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ー/ー
イタチとの戦いから一週間が経った。
今日もありあわせの野菜と豚肉バラで作った肉じゃがにラップかけて、日の暮れるなか俺は姉貴の帰りを待っていたんだけど……
玄関から小さいノックする音が聞こえたんだ。
普通ならチャイム押すのに。まずそこからして変だ。
覗き穴から見ても薄暗い外しか見えないし、恐るおそるドアを開けると……やっぱり誰もいない。
「おめーの家ン中にもういるよ、全然気づかなかったンか?」
え、玄関の電気つけてなかったから分からなかった。突然家の中から小さな声が聞こえたし。
「久しぶり。って言えばいいのかなこの場合」
慌てて声のする台所へと向かうと、そこにはこげ茶色の動物が……
テーブルに載せてあるキュウリの漬物をポリポリと食べてた。
そっか、久しぶりって、あの……!
「うめーじゃねえか、これ」
うるせーバカ、人んちのもの勝手に食うな。
と、俺も挨拶代わりにそのイタチにデコピン食らわせた。
間違いない。この前戦ったイタチだ。けどあの時に比べてサイズは小さくなってるし、赤い目もしていない。
「すげえなお前、やっぱりオレたちと話ができるんだ」
言われてようやく気がついた! 俺……動物と話してるんだってことに。
「なんで話ができるんだ……?」
「原理はよく知らねーけど、お前だってオレらの仲間みてーなモンじゃね?」
まあそういうことだ。とこっちも無理やり納得。
ところで、なんでわざわざここに来たんだ……?
「ああ、オレたち兄妹を元の姿に戻してくれてありがとなってコトで、オレが代表して来たんだ」
聞いてみるとこのイタチ……じゃなくて5匹の兄妹、ある日突然記憶が無くなってて、気がついたら自分の意思とは裏腹に暴れ回っていたらしい。
そういえば後で学校で教えてもらったんだっけ。近所のタワマンで夜な夜な徘徊、おまけにゴミ集積所を荒らしまわる影とか、スーパーで堂々万引きするケモノ。しかも店の人たちが捕まえようとしたらみんなで大暴れしまくって、店内めちゃくちゃにした挙句休店させたんだって。
けどそれって……大ニュースじゃねーのか?
とはいっても俺の家はTV無いし新聞も取ってないし。わからねーのも当然か。
でもって、あそこで暴れていたところで俺たちとバトル。最終的にみんな元の姿に戻れたってことなんだ。
「ヘタしたらオレたちみんな殺されてたかも知れないしな。正直白いヤツと戦っていた時は覚悟してたんだけど、襲う衝動の方が上回っちまって。だから生かしてくれたことに感謝。ってワケ」
よかった。結果的にコタローやジンがやったことは正解だったんだ。
まあ、ジン一人にやらせちゃったら……瞬く間に全員食べられちゃっただろうし。
「だ! け! ど! な!」
ほら来た。やっぱりトドメの一言が。
「お前あの時オレの顔面に蹴り喰らわせたろ」
「え、あ……うん」
「アレ自体は全然痛くなかったんだけど、お前の足の臭さっていったら……もういったいなんなんだよ! おかげで今でもオレの鼻はなんにも匂いを感じないんだ!」
ジンとコタローにも言われてたし、すでに分かってたことだけど、やっぱり他のやつから言われるとすげえ心折れそうになるよな……もはや反論できない事実。
「っつーことでだ。今からお前の名前は足臭オオカミと呼ぶぞ」
やめろおおおおおおおおおおお!!! なんでそんな名前付けるんだよ!
「はァ? 俺たち兄妹も仲間もみんな特技とか特徴で名前付けてるんだ。いちばん下はチビ助、その次は腹が出てるからボテ吉、次は鼻が白いからハナジロで、妹はアケビが大好物だから、そのままアケビにした」
アケビって全然知らないんだけど……なんか食べ物なのかな?
「で、お前の名前は?」
「アニキ」
「え……?」
「オレはいちばん年上だからそのまんまアニキだ。覚えたか足臭」
とりあえず、またなんかムカつくこと言いやがったらデコピンしてやろうと心に留めながら、俺は耐えた、半笑いしながらグッと押さえた。
ちなみにこいつらイタチは夜行性。つまりは夜間に何かあったらオレたちが知らせてやるぜってことを教えに来たらしい……まあ俺にしてみれば踏んだり蹴ったりだけどな。
そんなことでアニキはまた玄関から軽い足取りで風のようにすっ飛んで帰っていった。小動物だからかな、とにかく落ち着きがないっていうか、せわしないやつだった。
そして、ようやく……というのもあれだけど、姉貴がすごく疲れた顔して帰って来たんだ。イタチと入れ替わるかのように。
「づがれだー、なにこの美味しそうな香り、肉じゃが?」
帰宅するなり居間にでーんとぶっ倒れた。これほどまでに疲れ切ってる姉貴の姿を見るのなんて初めてだ……まあ休日出勤したってのもあるけど。
時計を見ると、もう夜の7時を回ってる。俺もずいぶんと話してたんだな……
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玄関から小さいノックする音が聞こえたんだ。
普通ならチャイム押すのに。まずそこからして変だ。
覗き穴から見ても薄暗い外しか見えないし、恐るおそるドアを開けると……やっぱり誰もいない。
「おめーの家ン中にもういるよ、全然気づかなかったンか?」
え、玄関の電気つけてなかったから分からなかった。突然家の中から小さな声が聞こえたし。
「久しぶり。って言えばいいのかなこの場合」
慌てて声のする台所へと向かうと、そこにはこげ茶色の動物が……
テーブルに載せてあるキュウリの漬物をポリポリと食べてた。
そっか、久しぶりって、あの……!
「うめーじゃねえか、これ」
うるせーバカ、人んちのもの勝手に食うな。
と、俺も挨拶代わりにそのイタチにデコピン食らわせた。
間違いない。この前戦ったイタチだ。けどあの時に比べてサイズは小さくなってるし、赤い目もしていない。
「すげえなお前、やっぱりオレたちと話ができるんだ」
言われてようやく気がついた! 俺……動物と話してるんだってことに。
「なんで話ができるんだ……?」
「原理はよく知らねーけど、お前だってオレらの仲間みてーなモンじゃね?」
まあそういうことだ。とこっちも無理やり納得。
ところで、なんでわざわざここに来たんだ……?
「ああ、オレたち兄妹を元の姿に戻してくれてありがとなってコトで、オレが代表して来たんだ」
聞いてみるとこのイタチ……じゃなくて5匹の兄妹、ある日突然記憶が無くなってて、気がついたら自分の意思とは裏腹に暴れ回っていたらしい。
そういえば後で学校で教えてもらったんだっけ。近所のタワマンで夜な夜な徘徊、おまけにゴミ集積所を荒らしまわる影とか、スーパーで堂々万引きするケモノ。しかも店の人たちが捕まえようとしたらみんなで大暴れしまくって、店内めちゃくちゃにした挙句休店させたんだって。
けどそれって……大ニュースじゃねーのか?
とはいっても俺の家はTV無いし新聞も取ってないし。わからねーのも当然か。
でもって、あそこで暴れていたところで俺たちとバトル。最終的にみんな元の姿に戻れたってことなんだ。
「ヘタしたらオレたちみんな殺されてたかも知れないしな。正直白いヤツと戦っていた時は覚悟してたんだけど、襲う衝動の方が上回っちまって。だから生かしてくれたことに感謝。ってワケ」
よかった。結果的にコタローやジンがやったことは正解だったんだ。
まあ、ジン一人にやらせちゃったら……瞬く間に全員食べられちゃっただろうし。
「だ! け! ど! な!」
ほら来た。やっぱりトドメの一言が。
「お前あの時オレの顔面に蹴り喰らわせたろ」
「え、あ……うん」
「アレ自体は全然痛くなかったんだけど、お前の足の臭さっていったら……もういったいなんなんだよ! おかげで今でもオレの鼻はなんにも匂いを感じないんだ!」
ジンとコタローにも言われてたし、すでに分かってたことだけど、やっぱり他のやつから言われるとすげえ心折れそうになるよな……もはや反論できない事実。
「っつーことでだ。今からお前の名前は足臭オオカミと呼ぶぞ」
やめろおおおおおおおおおおお!!! なんでそんな名前付けるんだよ!
「はァ? 俺たち兄妹も仲間もみんな特技とか特徴で名前付けてるんだ。いちばん下はチビ助、その次は腹が出てるからボテ吉、次は鼻が白いからハナジロで、妹はアケビが大好物だから、そのままアケビにした」
アケビって全然知らないんだけど……なんか食べ物なのかな?
「で、お前の名前は?」
「アニキ」
「え……?」
「オレはいちばん年上だからそのまんまアニキだ。覚えたか足臭」
とりあえず、またなんかムカつくこと言いやがったらデコピンしてやろうと心に留めながら、俺は耐えた、半笑いしながらグッと押さえた。
ちなみにこいつらイタチは夜行性。つまりは夜間に何かあったらオレたちが知らせてやるぜってことを教えに来たらしい……まあ俺にしてみれば踏んだり蹴ったりだけどな。
そんなことでアニキはまた玄関から軽い足取りで風のようにすっ飛んで帰っていった。小動物だからかな、とにかく落ち着きがないっていうか、せわしないやつだった。
そして、ようやく……というのもあれだけど、姉貴がすごく疲れた顔して帰って来たんだ。イタチと入れ替わるかのように。
「づがれだー、なにこの美味しそうな香り、肉じゃが?」
帰宅するなり居間にでーんとぶっ倒れた。これほどまでに疲れ切ってる姉貴の姿を見るのなんて初めてだ……まあ休日出勤したってのもあるけど。
時計を見ると、もう夜の7時を回ってる。俺もずいぶんと話してたんだな……