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月明かりのおかげかな、俺もコタローも今のところは迷わず真っ直ぐに進むことができている。
タケルがいてくれてありがたいです。なあんてあいつは応えてくれてるけど、初めてこの手の森の中に入った時は本気で怖かったって足元は見えないわ、振り向いても真っ暗だわで、結局一番太い木の上で泣きながら陽がのぼるのを待っていたらしい。
ってコタロー、何歳のころ?
「2.3年くらい前……ですかね」すげえ! その時からひとりで旅してたのかよ?

そんな感じで、あいつとずっと他愛のない会話ばっかしてたんだ。ときおりカラスの鳴き声に2人でビクッとしながら。

……どのくらい歩いたんだろう。森の中って時間の流れもおかしくされる効果があるのかな? たまにスマホで時間チェックしてるんだけど、延々と話してるのに数分しか経ってない時もあれば、おにぎり一個食べただけで30分も過ぎてたり。

「僕……思いきり緊張したり怖かったりすると、すごくお腹がすいちゃうんです」
ひと休みした大きな木の下で俺の作ったおにぎりを口いっぱいに頬張りながら、コタローはそんなことを話してくれた。面白いな、普通なら緊張しまくると食事なんて全然出来なくなるのにね。

俺も結構不安だったけど、美味しいですって満面の笑み浮かべておにぎり食べてるあいつの顔をみてたら同じくらい腹減ってきた。そうだよ、いくさも出来なくなっちゃうし。
夜もかなり更けてきたかな、でも例のヤバい気配は近づいてこない。
そうしているうちに足元がすごく冷えてきちゃって……
なんの罰ゲームだか知らねえけど、コタローのアイデアでずーっと靴履かないで歩き続けたもんだから、足の裏は痛くなってきたしでもう最悪だ。けど言葉にはしたくないし

おにぎりも全部食べ終えて、うとうとしてきた頃かな……あいつが足を重ねてきたんだ。冷たくなった俺の足の上に。
でも、コタローってこんなに足があったかいだなんて知らなかっ……

え。

あまりに突然だった。俺もコタローも気配なんか全く気づかなかった!
それこそジンより2回りくらい、いやもっとか? とにかくデカい黒茶の毛並みの犬。そして目は……やっぱりそうだ。赤黒く輝いている。
そんなオオカミが俺たちの真ん前に突然現れたんだ。
なんなんだよこいつ、瞬間移動でもしてきたのか!?
横目でチラッとコタローを見ると……あいつもだ。驚きのあまりまるで凍りついたみたいにピクリとも動かない。
けど、驚いたのはそれだけ。いきなり目の前にいたから。
不思議とそれ以上の恐怖感は無かったんだ。本来ならこんなでかいオオカミが目の前にいきなり出現でもしたら、正直絶対的漏らしちゃうだろうし。

「なるほどな。妖しげな刀を持ったガキに貴様と。兄弟か?」
俺は首を左右に振るので精一杯だった。つーか何をすればいいんだ? コイツは絶対ジンを殺そうとした危険なオオカミに100%間違いない。でも……

今目の前にいるコイツには、戦う気とか殺意が一切存在しないんだ!
「かしこいな。オレが何者かということは本能がわきまえてくれているみたいだ」
喉の奥から、とにかく今コイツに聞きたい言葉を絞り出す。
「お、お前が……ジンをやったのか?」
「分かってンだろ、それくらい?」
やはり確定ってことか。でもやっぱりコイツと戦おうとか逃げようって気が一切出てこない……なんなんだよ!

「今夜は久しぶりに会えたからご挨拶ってことでな……だが安心しろ。俺は貴様を牙にかける気は全くない。そして貴様も俺とは戦えない。そこだけは覚えておけ」
「た、戦えないっていったいどういうことだよ!?」
巨大なオオカミはそう言うと、くるっと俺たちに尻尾を向けた。去っちゃうのか?

「俺は兄貴……いや、ジンの奴とは違うからな」


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月明かりのおかげかな、俺もコタローも今のところは迷わず真っ直ぐに進むことができている。
タケルがいてくれてありがたいです。なあんてあいつは応えてくれてるけど、初めてこの手の森の中に入った時は本気で怖かったって足元は見えないわ、振り向いても真っ暗だわで、結局一番太い木の上で泣きながら陽がのぼるのを待っていたらしい。
ってコタロー、何歳のころ?
「2.3年くらい前……ですかね」すげえ! その時からひとりで旅してたのかよ?
そんな感じで、あいつとずっと他愛のない会話ばっかしてたんだ。ときおりカラスの鳴き声に2人でビクッとしながら。
……どのくらい歩いたんだろう。森の中って時間の流れもおかしくされる効果があるのかな? たまにスマホで時間チェックしてるんだけど、延々と話してるのに数分しか経ってない時もあれば、おにぎり一個食べただけで30分も過ぎてたり。
「僕……思いきり緊張したり怖かったりすると、すごくお腹がすいちゃうんです」
ひと休みした大きな木の下で俺の作ったおにぎりを口いっぱいに頬張りながら、コタローはそんなことを話してくれた。面白いな、普通なら緊張しまくると食事なんて全然出来なくなるのにね。
俺も結構不安だったけど、美味しいですって満面の笑み浮かべておにぎり食べてるあいつの顔をみてたら同じくらい腹減ってきた。そうだよ、いくさも出来なくなっちゃうし。
夜もかなり更けてきたかな、でも例のヤバい気配は近づいてこない。
そうしているうちに足元がすごく冷えてきちゃって……
なんの罰ゲームだか知らねえけど、コタローのアイデアでずーっと靴履かないで歩き続けたもんだから、足の裏は痛くなってきたしでもう最悪だ。けど言葉にはしたくないし
おにぎりも全部食べ終えて、うとうとしてきた頃かな……あいつが足を重ねてきたんだ。冷たくなった俺の足の上に。
でも、コタローってこんなに足があったかいだなんて知らなかっ……
え。
あまりに突然だった。俺もコタローも気配なんか全く気づかなかった!
それこそジンより2回りくらい、いやもっとか? とにかくデカい黒茶の毛並みの犬。そして目は……やっぱりそうだ。赤黒く輝いている。
そんなオオカミが俺たちの真ん前に突然現れたんだ。
なんなんだよこいつ、瞬間移動でもしてきたのか!?
横目でチラッとコタローを見ると……あいつもだ。驚きのあまりまるで凍りついたみたいにピクリとも動かない。
けど、驚いたのはそれだけ。いきなり目の前にいたから。
不思議とそれ以上の恐怖感は無かったんだ。本来ならこんなでかいオオカミが目の前にいきなり出現でもしたら、正直絶対的漏らしちゃうだろうし。
「なるほどな。妖しげな刀を持ったガキに貴様と。兄弟か?」
俺は首を左右に振るので精一杯だった。つーか何をすればいいんだ? コイツは絶対ジンを殺そうとした危険なオオカミに100%間違いない。でも……
今目の前にいるコイツには、戦う気とか殺意が一切存在しないんだ!
「かしこいな。オレが何者かということは本能がわきまえてくれているみたいだ」
喉の奥から、とにかく今コイツに聞きたい言葉を絞り出す。
「お、お前が……ジンをやったのか?」
「分かってンだろ、それくらい?」
やはり確定ってことか。でもやっぱりコイツと戦おうとか逃げようって気が一切出てこない……なんなんだよ!
「今夜は久しぶりに会えたからご挨拶ってことでな……だが安心しろ。俺は貴様を牙にかける気は全くない。そして貴様も俺とは戦えない。そこだけは覚えておけ」
「た、戦えないっていったいどういうことだよ!?」
巨大なオオカミはそう言うと、くるっと俺たちに尻尾を向けた。去っちゃうのか?
「俺は兄貴……いや、ジンの奴とは違うからな」