今日は良いフランス産のアニョーが手に入ったので」
 ほら、崇直。
「ラム肉、好物だったよね、崇直」
「|オ《・》|セ《・》|ア《・》|ニ《・》|ア《・》|産《・》のラムチョップね」
 何故か嫌味で返されたぞ。今日は妙に突っかかるな。
「ここだけの話なんですが」
 突然、シェフが内緒話でもするように頬に手を当て前かがみになった。
 思わず僕らも身を起こし、聞き耳を立てる。
「いつもはニュージーランド産のラムなんですよ、実は」
 へぇ、そうなんだ。だってよ、良かったな崇直。
「フレンチビストロなのに、ね」
 とここで微笑む。
 うん、笑顔が素敵な人だ。この笑顔で、充分もてなされた気分になれるよ。
「でもクセがなくて、その上いい肉なんですよこれが。しかも安い」
 と、裏話をしてるかのようにトーンを落として言う。
 へー、と感心してたらあのプロバンス風煮込みの豚は千葉県産だと種明かししてくれた。
 いたく豚の煮込みを気に入ってた崇直が、それを聞いてとても嬉しそうに笑っていた。
「では、デザートをお持ちしますね」
 笑顔でそう言うとさり際に田中に笑いかけ、厨房へ戻っていった。
「川崎さん、あ、シェフね」
 と、田中がこちらに向き直る。
「W大の法科出るんだよ。俺らと同じように現役合格したくせに司法修習生蹴って調理学校へ行ったんだ」
 えー、司法試験合格しても研修蹴って良いんだ。
 義務じゃないから、選べるのか。
「料理好きが高じたとかじゃないんだよね、理由が」
 あ、W大って。
「W大って、ベーの先輩じゃん」
「あたしは法科じゃないよ、わーちゃん」
「知ってる。文転したんだって?」
「うん。第一文学部。来年は日本語の先生だよ〜」
「へー」
 ん。崇直何か言いたそうだな。
 何だ、聞こえないよ。
「変わった人だろ」
 え? 誰がって、あシェフのことか。
「良い顔してたからね。あの顔は良いわぁ」
 確かに自分の仕事に誇りを持ってる感じは良いよな。
 特に客に媚びないところとか。
「お客様は神様なんて言われてるけど、本来は対等なんだよ」
 だよね、と紅緒が笑顔で答えてくれた。
「デザートのイル・フロッタント塩キャラメルソースとラベンダー香るクレームブリュレでございます」
 紅緒が嬉しそうに自分のイル・フロッタントを受け取るとそのまま僕の方へ差し出した。
「わーちゃん、それ一口ちょうだい。あたしのも取っていいよ〜」
 と握ったスプーンを伸ばしてきた。
「べー、サンキュー。じゃ、半分こしよっか」
 そう言ったらもうコレ以上無い位の笑顔でうん、と答えてくれた。
「だから、わーちゃん大好き」
 あはは、その好きは、まぁ、いいけどさ。
 もちろん紅緒は遠慮なく、僕のブリュレのカラメリゼを叩き割り半分を器用に取り分けた。