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霊媒師と霊媒師の助手

ー/ー



 一台の車が山科駅の駐車場に停まった。その車から女と男が降りてきた。

 女のほうは伊沢凪海(なみ)という霊媒師で、細身で、黒い髪をポニーテールにしていて、眼鏡をかけていて、黒いスーツを着ていた。

 男のほうは村山賢人という伊沢の助手で、背が低くて、ブラウン色のジャケットを着ていた。

「駅前に集合って言ってましたよね?」村山は言った。

「そうなんだけど、堀田さんの気配っぽいものがない」伊沢は言った。

「もしかして、力を使い果たして動けなくなってしまったんじゃないんですか?」

「それはあると思う。でも、どこにいるかわからないし、探しようもない。霊視したくても、本人の写真とかがないと無理だし」

 そう言いながら伊沢は、駅の入口のほうに目を向ける。

「どうかしましたか?」それに気づいた村山は尋ねた。

「こっちに近づいてくる人がいる」

 そう言われて彼も駅の入口のほうへ目を向けた。すると確かに、こちらへ向かって歩いていくる、スーツ姿の男が二人いた。やがて彼らは村山達のすぐそばまで来て立ち止まる。

「伊沢さんと村山さん、でよろしいでしょうか?」男の一人が言った。

「そうですが」村山が答える。

「堀田さんから、あなたがたを本部まで案内するようにと言われてやってきました。我々と一緒に来ていただけますか?」

 堀田の名前を知っているのは、村山たちの味方以外にはいない。しかし味方の誰も、このような人たちが味方についているとは言っていなかった。

「伊沢さん、ついていきますか?」村山は尋ねた。

 伊沢は人の言葉を聞くことで様々なことを霊視できる。相手が嘘をついていても、すぐに見抜くことができる。

「・・・・・・うん、ついていって大丈夫だと思う」彼女は言った。

 村山たちは男二人についていくことにした。やがて、四人は山科駅の近くにあるホテルに着いた。

「このホテルを一時的にですが、拠点としています。伊沢さんたちには、しばらくのあいだ、ここで寝泊まりしていただくかたちとなります」

 それから彼らはホテルの中に入って、エレベーターを使って三階にあがった。

「まずは堀田さんのところへご案内します」

 そして301号室へと伊沢達を案内した。

 中に入ると、天然パーマの若い男がベッドに座って待っていた。

「すみません、座ったままで失礼します。結界を張るときに力を使い果たしてしまいまして、満足に動けない状態になってしまったものですから」

「ああ、全然」伊沢は言う。

「ところで、お久しぶりです。ビデオ通話で話して以来ですね。あ、もう少ししたら、ヤタガラスっていう組織の偉い人が来るかもしれません。もうすぐ来ますって言われてたんですけど、まだ来てないので」

「ヤタガラスってなんの組織なんですか?」村山は尋ねた。

「なんでも、日本を霊的な脅威から守ってる組織らしいです。京都に結界を張ったのも彼らで、僕はただその結界にちょっと手を加えただけなんですけど、それでもけっこうきつかったですね」堀田は答えた。

「いや、十分すぎるくらいです。あれだけの規模の結界を何とかしてもらったうえに、あんなすごそうな組織まで味方に引き入れてくれたんですから」彼は言った。

「いや、たまたまそばにいたんです。倒れた時に、家まで送ってもらうだけのつもりだったんですけど、事情を話したら、いつの間にかここまでいろいろしてもらって。なんかちょっと、申し訳ないなって」

 思います、と堀田が言いかけたところで、ノックの音が響いた。

「失礼します」男の声がドアの向こうから聞こえた。

「どうぞ」堀田は答える。

 すると、三十代くらいの男が部屋に入ってきた。

「はじめまして、高田と申します。みなさんが、堀田さんと、伊沢さんと、村山さんですね」彼は三人の名前を正確に言い当てた。

「はい。はじめまして、堀田晃司と言います。陰陽師をやっています」彼は、

「私は伊沢凪海と言います。霊媒師をしています。彼は助手の村山です」

 村山は頭を下げた。

 高田はうなずいてから、話し始める。

「しばらくのあいだ、みなさんがここで寝泊まりできるように手配はしました。ホテル代はもちろん、こちらでもっています。

 京都市民には、毒ガスが散布された、という嘘の警報を発して、避難を促しました。

 あと、今のところ来ているのは、あなたがた三人だけのようです。他の方が来ましたら、その都度我々のほうでこちらへご案内します」

 村山たちは口々にお礼を言った。

「別に気にしないでください、これも仕事なので。ところで、次はあなたたちから話をお伺いしたいのですが、まずは堀田さんのあの力がなんなのか、それを教えていただきたいのです」


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 一台の車が山科駅の駐車場に停まった。その車から女と男が降りてきた。
 女のほうは伊沢|凪海《なみ》という霊媒師で、細身で、黒い髪をポニーテールにしていて、眼鏡をかけていて、黒いスーツを着ていた。
 男のほうは村山賢人という伊沢の助手で、背が低くて、ブラウン色のジャケットを着ていた。
「駅前に集合って言ってましたよね?」村山は言った。
「そうなんだけど、堀田さんの気配っぽいものがない」伊沢は言った。
「もしかして、力を使い果たして動けなくなってしまったんじゃないんですか?」
「それはあると思う。でも、どこにいるかわからないし、探しようもない。霊視したくても、本人の写真とかがないと無理だし」
 そう言いながら伊沢は、駅の入口のほうに目を向ける。
「どうかしましたか?」それに気づいた村山は尋ねた。
「こっちに近づいてくる人がいる」
 そう言われて彼も駅の入口のほうへ目を向けた。すると確かに、こちらへ向かって歩いていくる、スーツ姿の男が二人いた。やがて彼らは村山達のすぐそばまで来て立ち止まる。
「伊沢さんと村山さん、でよろしいでしょうか?」男の一人が言った。
「そうですが」村山が答える。
「堀田さんから、あなたがたを本部まで案内するようにと言われてやってきました。我々と一緒に来ていただけますか?」
 堀田の名前を知っているのは、村山たちの味方以外にはいない。しかし味方の誰も、このような人たちが味方についているとは言っていなかった。
「伊沢さん、ついていきますか?」村山は尋ねた。
 伊沢は人の言葉を聞くことで様々なことを霊視できる。相手が嘘をついていても、すぐに見抜くことができる。
「・・・・・・うん、ついていって大丈夫だと思う」彼女は言った。
 村山たちは男二人についていくことにした。やがて、四人は山科駅の近くにあるホテルに着いた。
「このホテルを一時的にですが、拠点としています。伊沢さんたちには、しばらくのあいだ、ここで寝泊まりしていただくかたちとなります」
 それから彼らはホテルの中に入って、エレベーターを使って三階にあがった。
「まずは堀田さんのところへご案内します」
 そして301号室へと伊沢達を案内した。
 中に入ると、天然パーマの若い男がベッドに座って待っていた。
「すみません、座ったままで失礼します。結界を張るときに力を使い果たしてしまいまして、満足に動けない状態になってしまったものですから」
「ああ、全然」伊沢は言う。
「ところで、お久しぶりです。ビデオ通話で話して以来ですね。あ、もう少ししたら、ヤタガラスっていう組織の偉い人が来るかもしれません。もうすぐ来ますって言われてたんですけど、まだ来てないので」
「ヤタガラスってなんの組織なんですか?」村山は尋ねた。
「なんでも、日本を霊的な脅威から守ってる組織らしいです。京都に結界を張ったのも彼らで、僕はただその結界にちょっと手を加えただけなんですけど、それでもけっこうきつかったですね」堀田は答えた。
「いや、十分すぎるくらいです。あれだけの規模の結界を何とかしてもらったうえに、あんなすごそうな組織まで味方に引き入れてくれたんですから」彼は言った。
「いや、たまたまそばにいたんです。倒れた時に、家まで送ってもらうだけのつもりだったんですけど、事情を話したら、いつの間にかここまでいろいろしてもらって。なんかちょっと、申し訳ないなって」
 思います、と堀田が言いかけたところで、ノックの音が響いた。
「失礼します」男の声がドアの向こうから聞こえた。
「どうぞ」堀田は答える。
 すると、三十代くらいの男が部屋に入ってきた。
「はじめまして、高田と申します。みなさんが、堀田さんと、伊沢さんと、村山さんですね」彼は三人の名前を正確に言い当てた。
「はい。はじめまして、堀田晃司と言います。陰陽師をやっています」彼は、
「私は伊沢凪海と言います。霊媒師をしています。彼は助手の村山です」
 村山は頭を下げた。
 高田はうなずいてから、話し始める。
「しばらくのあいだ、みなさんがここで寝泊まりできるように手配はしました。ホテル代はもちろん、こちらでもっています。
 京都市民には、毒ガスが散布された、という嘘の警報を発して、避難を促しました。
 あと、今のところ来ているのは、あなたがた三人だけのようです。他の方が来ましたら、その都度我々のほうでこちらへご案内します」
 村山たちは口々にお礼を言った。
「別に気にしないでください、これも仕事なので。ところで、次はあなたたちから話をお伺いしたいのですが、まずは堀田さんのあの力がなんなのか、それを教えていただきたいのです」